女神なんてお断りですっ。

紫南

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連載

274 『青の血脈』

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2015. 11. 5
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シェリスは口を開く前、一瞬、ティアの表情を窺った。それにティアは小さく頷く。それを確認したシェリスは、今回の騒動を引き起こした者達の存在の名を明かした。

「彼らの名は『神の王国』。その大元は『青の血脈』と自らを称する者達です」

そう言った後、再びティアへと視線を向けるシェリス。どこまで話すべきなのか、珍しく迷っているようだ。

そんな様子を察したティアは、微笑みを浮かべ、今度ははっきりと頷いた。

今この場にいるのは、エルヴァスト、キルシュ、ルクスだ。キルシュは、今回の騒動の当事者の身内。いわば、侯爵家の代表としてここにいてもらっている。

そして、ルクスは、フィスタークへの報告の為に残ってもらった。伯爵であるフィスタークには、今回の騒動に関わる情報が、ここサルバから発信されたとして、今後、必要があれば、貴族達との繋ぎをとってもらう事になる。その為、ギルドが得た情報は報告しておく必要がある。

エルヴァストを残した理由は、この国の王子として、今回の問題を重く受け止め、国の為にも知ってもらわなくてはならない事だと、ティアが判断したからだ。

特にエルヴァストは、将来、皇太子である兄の補佐が出来るようにと、様々な文献や、国の歴史を勉強している。

ティアとシェリスは、それらでは知る事が出来なかった国外の歴史や、三百年より前の失われた史実もエルヴァストとベリアローズには教えていた。

これにより、ティアやシェリス、共に勉強したベリアローズを除けば、エルヴァストは実質、この国で本当の歴史を知る者と言えた。だからこそ、エルヴァストは今回の騒動について、自らも知らなくてはならないと気付いている。

「それは、古くからあった組織なのですね。確か『神の王国』は、女神サティアの生まれ変わりを擁すると言っていた者達ではないですか?」

エルヴァストは、数ヶ月前、このサルバの神殿で聞き知った事を思い出す。それをシェリス達に報告したのはエルヴァスト自身だ。

「ええ。ですが、彼らの言う女神サティアの存在は偽りです。これは、かつての彼女を知る私が断言できます」
「っ、マスターは、女神をご存知なのですかっ」

これには、静かに聞き役に徹していたルクスとキルシュも息をのんで驚く。

「良く知っています。私とカルと共にパーティを組んでいた冒険者の娘でしたからね」

シェリスはこの時、ティアに意識を向けるだけで、平然と事実を告げた。ティアがそうであるとは、さすがに話すべきではないと分かっているのだ。不審に思われる事はなかった。

「だからこそ分かります。彼らの元に、サティアはいません」

なぜ分かるのか、その理由など訊ねる気が起きない程、きっぱりと言い切ったシェリスに、エルヴァスト達はほっと胸を撫で下ろした。

「安心しました。女神サティアを相手にしなくてはならないかもしれないのかと思うと、良い気はしませんでしたから」
「そうですね。相手にするのはきっと、生きた心地がしないでしょう」

そんな事を空とぼけながら言うシェリスに、ティアは内心苦笑する。

偽りの女神を擁する彼らは、実際にこれから、女神であるティアを相手にする事になるのだから。

「生前の女神は、とてもお強かったと伝えられていますから。それで、彼らは何を目的とする組織なのですか?」

これが重要な事だ。今回の事を見ても、彼らは平然と国に手を出してきた。これで終わるとも思えない。ならば、王子であるエルヴァストは知らなくてはならないだろう。

エルヴァストだけではなく、今回の騒動で直接被害をこうむった侯爵の息子であるキルシュも、真剣にシェリスへと視線を向ける。

しかし、そんな中で、ルクスだけは、ティアの表情の変化を見逃すまいとしていた。

これに、シェリスが気付かない訳はない。だが、今回シェリスは、一瞬、目を鋭く細めただけに留め、話を続けた。それは、まるで何かを試そうとしているように見えた。

「この世界の人族にはかつて、始祖の一族と呼ばれる、神の血を引く一族が七家ありました。彼らは、神の力を宿す神具を持ち、それぞれが国を創ったのです」

神具は本来、正しい主人の元にあれば、その力を暴走させる事もなく、宿る神の力が、その地を浄化し、豊穣を約束するものだった。

一族は繁栄し、国は富む。だが、人とは元来、業の深い生き物だ。神具の力に目を付け、悪用する者達も生まれる。それは、一族の中にもいないとはいえず、やがて混乱を招くようになった。

「神具の力は、確かに恐ろしく、人の心を試します。しかし、正統な主人の手にあれば、それは何よりの宝となる。その者にとっても、周りの者達にとっても、更には、世界の為にもなる存在なのです」

地を浄化する力を宿す神の魔導具。今となっては、封印され、忌むべき物とされているが、それは本来の力を発揮できないからだ。

「彼らが望むのは、世界に散らばってしまった神具を集め、正統な血筋の元へとそれを戻す事。本来あるべき世界の姿を取り戻す事です」

この世界で、清浄であるとされる色の『青』。そして、始祖の『血脈』をとの意を込め、彼らは『青の血脈』と名乗っているのだ。

「その……よろしいですか?」

話を聞いていたキルシュは、不安そうにそう言ってシェリスへ訊ねた。

「それを聞いた限り、私には、彼らが悪い存在であるとは思えないのですが……」

そう。ただ神具の正統な主を見つけ、その手に神具を戻すと言うのであれば、世界の為にも良い事にしか聞こえなかった。

「そうですね。そうして奴らの仲間になった者も少なくないと聞いています。ですが、彼らは、始祖の一族を有する人族こそが、世界を統べるべきだとも説いているのです。その為に神具の力を利用すべきとも……」
「それは……っ、まさかっ」

ここで、エルヴァストはある可能性に気付いたようだ。

「……人族至上主義……」

そう呟いた時のエルヴァストからは、血の気が失せていた。
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舞台裏のお話。

サクヤ「この分だと早く着きそうねぇ」

ビアン「ええ。今日の夕刻頃には着くかと」

ウル「なんだか、一気に賑やかですね」

ビアン「この辺りから温泉宿が増えてきます。観光地としても有名です」

サクヤ「いいわねぇ。この辺は昔から変わらないわ。そろそろお昼時だし、この辺りで食事にしましょ」

ビアン「そうですね。店は……」

ウル「どこも混んでいますよ?」

サクヤ「そうねぇ……っあ!そ、そこ、そこを入って!」

ビアン「はぁ……どこまで行きます?もう少し行くと、狭くなりますよ?」

サクヤ「大丈夫よ。そこ曲がって」

ビアン「……分かりました……」

ウル「また少し広い道になりましたね。ですが……人が殆どいなくなりましたよ?」

ビアン「ここ、大丈夫なんですか?観光客がいないどころか、地元民も見ませんよ?」

サクヤ「だから大丈夫だって♪ そこそこっ、そこが馬車を停める所よ」

ビアン「……店……ですね……なぜこんな奥まった場所にある店に、高級店並みに広い馬車を停める場所が……」

サクヤ「とっても親切でしょ?」

ウル「確かに、なかなか馬車を停めるスペースを持つ店はありませんからね」

サクヤ「でしょ~☆」

ビアン「……怪し過ぎますよ……」

サクヤ「気にしないの」

謎の強面の男「お客様。馬車をお預かりいたします」

ビアン「へっ?」

サクヤ「よろしく~☆ねぇ、ルッコちゃんいる?」

謎の強面の男「はい。どうぞお入りください」

サクヤ「ありがと♪」

ウル「あ、あの?先生?ここは……」

ビアン「どんな高級店ですかっ?馬車を管理までしてくれる店なんて……」

サクヤ「あら。ここは、サービス精神旺盛なだけよ?まぁ、味も高級店に負けないけどね☆」

ビアン「お知り合いの店なのでしょうか……」

ウル「ですね。先ほども、誰かの名を訊ねていらっしゃいましたし」

ビアン「……とても、アレな予感がするのですが……」

ウル「……心の準備だけはしておきましょう」

サクヤ「やっほー!ルッコちゃん☆」

ビアン・ウル「「え?」」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


どうやら知り合いの店を見つけたようです。


神具についての新たな事実。
彼らの暗躍する目的。
ここでようやく曖昧になっていた情報を整理しています。
エルヴァストは、とっても優秀な王子です。
ルクスは何か勘付いているのでしょうか。
ティアちゃんは秘密を持ち過ぎていますからね。


では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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