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ミッション12 舞台と遠征
485 誰が城を出たと?
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隠密ウサギは得意げに返す。
《平和的利用は大歓迎だと、以前仰っていませんでしたか?》
「あ、言った……かも」
《それかと。とても微笑ましく思っておりました》
「応援してんだ?」
そんな考えもするようになったのかと、少し驚きながら問いかける。
《よく考えてみてください。あのレヴィリアさんの乱暴な所や行き過ぎてしまう所を微笑みながら受け入れる御仁が、この国に居るでしょうかっ! 未婚の男性で! 神官は含めませんよ?》
「……随分と器が大きくないと無理だろうな……」
《それだけ余裕も作れる御仁ということで、彼のことは高く評価しています》
「ん?」
そこで気づく。単に隠密ウサギ達が恋のキューピット役を請け負うはずがない。
「もしかして、こいつがお前らの見立てだと……」
《はい。次の王に》
「そういうことか……」
フィルズは、ガーネルの王侯貴族が腐っていると知ってすぐに、次に王として立てる人物がいないか探すように指示を出していた。
《レヴィリアさんも、甘い所など教育されましたし、予定通りにあちらで落ち着くのも良いのではないかと》
「ああ……お前らの中でレヴィを鍛えたりもしたんだったか」
《中々に見どころもあります。物理の力もそうですが、人のたらし込み方も分かってきたようですので》
「そんなのどこで……」
《……見本になる方々が沢山おられますし》
「ああっ、じいちゃんとかかっ。なるほどな~」
《……》
一番はフィルズだというのを、隠密ウサギはあえて口にしはしなかった。
「よし。ならその方向で予定しておくか。因みに、今の王族はどうなってる?」
《昨晩、いよいよ城を出ました》
ここでようやく、レヴィリアとエイルエインは二人の世界から抜け出してきた。聞こえたようだ。レヴィリアが確認する。
「誰が城を出たと?」
《王族です。領民達が領城を攻め落としているので、城に居るのは危ないと思ったのでしょう。民達に悪いことをしていたという自覚があったようです》
「ふはっ。確かに、攻められるって確信があるから逃げるんだよなあっ。あははっ」
「っ、王族が、城から逃げ出すなんて……」
エイルエインは信じられない様子で口元を手で覆う。そこまで無責任になるとは思わなかったようだ。
因みに、エイルエインはここまで来るまでにこの隠密ウサギの存在は知っている。その情報収集能力も分かっていたため、驚くことはない。
「で? そいつらも教会に?」
《はい。問題ないでしょう。監視もこちらでつけておりますし、あちらの神殿長が『城から逃げ出したらきっちり額に土を付けて、顔上げられなくなるくらい反省させておく』と言っていましたので。保護という体でしっかり捕まえてくれるはずです》
「その神殿長すげえな」
《おっかさんなんで》
「ん? 女性なのか?」
《はい。見た目もすごいです》
「……会いたい気持ちが揺らいだわ……」
なんか恐ろしいものを見そうだと、フィルズは見たいという好奇心が萎んでいくのを感じていた。
「まあ、ならそっちの心配はしなくていいな。調査も進んでるようだし、手の空いたやつから、あいつらの移動の護衛と補佐を頼む」
《分かりました。監視対象者は着々と教会預かりになっているので問題ないです》
領主達の監視についていたウサギやクロコは仕事がなくなってきているので、そちらを回す。
「じゃあ、頼んだ。偽装用の馬車で移動は頼む」
《はい。すぐに手配します。完了。明日の朝にはこちらに用意できます。では》
「おう」
ここの者達がガーネルに帰郷するための移動手段の手配も終わった。
「あのっ。私も同乗させていただけませんでしょうか」
「エインっ、体はっ」
「大丈夫。不調だったのが嘘のように調子が良くなっているのがわかるんだ」
「でも……」
レヴィリアが心配そうにエイルエインを見つめる。
そんな二人見て、フィルズは提案する。
「レヴィも心配ならついて行くと良い。護衛はいた方が良いだろう。で、二人とも別人に装って行ったらどうだ」
「っ、変装ということですわね?」
「そう。その方が動き易いだろ」
「そうねっ。エインも任せて! でも……あちらの状態と合った平民仕様となると……」
難しいことに気付く。この国での平民に装うことはできても、荒廃した国の平民のようには出来ないかもしれないと思ったのだ。実際にどうなっているかも分からない。
「あ~……それがあるな。行商人としてだと、あの組織の奴らに勘付かれるかもしれんし……」
そう考えていれば、先ほど出て行った隠密ウサギが戻ってきた。それも、人を案内してきたようだ。
《こちらです》
「へえ~。あっ! もしかして、君がファリマスとリーリルの孫!?」
「んん?」
やってきたのは、三人の明らかに流民と分かる容姿の者達だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
お暇がありましたら別作品もどうぞ◎
《平和的利用は大歓迎だと、以前仰っていませんでしたか?》
「あ、言った……かも」
《それかと。とても微笑ましく思っておりました》
「応援してんだ?」
そんな考えもするようになったのかと、少し驚きながら問いかける。
《よく考えてみてください。あのレヴィリアさんの乱暴な所や行き過ぎてしまう所を微笑みながら受け入れる御仁が、この国に居るでしょうかっ! 未婚の男性で! 神官は含めませんよ?》
「……随分と器が大きくないと無理だろうな……」
《それだけ余裕も作れる御仁ということで、彼のことは高く評価しています》
「ん?」
そこで気づく。単に隠密ウサギ達が恋のキューピット役を請け負うはずがない。
「もしかして、こいつがお前らの見立てだと……」
《はい。次の王に》
「そういうことか……」
フィルズは、ガーネルの王侯貴族が腐っていると知ってすぐに、次に王として立てる人物がいないか探すように指示を出していた。
《レヴィリアさんも、甘い所など教育されましたし、予定通りにあちらで落ち着くのも良いのではないかと》
「ああ……お前らの中でレヴィを鍛えたりもしたんだったか」
《中々に見どころもあります。物理の力もそうですが、人のたらし込み方も分かってきたようですので》
「そんなのどこで……」
《……見本になる方々が沢山おられますし》
「ああっ、じいちゃんとかかっ。なるほどな~」
《……》
一番はフィルズだというのを、隠密ウサギはあえて口にしはしなかった。
「よし。ならその方向で予定しておくか。因みに、今の王族はどうなってる?」
《昨晩、いよいよ城を出ました》
ここでようやく、レヴィリアとエイルエインは二人の世界から抜け出してきた。聞こえたようだ。レヴィリアが確認する。
「誰が城を出たと?」
《王族です。領民達が領城を攻め落としているので、城に居るのは危ないと思ったのでしょう。民達に悪いことをしていたという自覚があったようです》
「ふはっ。確かに、攻められるって確信があるから逃げるんだよなあっ。あははっ」
「っ、王族が、城から逃げ出すなんて……」
エイルエインは信じられない様子で口元を手で覆う。そこまで無責任になるとは思わなかったようだ。
因みに、エイルエインはここまで来るまでにこの隠密ウサギの存在は知っている。その情報収集能力も分かっていたため、驚くことはない。
「で? そいつらも教会に?」
《はい。問題ないでしょう。監視もこちらでつけておりますし、あちらの神殿長が『城から逃げ出したらきっちり額に土を付けて、顔上げられなくなるくらい反省させておく』と言っていましたので。保護という体でしっかり捕まえてくれるはずです》
「その神殿長すげえな」
《おっかさんなんで》
「ん? 女性なのか?」
《はい。見た目もすごいです》
「……会いたい気持ちが揺らいだわ……」
なんか恐ろしいものを見そうだと、フィルズは見たいという好奇心が萎んでいくのを感じていた。
「まあ、ならそっちの心配はしなくていいな。調査も進んでるようだし、手の空いたやつから、あいつらの移動の護衛と補佐を頼む」
《分かりました。監視対象者は着々と教会預かりになっているので問題ないです》
領主達の監視についていたウサギやクロコは仕事がなくなってきているので、そちらを回す。
「じゃあ、頼んだ。偽装用の馬車で移動は頼む」
《はい。すぐに手配します。完了。明日の朝にはこちらに用意できます。では》
「おう」
ここの者達がガーネルに帰郷するための移動手段の手配も終わった。
「あのっ。私も同乗させていただけませんでしょうか」
「エインっ、体はっ」
「大丈夫。不調だったのが嘘のように調子が良くなっているのがわかるんだ」
「でも……」
レヴィリアが心配そうにエイルエインを見つめる。
そんな二人見て、フィルズは提案する。
「レヴィも心配ならついて行くと良い。護衛はいた方が良いだろう。で、二人とも別人に装って行ったらどうだ」
「っ、変装ということですわね?」
「そう。その方が動き易いだろ」
「そうねっ。エインも任せて! でも……あちらの状態と合った平民仕様となると……」
難しいことに気付く。この国での平民に装うことはできても、荒廃した国の平民のようには出来ないかもしれないと思ったのだ。実際にどうなっているかも分からない。
「あ~……それがあるな。行商人としてだと、あの組織の奴らに勘付かれるかもしれんし……」
そう考えていれば、先ほど出て行った隠密ウサギが戻ってきた。それも、人を案内してきたようだ。
《こちらです》
「へえ~。あっ! もしかして、君がファリマスとリーリルの孫!?」
「んん?」
やってきたのは、三人の明らかに流民と分かる容姿の者達だった。
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