趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

483 強い自分好きだろ

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住民達が集まってきた。レヴィリアと車椅子に乗ったエインもやって来て話を聞くことになった。

先ずはガーネルの現状だ。クロコから仕入れた情報を伝える。それを聞いた住民達は衝撃を受けていた。

「それってもう……完全に国として終わってるんじゃ……」
「おっ、よく分かったなあ」

フィルズは同意見だと頷く住民達の様子に驚いた。

「その……俺らもレヴィリアさんに頼んで勉強しました。国とはどういうもので、貴族や王族がどんなことをしているのかを……」
「それを知りたいと、知ろうと思うのは良いことですねえ」

神殿長も感心していた。それに照れながら女性が口を開く。

「おかしいって思ったんです。だって、レヴィリアさんはワガママじゃないです。偉そうにもしません。お金の使い方だって普通です。優しいし、綺麗だしっ。だから、おかしいって……」
「ん~、レヴィは普通に王妹として振る舞う時は上から圧かけられるぞ? 男には特に厳しいし。騎士より強いし」
「っ、フィっ、フィルさんっ。それは黒歴史ですわっ!」
「いや。強い自分好きだろ」
「ぐっ」
「偉そうにする男、王妹だって立場で抑えつけるのも好きだろ」
「うぐっ、どうしてそれを……っ」
「親父が言ってた」
「リゼンっ!!」

レヴィリアも女の子だ。身内や見知らぬ者になら良いが、頼りにしている人や友人などには見せたくない姿というものがある。そんな中でフィルズは見せたくない、知られたくない筆頭だった。フィルズに教えたリゼンフィアは、きっと後日痛い目に合う。

「別に悪くないけどな」
「悪くないと思います」
「っ、エイン!?」

エインと呼ばれる男も、レヴィリアを微笑ましげに見て同意した。それにレヴィリアの方が動揺する。

そこで、エインと呼ばれた男がフィルズへと目を向けた。

「ご挨拶が遅れました。ガーネルで財務大臣補佐官をしておりました、エイルエイン・フラナードと申します」
「フラナードって言えば、あっちの侯爵家だな。それも年齢から行くと……元ガーウィン公爵家の三男だな?」
「っ、仰る通りです。侯爵家には幼い頃に養子に入りました。なぜ……」

知っているのかと目を瞠るエイルエイン。フィルズは気まずそうに伝えた。

「王族がダメダメそうだったから、次に王位を継げそうな血筋を洗ったんだよ。隣国が崩壊するってのは、この国にも影響が出る。だから誰を担ぎ出すのが一番立て直しやすいかを調べてたんだ」
「そこまでの情報を……一商会の会長が……」
「あ、レヴィに聞いたんだ? まあ、商会長としては、職員達を路頭に迷わせるわけにはいけないからな」
「……凄いのですね……その年で……」
「立場に年齢なんて関係ねえからな」
「っ……そう……ですよね。その立場にあるならば、いくつであっても責任を持つべきですよね……」

何かを考え込むエイルエイン。答えが出るまで、住民達の方への説明に戻る。

「貴族を襲ってはいるが、それで食べる物を確保できたとしても一時的だ。そして、あそこまで行ったら金は意味がない」
「どうしてですか?」
「買えるものがないんだ。使えないだろ?」
「あ……」
「国が機能していれば、他国から支援の物資をお願いしたり、買い付けができるかもしれん。だが、その国が機能してない」
「……他国との取引ができない以上、国内にあるものでどうにかしないといけないけど……なにもない?」
「そういうことだ」

本当に勉強もしたようだ。ただ目の前の畑を耕して、言われた通りに税を納め、なんとなく生活していた頃とは違う。

なぜかが分かれば、誰を糾弾すべきか分かったはずだ。もう、国がアイツが悪いと言えば、そうなのかと思い込んで手を上げていた昔の彼らではない。

「でだ。お前達、どうしたい?」
「「「「「え……」」」」」
「お前達が望む、土地の再建をするには良いタイミングだ。劇的な変化も見せられる。それに、邪魔をする貴族は夜逃げして居ない」
「あ……」

貴族の横やりなく進められる。

「けど、なんで、誰が悪いかも知らず、理解できない者達があの国には沢山いる。その分からずや達に理解させながら事に当たるのは、大変かもしれん」
「理解させる……?」
「お前ら、昔の自分達だったらどうだ? この土地はもうダメだから、土から作り直す必要があるって説明して、理解するか? 半年から一年は作物なんて出来ない。その間の支援をしながらだが、それに素直に感謝すると思うか?」
「……俺なら、助けるのは当たり前で、やれるならやってみろって手伝うこともせずに食べ物だけ寄越せって言うかも……」
「「「……うん……」」」

飢えと、貴族たちへの嫉妬で自暴自棄になっていた頃の事は忘れていない。忘れるなとフィルズや神殿長に言われたからだ。

食べられない不安は心を荒ませるのだと彼らは知っている。







*********
読んでくださりありがとうございます◎
本作第8巻が刊行予定です!
またよろしくお願いします!



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