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526 相変わらず動揺します
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2016. 11. 18
**********
フィズとシルに、ヒュリアの周りを一層警戒し、情報を集めるように指示を出す。サクヤにはカルツォーネが来るのを待っていてもらい、ティアは部屋を出た。
するとそこに、どうやら遅くなった事で心配になったのだろう。ルクスが待っていたのだ。
「ルクス。迎えに来てくれたんだ?」
「あぁ……」
周りを警戒するような素振りを見せるルクスに、ティアは何かおかしな気配でも感じたのだろうかと気配を探る。
しかし、特に気になる者もいないと確認でき、ルクスの顔を下から覗き込むようにしてどうしたのかと尋ねた。
「何か気になる事でもある?」
「い、いや……その、シルと一緒なんじゃないかと思ったんだが……」
「シルなら、今はちょっと別件で派遣中だよ? 何か用事があった?」
「それはない。いないなら良いんだ」
最近、シルが前にも増してティアにくっ付いているのが気に入らないのだ。しかし、こちら方面がとことん鈍いティアは、そんなルクスの思いに気付かない。
更に、ルクスはシルの事をさん付けにしなかった事に、少々引っかかりのようなものも感じているようだ。小さく顰めた顔を不思議に思いながらも、ティアはこの後の予定を考えていた。
「なら帰ろう。う~ん。でも、ちょっと寄り道してもいい?」
「あぁ。どこに行くんだ?」
「三バカちゃん達の様子を見ておきたいんだ。そろそろ本腰入れておいてもらわないといけないから」
「本腰? あ~、対抗戦の関係か」
いよいよ、ティアと王で計画した騎士対冒険者の対抗戦が半月後に迫っていた。
三バカとケイギルは、先月から特別講師として騎士学校で卒業生達を鍛えていた。そして、卒業式は無事、数日前に終えている。
これによって、次の職場が決まらなかった生徒達を集め、特別訓練と称し、対抗戦後に必要となる騎士の補充要員を鍛えてもらっていた。
騎士学校の旧校舎を使い、卒業後も何人かがそこに留まっているのだ。
「ケイギルさんもちゃんと付き合ってくれてるみたいなんだよね~」
ケイギルも、ティアとの約束としては今回の卒業生達が卒業するまでだったのだが、少しでも力になれればと言って、紅翼の騎士団に帰る事もなく、指導を続けてくれていたのだ。
「あまり無茶な頼みごとをするなよ?」
「分かってる♪」
「……」
本当に分かっているんだろうかと、ルクスは心配しているようだ。一瞬、また黙って眉を寄せていた。
学園を出る直前、最近は警備室の一室を私用で使わせてもらっている。
そこで制服から着替え、冒険者ティアとして町に繰り出すのだ。その時、少しばかり年齢を若く見せるか、バトラール仕様に化ける事を忘れない。
それほど学園の生徒達が町を歩く事はないが、普段からよく一緒にいるキルシュとアデルが隣にいれば、さすがに察する者も出てくるだろう。
ティアはそれでも構わないと思っていたのだが、周りが激しく反対したのだ。
今日はルクスと一緒という事で、特別にバトラールバージョンにしてみる事にした。
「お待たせ、行こうか」
「……な、なんで……」
バトラールの姿になって出てきたティア。自然に歩き出したティアの背中を、ルクスは呆然と見送ってしまう。
ついてこないルクスに、ティアは振り向く。
「何してるの。置いてくよ?」
「あ、あぁ……っ」
ルクスは少々顔を赤くさせながら、ゆっくり隣に並んだ。
「まだ慣れない?」
「っ……緊張する……」
「なんで?」
「……っ、分からない……」
「なんでだろうね」
「……」
ティアはそう言いながらも考えようとしてはいないが、ルクスは深刻に考えていた。
「っ……これはティア、これはティア……いつかはこうなるんだから……っ」
必死で暗示を掛けるルクスだった。
◆◆◆◆◆
リールは、町を歩いていた。
「俺は騎士……騎士になるんだ……」
妹であるロイズに言われ、冒険者ギルドへ行く事になっていたのだが、どうしても決心がつかずにいた。
「冒険者になんて……」
自分は騎士になりたいのだ。冒険者になってしまったら、その決意を裏切る事になる。
そうしてリールは、学園を出てから町をただフラフラとあてもなく歩いていたのだ。
「このままでも……」
リールは先ほど、学園でとある計画の一つを遂行した。全てを完遂し、国に帰れば騎士になれるのだという。
その為になら、王女を害する事も厭わない。そこまでリールは騎士になる事に拘っている。このまま冒険者になる必要もない。
「騎士になるんだ……あの方の特別な騎士に……」
リールは、仕えるべき主人を選ぶ権利は自分にあると思っている。
「あんな王女になど誰が……」
ヒュリアとは性格的に絶対に合わないという自信がある。だから、自分が仕えるべきなのは女神の生まれ変わりだという少女であるべきだろう。そんな思いに取り憑かれてしまっているのだ。
**********
舞台裏のお話。
町人A「お、バトさんだ」
町人B「本当だ。相変わらずカッケェなぁ」
町人A「隣のはゲイルさんの息子だってよ」
町人B「へぇっ、どこの馬の骨かと思ってたぜ」
町人C「あれでもAランクだぜ?」
町人B「マジかっ、そんな強そうに見えねぇのになぁ」
町人A「まったくだ」
町人達「「「はははははっ」」」
ルクス「……」
ティア「どうかした? なんかまた皺寄ってる」
ルクス「なんでもない。ちょっと……痛いだけだ……」
ティア「ふぅ~ん……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
精神的にチクチクときます。
久し振りにルクス君との時間。
相変わらず困らせてしまうようです。
そして、リール君……。
本気で面倒臭そうな感じでした。
では次回、一日空けて20日です。
よろしくお願いします◎
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フィズとシルに、ヒュリアの周りを一層警戒し、情報を集めるように指示を出す。サクヤにはカルツォーネが来るのを待っていてもらい、ティアは部屋を出た。
するとそこに、どうやら遅くなった事で心配になったのだろう。ルクスが待っていたのだ。
「ルクス。迎えに来てくれたんだ?」
「あぁ……」
周りを警戒するような素振りを見せるルクスに、ティアは何かおかしな気配でも感じたのだろうかと気配を探る。
しかし、特に気になる者もいないと確認でき、ルクスの顔を下から覗き込むようにしてどうしたのかと尋ねた。
「何か気になる事でもある?」
「い、いや……その、シルと一緒なんじゃないかと思ったんだが……」
「シルなら、今はちょっと別件で派遣中だよ? 何か用事があった?」
「それはない。いないなら良いんだ」
最近、シルが前にも増してティアにくっ付いているのが気に入らないのだ。しかし、こちら方面がとことん鈍いティアは、そんなルクスの思いに気付かない。
更に、ルクスはシルの事をさん付けにしなかった事に、少々引っかかりのようなものも感じているようだ。小さく顰めた顔を不思議に思いながらも、ティアはこの後の予定を考えていた。
「なら帰ろう。う~ん。でも、ちょっと寄り道してもいい?」
「あぁ。どこに行くんだ?」
「三バカちゃん達の様子を見ておきたいんだ。そろそろ本腰入れておいてもらわないといけないから」
「本腰? あ~、対抗戦の関係か」
いよいよ、ティアと王で計画した騎士対冒険者の対抗戦が半月後に迫っていた。
三バカとケイギルは、先月から特別講師として騎士学校で卒業生達を鍛えていた。そして、卒業式は無事、数日前に終えている。
これによって、次の職場が決まらなかった生徒達を集め、特別訓練と称し、対抗戦後に必要となる騎士の補充要員を鍛えてもらっていた。
騎士学校の旧校舎を使い、卒業後も何人かがそこに留まっているのだ。
「ケイギルさんもちゃんと付き合ってくれてるみたいなんだよね~」
ケイギルも、ティアとの約束としては今回の卒業生達が卒業するまでだったのだが、少しでも力になれればと言って、紅翼の騎士団に帰る事もなく、指導を続けてくれていたのだ。
「あまり無茶な頼みごとをするなよ?」
「分かってる♪」
「……」
本当に分かっているんだろうかと、ルクスは心配しているようだ。一瞬、また黙って眉を寄せていた。
学園を出る直前、最近は警備室の一室を私用で使わせてもらっている。
そこで制服から着替え、冒険者ティアとして町に繰り出すのだ。その時、少しばかり年齢を若く見せるか、バトラール仕様に化ける事を忘れない。
それほど学園の生徒達が町を歩く事はないが、普段からよく一緒にいるキルシュとアデルが隣にいれば、さすがに察する者も出てくるだろう。
ティアはそれでも構わないと思っていたのだが、周りが激しく反対したのだ。
今日はルクスと一緒という事で、特別にバトラールバージョンにしてみる事にした。
「お待たせ、行こうか」
「……な、なんで……」
バトラールの姿になって出てきたティア。自然に歩き出したティアの背中を、ルクスは呆然と見送ってしまう。
ついてこないルクスに、ティアは振り向く。
「何してるの。置いてくよ?」
「あ、あぁ……っ」
ルクスは少々顔を赤くさせながら、ゆっくり隣に並んだ。
「まだ慣れない?」
「っ……緊張する……」
「なんで?」
「……っ、分からない……」
「なんでだろうね」
「……」
ティアはそう言いながらも考えようとしてはいないが、ルクスは深刻に考えていた。
「っ……これはティア、これはティア……いつかはこうなるんだから……っ」
必死で暗示を掛けるルクスだった。
◆◆◆◆◆
リールは、町を歩いていた。
「俺は騎士……騎士になるんだ……」
妹であるロイズに言われ、冒険者ギルドへ行く事になっていたのだが、どうしても決心がつかずにいた。
「冒険者になんて……」
自分は騎士になりたいのだ。冒険者になってしまったら、その決意を裏切る事になる。
そうしてリールは、学園を出てから町をただフラフラとあてもなく歩いていたのだ。
「このままでも……」
リールは先ほど、学園でとある計画の一つを遂行した。全てを完遂し、国に帰れば騎士になれるのだという。
その為になら、王女を害する事も厭わない。そこまでリールは騎士になる事に拘っている。このまま冒険者になる必要もない。
「騎士になるんだ……あの方の特別な騎士に……」
リールは、仕えるべき主人を選ぶ権利は自分にあると思っている。
「あんな王女になど誰が……」
ヒュリアとは性格的に絶対に合わないという自信がある。だから、自分が仕えるべきなのは女神の生まれ変わりだという少女であるべきだろう。そんな思いに取り憑かれてしまっているのだ。
**********
舞台裏のお話。
町人A「お、バトさんだ」
町人B「本当だ。相変わらずカッケェなぁ」
町人A「隣のはゲイルさんの息子だってよ」
町人B「へぇっ、どこの馬の骨かと思ってたぜ」
町人C「あれでもAランクだぜ?」
町人B「マジかっ、そんな強そうに見えねぇのになぁ」
町人A「まったくだ」
町人達「「「はははははっ」」」
ルクス「……」
ティア「どうかした? なんかまた皺寄ってる」
ルクス「なんでもない。ちょっと……痛いだけだ……」
ティア「ふぅ~ん……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
精神的にチクチクときます。
久し振りにルクス君との時間。
相変わらず困らせてしまうようです。
そして、リール君……。
本気で面倒臭そうな感じでした。
では次回、一日空けて20日です。
よろしくお願いします◎
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