99 / 212
10th ステージ
099 立て直し開始
しおりを挟む
聖皇国の混乱は、時間が経つにつれて、様々な所に影響を及ぼした。悪い影響ではない。寧ろ、今まで見逃されてきた裏の事情が明かにされて行く変化だった。
その一つが、各国にあった特別な『修道院』。それは、監獄とは別に、問題を起こした女性やその子ども達が入れられる場所だ。
劣悪な環境と厳しい戒律。本来ならば、更生を促すべき場所だが、中は神官やシスター達のストレス発散の場だったらしい。目つきが気に入らないからと言っては、鞭を打ち、掃除や料理が出来ていないと言って、寒い地下の小部屋に閉じ込める。
確実な罪ある者なら、これも仕方がない。だが、その中には冤罪をかけられた者も多かった。調べが終わるまで、留め置かれる者もいたのだ。
これらの現状を知ったのは、第二王妃など退場した者たちを調べようと、リンディエールが王宮へ向かった数日後に発覚した。
そこには、元第二王妃とクイントの元妻も入っていたのだ。
「元第二王妃さんなんて、最早別人やんか……それでもお腹の子は無事みたいやな」
「……あ、ああ……」
今日は、ブラムレース王と宰相のクイントも連れて、修道院に確認に来た。そこで、明らかに弱っている元第二王妃を確認した。ブラムレースが近くに来ても、喋る気力もないらしい。
現状をリンディエールが確認して、教皇ソルマルトへ報告してから、すぐに妊娠している第二王妃は保護されていた。例え罪人の子であっても、お腹の子に罪はないという教えだけは、何とか守れたようだ。
同じように、クイントの元妻とその息子が居ることが分かった。
「で? 宰相さん。あの人が元妻と子どもか?」
「……そのようです……多分」
「そんな曖昧な……」
「私の知っている原形を留めていません。顔付きもそうですが、最後に見た時は、二人ともアレの二倍はありましたから」
「ダイエットできたんは良かったかもなあ……」
今回は、現状の確認と、本人確認のためにクイントも来てもらったのだが、あまりの見た目の変貌ぶりに、かなり戸惑っていた。決してヨリを戻そうと、心が揺れているわけではないらしい。
寧ろ、この場所での生活効果に感心しているようだ。
「これだけ効果があるとは……」
「いや……ダイエットのための施設やないで……」
違う意味の施設だと思えてならないようだ。
「ゲームやと、うちもここに来ることになったんかと思うと……感慨深いもんやなあ……」
舞台を退場した悪役令嬢がやって来る場所。それがこの修道院。まさに、その後を送ることになる場所だった。
「ということで悠ちゃん!」
「うっ、はい!」
「教皇さんの許可は取った。うちらで、ここを作り直すで!」
「了解!」
「外の見張りは、ヒーちゃんがやってくれるけど、日が暮れるまでに警備装置と警備体制を練り直すわ」
完全な犯罪者は居ないとはいえ、家から追放された者たちが入れられているのだ。逃すわけにはいかない。とはいえ、逃げる元気も現状ないだろう。
「なら、私はプリエラ師匠を筆頭に、シュラ先輩やセラビーシェル先輩と掃除しながら、動ける人たちに指導開始だねっ」
「頼んだで」
「任せてよ!」
悠はやる気満々だ。監査のようなものは入って環境改善はされてきているが、とっても汚い。先ずは掃除だと、悠は腕まくりする。
「それじゃあ、フリヴィアさんとその息子さんも、もう連れて行っていい?」
クイントの元妻と息子だ。悠は、ゲームでクイントのその妻の名前を知っていた。本人確認はもういいかと、クイントへ目を向けると、はっきりと頷かれた。
「どうぞ。きちんと指導をお願いします」
「任せてくださいよ。母子だけで生きていける自活力を付けてみせますからっ」
「頼もしいですね。さすがは、リンの選んだ人です」
「っ、リンちゃんへの信頼が高いんだね……」
「当然です。リンがアレは男だと言ったなら、私は迷わず男だと断言しますよ」
「……元妻が男なわけあるかい……」
どんな信頼だ。
「悠ちゃん、ええから、連れてってや」
「は~い」
クイントの元妻フリヴィアは、クイントに何か期待していたようだったが、リンディエールとのやり取りを見て、目を丸くした。恐らく、クイントの印象が彼女の中のものと一致しなかったのだろう。何が起きたのか理解できないという顔のまま、悠に引きずられて行った。
多分、何度思い出してもリンディエールとクイントの関係は理解できないことだろう。強く生きて欲しい。
「ほな、立て直し開始やな」
ここを正しい、あるべき状態に立て直す。そして、メイドブートキャンプの会場を作るのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一週空きます。
よろしくお願いします!
その一つが、各国にあった特別な『修道院』。それは、監獄とは別に、問題を起こした女性やその子ども達が入れられる場所だ。
劣悪な環境と厳しい戒律。本来ならば、更生を促すべき場所だが、中は神官やシスター達のストレス発散の場だったらしい。目つきが気に入らないからと言っては、鞭を打ち、掃除や料理が出来ていないと言って、寒い地下の小部屋に閉じ込める。
確実な罪ある者なら、これも仕方がない。だが、その中には冤罪をかけられた者も多かった。調べが終わるまで、留め置かれる者もいたのだ。
これらの現状を知ったのは、第二王妃など退場した者たちを調べようと、リンディエールが王宮へ向かった数日後に発覚した。
そこには、元第二王妃とクイントの元妻も入っていたのだ。
「元第二王妃さんなんて、最早別人やんか……それでもお腹の子は無事みたいやな」
「……あ、ああ……」
今日は、ブラムレース王と宰相のクイントも連れて、修道院に確認に来た。そこで、明らかに弱っている元第二王妃を確認した。ブラムレースが近くに来ても、喋る気力もないらしい。
現状をリンディエールが確認して、教皇ソルマルトへ報告してから、すぐに妊娠している第二王妃は保護されていた。例え罪人の子であっても、お腹の子に罪はないという教えだけは、何とか守れたようだ。
同じように、クイントの元妻とその息子が居ることが分かった。
「で? 宰相さん。あの人が元妻と子どもか?」
「……そのようです……多分」
「そんな曖昧な……」
「私の知っている原形を留めていません。顔付きもそうですが、最後に見た時は、二人ともアレの二倍はありましたから」
「ダイエットできたんは良かったかもなあ……」
今回は、現状の確認と、本人確認のためにクイントも来てもらったのだが、あまりの見た目の変貌ぶりに、かなり戸惑っていた。決してヨリを戻そうと、心が揺れているわけではないらしい。
寧ろ、この場所での生活効果に感心しているようだ。
「これだけ効果があるとは……」
「いや……ダイエットのための施設やないで……」
違う意味の施設だと思えてならないようだ。
「ゲームやと、うちもここに来ることになったんかと思うと……感慨深いもんやなあ……」
舞台を退場した悪役令嬢がやって来る場所。それがこの修道院。まさに、その後を送ることになる場所だった。
「ということで悠ちゃん!」
「うっ、はい!」
「教皇さんの許可は取った。うちらで、ここを作り直すで!」
「了解!」
「外の見張りは、ヒーちゃんがやってくれるけど、日が暮れるまでに警備装置と警備体制を練り直すわ」
完全な犯罪者は居ないとはいえ、家から追放された者たちが入れられているのだ。逃すわけにはいかない。とはいえ、逃げる元気も現状ないだろう。
「なら、私はプリエラ師匠を筆頭に、シュラ先輩やセラビーシェル先輩と掃除しながら、動ける人たちに指導開始だねっ」
「頼んだで」
「任せてよ!」
悠はやる気満々だ。監査のようなものは入って環境改善はされてきているが、とっても汚い。先ずは掃除だと、悠は腕まくりする。
「それじゃあ、フリヴィアさんとその息子さんも、もう連れて行っていい?」
クイントの元妻と息子だ。悠は、ゲームでクイントのその妻の名前を知っていた。本人確認はもういいかと、クイントへ目を向けると、はっきりと頷かれた。
「どうぞ。きちんと指導をお願いします」
「任せてくださいよ。母子だけで生きていける自活力を付けてみせますからっ」
「頼もしいですね。さすがは、リンの選んだ人です」
「っ、リンちゃんへの信頼が高いんだね……」
「当然です。リンがアレは男だと言ったなら、私は迷わず男だと断言しますよ」
「……元妻が男なわけあるかい……」
どんな信頼だ。
「悠ちゃん、ええから、連れてってや」
「は~い」
クイントの元妻フリヴィアは、クイントに何か期待していたようだったが、リンディエールとのやり取りを見て、目を丸くした。恐らく、クイントの印象が彼女の中のものと一致しなかったのだろう。何が起きたのか理解できないという顔のまま、悠に引きずられて行った。
多分、何度思い出してもリンディエールとクイントの関係は理解できないことだろう。強く生きて欲しい。
「ほな、立て直し開始やな」
ここを正しい、あるべき状態に立て直す。そして、メイドブートキャンプの会場を作るのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一週空きます。
よろしくお願いします!
332
あなたにおすすめの小説
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
あなたが後悔しても、私の愛はもう戻りません
藤原遊
恋愛
婚約者のアルベルトは、優しい人だった。
ただ――いつも、私より優先する存在がいただけで。
「君は分かってくれると思っていた」
その一言で、リーシェは気づいてしまう。
私は、最初から選ばれていなかったのだと。
これは、奪われた恋を取り戻す物語ではない。
後悔する彼と、もう戻らないと決めた私、
そして“私を選ぶ人”に出会うまでの、静かな恋の終わりと始まりの物語。
もうすぐ帰って来る勇者様と私の結婚式が3日後ですが、プロポーズされていないといくら言っても誰も信じてくれません
まつめ
恋愛
3日後に村をあげての盛大な結婚式がある。それはもうすぐやって来る勇者様と自分の結婚式。けれど勇者様は王都の聖女様と結婚すると決まっている。私は聖女様の代わりに癒し手として勇者様を治療してきた、だから見事魔王を打ち破って帰って来た時、村人達は私が本物の聖女だと勘違い。私がいくら否定しても誰も聞いてはくれない。王様との謁見を終えてもうすぐ勇者様が村に帰って来る。私は一度も好きだと言われてないし、ましてや結婚しようとプロポーズも受けていない。村人達はお祭り騒ぎで結婚式の準備は加速していく。どうしようと困っているのに、心の奥底で「もしかしたら……」と大好きな勇者様が自分を選んでくれる未来を淡く期待して流されてしまう私なのだった。どうしよう……でもひょっとして私と結婚してくれる?
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
追放された地味令嬢、実は王国唯一の“魔力翻訳者”でした 〜役立たずと言われましたが、もう契約は終了です〜
あめとおと
恋愛
王太子から「魔法が何も起こらない役立たず」と断罪され、婚約破棄された伯爵令嬢リリア。
追放された彼女の能力は――
魔法の“意味”を読み解き、術式そのものを理解する力《魔力翻訳》。
辺境の魔導研究所でその才能を見出された彼女は、
三百年解読不能だった古代魔法を次々と再生させていく。
一方、彼女を失った王都では魔法事故が連鎖。
国家結界すら崩壊寸前に――。
「戻ってきてほしい」
そう告げられても、もう遅い。
私を必要としてくれる場所は、
すでに別にあるのだから。
これは、役立たずと呼ばれた令嬢が
本当の居場所と理解者を見つける物語。
【短編】『待つ女』をやめたら、『追われる女』になりました
あまぞらりゅう
恋愛
婚約者の王太子を、いつも待ち続けてきたシャルロッテ侯爵令嬢。
だがある日、彼女は知ってしまう。彼には本命の恋人がいて、自分のことを都合よく放置していただけなのだと。
彼女が待つのをやめた瞬間、追ってきたのは隣国の皇太子だった。
※覚えやすさや分かりやすさを重視しているので、登場人物の名前は「キャラクター名+身分表記」にしています
★小説家になろう2026/1/29日間総合8位異世界恋愛7位
★他サイト様にも投稿しています!
「その気になれない」と婚約破棄したあなたの、話を聞く必要がありますか?
さんけい
恋愛
国境を守るために結ばれた婚約を、侯爵家の令息は「その気になれない」という身勝手な理由で壊した。しかも婿入りする立場でありながら、愛人を認めろとまで言い出して――。
侮られ、傷つきながらも、伯爵家の跡取り娘エーディアは立ち止まらない。父とともに次の手を打ち、地に足のついた堅実な男ユリウスと出会い、領地と未来を少しずつ立て直していく。
一方、婚約を軽んじた元婚約者は、家にも王都にも見限られ、じわじわと立場を失っていく。
これは、誰かに苦しみを背負わせようとした男が自滅し、自分の足で立つ女が静かに幸福をつかむ、国境領ざまあ婚約破棄譚。
全44話。予約投稿済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる