趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション13

536 刺さってないわよ?

今や人気商品の一つとなった足ツボマット。痛いけど癖になるという不思議な魅力に取り憑かれた者は多い。

「アレ、健康な人が踏むと、あまり痛く感じないんですって」
「へえ。けど、ちょい痛いのが気持ちいいよな~。なんかアレの上歩いた後、スッキリする」
「わかる。なんか足動かしやすくなるんだよなっ」
「足裏だけ、マッサージ店行った後みたいになる!」
「そうそうっ!」

新たな店として、整体、マッサージ店が、リュブランが担当するカルトナ支店オープンに合わせて、王都支店、辺境伯支店の三つの支店に入った。これにより、自分たちで体を解せるグッズが爆売れしている。薬局で細々と売り始めていた足ツボマットも、マッサージ店オープンに伴い、そちらに商品を移動した。

「足ツボマット、薬局に置いていた時より、マッサージ店のに置いてからの方が明らかに売れてるよね」
「会長が言ってたじゃない。商品には、売れる場所ってのがあるんだって。それを従業員である私たちが見つけて、相応しい場所に置けるようにするのが大事な仕事だって!」
「分かる……本当に、少し場所変えただけで売れるのあるものね……販売って奥が深いわ……」
「楽しいわよねっ」

従業員達も日々商品について考えるため、より良い店にと日々進化しているのは、フィルズの自慢でもある。

因みに本店には健康ランドがあるので、新たにマッサージ店は置いていない。それでも、健康グッズの店は用意されており、こちらも大繁盛している。

そうした生きることに直結しない物に対してお金を使う余裕や欲が刺激されているようだ。国が潤ってきた証拠である。

そんな変化あるこの時だからこそ、負の遺産というか、過去を清算するいいタイミングだということだ。

王宮では今、足ツボマットの上にメルナが立たされようとしていた。

「さっさと乗りなさいよ」
「こっ、これは拷問よ!! ふざけないで!」

見た目は確かにゴツゴツした石の上を歩かされると言うものになる。カラフルに色付けはしていないので、モロにそれにしか見えないだろう。

薄い布の靴を脱ぐように言われるが、動こうとしない。騎士達が両側から拘束しながら、強制的に立たされたのだが、それまでで、フラメラに噛みついていく。

「ふざけてなんていないわよ。ちょっとした健康チェックをしてやろうって言うんじゃない。有り難がって試しなさいよ。ねえ。悪いけど、そいつの靴脱がせてくれる? 手は使わなくていいから。足でやって」
「「はい!」」
「ぶっ、無礼者!! 破廉恥なっ!」

女の靴を脱がせるなんてこと、本来ならば親しくもない者がやるのはよろしくない。それこそ破廉恥だと言われるものだ。しかし、メルナは罪人。場合によっては人として、女性としての権限を守ってやる必要はない。

騎士達は両側から足で靴を押さえ、メルナを引っ張り上げてあっさり靴を脱がせた。そして、両側から持ち上げながら足ツボマットの上に移動させる。

「いやっ! やめて!! 酷いことしないで!」
「これ、酷いこと? 刺さるものでもないし。あっ! アレね!? いやいやって言いながらも、やってほしいのね!? 痛いのがいいのね!?」
「え? え?」

周りも納得するように頷くため、メルナは騎士によって宙に浮いたまま、キョロキョロと他の貴族達を見る。何に同意されたのか、それが分からなかったらしい。けれど、自分の言ったことに同意されたのではないことだけは分かっていた。

「騎士さん。そこに正座させてしまって? そのままいけるでしょう?」
「「はい!」」
「いやっ! なにするの!?」

宙に浮いたメルナは、足が着かないように曲げていくため、自然と正座することになる。

「やめて!!」

必死に騎士達の腕にぶら下がるメルナ。周りの貴族達はもう笑っていた。いじめにも見える様子だが、罪人相手にしては優しい対応だ。ただの罰ゲームだった。

一方、フラメラはリュブランに向かって手を出している。

「リュブラン。アレない? 重いやつ。持って鍛えるやつ。私のは鞄にあるんだけど。あなたも持ってるわよね?」
「ああ、ダンベルですね。どうぞ」
「……そんなのも入れてんの? え? メルさんも?」

フィルズは、なんでも出てくるリュブランの鞄に呆れていた。確かにマジックバッグはかなり容量の大きなものを渡しているが、中身が大変気になる。足ツボマットもだが、そうしたものは、部屋に置いておくべきものだろう。

どうやら、フラメラもいつも持っているマジックバッグに入っているらしい。

「時間があるときにやりたいじゃない。リュブラン、もう一つ。というか、重いわね……」
「母さんのと一緒ではないですよ。鍛え方が違いますからね? マグナのはもっと重いです」
「え? マグナくんの見せて」
「はい」
「マグナも入れてんの?」
「手が空いた時にやりたいので」
「……お前ら筋トレ好きだね……」

筋トレブームも密かに始まっているようだ。

「うわっ。重たっ。ちょっとコレは無理ね。ありがとう。ほら、痛いのがいいのでしょう? 下ろしていいわよ」
「「はい」」
「きゃぁぁぁぁっ!!」

騎士達によって下に下ろされた途端、すごい悲鳴が上がった。騎士達は立ち上がらないように肩を押さえ、さらにフラメラがとりあえず一つと、片方の足の上にダンベルを置いてやった。

「っ!! いやぁぁぁぁぁっ!!」
「煩いわねえ。刺さってないわよ? あとね? こうして座るよりも、立ってた方が良かったのよ? 足踏みすればちょっとは痛いのも避けられたのに。あなたがコレを選んだの」
「ううっ……っ、あっ、あっ、い、いやっ」
「何泣いてるのよ。ちょっと痛いだけでしょう? あなたが毒を盛ったあの子は、苦しいのから逃げることもできずに亡くなったわよ?」
「っ……ひっ……いっ」

涙や鼻水でぐちょぐちょになった顔で震えながら痛みと戦うメルナ。その目には、ようやく後悔するものが見えた。

しかし、フラメラはもう片方にダンベルを置いた。

「ううっ!!」
「ずっといい思いをしてきて、辛いと思うことも避けてきたあなたには、分からないでしょうね。耐えなくてはならなかった人の気持ちや、貶められても文句も言えなかった人の気持ちなんて……」
「ご、ごめん……っ、なさいっ……」
「……それを、もっと前に聞きたかったわ……それに、あなたを許すことができる人は、もうこの世にはいない……」
「っ!!」

それは、第二王妃のこと。そして、ここでフラメラが目を向けると、カリュエルとリサーナが歩み寄ってきた。





**********
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