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429 裏にも手を回しています
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2016. 6. 9
********************************************
報せが来たと言ったアリシアの後ろには、火王がいた。
「あっ、パパ!」
アデルが椅子から飛び降り、火王に抱き着く。
「お帰り~」
《あぁ》
火王は優しく笑みを浮かべ、低い位置にあるアデルの頭を撫でる。
アデルは本気で火王をパパと慕っているらしく、満面の笑みを浮かべて甘えていた。
これに火王自身も同意しているのは明らかで、どこからどう見ても仕事から帰ってきた父親が子どもの出迎えを嬉しそうに受け止める様にしか見えない。
そんな様子を呆然と見つめて、ベリアローズが尋ねる。
「……火の王。ティアの目が覚めたと?」
これに答えたのは、火王の足下に現れた小さな子犬サイズのマティだった。
《そうだよ。そんでね、パーティに出られなかった主の為に、あの町でやるから、みんなを連れて来てってラキアが》
「なに?」
相変わらず、マティの説明は分かりにくい。要点だけすぎて全く意味が分からないとベリアローズ達は首を傾げる。
しかし、これを正しく理解した者がいた。
「そっか。ティアってばやっぱりあの立食パーティやりたかったんだね。それで町をあげてやるって事? 凄いねっ」
アデルは、マティの言葉と、ラキアの取るべき行動などを全て読み取り、状況を理解した。
これによって、思考がゆっくりと追いついたエルヴァストが口を開く。
「ティアの為に町全部を巻き込んで食事会って事か?」
ラキアならば計画しなくもないと納得してしまうエルヴァストだ。更にあそこには今、シェリスを初めとするティアの為ならばと考える者達が詰めている。
《そうだよ~。街の大通り全部がパーティ会場で、いっぱい食べ物が並ぶんだってっ》
「大昔にそんな祭りがあったとは聞いた事があるが……本気か?」
《本気~》
国の予算が追いつかないとの理由で消えてしまった祭りの記録。それを、エルヴァストは知っている。
それを知った時、子ども心に憧れたものだ。だが、再び実現する事はないだろうと残念に思っていた。それが実現するかもしれない。いや、実現するのだと知り、エルヴァストは笑い声を上げる。
「それは凄い! 是非参加しようっ。あぁ、カグヤ先生やウルを呼んでも良いか? それと、ビアンも……どうするか」
「お、おい、エル?」
「ベル。これに参加しないなんて許されないぞ。明日の学校を休んででも参加すべきだ」
「え~っと……先輩?」
エルヴァストが興奮のあまりダメな発言をしだした。模範生としては失格な言葉だ。
聞いていたキルシュはマズイと思って一応注意する。
「休むにしても、学寮にいないのは良くありませんよ。先輩は寮長ですし、カグヤ先生も寮監です。無理があります」
万が一帰れなかった場合、どうするのだとキルシュは焦る。
しかし、そこは既に密かに裏と手を組んでいる伯爵家だ。
「問題ありません。そこは手を回しておきます」
そう得意気に言ったアリシアの部屋の隅へと投げた視線の先に、唐突に黒い装束の何者かが降ってきた。
「なっ、だ、誰だ⁉︎」
キルシュが動揺の声を上げるが、それを気にする事もなく、かしずき、頭を下げたまま、男らしき人物が言った。
「寮の事はお任せください。サクヤ様とウルスヴァン様。それとビアン様も直ちにこちらへお呼びいたします」
そう言って、また現れた時と同様に唐突に姿を消した。
「今のは……」
呆然とするベリアローズに答えたのはなぜか嬉しそうなユフィアだった。
「あれは学園を守護していらっしゃるクィーグという一族の方ですわね」
「は? いや、ユフィ……なぜそんな事を知ってるんだ?」
ユフィアはこの屋敷に滞在している為、度々訪れてくるクィーグの者達とも面識があった。しかし、クィーグの存在を知ってはいても、ユフィアが知っているとはベリアローズやエルヴァストは思わない。
「頭領の方が良くこちらにおいでになって、ラキアさんとお茶をしていますの。なんでも、ティアさんの配下になりたいとか仰っていましたわね」
「待てっ、ユフィ……それは本当か?」
ベリアローズが顔を真っ青にして確認する。確かに一人、ティアの知り合いにクィーグのシルという者がいる事は認識している。しかし、そいつだけではないのかと焦った。
「こちらに来ていたのは本当ですわよ?」
「そ、そうか。ティアのというのは冗談だな」
ベリアローズは正気を戻しかけた。しかし、直ぐに冷や汗まで流す事になる。
「いいえ? だって『ティア様の命は必ず遂行してみせる』と、いつも帰って行かれる時に仰っておられましたもの。さすがはティアさんです。国でも最高峰の暗部を手に入れられたということですわ」
「「「……」」」
これによって、ベリアローズ、エルヴァスト、キルシュの思考は停止したのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
フィスターク「……おかしいねぇ。ティアが休息日に顔を見せないなんて……」
シアン「ええ……何かあったのかしら」
リジット「旦那様。奥様。ティア様から文が届いております」
フィスターク「ティアから?」
シアン「まぁ。お手紙なんて珍しいわね」
フィスターク「どれどれ……『今日はカル姐達に外出禁止令を出されちゃったから帰れません。でも心配しないで。ちょっと心配かけちゃったから過保護になってるだけなの。明日の夕方、一度顔を出します』だって」
シアン「まぁまぁ。何をしたのかしら」
フィスターク「カルさんが判断したなら仕方ないね」
シアン「ええ。きっと必要な措置なのね」
リジット「では、本日はお二人でお出かけされてはどうでしょう」
フィスターク「ん? そうだね。どうする? シアン」
シアン「嬉しいわ。でもそうねぇ……お庭でお茶をしましょう。ゆっくりと」
フィスターク「いいね。リジット、頼むよ」
リジット「はい。お任せください」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
伯爵家は今日も平和です。
クィーグは既にティアちゃんの配下になっているのです。
シル君だけではありません。
ベル兄ちゃん達としては、ティアちゃんがまた危険なおもちゃを手に入れたという認識でしょうか。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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報せが来たと言ったアリシアの後ろには、火王がいた。
「あっ、パパ!」
アデルが椅子から飛び降り、火王に抱き着く。
「お帰り~」
《あぁ》
火王は優しく笑みを浮かべ、低い位置にあるアデルの頭を撫でる。
アデルは本気で火王をパパと慕っているらしく、満面の笑みを浮かべて甘えていた。
これに火王自身も同意しているのは明らかで、どこからどう見ても仕事から帰ってきた父親が子どもの出迎えを嬉しそうに受け止める様にしか見えない。
そんな様子を呆然と見つめて、ベリアローズが尋ねる。
「……火の王。ティアの目が覚めたと?」
これに答えたのは、火王の足下に現れた小さな子犬サイズのマティだった。
《そうだよ。そんでね、パーティに出られなかった主の為に、あの町でやるから、みんなを連れて来てってラキアが》
「なに?」
相変わらず、マティの説明は分かりにくい。要点だけすぎて全く意味が分からないとベリアローズ達は首を傾げる。
しかし、これを正しく理解した者がいた。
「そっか。ティアってばやっぱりあの立食パーティやりたかったんだね。それで町をあげてやるって事? 凄いねっ」
アデルは、マティの言葉と、ラキアの取るべき行動などを全て読み取り、状況を理解した。
これによって、思考がゆっくりと追いついたエルヴァストが口を開く。
「ティアの為に町全部を巻き込んで食事会って事か?」
ラキアならば計画しなくもないと納得してしまうエルヴァストだ。更にあそこには今、シェリスを初めとするティアの為ならばと考える者達が詰めている。
《そうだよ~。街の大通り全部がパーティ会場で、いっぱい食べ物が並ぶんだってっ》
「大昔にそんな祭りがあったとは聞いた事があるが……本気か?」
《本気~》
国の予算が追いつかないとの理由で消えてしまった祭りの記録。それを、エルヴァストは知っている。
それを知った時、子ども心に憧れたものだ。だが、再び実現する事はないだろうと残念に思っていた。それが実現するかもしれない。いや、実現するのだと知り、エルヴァストは笑い声を上げる。
「それは凄い! 是非参加しようっ。あぁ、カグヤ先生やウルを呼んでも良いか? それと、ビアンも……どうするか」
「お、おい、エル?」
「ベル。これに参加しないなんて許されないぞ。明日の学校を休んででも参加すべきだ」
「え~っと……先輩?」
エルヴァストが興奮のあまりダメな発言をしだした。模範生としては失格な言葉だ。
聞いていたキルシュはマズイと思って一応注意する。
「休むにしても、学寮にいないのは良くありませんよ。先輩は寮長ですし、カグヤ先生も寮監です。無理があります」
万が一帰れなかった場合、どうするのだとキルシュは焦る。
しかし、そこは既に密かに裏と手を組んでいる伯爵家だ。
「問題ありません。そこは手を回しておきます」
そう得意気に言ったアリシアの部屋の隅へと投げた視線の先に、唐突に黒い装束の何者かが降ってきた。
「なっ、だ、誰だ⁉︎」
キルシュが動揺の声を上げるが、それを気にする事もなく、かしずき、頭を下げたまま、男らしき人物が言った。
「寮の事はお任せください。サクヤ様とウルスヴァン様。それとビアン様も直ちにこちらへお呼びいたします」
そう言って、また現れた時と同様に唐突に姿を消した。
「今のは……」
呆然とするベリアローズに答えたのはなぜか嬉しそうなユフィアだった。
「あれは学園を守護していらっしゃるクィーグという一族の方ですわね」
「は? いや、ユフィ……なぜそんな事を知ってるんだ?」
ユフィアはこの屋敷に滞在している為、度々訪れてくるクィーグの者達とも面識があった。しかし、クィーグの存在を知ってはいても、ユフィアが知っているとはベリアローズやエルヴァストは思わない。
「頭領の方が良くこちらにおいでになって、ラキアさんとお茶をしていますの。なんでも、ティアさんの配下になりたいとか仰っていましたわね」
「待てっ、ユフィ……それは本当か?」
ベリアローズが顔を真っ青にして確認する。確かに一人、ティアの知り合いにクィーグのシルという者がいる事は認識している。しかし、そいつだけではないのかと焦った。
「こちらに来ていたのは本当ですわよ?」
「そ、そうか。ティアのというのは冗談だな」
ベリアローズは正気を戻しかけた。しかし、直ぐに冷や汗まで流す事になる。
「いいえ? だって『ティア様の命は必ず遂行してみせる』と、いつも帰って行かれる時に仰っておられましたもの。さすがはティアさんです。国でも最高峰の暗部を手に入れられたということですわ」
「「「……」」」
これによって、ベリアローズ、エルヴァスト、キルシュの思考は停止したのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
フィスターク「……おかしいねぇ。ティアが休息日に顔を見せないなんて……」
シアン「ええ……何かあったのかしら」
リジット「旦那様。奥様。ティア様から文が届いております」
フィスターク「ティアから?」
シアン「まぁ。お手紙なんて珍しいわね」
フィスターク「どれどれ……『今日はカル姐達に外出禁止令を出されちゃったから帰れません。でも心配しないで。ちょっと心配かけちゃったから過保護になってるだけなの。明日の夕方、一度顔を出します』だって」
シアン「まぁまぁ。何をしたのかしら」
フィスターク「カルさんが判断したなら仕方ないね」
シアン「ええ。きっと必要な措置なのね」
リジット「では、本日はお二人でお出かけされてはどうでしょう」
フィスターク「ん? そうだね。どうする? シアン」
シアン「嬉しいわ。でもそうねぇ……お庭でお茶をしましょう。ゆっくりと」
フィスターク「いいね。リジット、頼むよ」
リジット「はい。お任せください」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
伯爵家は今日も平和です。
クィーグは既にティアちゃんの配下になっているのです。
シル君だけではありません。
ベル兄ちゃん達としては、ティアちゃんがまた危険なおもちゃを手に入れたという認識でしょうか。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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