元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第七章 ギルドと集団暴走

226 お金の流れですよ

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アルキスとは儀式の時に見たきり、全てレンスフィートとついて来ていたニールに任せてしまったため、とても久し振りに会う気がする。

「コウヤっ。久しぶりだなあ。ってか、言おうと思ってたんだっ。コウヤん家に泊まれんかったじゃんかっ」

コウヤもあの時、アルキスとシンリームが泊まると言ったのを転移する時は覚えていたのだが、あちらに行って仕事を思い出してからすっかり忘れてレンスフィートに丸投げしてしまったのだ。

「あ、そういえばそうでしたね。泊まるって言ってましたっけ。でも、レンス様のお屋敷、良かったでしょう?」
「マジで良かった! 何、あの居心地の良さ! 文句なくあのまま住み込みたかったけどなっ。そんでもって、俺もシンリームも、コウヤん家に泊まるんだったって思い出したの帰ってきて一日経ってからだったけどなっ」

ユースールでは魔導具を使った家具は当たり前。ドラム組が居るため、当然のように空間拡張もされているというのもある。特に領主の屋敷は最新の魔導具や家具を追加していく仕様になっているので、ユースールの中でもとっても住みやすい屋敷だ。

最新家電が開発される端から導入されていくと言えば分かりやすいだろうか。

「あはは。あれ? ニールさんが途中で言ったりしなかったんですね」
「いや、あいつ……コウヤが居なくなってから速攻であっちで知り合い見つけて領城を案内させてたっぽい。俺に気配感じさせないとか、ちょい怖くなったわ……何者だよあいつ……絶対にただの文官じゃねえっ」

因みに、ニールは王都に戻ってきてから、ユースールの視察についての計画を練っているらしい。人員の調整など、張り切っているという。

「さすがは、宰相の補佐官ですっ」
「それだけで済まんってっ」
「え~。確か、ルー君が神官さん達より強いって言ってたかな。あ、本当は騎士の家系だってのもありましたね」
「……宰相のやつ……なんてもんを拾いやがった……」

自分の補佐官の一人が捕縛されたことで、ベルナディオ宰相も必死だったのだろう。そこでニールに目を付けた彼は運が良かった。

「ところで、お聞きしたいことがあるんですけど」

そろそろ本題に入ろうとコウヤが切り出す。アルキスが居たのは丁度良い。

「なんだ?」
「この王都の商業ギルドのことです」
「あ~な……いやあ……捕まえた貴族絡みで色々やってんのがとにかく多くってな……けど、こっちも一気に捕縛してってなると、さすがに問題だろ……?」

とっても言い辛そうに呟くアルキス。遠い目をして固まってしまったので、答えを求めてジザルスに目を向ける。

「人数が多いってことですか?」
「そうですね。普通に国の流通が止まるくらいです。あ、ガルダ辺境伯領は問題ないです」

辺境伯領は特殊だ。技術力は高く、最先端過ぎて、基本王都や外から持ってくる必要がない。領内で全て賄えてしまっているため、輸出はしても輸入することがないのだ。

「なら……」
「良くねえよ?」
「です……?」

コウヤは思わず『なら良い』と言おうとしたのだが、アルキスにちょっと睨まれた。

「え、えっと。ちょっと思い出したんですけど、ユースールでもゼットさんがギルド長になる前にはよく、教国の教会に評判の良くない商人さんが出入りしてたな~って」

問題のあった商業ギルドの長と一緒に、ゼットが追い出していたので、最近は見ない。思い出したようにやってくる変な商人は、丁重にお断りし、追い払っているようだ。それこそ、商人達がトラウマになるほど確実に。

「ベニばあさまと中央の教会に殴り込みに行った時にも、キラキラした商人さん達がいましたし、ちょっと気になったんです」

トラウマを植え付けられ、ユースールと聞いただけで顔を真っ青にして逃げ出してしまう商人さん達が居たのを思い出したのだ。

これを聞いて、アルキスが考え込む。

「教会もってなると面倒だな……」

そこでそれまで静かに立っていたビジェが口を開いた。

「ウワサで、教カイが商人からドレイをかってイルと、聞いタ」

彼は、ユースールではゲンと採取に出かけたり、神官と討伐訓練に出かけたりしており、王都では隠密行動の研修をしていた。そこで情報を色々と集めていたらしい。

「奴隷ですか……ん? 聞き込みでってことは、もしかして、この国でも?」
「あると聞いタ。この王トではナイ。ケド、他はあるト」
「マジかよ……」

アルキスが嫌そうに顔をしかめた。教国の教会が関係しているのは間違いないようだ。だが、そうなると本当に面倒なことになる。この国では奴隷を買うことも、売ることも許されていない。

「う~ん……ジザさん。確認できます?」
「可能です。すぐに人員を割り振ります」
「お願いします。もし、奴隷が居るなら、状態の確認も」

ジザルスが後ろを振り返ると、双子が現れ、消えた。指示はこれで問題ない。

「考えてみると、あの教会が関わっているって聞くと納得できるんですよね~」
「どういうことだ?」

アルキスの問いかけに、コウヤは少しだけ笑う。

「お金の流れですよ。貴族から教会に、教会から商人に、商人から貴族にって流れです」
「……城に戻って、捕まえた貴族の奴らの尋問頼んでくるわ……」
「その方が良さそうですね。捕まえた教国の人達の方は……」
「それはこっちで確認する」
「あ、ルー君っ」

ルディエが得意げに鼻を鳴らしていた。

「兄さんは商人を相手……したいんでしょ?」
「ふふ。うんっ。ちょっとね~。さすがに棟梁達に迷惑だったみたいだから」
「そのデカイの、兄さんの護衛してもらうよ」
「もちろんダ」

ビジェが護衛になった。

「それで補佐は……」
「わたくしですね」
「ニールさんっ」
「ニールです」

これに笑顔でそうだったと頷く。いつもの返しにも慣れてきたコウヤだった。

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