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10th ステージ
098 メイドブートキャンプ
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聖皇国に戻った教皇ソルマルトと大司教のダンドールは、すぐに教会に籠城していた司教達を護衛として連れてきた聖騎士達に捕らえさせたらしい。
その日の内に、国内外に向けての謝罪と、教会が行っていたことについて、全てを公表することにした。それぞれの国に居たダンドールのように信頼できる司教や司祭達を通じて、各国の王へ説明に向かったようだ。
聖皇国の混乱具合から、国民へ広く発表するのは控えたのだ。それぞれの国で対応をお願いした。
呪われ、弱って死ぬのを待つだけになっていた教皇のことがあったため、それほど強く抗議は受けなかったようだ。
各国は、密かに使者を立て、今後の教会というものについての話し合いを行った。
国民に秘密裏に動いたのは、教会に取って代わろうとする怪しげな組織の台頭を避けるためだ。
ブランシェレルのような組織のこともある。リンディエール達によって、ウィストラ国内からは完全に撤退したが、他の国ではまだ燻っているだろう。
勢力が削られたことで、思わぬ行動に出る可能性もあると、ヘルナが危険視したのだ。古くからある組織はどこまで根を張っているかわからない。
崩壊状態の教会に付け込んでくる可能性もあるため、そちらも注意してもらう。
そのような感じでひと月が経った。
「悠ちゃん、今日のノルマは終わったか?」
異世界から召喚された天野悠は、あれからリンディエールとデリエスタ辺境伯家で、メイド見習いを始めた。
プリエラとシュラによって、毎日ブートキャンプばりに厳しく教育されている。
最初の頃は、メイド服がコスプレみたいで恥ずかしいと言っていたのだが、すぐにそんな余裕はなくなった。体育会系の悠にとって、プリエラ達の教え方は性に合ったらしい。
今日は洗濯日和。沢山の真っ白なシーツがはためいていた。
「終わったよ~。これ見て! 何度見ても壮観!」
「お~。アレやな。旅館とかホテルの見えない場所! みたいな」
「それそれ! 良いよね~。コレ」
洗濯は洗濯機ならギリ使えるというくらいの中学生だ。最初は不安だったようだが、ひたすら同じもの。白いシーツを手洗いするということが新鮮で楽しかったらしい。
確かに、普通の家でシーツをいくつも洗うというのは中々ないだろう。それも手洗い。
「洗濯の山って、まだ何度見ても、すごいなって感心する。それで、やるぞぉぉぉーって気になるんだよ」
「ははっ。悠ちゃんは、芋の皮剥きも燃えとったやん」
「いや、私さ。いつかホテルとか、旅館で働きたかったんだよ。これ、出来てるな~って思ったら、何やっても楽しくて」
「あ~、この世界の宿より、貴族の屋敷の方がそれっぽいかもなあ」
お客様が来る機会は少ないが、内容的にはホテルと変わらないだろう。部屋は使用人のも含めて、常に埋まっているようなものだし、広い。空き部屋もきっちり掃除しなくてはならない。
「けどさあ、他の貴族の屋敷じゃ、こうは行かないんでしょ? ここって、いじめとかもないし、仲良いよね」
「辺境やでな。やっぱ、都会ほどギスギスせえへんのよ。王都の方だと、結婚相手探しも兼ねとるで、裏ではドロドロで陰湿な感じになるらしいで……」
「昼ドラ展開? 主人の愛人にとか?」
ワクワクと興味津々の様子。
「狙っとるのもおるみたいやな。宰相さんが愚痴っとったわ」
「宰相って……クイント様……だよね。うわ~、ゲーム展開」
「いや、自然な流れやで。浮気しとった本妻、追い出したでな。隣が空いとるんよ」
「えっ! ライバルキャラが最初から退場くらってるってこと!? それ、略奪してもおいしいところないじゃん!」
「……略奪なんや……」
「うん。そういうゲーム。不倫上等!」
「それ言ったらあかんっ。ゲームの中の遊びは許されるけど、ここはあかんっ」
「あ、そうだった」
ゲームはそうだったかもしれない。それを楽しんでも問題なかったかもしれないが、ここは現実なのだ。
「けどさあ。乙女ゲームってそういうパターン、一つはあるじゃん? 婚約破棄系もさあ、元のペア? ってかカップル? 婚約者を取るわけでしょ? ハッピーエンドって言えなくない?」
「まあ、不幸っちゅうか、外れが出来るでなあ」
「だよね。やっぱ、ハッピーエンドは、モブでもなんでも、関係者全員が良いところに着地しないと気持ち悪いよ」
「……」
これを聞いて、リンディエールはハッとした。リンディエールにとっても、無意識にゲームのような、現実とは少し違う感覚になっていたようだ。
「なるほど……」
「それにさあ。ほら、ゲームと違って、気になったモブキャラのその後の話とかも知れるってことだよね? ライバルキャラも、退場してお終いじゃないんだよね」
「せや……一人一人に人生があるねんもんな」
「うん。因みに私は今、あの庭師のお兄さんの恋が実るかどうか気になってる」
「……マジか……でも、うちもそれ、気になるわ」
「だよねっ。ふふっ。悪役キャラもさ……反省した後は、幸せになってもいいよね」
「……せやな……」
うんと頷く。
「それに……そうゆう人らを見放すと、変な組織とかに付け入れられるやろな……」
「復讐してやる! とか思いそう。この世界、魔法とかあるから怖いよね~。人ってさ、他の生き方があることって気付かないものだよね。私も、バスケ以外やる気もなかったし、出来るとも思ってなかったもん」
バスケだけできれば良かったのだろう。それが悠の世界の全てだった。
「……そんなら、教えてやるか」
「ん?」
「メイドブートキャンプなんてどうや?」
「それ、私がやってるやつじゃん?」
「おっ。ブートキャンプや思っとるん?」
「あっ、言わないでよ!? また厳しくなると困る~」
「ブートキャンプの意味、プリエラちゃん達は知らんって」
「でも~」
内緒だと悠が必死になる。だが、この考えは面白そうだ。
「別の生き方を教えるにはええかもしれんよな」
「んん?」
「よしっ。まずは情報収集や!」
もう、これ以上、ブランシェレルのような怪しげなな組織に力を付けさせる気はない。付け入らせる前に確保だ。
そう決めて、リンディエールは王都へ飛んだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、来週の予定です。
よろしくお願いします!
その日の内に、国内外に向けての謝罪と、教会が行っていたことについて、全てを公表することにした。それぞれの国に居たダンドールのように信頼できる司教や司祭達を通じて、各国の王へ説明に向かったようだ。
聖皇国の混乱具合から、国民へ広く発表するのは控えたのだ。それぞれの国で対応をお願いした。
呪われ、弱って死ぬのを待つだけになっていた教皇のことがあったため、それほど強く抗議は受けなかったようだ。
各国は、密かに使者を立て、今後の教会というものについての話し合いを行った。
国民に秘密裏に動いたのは、教会に取って代わろうとする怪しげな組織の台頭を避けるためだ。
ブランシェレルのような組織のこともある。リンディエール達によって、ウィストラ国内からは完全に撤退したが、他の国ではまだ燻っているだろう。
勢力が削られたことで、思わぬ行動に出る可能性もあると、ヘルナが危険視したのだ。古くからある組織はどこまで根を張っているかわからない。
崩壊状態の教会に付け込んでくる可能性もあるため、そちらも注意してもらう。
そのような感じでひと月が経った。
「悠ちゃん、今日のノルマは終わったか?」
異世界から召喚された天野悠は、あれからリンディエールとデリエスタ辺境伯家で、メイド見習いを始めた。
プリエラとシュラによって、毎日ブートキャンプばりに厳しく教育されている。
最初の頃は、メイド服がコスプレみたいで恥ずかしいと言っていたのだが、すぐにそんな余裕はなくなった。体育会系の悠にとって、プリエラ達の教え方は性に合ったらしい。
今日は洗濯日和。沢山の真っ白なシーツがはためいていた。
「終わったよ~。これ見て! 何度見ても壮観!」
「お~。アレやな。旅館とかホテルの見えない場所! みたいな」
「それそれ! 良いよね~。コレ」
洗濯は洗濯機ならギリ使えるというくらいの中学生だ。最初は不安だったようだが、ひたすら同じもの。白いシーツを手洗いするということが新鮮で楽しかったらしい。
確かに、普通の家でシーツをいくつも洗うというのは中々ないだろう。それも手洗い。
「洗濯の山って、まだ何度見ても、すごいなって感心する。それで、やるぞぉぉぉーって気になるんだよ」
「ははっ。悠ちゃんは、芋の皮剥きも燃えとったやん」
「いや、私さ。いつかホテルとか、旅館で働きたかったんだよ。これ、出来てるな~って思ったら、何やっても楽しくて」
「あ~、この世界の宿より、貴族の屋敷の方がそれっぽいかもなあ」
お客様が来る機会は少ないが、内容的にはホテルと変わらないだろう。部屋は使用人のも含めて、常に埋まっているようなものだし、広い。空き部屋もきっちり掃除しなくてはならない。
「けどさあ、他の貴族の屋敷じゃ、こうは行かないんでしょ? ここって、いじめとかもないし、仲良いよね」
「辺境やでな。やっぱ、都会ほどギスギスせえへんのよ。王都の方だと、結婚相手探しも兼ねとるで、裏ではドロドロで陰湿な感じになるらしいで……」
「昼ドラ展開? 主人の愛人にとか?」
ワクワクと興味津々の様子。
「狙っとるのもおるみたいやな。宰相さんが愚痴っとったわ」
「宰相って……クイント様……だよね。うわ~、ゲーム展開」
「いや、自然な流れやで。浮気しとった本妻、追い出したでな。隣が空いとるんよ」
「えっ! ライバルキャラが最初から退場くらってるってこと!? それ、略奪してもおいしいところないじゃん!」
「……略奪なんや……」
「うん。そういうゲーム。不倫上等!」
「それ言ったらあかんっ。ゲームの中の遊びは許されるけど、ここはあかんっ」
「あ、そうだった」
ゲームはそうだったかもしれない。それを楽しんでも問題なかったかもしれないが、ここは現実なのだ。
「けどさあ。乙女ゲームってそういうパターン、一つはあるじゃん? 婚約破棄系もさあ、元のペア? ってかカップル? 婚約者を取るわけでしょ? ハッピーエンドって言えなくない?」
「まあ、不幸っちゅうか、外れが出来るでなあ」
「だよね。やっぱ、ハッピーエンドは、モブでもなんでも、関係者全員が良いところに着地しないと気持ち悪いよ」
「……」
これを聞いて、リンディエールはハッとした。リンディエールにとっても、無意識にゲームのような、現実とは少し違う感覚になっていたようだ。
「なるほど……」
「それにさあ。ほら、ゲームと違って、気になったモブキャラのその後の話とかも知れるってことだよね? ライバルキャラも、退場してお終いじゃないんだよね」
「せや……一人一人に人生があるねんもんな」
「うん。因みに私は今、あの庭師のお兄さんの恋が実るかどうか気になってる」
「……マジか……でも、うちもそれ、気になるわ」
「だよねっ。ふふっ。悪役キャラもさ……反省した後は、幸せになってもいいよね」
「……せやな……」
うんと頷く。
「それに……そうゆう人らを見放すと、変な組織とかに付け入れられるやろな……」
「復讐してやる! とか思いそう。この世界、魔法とかあるから怖いよね~。人ってさ、他の生き方があることって気付かないものだよね。私も、バスケ以外やる気もなかったし、出来るとも思ってなかったもん」
バスケだけできれば良かったのだろう。それが悠の世界の全てだった。
「……そんなら、教えてやるか」
「ん?」
「メイドブートキャンプなんてどうや?」
「それ、私がやってるやつじゃん?」
「おっ。ブートキャンプや思っとるん?」
「あっ、言わないでよ!? また厳しくなると困る~」
「ブートキャンプの意味、プリエラちゃん達は知らんって」
「でも~」
内緒だと悠が必死になる。だが、この考えは面白そうだ。
「別の生き方を教えるにはええかもしれんよな」
「んん?」
「よしっ。まずは情報収集や!」
もう、これ以上、ブランシェレルのような怪しげなな組織に力を付けさせる気はない。付け入らせる前に確保だ。
そう決めて、リンディエールは王都へ飛んだ。
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