趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

472 蓄光力?

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フィルズは、被害者達が少しでも納得できる落とし所を見つけることを優先した。そこで、どうせもう戻ってこられないのだから、言いたいことを全て言える場所を提供したというわけだ。それはまあ、正解であったと言えるだろう。

「ここでは、調書をまとめたりする事務官達が、ゆったり仕事出来るようにってのと、尋問待ちの奴らが自白するまでに、劣悪な環境で万が一にも死なないよう、清潔さと状態を複数人で見張れるようにと思ってさ~」
「ああ……そこで亡くなってしまった場合、見張りの者が責められますしね。その責任を分散することもできますね」
「そういうこと。目は多い方が良い。異変に気づきやすいからな。だからこそのガラス張りだ」

何人かの内、一人でも異常を感じれば状態を確認する。先ずないとはいえ、毒を持っていたり、仕込まれたりしては堪らない。

「ガラスは先ず割れないし、奥は一階の集中管理室からの遠隔操作でしかドアが開かないしな」

二重に扉があってそのどちらも集中管理室でそれぞれの場所を確認しながら、見張りや尋問官が一人にならないようにも考えている。

「相当数の目があるのですね。それで、常に捕まった者と職員の安全の確認をしながらやっていると」
「そう」
「逃げてもあの色の服では目立ちますしね」
「ヤバい色だよな! 黄色とオレンジと赤の縞様! それも発色いいやつ!」

蛍光色なのだ。それをちょっとオシャレに、横や縦ではなく、斜めに縞模様を作っている。そして、ツナギだ。脱いだらその下の下着は上下とも目が痛いほどの蛍光色の黄色だったりする。目立つからとツナギを脱いでも無駄ということ。裸は普通に捕まる案件だ。

「あのオレンジと黄色は蓄光の特殊染料使ってるから、暗いとこですげえ光るんだよ」
「……光る?」

下着も同じく。闇に潜むなんて出来ない。そして、一日中ずっと、夜寝る時も明るくしている部屋で過ごしている彼らは、これを知らない。脱走して夜にびっくりする仕様だ。

「夜に潜めねえのっ。マジお前何? ってくらい光るから。これも賢者のやつ。本気で、めちゃくちゃ光るんだよ。蓄光力? やべえの」
「ほお……」
「今度、これは塗料に混ぜて実験してみる。上手く行ったら見せるよ」
「分かりました。楽しみです」

普通にワクワクしていらっしゃる神殿長。新しい物好きだ。そして楽しい物がより良い。

「所で……彼らだけにしては、椅子やテーブルを置き過ぎでは?」
「見物? に来た事務官達が自分たちも目になるからって本当に良く来てたからな」

ここまでフィルズもテーブルや椅子を置く気はなかった。これは必要に迫られてというやっだ。

「中にはここに入れられてる奴らの様子を肴にメシを食いに来たり」
「お腹壊しません?」

とても消化に悪そうだと思える。だが、それが良いのだと喜んでいた。

「ここで奴らを眺めながら仕事したり」
「こうはならないようにという戒めじゃないですよね? 多分、いい気味だとかニヤつきながらやるんですよね?」

癒されるとはならないが、心が晴れるらしい。

「是非ともこれは共有したいって、若いのを連れて来たり」
「それも、気を付けようねというのではないでしょう? 珍しいものが見えるよと? 観光みたいな?」

こちらに入っているのが『何々しやがった奴です!』と後輩達に説明する者達は、生き生きしていたという。

「一応、出入りはきちんとチェックしてるし、個々に時間と名も控えるんだけど、ちょい来過ぎるくらいちょっと前まで人が来てたんだよ」
「立派な観光地ですね!」

動物園か水族館かと言うところ。作りはそれを参考にはしたが、そこまでの入りは想定しなかった。

「いやあ、マジで動物園的なものになっちまったわ」

そんなフィルズの呟きに反応したのは、綺羅きらだ。

《むっ! 動物園! 賢者が言っていたのを聞いたことがあるぞ! これがそうなのか!?》

一気に興奮していた。





**********
読んでくださりありがとうございます◎


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