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連載
583 過去編 23 国を想って
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2017. 4. 24
楽しみにしていただいている皆様。
申し訳ございません。
ドクターストップにより、次回連載を5月5日にさせていただきます。
しっかり休みます。
では、本日投稿分をどうぞ。
**********
騎士達には、誰よりもこの国の現状を憂いているのがサティアだと知っている。
自分が、母マティアスのように絶対的な存在だったなら、こんな事態になる前に食い止められたはずなのにと。
「いいえ。一番お辛いのは、サティア様やレナード様です。どうかご無事で、この国を一から立て直しましょう。大丈夫です。怪我を負った者はおりますが、この戦いで死者は出ていません」
「そう……だね。上手くやってくれて助かったよ」
反乱軍との小競り合いは、全て上手く騎士達が戦う振りをして撤退、または引き分け。騎士達に、率先して民を傷付ける者はいない。それでもわざとらしくならず、変わらず反乱軍の士気が高いのは、それだけ騎士達の実力がずば抜けているからだ。
「そのような……我々は、もっとサティア様のお役に……」
「ううん。充分だよ。国を頼むね。引退したけど、困ったらキルじぃちゃんを頼ってさ。まだまだ呆ける気はないって息巻いてるって聞いたから」
「そうでしたか。キルスロート様ならば、確かに良い相談役になっていただけるでしょう」
騎士達の中にも慕っていた者は多い。長く魔術師長として勤めてきたキルスロートは、頼りになる先生だったのだから。
「じぃちゃんが呆けるのは見たくないからね。煩いくらいにしてやってよ」
そう言って、サティアはまたねと言わんばかりの気安さで手を振ると寄宿舎を飛び出した。
本当はもう会う事もないかもしれないと感じている。それでも、それは口に出来なかった。
この後、反乱軍の幹部達を王に会わせる。確かにそこに王がいるのだと。もう正気ではないのだと教える為に。それから、騎士達に上手く反乱軍の者達を逃してもらい、城を爆破する。国の象徴を消すのだ。
民達には示さなくてはならない。自分たちを苦しめた国は一度滅んだのだという事を。城を爆破するなど、大げさかもしれない。けれど、一度離れてしまった人の心を取り戻すのは簡単な事ではない。
レナードの計画では、レナード自身が父親である王を討つつもりだったらしい。けれど、周りのレナードを知る者達が皆、反対していたようだ。
当然だ。それが国のためであったとしても、誰よりも王を尊敬していたレナードにその王を討たせるなどできない。
次期王としての務めだと言われても、頷けない。マティアスもなく、国防の頼みの綱となり得たサティアも、レナードは国から出してしまった。
ここでレナードまでおかしくなってしまえば、国は間違いなく隣国から蹂躙され、奪われてしまうだろう。国政に関わる誰もが、それだけは避けなくてはと必死だった。
だからサティアがそれ以外の方法を提示したのだ。それに、臣下達は頷いた。
何より、もしもレナードに何かあっても、サティアは友好国であるラピスタに嫁いだのだ。セランディーオは秀れた人物と情報も届いている。万が一の場合はラピスタに国を明け渡す事で、民達は守られる。
だが、それはあくまでも、どうにもならなくなった場合のものだ。王はダメなのかもしれないけれど、レナードが王として国を立て直す事に問題はないだろう。
民達と協力し、また数年前の賑やかだった国に戻すのにそう時間はかからないはずだ。他の兄姉達もこれに加われば、臣下達の負担も軽減できる。
だが、自分はと思うのだ。王だけを一人にする事は出来ない。母であるマティアスを本気で愛し、それを亡くして壊れてしまった人だから。もうダメだと分かったなら、一緒に母の元へ行ってやろうと思った。
この考えだけは、誰にも悟られてはいけない。兄姉達に知られれば、自分達もと言い出して動かなくなるだろう。かなりの確率で、王妃達も加わる。そうなってはレナードの支えが減ってしまう。
サティアは、離宮に向かいながら、苦笑して呟く。
「……レナード兄様はシスコンだもん。絶対、私がいなくなったら立ち直るのに時間がかかるよね。それを考えたら……あ~、もっと隠密行動にするんだった。それと、セリ様には悪いけど、国が立ち直るまで、私が生きてるように振舞ってもらって……でも、姉様達は誤魔化せないよね~」
いつもの警備は今、この城にはない。定期的に兵達が巡回する音も、メイド達が掃除する音も、何も聞こえない。
だから、サティアは必要以上に今の状況なんて無視した明るめの声で、独り言を発するのだ。
「まぁ、あいつらとか、団長達なら上手く誤魔化してくれるよね~。『国のためなら最大級に空気を読める子になる』もんね。うんうんっ。キルじいちゃんの言葉は偉大だ」
いつだったかキルスロートが言っていた。体力バカな所は否めないが、団長達をはじめ、騎士達は国のためならば嘘を吐くのも厭わない。文字通り、墓まで持っていくだろう。
レナードを、国を支えるための嘘ならば、彼らは喜んで吐く。それを信じて、サティアは離宮へ向かった。
ちょうどその時、離宮にかかっていた結界が解ける。
「え……なんで……」
それは、魔力を正確に見る目を持つサティアにはわかった。術者が解いたわけではない。術が解けてしまったのだ。
「まさかっ」
あの結界を張っていたのは中にいる王妃達だったはず。きっと彼女達に何かあったのだ。
サティアは誰もいない王宮を全速力で駆ける。その先に、最悪の結末があると予感があっても……
**********
舞台裏も休載。
では次回、金曜5月5日です。
よろしくお願いします◎
楽しみにしていただいている皆様。
申し訳ございません。
ドクターストップにより、次回連載を5月5日にさせていただきます。
しっかり休みます。
では、本日投稿分をどうぞ。
**********
騎士達には、誰よりもこの国の現状を憂いているのがサティアだと知っている。
自分が、母マティアスのように絶対的な存在だったなら、こんな事態になる前に食い止められたはずなのにと。
「いいえ。一番お辛いのは、サティア様やレナード様です。どうかご無事で、この国を一から立て直しましょう。大丈夫です。怪我を負った者はおりますが、この戦いで死者は出ていません」
「そう……だね。上手くやってくれて助かったよ」
反乱軍との小競り合いは、全て上手く騎士達が戦う振りをして撤退、または引き分け。騎士達に、率先して民を傷付ける者はいない。それでもわざとらしくならず、変わらず反乱軍の士気が高いのは、それだけ騎士達の実力がずば抜けているからだ。
「そのような……我々は、もっとサティア様のお役に……」
「ううん。充分だよ。国を頼むね。引退したけど、困ったらキルじぃちゃんを頼ってさ。まだまだ呆ける気はないって息巻いてるって聞いたから」
「そうでしたか。キルスロート様ならば、確かに良い相談役になっていただけるでしょう」
騎士達の中にも慕っていた者は多い。長く魔術師長として勤めてきたキルスロートは、頼りになる先生だったのだから。
「じぃちゃんが呆けるのは見たくないからね。煩いくらいにしてやってよ」
そう言って、サティアはまたねと言わんばかりの気安さで手を振ると寄宿舎を飛び出した。
本当はもう会う事もないかもしれないと感じている。それでも、それは口に出来なかった。
この後、反乱軍の幹部達を王に会わせる。確かにそこに王がいるのだと。もう正気ではないのだと教える為に。それから、騎士達に上手く反乱軍の者達を逃してもらい、城を爆破する。国の象徴を消すのだ。
民達には示さなくてはならない。自分たちを苦しめた国は一度滅んだのだという事を。城を爆破するなど、大げさかもしれない。けれど、一度離れてしまった人の心を取り戻すのは簡単な事ではない。
レナードの計画では、レナード自身が父親である王を討つつもりだったらしい。けれど、周りのレナードを知る者達が皆、反対していたようだ。
当然だ。それが国のためであったとしても、誰よりも王を尊敬していたレナードにその王を討たせるなどできない。
次期王としての務めだと言われても、頷けない。マティアスもなく、国防の頼みの綱となり得たサティアも、レナードは国から出してしまった。
ここでレナードまでおかしくなってしまえば、国は間違いなく隣国から蹂躙され、奪われてしまうだろう。国政に関わる誰もが、それだけは避けなくてはと必死だった。
だからサティアがそれ以外の方法を提示したのだ。それに、臣下達は頷いた。
何より、もしもレナードに何かあっても、サティアは友好国であるラピスタに嫁いだのだ。セランディーオは秀れた人物と情報も届いている。万が一の場合はラピスタに国を明け渡す事で、民達は守られる。
だが、それはあくまでも、どうにもならなくなった場合のものだ。王はダメなのかもしれないけれど、レナードが王として国を立て直す事に問題はないだろう。
民達と協力し、また数年前の賑やかだった国に戻すのにそう時間はかからないはずだ。他の兄姉達もこれに加われば、臣下達の負担も軽減できる。
だが、自分はと思うのだ。王だけを一人にする事は出来ない。母であるマティアスを本気で愛し、それを亡くして壊れてしまった人だから。もうダメだと分かったなら、一緒に母の元へ行ってやろうと思った。
この考えだけは、誰にも悟られてはいけない。兄姉達に知られれば、自分達もと言い出して動かなくなるだろう。かなりの確率で、王妃達も加わる。そうなってはレナードの支えが減ってしまう。
サティアは、離宮に向かいながら、苦笑して呟く。
「……レナード兄様はシスコンだもん。絶対、私がいなくなったら立ち直るのに時間がかかるよね。それを考えたら……あ~、もっと隠密行動にするんだった。それと、セリ様には悪いけど、国が立ち直るまで、私が生きてるように振舞ってもらって……でも、姉様達は誤魔化せないよね~」
いつもの警備は今、この城にはない。定期的に兵達が巡回する音も、メイド達が掃除する音も、何も聞こえない。
だから、サティアは必要以上に今の状況なんて無視した明るめの声で、独り言を発するのだ。
「まぁ、あいつらとか、団長達なら上手く誤魔化してくれるよね~。『国のためなら最大級に空気を読める子になる』もんね。うんうんっ。キルじいちゃんの言葉は偉大だ」
いつだったかキルスロートが言っていた。体力バカな所は否めないが、団長達をはじめ、騎士達は国のためならば嘘を吐くのも厭わない。文字通り、墓まで持っていくだろう。
レナードを、国を支えるための嘘ならば、彼らは喜んで吐く。それを信じて、サティアは離宮へ向かった。
ちょうどその時、離宮にかかっていた結界が解ける。
「え……なんで……」
それは、魔力を正確に見る目を持つサティアにはわかった。術者が解いたわけではない。術が解けてしまったのだ。
「まさかっ」
あの結界を張っていたのは中にいる王妃達だったはず。きっと彼女達に何かあったのだ。
サティアは誰もいない王宮を全速力で駆ける。その先に、最悪の結末があると予感があっても……
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舞台裏も休載。
では次回、金曜5月5日です。
よろしくお願いします◎
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