趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

484 心当たりは?

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彼らには、ここまでの経験を忘れるんじゃないと何度も伝えてきた。だから、今の苦しい状況にある者達の思いもわかるはずだ。

「まあ、そう言うことになるから、貴族の目がない内に、お前ら国の各地を見てこい。それぞれの土地に必要な対処法を考えてくるんだ。その間、ガーネルとの国境付近の土地を開拓する」
「え……」

ここでフィルズはニヤリと笑って見せる。

「越境行為だって言われるのは困るから、俺は手を出せねえけど、お前らはまだガーネルの住民だ。村から逃げ出して、良い土地を探していたって言えば言い訳は通る。その言い訳が必要な貴族も今は反乱の方の対応で手一杯だ。気にされない。その間に、食料の確保をする」
「……ここの一部の野菜は、土さえなんとかできれば、ふた月で収獲できますね……」

魔力があるというのはやはり違うのか、品種改良したら、ひと月やふた月でもしっかりとした実が成るように出来てしまったのだ。

何より、ここの者達は恵みの女神、マルトや月や陽の双子神、トランとユランの加護を持っている。その影響も出ているようだ。

「うちの奴らに、先にその土地を耕せさせている」
「っ、それじゃあっ」
「ああ。行ってこい。使えそうな土地も探して、やっちまえ。幸い、ガーネルでは魔獣も弱ってる。今のお前達なら余裕で狩って肉にできるだろう」

野菜ばかり育てさせてはいない。罪の意識をしっかり感じていると判断したその時から、町や村がない土地での開拓も出来るようにと、狩りの仕方を仕込んであった。冒険者としてならば一人前として認められるくらいの実力は余裕である。

レヴィリアとも狩りをしたため、戦闘能力はかなり上だ。ただの村人とは言えない。

「書類は通しておく。後で、土地を取り上げられないように手続きだけはしておかないとな」
「っ、それならば、私にお任せください。食料問題をどうにかしてもらえるならば、何でもいたします」

エイルエインが名乗りを上げる。

「へえ。なら任せるか」
「はい! 書類も私が書けば問題なく通ります」
「そうだな。財務大臣補佐の名なら通るだろう。ただし……お前に毒を盛った奴を先に排除してからだ」
「あ……」

それを忘れていたらしい。唐突に希望が見えたため、興奮してすっかりそれが抜け落ちていたようだ。

「で? 心当たりは?」
「エイン?」
「……」

フィルズとレヴィリアの視線がエイルエインに向かう。

他の者達は、神殿長も加わってどの辺りから入り、向かう場所をどこにするのかを決めているようだ。何班かに分かれて話し合いも始まっていた。

シロットによって運ばれてきたガーネルの詳細な地図を囲み、指を差して積極的に誰もが意見を出しているようだ。団結力やこうした計画を立てる事などは、ここで磨いたものだ。

そんな様子を目の端に置いて、フィルズは俯いて考える様子のエイルエインに確認する。

「あの毒だけじゃなく、盛られたのは一度や二度じゃないな?」
「っ……はい……」
「そんなっ!」
「毒を盛られたって分かっていながら行動していたのを見るとな……今回のも、どうせなら慣らそうと思ったんだろ」
「はい……今後も避けられないのならばと……」
「使えるものは使う。機会を逃さないって考え方は好きだぜ?」
「フィルさんっ」

それを褒めるなと、レヴィリアが責めるような目を向けてくるが、フィルズは笑って応えるだけだった。

「まあ、そこは置いておいて、お前がここに来たのは、レヴィをあいつらが追って行ったってのをどこかで知って、この国に助けを求めるのを口実にして来たってところか?」
「っ……はい。父上や協力者達からの密命で……他の貴族も王族も当てにはできない。独断ででもやらなければ、国が消えます」

まともな貴族はごく僅か。それもほとんどが追いやられ、中央での実権を持ってはいない。持っていても下っ端ばかり。そんな者達が集まり、唯一自分たちの言葉が届き、地位も確立していたエイルエインに白羽の矢が立ったということらしい。

「毒を盛られて仕事中に倒れたことがあるので、休養を取るという理由も使えました……そこで、この国に、レヴィを頼って来たのです……ごめん、レヴィ……確かに君のことは心配だったんだけど……その……」

エイルエインは、神妙な様子でレヴィリアを見る。それをしっかりと受け止めたレヴィリアも真面目な顔で頷く。

「分かっているわ……私がやられる訳ないものっ」
「うん……レヴィなら返り討ちにしてるかなと……そっちの方が少し心配で……こちらの民が、この国に迷惑をかけたとなれば、交渉にも影響するから……」
「すぐにでも引き取るつもりで来たのね?」
「ああ……それなのに……君が慈悲深くも保護してくれているなんてっ」
「フィル君のお陰ですわ」
「本当に、君が言う通り、素晴らしい上司だね」
「そうでしょう?」

お互い分かっている感がすごい。フィルズは完全に蚊帳の外だ。最終的にフィルズが褒められ、自慢げにされているが、入って行けない雰囲気だった。

それにさすがのフィルズも察する。

「え~……これって、それか?」

これに応えたのは、隠密ウサギだった。

《あの二人、最初は同志という感じだったようですが、少し前から我々を通じて文通してましたよ》
「……え……」
《はっきり言えば恋文の交換してましたよ》
「お前ら……何してんの?」

ついついツッコんでしまった。





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読んでくださりありがとうございます◎


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