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ミッション13
571 あっという間だぜ?
憂いのある表情で、会場を見つめるリューラ。
「……良かった……」
そんなリューラの呟きを拾ったのは、カーテンで仕切られた職員用の部屋から出て来たフィルズだった。
「気になってたのか?」
「っ、フィル……そうね……なあに? 意外って顔ね」
「うん。リューラって、切り捨てる時はスパッといきそうだし、ああいう奴らは、何言っても無駄だって、神罰の一つくらい当てそう」
彼らは、教会を毛嫌いしており、近づくこともなかった。忠告すらできなかったのだ。何より、彼らは自分たち以外の、誰の言葉も聞かなかった。
「ふふっ。賢者達を招いていた時代だったらやっていたかしら」
「え? あれか。若気の至りって言い訳できるやつ」
「あら。今の私が年だと?」
「冗談だよ。ってか今も昔も見た目は変わらねえじゃん」
「ふふふ。まあ、神ですもの」
リューラにいつもの笑みが戻った。
「そう言う意味……いや、いいよな~。年取らないの。衰えとか感じないってことだろ?」
「多分?」
「あ、分かんねえの? やっぱいいじゃん」
「まだ早いわよ」
「そうか? あっという間だぜ?」
「まあ……そうね」
寂しそうに微笑むリューラには気付かない振りをして、フィルズは話を戻す。
「そういえば、あいつら祝福受けてないんだって?」
「ええ。だから、私たちとの繋がりも薄いの」
「目にならんかったか。居場所も掴みにくいんだろ?」
「そうなのよ」
加護を沢山付けられ、強い祝福を受ける流民は、神々の目となる。もちろん、教会にも何度も足を運ぶ。各地の教会に、等しく目が届くのは、流民の存在も大きく関係していた。
しかし、問題の彼らは、そもそも教会に行かない。お陰で、居場所の特定もし辛かった。
「あの子達、家族で思想を引き継いでいくでしょう? それで、子どもに教会は……神は悪だと教え込むから、本当に一度も教会に来ていないのよ」
「親の教えだけになるのは、危険だよな」
「そうね……やはり視野が狭くなるわ。もちろん、親の方がとても広い視野を持って教育しているなら別だけど……その場合は、こんなことになっていないわね」
「だよな」
そもそも、親の方で視野が狭くなっているから問題だったのだ。
「定住しねえのにそれとか……寧ろすげえな。意志を曲げてねえってことだし」
「……そう考えると……そうね」
中々、一つの意志を通して生きるというのは難しい。それを何代も続けて来た彼らは、別のことだったなら称賛されても良いものだったかもしれない。
「家の伝統とかを守る貴族だったりしたら、相当堅実な人達って評価されたかもなあ」
「それもその伝統とやらによるけど……何代も続けて意志を守れるなんて、貴族でも最近はないわね。王家でいくつかあるけど、良いも悪いもあるし、固定観念が入るのはダメね」
「あ~……確かに」
その辺は難しそうだ。
「で? この始末の仕方は納得?」
「ええ。そうね。というか……これはあなただからこそ出来た解決の仕方ね。神官や聖女、聖者達に任せてやっても、こうはならないわ」
「そりゃあ、敵対してる人たちの言うことなんて聞かないだろうからな。場所は大事だぜ?」
「ふふっ。ねえ……フィルも奥の……見たのよね?」
「おう」
「……」
更にこの奥の部屋には、それぞれの賢者達の作り上げた物と本人の姿、そして、その時に神に向けた言葉が再生できるようにされている。
「五番目だろ?」
「っ、え」
「キラ達と関わった賢者」
「っ……ええ……」
リューラはフィルズの顔色を窺うようにして答える。気付いて欲しいことがある。そういう表情をしていた。それを見て、フィルズはふっと笑う。
「一個だけ……なんか昔から……多分前の生でも、誰かに言ったような言葉があってさ」
「っ……」
「『待つんじゃねえぞ』ってのと『今度は帰すんじゃねえぞ』っての」
「っ!!」
リューラが明らかに驚いたような顔をした。
「まあ……なんだ。その……あれだ。早く大人になるから待ってろよ」
照れながら顔を背け、部屋に戻ろうとするフィルズの耳に、軽やかなリューラの笑い声が届く。
「っ……ふふっ……ふふふっ」
少しだけ涙を滲ませて笑うリューラは、嬉しそうだった。
こうして、三日かけて賢者の子孫を騙っていた全ての者達に引導を渡した。
だが、まだ賢者の生まれ変わりだと言い張る者達が数名残っているのだ。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
「……良かった……」
そんなリューラの呟きを拾ったのは、カーテンで仕切られた職員用の部屋から出て来たフィルズだった。
「気になってたのか?」
「っ、フィル……そうね……なあに? 意外って顔ね」
「うん。リューラって、切り捨てる時はスパッといきそうだし、ああいう奴らは、何言っても無駄だって、神罰の一つくらい当てそう」
彼らは、教会を毛嫌いしており、近づくこともなかった。忠告すらできなかったのだ。何より、彼らは自分たち以外の、誰の言葉も聞かなかった。
「ふふっ。賢者達を招いていた時代だったらやっていたかしら」
「え? あれか。若気の至りって言い訳できるやつ」
「あら。今の私が年だと?」
「冗談だよ。ってか今も昔も見た目は変わらねえじゃん」
「ふふふ。まあ、神ですもの」
リューラにいつもの笑みが戻った。
「そう言う意味……いや、いいよな~。年取らないの。衰えとか感じないってことだろ?」
「多分?」
「あ、分かんねえの? やっぱいいじゃん」
「まだ早いわよ」
「そうか? あっという間だぜ?」
「まあ……そうね」
寂しそうに微笑むリューラには気付かない振りをして、フィルズは話を戻す。
「そういえば、あいつら祝福受けてないんだって?」
「ええ。だから、私たちとの繋がりも薄いの」
「目にならんかったか。居場所も掴みにくいんだろ?」
「そうなのよ」
加護を沢山付けられ、強い祝福を受ける流民は、神々の目となる。もちろん、教会にも何度も足を運ぶ。各地の教会に、等しく目が届くのは、流民の存在も大きく関係していた。
しかし、問題の彼らは、そもそも教会に行かない。お陰で、居場所の特定もし辛かった。
「あの子達、家族で思想を引き継いでいくでしょう? それで、子どもに教会は……神は悪だと教え込むから、本当に一度も教会に来ていないのよ」
「親の教えだけになるのは、危険だよな」
「そうね……やはり視野が狭くなるわ。もちろん、親の方がとても広い視野を持って教育しているなら別だけど……その場合は、こんなことになっていないわね」
「だよな」
そもそも、親の方で視野が狭くなっているから問題だったのだ。
「定住しねえのにそれとか……寧ろすげえな。意志を曲げてねえってことだし」
「……そう考えると……そうね」
中々、一つの意志を通して生きるというのは難しい。それを何代も続けて来た彼らは、別のことだったなら称賛されても良いものだったかもしれない。
「家の伝統とかを守る貴族だったりしたら、相当堅実な人達って評価されたかもなあ」
「それもその伝統とやらによるけど……何代も続けて意志を守れるなんて、貴族でも最近はないわね。王家でいくつかあるけど、良いも悪いもあるし、固定観念が入るのはダメね」
「あ~……確かに」
その辺は難しそうだ。
「で? この始末の仕方は納得?」
「ええ。そうね。というか……これはあなただからこそ出来た解決の仕方ね。神官や聖女、聖者達に任せてやっても、こうはならないわ」
「そりゃあ、敵対してる人たちの言うことなんて聞かないだろうからな。場所は大事だぜ?」
「ふふっ。ねえ……フィルも奥の……見たのよね?」
「おう」
「……」
更にこの奥の部屋には、それぞれの賢者達の作り上げた物と本人の姿、そして、その時に神に向けた言葉が再生できるようにされている。
「五番目だろ?」
「っ、え」
「キラ達と関わった賢者」
「っ……ええ……」
リューラはフィルズの顔色を窺うようにして答える。気付いて欲しいことがある。そういう表情をしていた。それを見て、フィルズはふっと笑う。
「一個だけ……なんか昔から……多分前の生でも、誰かに言ったような言葉があってさ」
「っ……」
「『待つんじゃねえぞ』ってのと『今度は帰すんじゃねえぞ』っての」
「っ!!」
リューラが明らかに驚いたような顔をした。
「まあ……なんだ。その……あれだ。早く大人になるから待ってろよ」
照れながら顔を背け、部屋に戻ろうとするフィルズの耳に、軽やかなリューラの笑い声が届く。
「っ……ふふっ……ふふふっ」
少しだけ涙を滲ませて笑うリューラは、嬉しそうだった。
こうして、三日かけて賢者の子孫を騙っていた全ての者達に引導を渡した。
だが、まだ賢者の生まれ変わりだと言い張る者達が数名残っているのだ。
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