趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

文字の大きさ
209 / 251
ミッション12 舞台と遠征

487 無理はするなよ

しおりを挟む
打ち合わせをするためにもと、ラクリとカクリール、マーランはこのままフィビー農園に滞在することになった。

三人が王都や公爵領都のセイスフィア商会ではなく、ここに来たのは、神から何か言われたからだろうと言うのは想像できた。その予想は外れていない。必要な場所に必要な人材を派遣してくれたようだ。

「あの国の一般的な服装は……こんな感じね。もう少し大きめにしようかしら」

マーランは服飾を担当。汚れなども色を付けたりほつれを作ったりと近付いても違和感がないだろう。村人達が持っていた服を手早く改造、変えていった。

「顔はこうして……仕草はこんな感じにするんだ。自分でもできるように、これはやってみると良い」

カクリールはレヴィリア達に化粧を施し、まるで別人のように見せている。自分たちでも出来るようにと指導もしていた。

「これが今回の二人の設定だ。自分がどんな人物なのか読み込んでおくように」

ラクリは装うことになる人物の経歴や背景の設定などを紙に書き、それを教え込んでいる。喋り方から指導が入っていた。

こんな彼らを見て、フィルズは呆然とした。出来るだろうと思った理想とする技術を持った人たちが揃っていたのだ。

「……できる……衣装に、メイク……脚本家……揃ってる……っ、最高の舞台を、劇場を用意しねえと……」

王都に建設中の劇場の完成が急がれる。

「協力してくれるように何か……じいちゃんとばあちゃんに、何が好きかとか聞いておいて……」

引き留められるだけの彼らへのメリットを用意しておかなくてはならないと、フィルズは考え込むことになる。

そして、彼らが到着してから二日後。レヴィリア達の旅立つ準備が整った。

村人全員が農園の入り口に集まっていた。

「頼んだわよ」
「私達は、研究を続けるわ。この薬で、無毒化できるはずだけど……」
「気になる土があったら送ってくれ」

この農園の三分の二の村人達が、ガーネルに向かう。残る三分の一の者達は、引き続きここで土や作物の研究を続けることになる。

「いいのか? 帰りたいんじゃないのか?」

残る者達に問いかければ、晴れやかな顔で答えた。

「ここで生き甲斐を見つけてしまいましたので!」
「知識をこの場だけで終わらせないようにするのが、私たちの使命だと思っていますから」

ガーネルだけではなく、他の国の助けにもなるようにする。それを目指すのだと彼らは心に決めているようだ。

「では、行ってきます」

先ず、レヴィリアとエイルエインがラクリを護衛にして出発する。

ファスター王には、きちんと報告が行っている。直接レヴィリアが話し、公爵領にいる先王ファイラルークも納得していた。

「クロコも隠密ウサギも多く配置してる。何かあれば助けてもらえ。無理はするなよ」
「っ……分かったわ」

少し納得していない声音に気付き、フィルズは忠告しておく。

「力の過信は、同行者を危険に晒すことになるぞ」
「っ、そ、そうねっ。そうよねっ。気を付けるわ」

レヴィリアが活躍出来るだろうことは分かっている。ファリマスが鍛えたのだ。いつの間にか武神カザンの加護ももらっていた。護衛としても頼りになる。しかし、だからといって、勝手に無双してもらっても困るのだ。これくらいの注意は必要だった。

「じゃあ、先に行くわね。あなた達も気を付けて。あちらで会いましょう」
「「「はい!」」」
「レヴィさんも気を付けて!」
「国をっ、お願いします!」
「ええ。必ず」

姿や服装は乏しい感じが出ており、その辺にも居そうだが、レヴィリアのその表情や自信に満ちた瞳や雰囲気は、故国を救おうとする英雄か王族にしか見えなかった。






***********
読んでくださりありがとうございます◎
◉第8巻 出荷しました!
 数日中に書店に並びます!
 よろしくお願いします◎
 SSが付く書店さんが増えているかもしれません。
 そちらも見てみてください◎
しおりを挟む
感想 2,741

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!

山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。