女神なんてお断りですっ。

紫南

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276 現場百回って事です

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2015. 11. 8
********************************************

神具の使い手が分かるこの魔導具を見つけたのは、本当に偶然だった。

「覚えてるでしょ?エル兄様とお兄様を助けに行った時だよ」
「あの時……っ、まさか、奴らがそうだったのか?」

エルヴァストは、過去の記憶を呼び戻す。

「エル兄様、あの時言ってたじゃない?何かが割れる音がしたって」
「あ……あぁ……確か、床に何かを叩きつけるような音だった筈だ」

あの時、意識のあったエルヴァストは、何とか助かる道を探す為に、必死に聞き耳を立てていた。今にも、殺す為に剣を抜き放つ音が聞こえるのではないか。犯人は何人いるのか。どんな些細な音や気配も逃すまいとしていたのだ。

ベリアローズがいる事に気付いたのは、彼らが立ち去ってからだった。初めて出来た大切な友人が傍にいたからだろう。何度か誘拐された経験の中で、唯一、この時の記憶は、今でもかなり細部まで思い出す事が出来た。

「あれは……確かに石の割れる音だったが……」

そう呟いて、再び箱の中の割れた水晶の様な物を見つめ、眉を寄せた。エルヴァストの記憶にある音では、この割れ方はしないように思ったのだ。

「あ、その割れた音は、精霊除けの為の晶腐石だよ」

エルヴァストが聞いたのは、その音で間違いない。

「なら、これはどこで割れたんだ?」

真っ二つに割れて分かれたように見えるその魔導具。それに全員の視線が集まった。

この不可解な割れ方の説明の為、ここで口を開いたのは、シェリスだった。

「この魔導具は、一回きりの使用が限度なのです。恐らく、神具の力も利用するのだと分析結果も出ています。これにより、使用の限界を超えた為、力に耐えられずに割れたのです」

ようは、魔力測定の魔導具と同じ結果だ。あれも、測定内容が設定よりもオーバーすると割れる仕組みを利用している。

この魔導具の場合は、発動時間に限界があるのだろう。その時間を過ぎると、割れてしまうのだ。

「その時の欠片がね、晶腐石の残骸の中に混じってたの。それがどうしても気になって、あの後、ちょっと周りを捜索してみたんだ。そうしたら……」
「……これがあったと……」

よく気付いたなとエルヴァストは感心する。確かにあの時、ティアは床に散らばった何かを拾っていたなと思い出す。とても空気の読めないタイミングだった事も思い出し、微妙な顔になったのは仕方がない。

「うん。現場に戻るって大事だよね」

情報を集めるには、現場に戻るのが一番だと、ティアは得意気に胸を張る。当然、これは口にすべきではないという事に気付いていなかった。特にルクスの前ではご法度だ。

「ティア……聞いていないぞ」
「っ……え、あ、あれ?言ってなかった……かな?オカシイナァ……」

しまったと思った時には遅かった。ルクスは、例え数年前の事であっても、許す気はないのだ。

その上、ルクスの事だ。ティアの言った『あの後』が、ルクス達とも別れた翌日以降の事だと気付いていた。

「何度約束したろうな?」
「え、え~っと……」
「この分だと、まだまだ出てきそうじゃないか。後できっちり話そうか」
「うっ……らじゃ……」

目が泳ぎまくっていたティアも、さすがにルクスの鋭い視線に負け、しゅんと小さくなった。

そんなティアの様子を見て、シェリスが黙っていられる筈がはない。

「傍に居なかった者が悪いと思いますがね。まぁ、居た所で役には立たないでしょうが」
「っ……はっ、どなたかの様に、ティアの一挙手一投足の細かい所まで目で追う程、デリカシーのない行動は取れませんよ」
「あ~……」
「「……」」

お約束というか、どうやらシェリスは、ルクスと二人で話をするティアを見ていられなかったようだ。

また始まったかと呆れるティアと、呆気に取られて固まるエルヴァストとキルシュ。そんな間にも、二人の言い合いは続いていた。

「ティアの半分も理解出来ていない人は気楽で良いですねぇ。私なら、ティアの手の動き一つで、何を考え、何をしようとしているのか分かってしまうのです。言わずとも察する事が出来てしまいますから」

それはちょっとした恐怖だと、ティアは内心冷や汗をかいていた。

「あぁ、だからティアとの会話が少ないのですね。良くわかりました」

中々、ルクスも口が達者になってきた。しかし、ここは褒めるべきか悩む所だ。

このままでは二人の言い合いは止まらないだろう。そう感じたティアは、何度か咳払いをして二人の意識を自分に向けさせる。

「んっ、それで、今後もこっちに手を出してくるかもしれないって話だけどね」

無理やり話を戻したティアに、エルヴァストとキルシュも注目する。それを感じたティアは、真剣な表情で説明を再開した。

「多分、奴らはこの魔導具で、お兄様を調べたんだと思う。昔から狙いを付けてたみたいだから」

かつて、ベリアローズを攫おうとした貴族の男は、間違いなく彼らの息のかかった者だった。選定基準は分からないが、ティアがまだ幼い時に攫われた時も、それが目的だったのだろう。

何らかの理由で、ベリアローズが神具の使い手になり得ると考えられていたのだ。

「確かな事は言えないけど……エル兄様も今後、候補に上がってくる可能性があるんだよ」
「私が……?」

そう、ティアはつい数ヶ月前、その可能性に気付いてしまったのだ。

************************************************
舞台裏のお話。

ルッコ「騒がしくしてすまないね」

ビアン「あ、いえ。よろしかったのですか?我々がお邪魔をしたタイミングが悪かったのでは?」

ルッコ「そんな事はないよ。いつもの事だ。それにあんたらは、サクヤの連れて来た客だ。歓迎させてもらうよ。あぁ、自己紹介がまだだったね。ルリだ。よろしく」

ビアン「私はビアンと申します。こちらは……」

ウル「ウルスヴァンと申します。あの、先生……サクヤさんの親友と聞こえましたが、長く会っていらっしゃらなかったのですか?」

ルッコ「あぁ……あんたらは、サクヤの事をどこまで知ってんだい?年齢の事とか」

ウル「私よりも長く生きていらっしゃる事も存じております。人族ではないことも……」

ルッコ「そうかい。それなら話は早い。私もサクヤと同じ種族だ。ここいらの奴らは、知ってる奴もいる。ここに住み着いて七百年くらいになるからね」

ビアン「そ、そうなのですか?それでは、知らない方にはどうやって……」

ルッコ「そうそう私が昼間に出て行く事はないからね。さっきいた、大きいちょい顔の恐い奴が夫なんだが、昼間は大抵、アレに行ってもらうんだ。ここらではゴーレムだとか言われてるから、都合が良くてね」

ウル「見た目が変わらないからですね……」

ルッコ「私にツっ込んでくる奴には『魔女だから』で納得させるし」

ビアン「それで納得……い、いえ、何となく分かりました」

ルッコ「そうかい。物分かりが良くて助かるよ」

ビアン・ウル「「……」」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


絶対に拳で語る人種だと思います。


言い合いをする二人は、生き生きとしていて良いです。
シェリスがこんな風に言い合える相手はルクスとサクヤだけでしょうね。
ティアもきっと、自分と関係ない事で言い合いをするなら、静観したいんじゃないかと思います。
さぁ、敵となる方々は、今度はエル兄ちゃんに狙いを付けてくるかもしれないとは、どういうことでしょう。


では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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