20 / 457
2巻
2-3
しおりを挟む
弱った様子で後退るザランは老け顔だが、まだ三十歳だ。少々ドジなところがあって、ティアにはいつもからかわれている。だが屈託のない笑顔が魅力的で、男気溢れる性格をしていた。
そんな誰にでも愛される人柄のザランを、ルクスは容赦なく追い詰めていく。
すると、ザランの友人である冒険者達が面白そうに尋ねる。
「ザラン。お前、何したんだ?」
「ルクス君が怒ってるところを見ると、姫に関する事でしょ? なんかマズイ事したん?」
そう決めつける友人二人に、ザランが反論した。
「待て待て。それなら、俺一人が怒られんのはおかしいっ」
その言葉に、ルクスはヒクリと片眉を上げる。
「ほぉ……何かしたという自覚はあるようですね」
「うっ……あれだろ? この前ティアにやった本がマズかったんだろ? あれは読んだ奴の性格を歪ませるっていう伝説があるしな」
数日前、ティアとの賭けに負けたザランは、報酬としてそのような本を渡したらしい。しかし、ルクスには初耳だった。
「……なんて本です?」
「あ? 『バルカンの毒舌集』だろ?」
(なんてものを渡してやがるっ!!)
題名を聞いただけで碌なものではないと分かり、ルクスは額に青筋を立てた。それを見た友人達が、ザランに耳打ちする。
「おい、ザラン。あの顔は違うみたいだぞ」
「あれじゃないか? ほら、縄抜けの……」
ザランは顎に手を当て、怪訝な顔をした。
「あれか? けどあれは、どっちかってぇと役に立つ本だろ」
「確かにそうだなぁ。あれは俺も重宝した」
うんうんと頷きながら、友人の一人が同意する。
しかし、ルクスの表情を確認したもう一人の友人は、気まずそうに首を横に振った。
「それも違う……ようだな」
更なる怒りがふつふつと湧いてくるのを感じながら、ルクスは次の言葉を待つ。そんなルクスの苛立ちを感じてか、ザランは必死に記憶を探っている。そしてハッとした様子で顔を上げた。
「ならあれだっ!! 『ガツラフの縛り技全集』っ」
「っ表へ出ろッ!!」
ルクスはもう我慢の限界だった。ザラン達が口を揃えて言う。
「「「違うのか!?」」」
「違うに決まってんだろっ!!」
ヤバそうな本の名前が次々と出てきた事で、ルクスはついにブチ切れた。
「ティアのためにも、お前達はここで消しておくべきっ……親父っ!?」
剣を抜こうとしたルクスの肩を、後ろに立つゲイルが押さえ、ザラン達に声をかけた。
「悪ぃなぁ。コイツは嬢ちゃんを愛しすぎちまってるもんで」
「あ、いやぁ。その気持ちも分からなくはないんで……って、ゲイルさんじゃん」
ザランはようやくゲイルの存在に気付いたらしい。尊敬する大先輩を前にして、嬉しそうに笑う。
そういえば今は自分一人ではなかったと思い出し、ルクスは頭を冷やす。そんな彼に、ゲイルは予想外の事を耳打ちした。
「落ち着け馬鹿。こういう時は、闇討ちが常識だろ?」
「……」
自分の父親がこういう人だと忘れていたルクスは、目を丸くした。それを聞いていたらしいザランが、「俺、闇討ちされんのか!?」などと叫んでいる。
そんなザランを見て更に冷静になったルクスは、肩の力を抜く。
そして思った。なるほど、それがベストだと。
自分をチラリと見るルクスの姿に、ザランは本気で慌てる。
「おいっ。その目はマジだろっ。ヤメろよ!? ティアに言いつけんぞ!?」
「「チッ」」
「揃って舌打ちすんな!!」
似た者同士の親子に、ザランは全力でツッコミを入れた。
◆ ◆ ◆
目の前で繰り広げられるやり取りを、ベリアローズは呆然としながら見ていた。
隣に立つゼノスバートは、先程からずっと肩を揺らして笑っている。
この馬鹿騒ぎはいつ終わるのかと呆れていると、突然、空気が変わった。
「なんですか。騒々しい」
「「「マスターっ」」」
その場に居合わせた冒険者達が、揃って声を上げる。
「……」
ギルドの奥から現れた人物を見た瞬間、ベリアローズの目は釘付けになってしまった。
この街のギルドマスターであるシェリス・フィスマ。彼はハイエルフと呼ばれる種族で、一般的なエルフより魔力量が多い。身体能力にも優れ、寿命も長い。エルフ特有の尖った耳に、長い金髪と切れ長の瞳。一見、女性と見紛うほどの美貌の持ち主だ。
ティアの前世であるサティアを愛し、結婚の約束まで取り付けていた彼は、彼女の死を知って悲しみの底に沈んだ。その後はエルフの里の長となり、ジルバール・エルースという名を得て暮らしていたのだが、ある時、ティアが生まれ変わるという預言を聞き、彼は里を飛び出した。
そして、このサルバでギルドマスターの任に就いたのである。全ては、ティアが生まれ変わってくるはずの場所に留まり、もう一度ティアと出会うためだ。
しかし、そうした本人の意思に関係なく、ジルバールは多くの冒険者達に慕われていた。
この国にはエルフがいないので、初めてジルバールを見た者は、その気高く美しい姿に感動する。それはベリアローズも例外ではなかった。
「そ、そうだルクス。ティアが読んだのは、俺がやった本じゃないかもしれんだろ? ひょっとするとマスターが渡したやつかも……」
希望を見出し、明るい声で言ったザランに、ジルバールが怪訝な顔をする。
「なんの話ですか? サラン」
「うぅ……その名前は……。あの、最近ティアに本を贈りませんでしたか……?」
顔に似合わぬ本名で呼ばれたザランは、情けない顔で尋ねた。周りの冒険者達も、ジルバールに期待のこもった目を向けている。
ジルバールは近寄りがたい雰囲気をまとっているのだが、冒険者達がそれを気にしている様子はない。美しい容姿がコンプレックスであるベリアローズは、大勢の人の前で堂々としているジルバールが羨ましかった。
「本ですか? もしかして……『新毒薬大全』でしょうか」
その答えに、一瞬ギルドの時が止まる。
次の瞬間、冒険者達は「「「ヤベェやつじゃん!!」」」と見事なユニゾンを決めた。
ジルバールは綺麗な眉を寄せて反論する。
「失礼な。勉強熱心なティアのために、世界中から情報を集め、里の者にまとめさせた素晴らしい本ですよ? 万が一にもティアが毒による被害を受けないよう、万全の知識を提供しなくてはならないでしょう。ティアのためだけに用意した、世界にたった一つの本です」
ギルドがシンと静まり返る。これが本当ならば、ものすごい一品だ。
だが、ベリアローズはそんな事よりも、ジルバールがティアのためだけに用意したという事実に衝撃を受けていた。一体どういう関係なのだろうか。
戸惑いを隠せないベリアローズをよそに、冒険者達の話は続く。
「マスター……それの他に心当たりは……」
「他に? ティアに頼まれたのは『魔術大全』全巻と、『幻獣図鑑』くらいです」
「……全巻って……全属性のって事ですか?」
「ええ。もちろん」
それを聞いて、たまたまこの場に居合わせた魔術師達が気絶した。
『魔術大全』は風、水、火、土、闇、光という六つの属性ごとにまとめられており、それぞれの属性が起こす事のできる現象や技の数々が記録されている。もちろん、それを読んだだけで魔術が使えるようになるわけではないが、膨大な情報が収録された貴重な本だった。
全巻が揃っているのは魔術師ギルドだけと言われており、普通、個人で所有できるものではない。
「……ゲンジュウっていうのは『幻獣』の事で?」
「他にどんなゲンジュウがあるんです?」
それがどうかしたのかと言わんばかりのジルバール。『魔術大全』だけでも驚きだが、世界に数冊しかないと言われる『幻獣図鑑』まで所有していたと知って、誰もが沈黙した。
しかも、それを読んだティアが幻獣に興味を持ったとしたら、賭けの報酬として『生きた幻獣』を要求される可能性も出てくる。
衝撃を受けて頭を抱えたり、倒れたりする者が続出する中、ジルバールは今ようやく気付いたというようにゲイルとゼノスバートを見た。
「おや、ゲイルではありませんか。それにゼノも」
「帰ったぜ、マスター」
「お久しぶりですなぁ、マスター。相変わらずお美しい」
ゲイルとゼノスバートは周りの惨状を気にせず、和やかに挨拶する。
「……二人揃うと、悪ガキだった頃のあなた達を思い出してしまいますね。二人とも、あの頃と全く変わりません」
「「いや、変わっただろ」」
「そうですか?」
声を揃えるゲイルとゼノスバートに、ジルバールは涼しげな顔で答える。
そして、今度はベリアローズを見た。
「そちらは?」
「孫のベリアローズです。せっかくなので、ギルドに登録させようと思いましてな」
そのゼノスバートの言葉に、ベリアローズは目を丸くした。
「っな、お祖父様っ。僕がなぜ冒険者などにッ……んっんっ~」
「この坊ちゃんを鍛える場所が欲しくてな。訓練場を使わせてほしいんだが」
ベリアローズはゲイルに口を塞がれ、ゼノスバートに肩を押さえられていた。そのせいで身動きができない間にも、話は進んでいく。
「登録するなら構いませんよ。それにしても、ゼノの孫ですか……似ていませんね」
「ベルは母親似ですからな」
「顔もそうですが、何より雰囲気ですよ。暇さえあれば奇襲をかけてきたあなたの孫とは思えない、貴族らしい少年ですね」
奇襲という言葉に、ベリアローズは眉を寄せる。
「あれは、なかなか稽古をつけてくれないマスターが悪いのですよ」
不満げに言うゼノスバートに対し、ジルバールは呆れ顔で溜め息をこぼす。
「連夜の闇討ちに、白昼堂々の奇襲。本当に面倒な悪ガキでしたねぇ。二人とも当主になって、ようやく大人しくなったと思っていたのですが……今のあなた達は昔と同じ空気をまとっています」
その話を聞いたルクスが、挑戦的な笑みを浮かべてジルバールに歩み寄った。
「そんな稽古でしたら、私もぜひ参加させていただきたいのですが」
「おや。ティアの護衛として力不足だと自覚していたのですね」
「ティアとは常に一緒にいますし、何かあればこの身を犠牲にしてでも守るつもりです。しかし所詮、私は若輩者。何百年もかけて強くなったジルバール殿には敵いませんよ」
「そうですねぇ。手加減したつもりでも、うっかり重傷を負わせてしまうかもしれません」
二人とも笑顔で言い合っているのが、実に不気味だ。
「くれぐれも闇討ちにはお気を付けください」
「そちらこそ、返り討ちに遭いたくなければ、十分な備えをしておいた方がいいですよ」
とりあえず、この二人の仲が悪い事はベリアローズ達にも分かった。そして今までの会話を聞くに、どうもティアを取り合っているようだ。アレのどこがいいのかと、ベリアローズは首を傾げる。
「っ……!?」
突然、背筋に悪寒が走り、ベリアローズは身を震わせた。
不思議に思って周りを見回したが、特に不審な人物はいないので気のせいだろうと結論付ける。
その傍には、彼がティアを疎ましく思っていると察した水王が、凄みのある笑みを浮かべて立っていた。だが、それに気付いたのは、この場で唯一精霊視力を持つルクスだけなのだった。
◆ ◆ ◆
魔術師ギルドへ行くために執務室を出たシェリスは、そこで懐かしい者達と顔を合わせた。ゼノスバートとゲイルとは、彼らがティアと同じくらいの歳であった時からの知り合いだ。
ゼノスバートは伯爵家の跡取りにしてはかなりヤンチャで、強くなりたいから稽古をつけてくれと言って、護衛役のゲイルと共に朝晩問わず挑んできたのである。
当時のシェリスは、業務上必要な時しか人と関わりを持たず、ギルドの職員達でさえ近寄りがたそうにしていた。そんな中、唯一真正面から向かってきたのが、ゼノスバートとゲイルだったのだ。
最初シェリスは暇潰し程度にしか考えておらず、適当にあしらっていた。けれど今思い返せば、悪くない時間だったと思う。
いつしかシェリスも二人の力を認め、訓練場での正式な手合わせをするようになっていた。その甲斐あって、ゲイルはこの街で唯一のAランク冒険者となり、ゼノスバートも護衛など意味がないほどの実力をつけたのである。
そんな彼らの傍らに、一人の少年がぼーっと突っ立っていた。ゼノスバートの孫だというが、一見そうとは思えない。気にかける必要もないと判断しかけたシェリスだが、よくよく考えてみれば少年はティアの兄だ。それに気付くと少しだけ興味が湧いた。
どこか陰鬱な空気をまとい、眉間に皺を寄せている姿は、シェリスの目には滑稽に映る。
そんな姿を観察していると、ルクスが突っかかってきた。相変わらず可愛げのない奴だ。
「これからどこかに行かれるのでは?」
「ええ。はっきり言って、あなたに付き合っていられるほど暇ではありませんので」
認めたくはないが、ルクスはなかなか鋭い。今も、シェリスが薄手の外套を着ている事に気付いたのだろう。まったく忌々しい男だ。常にティアの傍にいるのも気に入らない。
苦々しい気持ちでいると、ゼノスバートが問いかけてきた。
「どちらに行かれるので?」
「魔術師ギルドです」
「ほう。ご一緒してもよろしいでしょうか? 孫にこの街を見せてやりたいのです。ずっと田舎におりましたからな。ギルドに来たのも初めてなのですよ」
そう言って笑うゼノスバートに、好きにすればいいとシェリスは答える。
どうも昔から、この屈託のない笑顔に弱いのだ。
(なんなんでしょうね。憎めないというか、嫌いじゃないんですよね)
こんな時、彼がお気に入りだと認めるのではなく、自分もずいぶん丸くなったものだなと思うところが、実にシェリスらしい。
一行を連れてギルドを出たシェリスは、自分も魔術師ギルドは初めてだというゼノスバートに呆れて、説明してやる事にした。
「魔術師ギルドには三つの部署があります。一つ目は魔術師の育成を担当する『魔術師教育学部』で、マルスト魔術学校を運営しています。二つ目は魔導具の開発を行う『魔導工学部』で、商業ギルドと連携して流通も管理しています。そして三つ目、最も重要なのが『魔術研究部』です。あらゆる魔術の情報や文献を管理し、失われた魔術の復活や新しい魔術の研究を行っています」
三百年前、世界の覇権をめぐる戦争があった。
多くのものを失ったものの、比較的短期間で終結した要因は、戦い方にある。大魔術によって、敵将を城や街ごと消し去る戦術がとられたのだ。
戦争終結後、魔術師達はその大魔術を封じた。後世に残す事がないよう、資料もほぼ全て焼かれたのである。更には貴族を中心として魔術を排斥する動きが起こり、魔術師達も次第に数を減らしていった。
しかし、魔術が生活を支えているのも事実だった。かまどの火をつけるような生活魔術はもちろん、魔獣を退治するためには小規模な攻撃魔術も必要となる。
だが、それに気付いた時には既に多くの文献が失われ、魔術師達もほんの一握りしか残っていなかった。剣などの武器だけでは対処しきれないものもあるのだと、魔術を排斥した貴族達は知らなかったのだ。
やがて多くの人々の願いにより、数少ない魔術師達が立ち上がった。そして国の意思に左右されず、人々を救うために結成された組織が魔術師ギルドなのである。
彼らは残された魔術の知識を守り、後進の育成に努めた。『人々のためだけに力を使う』――ただその一念を胸に。
シェリスの説明に頷きながら、ゼノスバートが口を開く。
「伯爵位にあった時は、結局一度も関わりを持てず……。魔術師ギルドは、貴族の間では謎に包まれた組織と思われておりますからな。『魔研』のイメージが強すぎて、近寄りがたいですし……」
貴族が関心を持つのは、魔術師ギルドではなく、そこにいる優秀な魔術師だけ。貴重な魔導具には興味を示すが、それらはたいてい『魔術研究部』――通称『魔研』が管理している。
貴族達は、この『魔研』が苦手だ。それというのも、魔研に所属する者達は皆、権力や金に興味のない『研究バカ』ばかり。関心を持つのは魔術だけで、それ以外のものでは一切釣れないため、貴族達にとっては扱いにくい存在だからだ。
だがそのおかげで、未だに魔術師ギルドが国から干渉を受ける事はなかった。
「お得意の買収ができませんからね。その上、『魔研』にいるのは対人能力ゼロの変わり者ばかり。魔術バカの変人しかいないとも言えます」
そう言うシェリス自身も彼らと大差ないのだが、本人は認めていない。
「……そんなところへ、なぜ行くのですか……? 変人しかいないのでしょう?」
ベリアローズが怪訝な顔で言った。
「その変人達に用はありませんよ」
「――? ではなぜ……」
「私の行動にケチをつけるのですか? 勝手についてきたのはあなた方ですよ?」
「……」
黙り込んだベリアローズを、シェリスは改めて観察した。
彼はティアとは全く似ていないし、雰囲気も真逆に近い。むしろ馬鹿な貴族達と似た考えを持っているようだ。
(これがティアの兄ですか……いかにもティアが嫌いなタイプですね。まぁ、他人ならともかく仮にも兄ですから、ティアなら嬉々として再教育する可能性もありますが……)
なんにせよ、ティアの邪魔にならなければいいかと結論付ける。
そんなやり取りをしているうちに、目的地である魔術師ギルドに着いた。多くの人で賑わう冒険者ギルドとは違って二人の受付嬢しかおらず、とても静かだ。
「ようこそジルバール様。今日はどういったご用件でしょうか」
「創工士の作業の進捗を確認しに来ました。通っても?」
「はい。お通りください。そちらの方々もご一緒でしょうか?」
シェリスが後ろを振り返ると、ゼノスバートが嬉しそうに頷いた。大人しくついてくる彼らと共に、シェリスはギルドの奥へと向かう。
そして建物の裏に出ると、そこにはいくつもの小屋が建っていた。その周りでは、創工士達が作業している。
「これは?」
ゼノスバートが首を傾げた。彼らには、さぞ奇妙な光景に見えている事だろう。本来は魔術の実験に使われる広い演習場に、謎の小屋が六つも造られているのだから。
「創工士の大会が行われているのです。優勝者の作品は、新しく開発された魔導具に実装されます」
「魔導具に?」
不思議がる彼らに、ティアと二人で開発した【ゲルヴァローズの欠片】について説明する。
「そんなすごいもんができたのか? 俺も一つ欲しいな」
冒険者であるゲイルにとっては、是非とも手に入れたい一品だろう。なんといっても、家を持ち歩けるのだ。野営用のテントより格段にいい。
「あそこで作業しているのは、女性ではありませんか?」
感心しながら眺めていたゼノスバートが、ナルカの存在に気付いたようだ。
「そうですよ。彼女は今回の最有力候補です」
「女性の創工士ですか……」
「何か問題がありますか?」
「いや、問題というわけでは……」
ゼノスバートだけでなくゲイルまでもが、女性の創工士がいるという事実に驚いていた。
「性別で職業を制限するのは、人族ぐらいです。エルフの里長には女性もいますし、戦士も多い。能力があれば男も女も関係ないでしょう」
「なるほど。確かに……」
「冒険者にも強い女がいるしな」
そう納得するゼノスバートとゲイル。シェリスがふとベリアローズに視線を向けると、彼は嫌なものを見るような目でナルカを見ていた。
(感情を隠すのが下手ですね。私としては、分かりやすくていいのですが……これはティアが昔言っていた『貴族病』というやつですかね)
『貴族ってさ、相手が自分より格下だと知ると、感情がモロ顔に出るよね。そんで、途端に配慮が足りなくなるの。あれはもう病気だよね』
前世では王族だったティアも、貴族に対しては色々と思うところがあるのだろう。王妃マティアスの出自を嫌う貴族達は、彼女に直接喧嘩を売れない分、娘のサティアを標的にしてストレスを発散していた。
『病気だと思っちゃえば、あんまり腹も立たないんだよね。うん。これからは「貴族病」って呼ぼう。そんで、これはもう末期でどうしようもないと思ったら、こっちが飽きるまで遊んであげてもいいよね。ふふっ、なんか楽しみになってきた』
(やっぱりティアなら再教育を選びますか。この少年がどう変わるか、見ものですね)
密かな楽しみができたと、シェリスは一人ほくそ笑むのだった。
◆ ◆ ◆
一方、伯爵家に残ったティアは、母シアンとお菓子作りをしていた。
「ティアちゃん? それは……ちょっと伸ばしすぎじゃないかしら」
「へ?」
ティアの手元には、紙のように薄くなった焼き菓子の生地があった。
「どれだけ薄くできるかやってみたの。すぐにちゃんと作り直すよ」
そうティアは咄嗟に誤魔化す。
少し考え事をしていたのが悪かった。だが、それも仕方のない事だろう。
只今、冒険者ギルドに着いた御一行様の現状を、風王が実況中継してくれている。そして今まさに、ザランとその仲間達が、墓穴掘りの真っ最中だった。
《『縛り技全集』とはなんでしょう? ルクスがいきなり怒り出しましたよ?》
(サラちゃんっ……そんなおバカなところは嫌いじゃないよっ……けど、これじゃ本当に『墓穴』に埋められちゃうよ!?)
心配性で過保護なルクスには知られたくなかった本の数々が、ザランとティアを追い詰める。
(没収!? 本に書かれている事を実践する前に、まさかの没収!?)
ティアが賞金首リストを所持している事は、ベリアローズのおかげでうやむやになっていたというのに、ザランは本当に間の悪い奴だ。
(サラちゃんめっ)
しかし、そのティアの怒りはすぐに同情に変わった。
《『闇討ち』というのは、日常的に行われているのでしょうか? 人族は面白い習慣を持っているのですね》
(そんな習慣はありません!!)
ただでさえ物騒な精霊王達が、更に過激になってしまいそうなので、ティアは必死に否定した。中でも特に過激な水王が現場にいる事を思い出し、ティアの顔から血の気が引いていく。
「ティアちゃん? お顔の色が悪いわ。ほら、窯の近くにいらっしゃい。暖かいわよ」
「……ソウデスネ……」
こんな時、天然なシアンは癒やしだった。
「キレイに焼けるといいわね」
「はい。きっとおいしくできます」
ニッコリ笑うシアンに励まされ、ティアは再び風王の声に耳を傾ける。
《一の長が来ましたわ》
風王はシェリスの事を『一の長』と呼ぶ。エルフの『一の里』を治める里長でもあるため、そう呼んでいるようだ。
そのシェリスが出てきたと聞いて、ティアは嫌な予感しかしない。案の定、シェリスはティアに渡した本の題名をあっさり口にし、その場に衝撃が走ったようだ。
(シェリーってば、正しい物の価値を知らないんだよね……)
自分の事は棚に上げ、ティアは溜め息をついた。
シェリスの蔵書と知識は、この数百年間の出来事やあらゆる研究成果を網羅している。更に冒険者であった頃に手に入れた、貴重なアイテムも保有していた。国宝級の書物も持っているのだが、それをなんとも思っていないのが時に困り物だ。
《『魔術大全』などどうなさるのです? ティア様なら、より優れた魔術も開発できるではありませんか》
(さすがにそんな事、ホイホイとはできないよ。それに、全属性の魔術を把握できてるわけじゃないしね。新しく知った光と闇……それと神っていう属性も謎なんだもの)
《それらの属性を使わずとも、わたくしにお命じくださればいいのです。どんな敵が現れようと、全て蹴散らしてご覧に入れますよ?》
(うん……でも、知識を持ってて損はないからね……)
最近、精霊王達が以前にも増して好戦的だ。物静かな火王と地王は問題ないが、風王と水王は危ない。それこそ相手が気に入らなければ、『闇討ち』でもしてしまいそうな節がある。
その時、お菓子が焼き上がるのを待っていたシアンが、意を決したように口を開く。
「ねぇ、ティアちゃん。お母様ね、剣を使えるようになりたいの」
「へぇ……えっ、剣!?」
「そう。剣よ」
いきなり爆弾発言をした母を、ティアはまじまじと見る。いつものおっとりした雰囲気はなく、意思の強さを感じさせる真剣な表情がそこにあった。
「どうして?」
なんとなく察してはいるが、ティアはシアンの口からその理由を直接聞きたかった。
「私ね、ずっと思っていたの。元気になって走ったりティアちゃんと遊んだりできるようになったら、次はベルちゃんやフィスタークを守れる強い女になるんだって」
そう言って、シアンはにっこりと微笑んだ。その笑顔はとても綺麗で、その目は夢を叶えようとする人の目だった。前世からこんな目に弱いティアは、笑顔で頷く。
「……分かった。でも、お母様に剣は似合わないよ。とっておきの戦い方を私が教えてあげる」
「ティアちゃんが? 嬉しいわっ。みんなの言ってた通りねっ」
「みんな?」
意味が分からず、ティアは目を瞬かせる。シアンは口元で両手を合わせ、嬉しそうに説明してくれた。
「ええ。屋敷のみんなに聞いたらね、ティアちゃんはよく訓練場に顔を出すから、そういうのが好きなんだろうって。だから、戦い方を教えてもらうなら、ティアちゃんに頼むといいって言われたの」
「そ、そうですか……」
それはきっと、大事な伯爵夫人であるシアンに危ない事はさせたくないという使用人達に、はぐらかされただけだろう。少々天然なシアンを、使用人達も好ましく思っているのだ。
ティアが戦えると知らない彼らは、シアンにおままごとのような遊びで満足してもらおうと考えたに違いない。だが残念ながら、ティアは努力しようとする女性の味方だ。
「なら、お父様達にも内緒で訓練しましょう。これから毎日、夕方に私の部屋で」
「まぁ、内緒なの?」
「はい。強くなって驚かせてやりましょう」
「うふふっ。いいわねっ」
楽しそうに笑うシアンは、本当に可愛らしい。そう思っていると、風王が報告した。
《ティア様。ルクス達は魔術師ギルドへ向かうようです》
では着いたらまた教えてほしいと、ティアは風王に伝える。ただ待つのは退屈なので、シアンにこう提案した。
「お母様、さっそく今からやりましょうか。お菓子が焼ける間に少しだけ」
「名案だわっ。さすがはティアちゃんね」
控え室で待機していた料理長に後を頼み、ご機嫌なシアンと手を繋ぐ。そして楽しい悪戯の前のワクワクする気持ちを胸に、ティアは部屋へと向かうのだった。
そんな誰にでも愛される人柄のザランを、ルクスは容赦なく追い詰めていく。
すると、ザランの友人である冒険者達が面白そうに尋ねる。
「ザラン。お前、何したんだ?」
「ルクス君が怒ってるところを見ると、姫に関する事でしょ? なんかマズイ事したん?」
そう決めつける友人二人に、ザランが反論した。
「待て待て。それなら、俺一人が怒られんのはおかしいっ」
その言葉に、ルクスはヒクリと片眉を上げる。
「ほぉ……何かしたという自覚はあるようですね」
「うっ……あれだろ? この前ティアにやった本がマズかったんだろ? あれは読んだ奴の性格を歪ませるっていう伝説があるしな」
数日前、ティアとの賭けに負けたザランは、報酬としてそのような本を渡したらしい。しかし、ルクスには初耳だった。
「……なんて本です?」
「あ? 『バルカンの毒舌集』だろ?」
(なんてものを渡してやがるっ!!)
題名を聞いただけで碌なものではないと分かり、ルクスは額に青筋を立てた。それを見た友人達が、ザランに耳打ちする。
「おい、ザラン。あの顔は違うみたいだぞ」
「あれじゃないか? ほら、縄抜けの……」
ザランは顎に手を当て、怪訝な顔をした。
「あれか? けどあれは、どっちかってぇと役に立つ本だろ」
「確かにそうだなぁ。あれは俺も重宝した」
うんうんと頷きながら、友人の一人が同意する。
しかし、ルクスの表情を確認したもう一人の友人は、気まずそうに首を横に振った。
「それも違う……ようだな」
更なる怒りがふつふつと湧いてくるのを感じながら、ルクスは次の言葉を待つ。そんなルクスの苛立ちを感じてか、ザランは必死に記憶を探っている。そしてハッとした様子で顔を上げた。
「ならあれだっ!! 『ガツラフの縛り技全集』っ」
「っ表へ出ろッ!!」
ルクスはもう我慢の限界だった。ザラン達が口を揃えて言う。
「「「違うのか!?」」」
「違うに決まってんだろっ!!」
ヤバそうな本の名前が次々と出てきた事で、ルクスはついにブチ切れた。
「ティアのためにも、お前達はここで消しておくべきっ……親父っ!?」
剣を抜こうとしたルクスの肩を、後ろに立つゲイルが押さえ、ザラン達に声をかけた。
「悪ぃなぁ。コイツは嬢ちゃんを愛しすぎちまってるもんで」
「あ、いやぁ。その気持ちも分からなくはないんで……って、ゲイルさんじゃん」
ザランはようやくゲイルの存在に気付いたらしい。尊敬する大先輩を前にして、嬉しそうに笑う。
そういえば今は自分一人ではなかったと思い出し、ルクスは頭を冷やす。そんな彼に、ゲイルは予想外の事を耳打ちした。
「落ち着け馬鹿。こういう時は、闇討ちが常識だろ?」
「……」
自分の父親がこういう人だと忘れていたルクスは、目を丸くした。それを聞いていたらしいザランが、「俺、闇討ちされんのか!?」などと叫んでいる。
そんなザランを見て更に冷静になったルクスは、肩の力を抜く。
そして思った。なるほど、それがベストだと。
自分をチラリと見るルクスの姿に、ザランは本気で慌てる。
「おいっ。その目はマジだろっ。ヤメろよ!? ティアに言いつけんぞ!?」
「「チッ」」
「揃って舌打ちすんな!!」
似た者同士の親子に、ザランは全力でツッコミを入れた。
◆ ◆ ◆
目の前で繰り広げられるやり取りを、ベリアローズは呆然としながら見ていた。
隣に立つゼノスバートは、先程からずっと肩を揺らして笑っている。
この馬鹿騒ぎはいつ終わるのかと呆れていると、突然、空気が変わった。
「なんですか。騒々しい」
「「「マスターっ」」」
その場に居合わせた冒険者達が、揃って声を上げる。
「……」
ギルドの奥から現れた人物を見た瞬間、ベリアローズの目は釘付けになってしまった。
この街のギルドマスターであるシェリス・フィスマ。彼はハイエルフと呼ばれる種族で、一般的なエルフより魔力量が多い。身体能力にも優れ、寿命も長い。エルフ特有の尖った耳に、長い金髪と切れ長の瞳。一見、女性と見紛うほどの美貌の持ち主だ。
ティアの前世であるサティアを愛し、結婚の約束まで取り付けていた彼は、彼女の死を知って悲しみの底に沈んだ。その後はエルフの里の長となり、ジルバール・エルースという名を得て暮らしていたのだが、ある時、ティアが生まれ変わるという預言を聞き、彼は里を飛び出した。
そして、このサルバでギルドマスターの任に就いたのである。全ては、ティアが生まれ変わってくるはずの場所に留まり、もう一度ティアと出会うためだ。
しかし、そうした本人の意思に関係なく、ジルバールは多くの冒険者達に慕われていた。
この国にはエルフがいないので、初めてジルバールを見た者は、その気高く美しい姿に感動する。それはベリアローズも例外ではなかった。
「そ、そうだルクス。ティアが読んだのは、俺がやった本じゃないかもしれんだろ? ひょっとするとマスターが渡したやつかも……」
希望を見出し、明るい声で言ったザランに、ジルバールが怪訝な顔をする。
「なんの話ですか? サラン」
「うぅ……その名前は……。あの、最近ティアに本を贈りませんでしたか……?」
顔に似合わぬ本名で呼ばれたザランは、情けない顔で尋ねた。周りの冒険者達も、ジルバールに期待のこもった目を向けている。
ジルバールは近寄りがたい雰囲気をまとっているのだが、冒険者達がそれを気にしている様子はない。美しい容姿がコンプレックスであるベリアローズは、大勢の人の前で堂々としているジルバールが羨ましかった。
「本ですか? もしかして……『新毒薬大全』でしょうか」
その答えに、一瞬ギルドの時が止まる。
次の瞬間、冒険者達は「「「ヤベェやつじゃん!!」」」と見事なユニゾンを決めた。
ジルバールは綺麗な眉を寄せて反論する。
「失礼な。勉強熱心なティアのために、世界中から情報を集め、里の者にまとめさせた素晴らしい本ですよ? 万が一にもティアが毒による被害を受けないよう、万全の知識を提供しなくてはならないでしょう。ティアのためだけに用意した、世界にたった一つの本です」
ギルドがシンと静まり返る。これが本当ならば、ものすごい一品だ。
だが、ベリアローズはそんな事よりも、ジルバールがティアのためだけに用意したという事実に衝撃を受けていた。一体どういう関係なのだろうか。
戸惑いを隠せないベリアローズをよそに、冒険者達の話は続く。
「マスター……それの他に心当たりは……」
「他に? ティアに頼まれたのは『魔術大全』全巻と、『幻獣図鑑』くらいです」
「……全巻って……全属性のって事ですか?」
「ええ。もちろん」
それを聞いて、たまたまこの場に居合わせた魔術師達が気絶した。
『魔術大全』は風、水、火、土、闇、光という六つの属性ごとにまとめられており、それぞれの属性が起こす事のできる現象や技の数々が記録されている。もちろん、それを読んだだけで魔術が使えるようになるわけではないが、膨大な情報が収録された貴重な本だった。
全巻が揃っているのは魔術師ギルドだけと言われており、普通、個人で所有できるものではない。
「……ゲンジュウっていうのは『幻獣』の事で?」
「他にどんなゲンジュウがあるんです?」
それがどうかしたのかと言わんばかりのジルバール。『魔術大全』だけでも驚きだが、世界に数冊しかないと言われる『幻獣図鑑』まで所有していたと知って、誰もが沈黙した。
しかも、それを読んだティアが幻獣に興味を持ったとしたら、賭けの報酬として『生きた幻獣』を要求される可能性も出てくる。
衝撃を受けて頭を抱えたり、倒れたりする者が続出する中、ジルバールは今ようやく気付いたというようにゲイルとゼノスバートを見た。
「おや、ゲイルではありませんか。それにゼノも」
「帰ったぜ、マスター」
「お久しぶりですなぁ、マスター。相変わらずお美しい」
ゲイルとゼノスバートは周りの惨状を気にせず、和やかに挨拶する。
「……二人揃うと、悪ガキだった頃のあなた達を思い出してしまいますね。二人とも、あの頃と全く変わりません」
「「いや、変わっただろ」」
「そうですか?」
声を揃えるゲイルとゼノスバートに、ジルバールは涼しげな顔で答える。
そして、今度はベリアローズを見た。
「そちらは?」
「孫のベリアローズです。せっかくなので、ギルドに登録させようと思いましてな」
そのゼノスバートの言葉に、ベリアローズは目を丸くした。
「っな、お祖父様っ。僕がなぜ冒険者などにッ……んっんっ~」
「この坊ちゃんを鍛える場所が欲しくてな。訓練場を使わせてほしいんだが」
ベリアローズはゲイルに口を塞がれ、ゼノスバートに肩を押さえられていた。そのせいで身動きができない間にも、話は進んでいく。
「登録するなら構いませんよ。それにしても、ゼノの孫ですか……似ていませんね」
「ベルは母親似ですからな」
「顔もそうですが、何より雰囲気ですよ。暇さえあれば奇襲をかけてきたあなたの孫とは思えない、貴族らしい少年ですね」
奇襲という言葉に、ベリアローズは眉を寄せる。
「あれは、なかなか稽古をつけてくれないマスターが悪いのですよ」
不満げに言うゼノスバートに対し、ジルバールは呆れ顔で溜め息をこぼす。
「連夜の闇討ちに、白昼堂々の奇襲。本当に面倒な悪ガキでしたねぇ。二人とも当主になって、ようやく大人しくなったと思っていたのですが……今のあなた達は昔と同じ空気をまとっています」
その話を聞いたルクスが、挑戦的な笑みを浮かべてジルバールに歩み寄った。
「そんな稽古でしたら、私もぜひ参加させていただきたいのですが」
「おや。ティアの護衛として力不足だと自覚していたのですね」
「ティアとは常に一緒にいますし、何かあればこの身を犠牲にしてでも守るつもりです。しかし所詮、私は若輩者。何百年もかけて強くなったジルバール殿には敵いませんよ」
「そうですねぇ。手加減したつもりでも、うっかり重傷を負わせてしまうかもしれません」
二人とも笑顔で言い合っているのが、実に不気味だ。
「くれぐれも闇討ちにはお気を付けください」
「そちらこそ、返り討ちに遭いたくなければ、十分な備えをしておいた方がいいですよ」
とりあえず、この二人の仲が悪い事はベリアローズ達にも分かった。そして今までの会話を聞くに、どうもティアを取り合っているようだ。アレのどこがいいのかと、ベリアローズは首を傾げる。
「っ……!?」
突然、背筋に悪寒が走り、ベリアローズは身を震わせた。
不思議に思って周りを見回したが、特に不審な人物はいないので気のせいだろうと結論付ける。
その傍には、彼がティアを疎ましく思っていると察した水王が、凄みのある笑みを浮かべて立っていた。だが、それに気付いたのは、この場で唯一精霊視力を持つルクスだけなのだった。
◆ ◆ ◆
魔術師ギルドへ行くために執務室を出たシェリスは、そこで懐かしい者達と顔を合わせた。ゼノスバートとゲイルとは、彼らがティアと同じくらいの歳であった時からの知り合いだ。
ゼノスバートは伯爵家の跡取りにしてはかなりヤンチャで、強くなりたいから稽古をつけてくれと言って、護衛役のゲイルと共に朝晩問わず挑んできたのである。
当時のシェリスは、業務上必要な時しか人と関わりを持たず、ギルドの職員達でさえ近寄りがたそうにしていた。そんな中、唯一真正面から向かってきたのが、ゼノスバートとゲイルだったのだ。
最初シェリスは暇潰し程度にしか考えておらず、適当にあしらっていた。けれど今思い返せば、悪くない時間だったと思う。
いつしかシェリスも二人の力を認め、訓練場での正式な手合わせをするようになっていた。その甲斐あって、ゲイルはこの街で唯一のAランク冒険者となり、ゼノスバートも護衛など意味がないほどの実力をつけたのである。
そんな彼らの傍らに、一人の少年がぼーっと突っ立っていた。ゼノスバートの孫だというが、一見そうとは思えない。気にかける必要もないと判断しかけたシェリスだが、よくよく考えてみれば少年はティアの兄だ。それに気付くと少しだけ興味が湧いた。
どこか陰鬱な空気をまとい、眉間に皺を寄せている姿は、シェリスの目には滑稽に映る。
そんな姿を観察していると、ルクスが突っかかってきた。相変わらず可愛げのない奴だ。
「これからどこかに行かれるのでは?」
「ええ。はっきり言って、あなたに付き合っていられるほど暇ではありませんので」
認めたくはないが、ルクスはなかなか鋭い。今も、シェリスが薄手の外套を着ている事に気付いたのだろう。まったく忌々しい男だ。常にティアの傍にいるのも気に入らない。
苦々しい気持ちでいると、ゼノスバートが問いかけてきた。
「どちらに行かれるので?」
「魔術師ギルドです」
「ほう。ご一緒してもよろしいでしょうか? 孫にこの街を見せてやりたいのです。ずっと田舎におりましたからな。ギルドに来たのも初めてなのですよ」
そう言って笑うゼノスバートに、好きにすればいいとシェリスは答える。
どうも昔から、この屈託のない笑顔に弱いのだ。
(なんなんでしょうね。憎めないというか、嫌いじゃないんですよね)
こんな時、彼がお気に入りだと認めるのではなく、自分もずいぶん丸くなったものだなと思うところが、実にシェリスらしい。
一行を連れてギルドを出たシェリスは、自分も魔術師ギルドは初めてだというゼノスバートに呆れて、説明してやる事にした。
「魔術師ギルドには三つの部署があります。一つ目は魔術師の育成を担当する『魔術師教育学部』で、マルスト魔術学校を運営しています。二つ目は魔導具の開発を行う『魔導工学部』で、商業ギルドと連携して流通も管理しています。そして三つ目、最も重要なのが『魔術研究部』です。あらゆる魔術の情報や文献を管理し、失われた魔術の復活や新しい魔術の研究を行っています」
三百年前、世界の覇権をめぐる戦争があった。
多くのものを失ったものの、比較的短期間で終結した要因は、戦い方にある。大魔術によって、敵将を城や街ごと消し去る戦術がとられたのだ。
戦争終結後、魔術師達はその大魔術を封じた。後世に残す事がないよう、資料もほぼ全て焼かれたのである。更には貴族を中心として魔術を排斥する動きが起こり、魔術師達も次第に数を減らしていった。
しかし、魔術が生活を支えているのも事実だった。かまどの火をつけるような生活魔術はもちろん、魔獣を退治するためには小規模な攻撃魔術も必要となる。
だが、それに気付いた時には既に多くの文献が失われ、魔術師達もほんの一握りしか残っていなかった。剣などの武器だけでは対処しきれないものもあるのだと、魔術を排斥した貴族達は知らなかったのだ。
やがて多くの人々の願いにより、数少ない魔術師達が立ち上がった。そして国の意思に左右されず、人々を救うために結成された組織が魔術師ギルドなのである。
彼らは残された魔術の知識を守り、後進の育成に努めた。『人々のためだけに力を使う』――ただその一念を胸に。
シェリスの説明に頷きながら、ゼノスバートが口を開く。
「伯爵位にあった時は、結局一度も関わりを持てず……。魔術師ギルドは、貴族の間では謎に包まれた組織と思われておりますからな。『魔研』のイメージが強すぎて、近寄りがたいですし……」
貴族が関心を持つのは、魔術師ギルドではなく、そこにいる優秀な魔術師だけ。貴重な魔導具には興味を示すが、それらはたいてい『魔術研究部』――通称『魔研』が管理している。
貴族達は、この『魔研』が苦手だ。それというのも、魔研に所属する者達は皆、権力や金に興味のない『研究バカ』ばかり。関心を持つのは魔術だけで、それ以外のものでは一切釣れないため、貴族達にとっては扱いにくい存在だからだ。
だがそのおかげで、未だに魔術師ギルドが国から干渉を受ける事はなかった。
「お得意の買収ができませんからね。その上、『魔研』にいるのは対人能力ゼロの変わり者ばかり。魔術バカの変人しかいないとも言えます」
そう言うシェリス自身も彼らと大差ないのだが、本人は認めていない。
「……そんなところへ、なぜ行くのですか……? 変人しかいないのでしょう?」
ベリアローズが怪訝な顔で言った。
「その変人達に用はありませんよ」
「――? ではなぜ……」
「私の行動にケチをつけるのですか? 勝手についてきたのはあなた方ですよ?」
「……」
黙り込んだベリアローズを、シェリスは改めて観察した。
彼はティアとは全く似ていないし、雰囲気も真逆に近い。むしろ馬鹿な貴族達と似た考えを持っているようだ。
(これがティアの兄ですか……いかにもティアが嫌いなタイプですね。まぁ、他人ならともかく仮にも兄ですから、ティアなら嬉々として再教育する可能性もありますが……)
なんにせよ、ティアの邪魔にならなければいいかと結論付ける。
そんなやり取りをしているうちに、目的地である魔術師ギルドに着いた。多くの人で賑わう冒険者ギルドとは違って二人の受付嬢しかおらず、とても静かだ。
「ようこそジルバール様。今日はどういったご用件でしょうか」
「創工士の作業の進捗を確認しに来ました。通っても?」
「はい。お通りください。そちらの方々もご一緒でしょうか?」
シェリスが後ろを振り返ると、ゼノスバートが嬉しそうに頷いた。大人しくついてくる彼らと共に、シェリスはギルドの奥へと向かう。
そして建物の裏に出ると、そこにはいくつもの小屋が建っていた。その周りでは、創工士達が作業している。
「これは?」
ゼノスバートが首を傾げた。彼らには、さぞ奇妙な光景に見えている事だろう。本来は魔術の実験に使われる広い演習場に、謎の小屋が六つも造られているのだから。
「創工士の大会が行われているのです。優勝者の作品は、新しく開発された魔導具に実装されます」
「魔導具に?」
不思議がる彼らに、ティアと二人で開発した【ゲルヴァローズの欠片】について説明する。
「そんなすごいもんができたのか? 俺も一つ欲しいな」
冒険者であるゲイルにとっては、是非とも手に入れたい一品だろう。なんといっても、家を持ち歩けるのだ。野営用のテントより格段にいい。
「あそこで作業しているのは、女性ではありませんか?」
感心しながら眺めていたゼノスバートが、ナルカの存在に気付いたようだ。
「そうですよ。彼女は今回の最有力候補です」
「女性の創工士ですか……」
「何か問題がありますか?」
「いや、問題というわけでは……」
ゼノスバートだけでなくゲイルまでもが、女性の創工士がいるという事実に驚いていた。
「性別で職業を制限するのは、人族ぐらいです。エルフの里長には女性もいますし、戦士も多い。能力があれば男も女も関係ないでしょう」
「なるほど。確かに……」
「冒険者にも強い女がいるしな」
そう納得するゼノスバートとゲイル。シェリスがふとベリアローズに視線を向けると、彼は嫌なものを見るような目でナルカを見ていた。
(感情を隠すのが下手ですね。私としては、分かりやすくていいのですが……これはティアが昔言っていた『貴族病』というやつですかね)
『貴族ってさ、相手が自分より格下だと知ると、感情がモロ顔に出るよね。そんで、途端に配慮が足りなくなるの。あれはもう病気だよね』
前世では王族だったティアも、貴族に対しては色々と思うところがあるのだろう。王妃マティアスの出自を嫌う貴族達は、彼女に直接喧嘩を売れない分、娘のサティアを標的にしてストレスを発散していた。
『病気だと思っちゃえば、あんまり腹も立たないんだよね。うん。これからは「貴族病」って呼ぼう。そんで、これはもう末期でどうしようもないと思ったら、こっちが飽きるまで遊んであげてもいいよね。ふふっ、なんか楽しみになってきた』
(やっぱりティアなら再教育を選びますか。この少年がどう変わるか、見ものですね)
密かな楽しみができたと、シェリスは一人ほくそ笑むのだった。
◆ ◆ ◆
一方、伯爵家に残ったティアは、母シアンとお菓子作りをしていた。
「ティアちゃん? それは……ちょっと伸ばしすぎじゃないかしら」
「へ?」
ティアの手元には、紙のように薄くなった焼き菓子の生地があった。
「どれだけ薄くできるかやってみたの。すぐにちゃんと作り直すよ」
そうティアは咄嗟に誤魔化す。
少し考え事をしていたのが悪かった。だが、それも仕方のない事だろう。
只今、冒険者ギルドに着いた御一行様の現状を、風王が実況中継してくれている。そして今まさに、ザランとその仲間達が、墓穴掘りの真っ最中だった。
《『縛り技全集』とはなんでしょう? ルクスがいきなり怒り出しましたよ?》
(サラちゃんっ……そんなおバカなところは嫌いじゃないよっ……けど、これじゃ本当に『墓穴』に埋められちゃうよ!?)
心配性で過保護なルクスには知られたくなかった本の数々が、ザランとティアを追い詰める。
(没収!? 本に書かれている事を実践する前に、まさかの没収!?)
ティアが賞金首リストを所持している事は、ベリアローズのおかげでうやむやになっていたというのに、ザランは本当に間の悪い奴だ。
(サラちゃんめっ)
しかし、そのティアの怒りはすぐに同情に変わった。
《『闇討ち』というのは、日常的に行われているのでしょうか? 人族は面白い習慣を持っているのですね》
(そんな習慣はありません!!)
ただでさえ物騒な精霊王達が、更に過激になってしまいそうなので、ティアは必死に否定した。中でも特に過激な水王が現場にいる事を思い出し、ティアの顔から血の気が引いていく。
「ティアちゃん? お顔の色が悪いわ。ほら、窯の近くにいらっしゃい。暖かいわよ」
「……ソウデスネ……」
こんな時、天然なシアンは癒やしだった。
「キレイに焼けるといいわね」
「はい。きっとおいしくできます」
ニッコリ笑うシアンに励まされ、ティアは再び風王の声に耳を傾ける。
《一の長が来ましたわ》
風王はシェリスの事を『一の長』と呼ぶ。エルフの『一の里』を治める里長でもあるため、そう呼んでいるようだ。
そのシェリスが出てきたと聞いて、ティアは嫌な予感しかしない。案の定、シェリスはティアに渡した本の題名をあっさり口にし、その場に衝撃が走ったようだ。
(シェリーってば、正しい物の価値を知らないんだよね……)
自分の事は棚に上げ、ティアは溜め息をついた。
シェリスの蔵書と知識は、この数百年間の出来事やあらゆる研究成果を網羅している。更に冒険者であった頃に手に入れた、貴重なアイテムも保有していた。国宝級の書物も持っているのだが、それをなんとも思っていないのが時に困り物だ。
《『魔術大全』などどうなさるのです? ティア様なら、より優れた魔術も開発できるではありませんか》
(さすがにそんな事、ホイホイとはできないよ。それに、全属性の魔術を把握できてるわけじゃないしね。新しく知った光と闇……それと神っていう属性も謎なんだもの)
《それらの属性を使わずとも、わたくしにお命じくださればいいのです。どんな敵が現れようと、全て蹴散らしてご覧に入れますよ?》
(うん……でも、知識を持ってて損はないからね……)
最近、精霊王達が以前にも増して好戦的だ。物静かな火王と地王は問題ないが、風王と水王は危ない。それこそ相手が気に入らなければ、『闇討ち』でもしてしまいそうな節がある。
その時、お菓子が焼き上がるのを待っていたシアンが、意を決したように口を開く。
「ねぇ、ティアちゃん。お母様ね、剣を使えるようになりたいの」
「へぇ……えっ、剣!?」
「そう。剣よ」
いきなり爆弾発言をした母を、ティアはまじまじと見る。いつものおっとりした雰囲気はなく、意思の強さを感じさせる真剣な表情がそこにあった。
「どうして?」
なんとなく察してはいるが、ティアはシアンの口からその理由を直接聞きたかった。
「私ね、ずっと思っていたの。元気になって走ったりティアちゃんと遊んだりできるようになったら、次はベルちゃんやフィスタークを守れる強い女になるんだって」
そう言って、シアンはにっこりと微笑んだ。その笑顔はとても綺麗で、その目は夢を叶えようとする人の目だった。前世からこんな目に弱いティアは、笑顔で頷く。
「……分かった。でも、お母様に剣は似合わないよ。とっておきの戦い方を私が教えてあげる」
「ティアちゃんが? 嬉しいわっ。みんなの言ってた通りねっ」
「みんな?」
意味が分からず、ティアは目を瞬かせる。シアンは口元で両手を合わせ、嬉しそうに説明してくれた。
「ええ。屋敷のみんなに聞いたらね、ティアちゃんはよく訓練場に顔を出すから、そういうのが好きなんだろうって。だから、戦い方を教えてもらうなら、ティアちゃんに頼むといいって言われたの」
「そ、そうですか……」
それはきっと、大事な伯爵夫人であるシアンに危ない事はさせたくないという使用人達に、はぐらかされただけだろう。少々天然なシアンを、使用人達も好ましく思っているのだ。
ティアが戦えると知らない彼らは、シアンにおままごとのような遊びで満足してもらおうと考えたに違いない。だが残念ながら、ティアは努力しようとする女性の味方だ。
「なら、お父様達にも内緒で訓練しましょう。これから毎日、夕方に私の部屋で」
「まぁ、内緒なの?」
「はい。強くなって驚かせてやりましょう」
「うふふっ。いいわねっ」
楽しそうに笑うシアンは、本当に可愛らしい。そう思っていると、風王が報告した。
《ティア様。ルクス達は魔術師ギルドへ向かうようです》
では着いたらまた教えてほしいと、ティアは風王に伝える。ただ待つのは退屈なので、シアンにこう提案した。
「お母様、さっそく今からやりましょうか。お菓子が焼ける間に少しだけ」
「名案だわっ。さすがはティアちゃんね」
控え室で待機していた料理長に後を頼み、ご機嫌なシアンと手を繋ぐ。そして楽しい悪戯の前のワクワクする気持ちを胸に、ティアは部屋へと向かうのだった。
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。