女神なんてお断りですっ。

紫南

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連載

634 まるで弟のようで

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2017. 12. 30

**********

卒業式は、滞りなく進んだ。問題だったのは、その後だ。

式が終わったのは、昼前。この後、本来ならば卒業生は皆一度邸宅に帰り、パートナー同伴の夜会の準備に移る。

この日の夕刻から、学園のダンスホールで舞踏会が開かれるのだ。しかし、今回は急遽これが変更された。

「では、卒業生の皆さん。次の集合は三時間後となります。その後、王都に向けて出発し、王宮での舞踏会となりますので、よろしくお願いします」

卒業式が終わる直前にこの発表があった。だが、どうやら父兄達はこの予定を予め知っていたらしい。

両親達は自分たちも舞踏会に出席する準備を万全に整えた状態で、今日の式に臨んでいたようなのだ。子ども達のドレスもいつの間にかグレードアップされており、王宮での舞踏会仕様で用意されている。

知らなかったのは卒業生達だけ。教師達がどうにも朝から落ち着かないなと思っていたのだが、そのせいだったらしい。華やかな貴族社会からは一線を退いた教師達も、大半が出席することになるのだ。それも王宮。落ち着かないのも無理はない。

そうして、全員で王都へ向けて馬車で行こうではないかというのが、王の考えた今回のパレードの訳だった。

ただし、ティアだけは特別だと知ったのは、髪の色は本来の色でお願いしますと言ったラキアの言動を不思議に思った時だった。

「馬車に乗ってる間は良いでしょ?」
「いいえ。今からお願いします。何より、ティア様の乗られる最後尾の馬車は特別ですので」
「……特別……嫌な予感がするんだけど?」
「お気になさらず」
「いやいや、気になるからっ」

そんな押し問答を続ける間にも、ティアは飾り付けられていく。ティアの好きな濃紺のドレスは、シンプルながら上品かつ優美な細かな刺繍も至る所に施されており、実に手の凝った作りだった。

「仕上げはこちらのクラウンの飾りです」
「これはダメでしょ。これから王城に行くんだよ?」
「問題ありません。王からの贈り物ですから」
「……何をしてんのよ……」

仕上がったティアは、王女と言われても遜色ない華やかさと気品溢れる姿になっていた。

「完璧です。では、わたくしも着替えて参ります」
「あ、うん……」

ラキアは今や公爵の夫人だ。王家が関わる催し物に参加することに何の疑問もない。ラキアやエルヴァストとも一緒にいられるならと思うと、悪くないかもしれない。

そう思ったのを後悔したのは、用意された馬車へと半ば強引に乗せられた後だった。

「何コレっ!! 聞いてないんだけど!? なんでシェリーやカル姐まで!? あ、あれ? ギグスさん? 何でここに?」

馬車は壁がなく、そのまま姿が丸見えだ。二段構えの席になっており、前のシートになぜか連れられてきたドワーフのギグスと尻尾も耳も露わにした冒険者姿のサクヤとファル。

その後ろの一段高くなった席にティアを中心にして右手にシェリス、左手に麗しの魔王、カルツォーネが座っている。

「嬢ちゃん……何これ……俺、ダグストール先生の代わりとか無理なんだが……っ」

泣きそうというか、若干怯え過ぎて涙目になっているギグスさんを、隣に座るサクヤが笑って励ましている。

「ほらほら、ギグスさん。もっと堂々と。いいじゃない。ダクは憧れの先生なんでしょう?」
「それとこれとは別ですよね……?」

ティアの隣では、シェリスが上機嫌でティアを見つめている。

「ティア、美しいですっ」
「あ、ありがとう……とても状況説明してほしいんだけど……無理そうだね……」
「本当に素晴らしいですっ。手を繋いでもよろしいですか?」
「えっと……」

今までにないスイッチが入っている。どうすればと困っていれば、反対側から手を握られる。

「ならば、私も繋ごうかな。ティアの手は指が長いのだね」
「……カル姐……」

収拾がつかないうちに出発となる。そうして、しばらくして聞こえてきた沿道に並ぶ人々の言葉で気づく。

「馬車を囲んでる四人がサティア様の騎士だねっ」
「あっ、メイドっ。メイド騎士がいるっ」
「メイド……」

そこで、馬車の前方にマティに乗ったラキアがいること知る。

「ラキアちゃん!? とルクス……トヤさんいつの間に……後ろには……クロノスと……サラちゃん?」

前方左にはルクスがトヤに跨って進んでおり、後方には、クロノスがグリフォンに乗り、ザランが駿闘馬に乗って四方を囲んでいた。

「うんうん。正に女神の四騎士だね」
「カル姐……も説明する気なさそうだね……」

もうなるようになれと、ティアは全てを諦め、表面上はにこやかに王城までの道のりをただ馬車に揺られていたのだった。

◆◆◆◆◆

舞踏会は、明らかについ先程思いついたものではないといった様相を見せていた。それを確認してから、ティアは一人控え室に閉じ込められている。

「王様め……シルまで黙らせてたなんて……」

実際は、シェリスやカルツォーネといった面々によって、シルを始めとするクィーグの者達へキツく言い渡されていたようだ。

すなわち、ティアには直前まで知られてはならないと。近くにいるとわかっているシルだが、卒業式が終わった後から姿を一切現さない。間違いなく猛省中だ。

「シルっ。出てきて。分かってるから」

これでようやく出てきたシルは、かなり離れた所で片膝を突いていた。

「ちょっと……遠くない? いいんだよ。これ私が知ってたら、絶対逃走してたからね。口止めされてたんでしょ?」
「……弁明は……いたしません……ティア様に偽りを申すなどっ……」
「こらこら。いいんだって。思いつめないの。いいからこっち来て」
「ですが……」
「いらっしゃい」
「……はっ」

ティアまで後三歩という所で止まり、また片膝を突くシルに苦笑しながらティアの方から近づく。びくりと震える体を見て、クシャリとシルの頭を撫でた。

「バカね。怒ってないわよ。み~んなにハメられたのね~。けど良いわ。皆、祝おうとしてくれたのでしょ? シルもそれに協力したってだけ。そうでしょう?」
「……っ」

手はシルの頭に優しく触れたままだ。素直じゃない弟がいるみたいで、ティアは純粋に今の状況を楽しんでいた。

「ねぇ、シル。私、卒業しちゃったよ。これからどうしよう。サルバに帰ってもお兄様達のお邪魔になるよね。どこかに屋敷を建てて、そこに住もうかな。ラキアちゃんがすぐ私のところに来ちゃうし、エル兄様の領の辺りで良い場所を決めて……シルはどうする? 学園に残っても……」
「っ、お側に置いてくださいっ!」

気合いの入った宣言だった。

「ふふっ、うん。そう言うんじゃないかなって思ったよ。これから、一緒に冒険したりしようね」
「はいっ」

ようやく顔を上げたシルに笑みを向ければ、初めて見るような嬉しそう笑顔がそこにはあった。

「おんなじ顔だね……」

それは、かつてのアリアを思い出させる。綺麗な笑顔だった。

**********

舞台裏のお話。


エル「ラキア」

ラキア「あなた。どうです? 今日のティア様はまた一段と輝いていますよ!」

エル「確かに。あれはルクス師匠が苦労する」

ラキア「マスターは、先程まで一緒にいられた事で満足されましたから、そちらは問題ないの思うのですが……」

エル「ああ。ある意味、解禁だからな。今までもティアとの交際を望む者達はいたが、表立って動けずにいた。だが、この場はいわば無礼講。色々とあるだろう」

ラキア「ルクスさんには頑張っていただかなくてはいけませんね。ここ最近はかなり名も売れてきていますし、計画通りには進んでいます」

エル「そうだな。ここでしっかり見せつけてもらおう。もう少しだ」

ラキア「頑張りどころですね」



つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


頑張ってもらいましょう。


シルとも馴染みましたね。


次回、最終話にできればと思っていますが……
明日31日0時です。
よろしくお願いします◎
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