趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

486 そっくりだ!

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流民特有の藍色の髪と瞳。一人の男はファリマス達よりも年上に見える。残り二人の男女は同じくらいだろうか。

声をかけてきたのは年上の男。

「なんとっ。ファリマスの子どもの頃にそっくりだ!」

これに二人の男女も同意した。

「瞳の色が同じだったら、本当にそっくりだよ!」
「ちょっと気の強そうな目とかね! あら? 女の子じゃないのね? リーリルの孫だし変装かと思ったんだけど……男の子?」
「……男です」

ここでリーリルの孫であることが仇となるとは思わなかったフィルズだ。確かにリーリルの身内と聞けば、性別などわからなくなる。

「よろしければ、こちらでお茶でも」
「「「ありがとう」」」

部屋を移動し、そこでお茶を淹れる。落ち着いた所で気を取り直して、フィルズは流れるような仕草で礼をする。それは、貴族の子息らしいものだ。

「ファリマスとリーリルの孫のフィルズです。セイスフィア商会の商会長をしております。父はこの国の宰相で公爵です」
「っ、おおっ、なんとも優美な……わしは、ファリマスの叔父に当たる。ラクリだ。この二人はリーリルの従兄弟になる」
「俺はカクリール。こっちがマーランだ」
「よろしくねっ」
「……よろしくお願いします」

フィルズが少し不可解そうに眉を寄せたのをラクリは気付いた。

「これらと一緒に行動しているのが不思議かね」
「え、ああ。はい……」
「流民は血が濃くならぬようにきちんと血筋は管理しておるが、共に行動するのには特に気にせんのだ。流民の血族は全て家族。という認識だな」
「なるほど……」

結婚だけは気を付けるが、全員家族ということらしい。

「ふふふっ。まあ、恋心なんて思うようにはできないんだけど、たいていは、近い血筋が相手だと『あ~、これは憧れだわ』ってある時気付くの。結婚したいと思うのは、ちゃんと血筋が遠い人たちに自然となるみたいでね」
「納得できなくても、一緒にいる事はできるから、別に不満に思うこともないしな」
「そうなんですね……」

フィルズは、ここで流民についてよく知らないことに気付いた。

「私たちがクリじいと居るのは、護衛みたいな感じかな」
「そうでしたか」
「あ、多分、思ってるのと逆だよ。俺たちがクリじいに護衛されてんの」
「……ん?」

それは確かに思ったのとは逆だった。

「それなりには戦えるけど、クリじいには敵わないからね。俺たちは、逃し屋なんだ」
「逃し屋?」

楽しそうに話すカクリール。因みにラクリはお茶をじっくりと味わい、お茶請けとして出した焼き菓子を食べるのに夢中だ。

「気に入らない政略結婚の相手から逃すとか、国を追われた王族を逃すとかね」
「もちろん、ちゃんと背後関係とかは調べるわよ? 理不尽な状況からしか手を貸さないことにしてるの」

味方の居ない苦しい状況で、理不尽に追い詰められようとしている者達にしか、手を伸ばさないらしい。だが、手を貸したならば、確実に逃すという。

「で、逆に密かに問題のある国に戻ろうとする者とかを護衛して助けるのがクリじいの得意とするところだったの。戻ったら殺されるかもしれないって人も、無事に在るべき場所に送り届けるのよ」
「わしは、命をかける程の熱意と信念を持った者にしか手を貸さん。国を変えようとするには、それだけの覚悟がいる。絶望的な状況であっても、先を見据えて心血をそそげるか……それを見極めておるだけだ」

甘い考えの者は助けない。足掻いて足掻いて、どうにもならなくても歯を食いしばって進もうとする者にだけラクリの目は向けられる。そこから見極めが始まるのだ。

「クリじいの力は、あっさり勝敗をひっくり返しちゃうからね~」
「戦をやめさせようとした第三勢力に力を貸した時なんて、半日で全員戦闘不能にして、調印まで済ませたんだよ」
「まあ、そういう国が関わる人に手を貸すのは稀だけどね」
「いつもは、商人とか、冒険者とかを相手にしてるよ」
「そうそう国になど関わっておれんよ」
「「だよね~」」

自分たちの力や影響力を理解しているからこそ、使い所には気を付けているようだ。

そこでフィルズは思い当たった。

「もしかして、ここに来たのは……」
「聞いたの! 私たちが力になれることがあるんでしょう?」
「腰を据える前に一仕事くらいしてもいいと思ってさっ」
「護衛は任せると良い。戦場の中であっても、送り届け、最後まで見届けよう」
「……頼んでも?」
「「もちろん!」」
「うむ」

これならばレヴィリアとエイルエインを安全に国の中心まで連れて行けそうだ。






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読んでくださりありがとうございます◎

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