女神なんてお断りですっ。

紫南

文字の大きさ
442 / 457
連載

621 お返しです

しおりを挟む
2017. 10. 2

**********

マティに飛び乗ったティアは、先ずはと結界を張る為の残りの二つの魔導具を手にする。

「マティ、魔導具をセットするから、端までお願い」
《わかってるって、任せてよ》

ティアが言わずとも、マティには誓約者であるティアが何をしたいのかが分かるのだ。だから、ティアが飛び乗った時点で、マティはその場所へと駆け出していた。

一つはすぐに仕掛けられた。ほんの少し魔力を流すと、魔導具はそれ自体を守るための結界を張り、動かせなくなる。ただし、その状態を保てるのは一時間ほどだ。最後の一つを仕掛けなければ使えなくなってしまう。

とはいえ、これはシェリスとティアで作った特別製。本来ならば数分しか猶予が取れないというのが同類の魔導具である。一時間も猶予があるのだから、余裕だろうとタカを括っていたティアだったが、これを当然、トゥーレガルフは許さなかった。

「ちょっ!? 図体デカイくせに速っ」
《マティに追いつくなんてっ!》

もちろん、平原ではないのだから、マティの動きは制限される。そんな事情はあるものの、マティの動きについてくるものはそうそういないはずだった。

「っ、最後の一個がっ」
《うりゃぁっ》

近付いてきたトゥーレガルフに、マティが咄嗟に鋭い爪で真ん中の頭を斜めに引っ掻く。

《グラァっ!》
《ふんっ、片目潰してもまだ五個も目があるなんて反則だぁっ》
「マティ……」

確かに真ん中の一体の目を片方潰したとしても、両脇の奴らには痛くも痒くもないだろう。

《ねぇ、主。あれってケンカしたりしないのかな?》
「マティ……余裕?」
《ヨユウはないよ? だって、追いつかれちゃうんだもん。結構イラっときてます》
「だよね~」

なぜだろう。かなりピンチなのに、いつもの癖というか、軽口が出てしまう。

《グルルルァっ》
《うわわっ、スゴイの来るっ!》
「避けてよっ!?」
《ガンバるっ!!》

あの厄介な三種合成の技がティア達に向かって放たれる。

それをなんとかやり過ごす。とはいえ、大きな穴が固い石の地面に空いてしまった。バカにでいない威力だ。それに肝を冷やしながらティアも反撃に移る。

「それがどんだけ厄介か思い知りな」

ティアは三段階に設定した魔法陣を五つ空中に出現させた。

一つ目は火、二つ目が風、三つ目が光の雷電だ。今は何とか隙を作り、最後の魔導具を仕掛ける時間を稼ぐのが目的なので、小さくても良かったのだが、威力と大きさはあえて無理をして奴と同じようにしてやった。

「いっけーっ! 名付けてっ! 【炎雷砲】!!」
《おおぉぉっ。スッゴイ》
「マティ、今のうち」
《ラジャっ》
《グァァァァっっ》

声の具合から、それなりのダメージはありそうだとニヤリとしながら最後の魔導具をセットする。そして、発動させるため、魔力を流しこもうとした時だった。

「え……ルクス?」

マティがやって来た時と同じように、ルクスの気配が唐突に現れて飛び込んできた。

「ティアっ、無事かっ」
「あれ? ディストレアっ!?」
《わぁぉ》

マティの本来の姿を見せて、仲間達を驚かせるのが普通だったティアとしては、初の驚きだ。

「あ、えっと、これは……マティアス様が……」
「母様がっ?」
《説明は後だ。それよりもコレをどうにかするぞ》
「あ、はい……なんだろう、母様っぽい……」

雰囲気が似ているのだろうか。有無を言わせない何かがある。

《マティも逆らわない方が良い気がする……》
「やっぱり?」

なぜだろうとこの危機的状況でも、揃って首を傾げてしまった。そうしながらも、結界を発動させたのは条件反射だ。

そうすると、ルクスも気を引き締め相手を睨む。

「一体あれは?」

答えたのはルクスが連れているディストレアだ。

《降魔獣トゥーレガルフだ。地上に厄災を招き、滅びをもたらす。神の怒りを体現した魔獣と言われている》
「神の……」

ルクスは顔色を変える。当然だ。それは神の使徒に他ならない。

《神がもたらした神具。それを悪意のまま使い続けることで、生み出される》
「神具……もしかしてあの水晶の玉……神具だったのっ?」
《そこに転がっているものか。おそらく神玉だな。最強の結界具と言われていた》

それが何だったのか分かり、ティアは目を見開く。神玉はラピスタの神具だったはずだ。血筋は今のフリーデル王国の者になる。

「だから、王太子が……」

王太子が狙われたのはこの神具の使い手とするためだったのだろう。

《気をつけろ。あれの体毛は我らのものより頑丈だ。普通の魔術では傷など付かん。牙と爪には毒がある。それほど強いものではないが、治癒魔術は効かん。この我の目の傷がそうだ。いつまでも疼くでな》
「戦ったことがあるの?」
《うむ。我が唯一この世で苦戦した相手だ。なぁに、倒せぬものではないわ》
「それは心強いね」

先ほどの魔術の砲撃によって、トゥーレガルフは動きを止めていた。白銀にも輝くその体毛は、所々くすんで焦げているように見える。

「あははっ、倒せるヒントを自身で教えてくれるなんて良い奴じゃん」
《確かに効いている。余裕だな、姫よ》
「そんな事ないって。余裕だったら結界も私自身で張ったよ」
《なるほど。では行くぞ》
「うんっ」

ここからが正念場だ。

**********

舞台裏の裏では。

ティア「ブタカン。生きてる?」

い、いえ……ほぼ死にかけと申しますか……全てにおいて努力中であります……。

ティア「でも、本当に濃縮したね」

ええ……削りつつも、キャストの方々の出番はそれなりに長めにと頑張ったつもりです。

ティア「カランタが裏で号泣してたよ。おいしいところ作ってやったんだって?」

そこはまぁ、この後の濃縮具合を鑑みた結果と申しましょうか。あくまでも自然な流れですよ?

ティア「そうなの? なら、なんであんなに喜んでるんだろ……」

それはティアちゃんとの絡みが……。

ティア「うん?」

いえいえっ、どこが嬉しかったんでしょうね?
私としましては、第一王子とビアンさんの機嫌を取れた事の方が大きいのですが。

ティア「あ~、確かに機嫌良かったね。あっ、あとウルさんが生き生きしてたっ」

そこは普段の功を労ったためでしょうね。とにかく、削ったのに不満が出なくて良かったです。

ティア「まぁね。一人、マジで怖いほど機嫌の良いのが裏にいるのが心配ではあるけど……」

あの方ですか……普段からイっちゃってるんで、近付かない方がいいです。

ティア「それ、ブタカンが言う? 私との絡みあるんだけど?」

あ~、え~っと、それで該当部ですけれど、264話までの予定です。
収録しきれなかった部分は、後日閑話や番外編として書き直させていただきますねっ。

ティア「ちょっと、なに誤魔化そうとしてんの?」

い、いえ、誤魔化すなんてっ。
大体、舞台とは人と人との絡みがあってこそと言いますかっ。
ぶっちゃけティアちゃんくらいしか相手にできないと申しますかっ……はっ!

ティア「へぇ……危ないと分かった上での設定だと……」

だっ、だって、ティアちゃん最恐じゃないですかっ!

ティア「キョウの意味が違ぁうっ! お陰で目ぇ付けられたでしょっ!」

それは元からですって!

ティア「問答無用っ!」

ふぎゃぁぁぁっ!!


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


満足いただけるものになるよう、頑張ります。


味方も到着。倒しましょう。


次回、通常に戻るにはもう少しお待ちください。
また来週、月曜9日0時です。
よろしくお願いします◎

しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。