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第十二章
478 困る所です……
翌日、予定通りその日はコウヤの近衛騎士を選出する選抜戦が行われることになった。
先日同様に、王族揃っての朝食が終わってから案内された城の大訓練場には、多くの者が整列して待っていた。
しかし、どう見ても、騎士でない者がいた。
人数は約二百人程だろうか。その内訳は大まかに騎士2、魔法師1、冒険者1、神官1という割合だ。そして、極小数だが、文官らしき者もいる。
神官はルディエ率いる白夜部隊の者ではないので、この中でも圧勝という訳にはいかないだろう。とはいえ、神官自体が、その白夜部隊の指導を受けているため、神官と侮れば痛い目に合う。
そんな中、明らかに普段からも交流のある知り合いがいた。
「……なんでグラムさんやサニールさん達が……?」
冒険者達の顔は、ほとんど覚えているコウヤだ。よく見てみれば、知らない者はいなかった。ユースールの者が多いが、王都の冒険者や、かつてユースールに居た者も居る。
「サニールさんは、お弟子さんの指導、張り切ってたんじゃ……」
ニールの叔父であるサニール。今は、エルフの弟子に奪われていたスキルも戻り、その反動と神罰で弱くなってしまったエルフの弟子を引き取って鍛えているはずだ。
サニールと同様に、弟子のエルフにスキルを奪われていた者達と一緒に、このトルヴァランの王都を拠点として、日々冒険者として活動していると聞いていた。
観覧用のバルコニーにある椅子に座っているコウヤに、ニールが後ろから身を屈め、耳打ちするように告げる。
因みに、このバルコニーにはアルキス以外の他の王族達が揃っており、等間隔で椅子が並べられていた。
今回はコウヤの近衛騎士を選ぶための選抜戦ということで、中央に座るアビリス王の隣り、ジルファスとに挟まれる形で案内されている。
コウヤの後ろには、ニールが控えており、更にその後ろにフレスタとディスタが控えていた。
「あのエルフ達の体力がかなり落ちたようで、鍛えるにも限界があるとか。先ずは体力作りをと、毎日課題を用意しているそうですが、それにずっと全員で揃って見張っているのも時間が勿体無いとのことでして……」
「ああ……確かにそうですね……」
本来ならばエルフ達は、里でもその力を認められた上位五人の戦士だった。それが今や、エルフの中でも最弱で、子どもにも負ける状態だ。
日々、泣きながら鍛えられているらしい。
少し気の毒にも思ったが、彼らの自業自得なのだ。あれは受け入れるしかない。
そこに、ルディエが姿を現す。
「あのエルフ達は、精神面から鍛えないと使い物にならないよ」
「あれ? もしかして、ルー君も協力してるの?」
「サボらないように、王都の教会の、神官達の訓練場でやってるから。外じゃ、まだ普通に怪我するよ。迷宮化の討伐の時は、即治療出来たし、距離取らせてたからなんとかなってただけ」
「なるほど……」
少しでも早くレベルを上げさせようと、迷宮化討伐の時にも参加させていたが、あまり効果はなかったようだ。経験値もほとんど還元されないという称号の力は大きい。
彼らは、それまでの感覚もあり、それなりに経験もしているため、対峙するものに対して、今の自分たちでは敵わないことも理解している。よって、その時は完全に腰が引けていた。
「うん……精神力は必要だね。けど……そこは特に落ちてないはずなんだけど……?」
「元から弱かったんじゃない? プライドで保ってた感じ」
「あり得ますね」
「そっか……じゃあ、尚更大変だね……」
高いプライドのお陰で、精神的にも強くいられたのだろう。だが、実際は貧弱な精神力だったというわけだ。
完全にメッキも剥がれてしまったということだろう。
「ん? でも、いくら時間があるからって、近衛騎士なんかになって大丈夫なの?」
「いえ。ご説明が遅れました。今回の選抜戦、近衛騎士だけではありません。コウヤ様は、今後も冒険者ギルド職員としても働かれるおつもりとのことですし、それならば、それぞれの場所、場面によっても側に居る者を分けようということになりました」
「それって……ギルドに居る時と、王宮に居る時と人を分けるってこと?」
「はい。騎士がギルドに居るのはご迷惑になるでしょうし、王宮に冒険者は入れられません。町歩きをされる時にも、騎士では物々しくなりますし」
それならば、適材適所。その場に居て不自然ではない者をその時々で使おうということになったらしい。
よって、近衛騎士はもちろんだが、冒険者から数名、教会から数名というように、各所に配置する警備担当も選抜するらしい。
「そっか。俺のわがままでごめんね?」
「いえ。コウヤ様はもっとわがままで良いかと。何より、嬉しそうですから」
そう言って指を差した先に居る冒険者達はとても楽しそうだった。迷惑ではないようだと知り、コウヤもほっとする。
これに、アビリス王が口を挟んだ。
「相変わらず、コウヤのわがままは可愛らしいものだな」
「そうですね。わがままもわがままにならないとは……」
ジルファスもこれには苦笑する。いつか盛大なわがままを頑張るなんて言っていたこともあるコウヤだが、未だに迷惑になる困るわがままとは認められないようだ。
「それより、近衛騎士に志願する魔法師という方が……扱いに困りそうだよ……」
「う、うむ……最近の魔法師は、外に出過ぎだな……騎士達が『魔法剣士』が生まれそうだと不安そうにしていると聞いたが?」
「本当のようです……神官様達にも鍛えてもらっているようで……社交的になったと喜ぶべきか……困る所です……」
魔法師達は、人が変わったようにアクティブになった。冒険者の魔法師たちとも交流を持ったことで、新たな魔法師としての道が見えたなんて言っているらしい。
「新たな魔法や活用法も生まれていると聞くし、研究室で机上の空論と戦っているよりは良いのだろうが……」
「はい……外で実験してくれるのは良いんですけどね……あの金の影騎士と結婚させてくれと言ったり、実験場をもっと大きくしてくれと言われたり、騎士と訓練させろと突撃してきたり……」
「変わったな……」
「変わりました……」
良いことなんだが、良いことだと笑えない何かがあるのも確かで、アビリス王達は魔法師達を持て余しているようだ。
「こうなると、やはりコウヤに面倒見てもらうのが正解か?」
「そんな気がしてきます……コウヤの側に居る時は大人しいですから……」
二人の目がコウヤに向いた。
「あ~……はい。色々今後について、相談してみますね?」
「「頼む」」
やはりコウヤに丸投げした方が良さそうだと結論を出した二人だった。
そして、騎士、冒険者、神官も入り混じった選抜戦が開始されたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、11日です。
よろしくお願いします◎
先日同様に、王族揃っての朝食が終わってから案内された城の大訓練場には、多くの者が整列して待っていた。
しかし、どう見ても、騎士でない者がいた。
人数は約二百人程だろうか。その内訳は大まかに騎士2、魔法師1、冒険者1、神官1という割合だ。そして、極小数だが、文官らしき者もいる。
神官はルディエ率いる白夜部隊の者ではないので、この中でも圧勝という訳にはいかないだろう。とはいえ、神官自体が、その白夜部隊の指導を受けているため、神官と侮れば痛い目に合う。
そんな中、明らかに普段からも交流のある知り合いがいた。
「……なんでグラムさんやサニールさん達が……?」
冒険者達の顔は、ほとんど覚えているコウヤだ。よく見てみれば、知らない者はいなかった。ユースールの者が多いが、王都の冒険者や、かつてユースールに居た者も居る。
「サニールさんは、お弟子さんの指導、張り切ってたんじゃ……」
ニールの叔父であるサニール。今は、エルフの弟子に奪われていたスキルも戻り、その反動と神罰で弱くなってしまったエルフの弟子を引き取って鍛えているはずだ。
サニールと同様に、弟子のエルフにスキルを奪われていた者達と一緒に、このトルヴァランの王都を拠点として、日々冒険者として活動していると聞いていた。
観覧用のバルコニーにある椅子に座っているコウヤに、ニールが後ろから身を屈め、耳打ちするように告げる。
因みに、このバルコニーにはアルキス以外の他の王族達が揃っており、等間隔で椅子が並べられていた。
今回はコウヤの近衛騎士を選ぶための選抜戦ということで、中央に座るアビリス王の隣り、ジルファスとに挟まれる形で案内されている。
コウヤの後ろには、ニールが控えており、更にその後ろにフレスタとディスタが控えていた。
「あのエルフ達の体力がかなり落ちたようで、鍛えるにも限界があるとか。先ずは体力作りをと、毎日課題を用意しているそうですが、それにずっと全員で揃って見張っているのも時間が勿体無いとのことでして……」
「ああ……確かにそうですね……」
本来ならばエルフ達は、里でもその力を認められた上位五人の戦士だった。それが今や、エルフの中でも最弱で、子どもにも負ける状態だ。
日々、泣きながら鍛えられているらしい。
少し気の毒にも思ったが、彼らの自業自得なのだ。あれは受け入れるしかない。
そこに、ルディエが姿を現す。
「あのエルフ達は、精神面から鍛えないと使い物にならないよ」
「あれ? もしかして、ルー君も協力してるの?」
「サボらないように、王都の教会の、神官達の訓練場でやってるから。外じゃ、まだ普通に怪我するよ。迷宮化の討伐の時は、即治療出来たし、距離取らせてたからなんとかなってただけ」
「なるほど……」
少しでも早くレベルを上げさせようと、迷宮化討伐の時にも参加させていたが、あまり効果はなかったようだ。経験値もほとんど還元されないという称号の力は大きい。
彼らは、それまでの感覚もあり、それなりに経験もしているため、対峙するものに対して、今の自分たちでは敵わないことも理解している。よって、その時は完全に腰が引けていた。
「うん……精神力は必要だね。けど……そこは特に落ちてないはずなんだけど……?」
「元から弱かったんじゃない? プライドで保ってた感じ」
「あり得ますね」
「そっか……じゃあ、尚更大変だね……」
高いプライドのお陰で、精神的にも強くいられたのだろう。だが、実際は貧弱な精神力だったというわけだ。
完全にメッキも剥がれてしまったということだろう。
「ん? でも、いくら時間があるからって、近衛騎士なんかになって大丈夫なの?」
「いえ。ご説明が遅れました。今回の選抜戦、近衛騎士だけではありません。コウヤ様は、今後も冒険者ギルド職員としても働かれるおつもりとのことですし、それならば、それぞれの場所、場面によっても側に居る者を分けようということになりました」
「それって……ギルドに居る時と、王宮に居る時と人を分けるってこと?」
「はい。騎士がギルドに居るのはご迷惑になるでしょうし、王宮に冒険者は入れられません。町歩きをされる時にも、騎士では物々しくなりますし」
それならば、適材適所。その場に居て不自然ではない者をその時々で使おうということになったらしい。
よって、近衛騎士はもちろんだが、冒険者から数名、教会から数名というように、各所に配置する警備担当も選抜するらしい。
「そっか。俺のわがままでごめんね?」
「いえ。コウヤ様はもっとわがままで良いかと。何より、嬉しそうですから」
そう言って指を差した先に居る冒険者達はとても楽しそうだった。迷惑ではないようだと知り、コウヤもほっとする。
これに、アビリス王が口を挟んだ。
「相変わらず、コウヤのわがままは可愛らしいものだな」
「そうですね。わがままもわがままにならないとは……」
ジルファスもこれには苦笑する。いつか盛大なわがままを頑張るなんて言っていたこともあるコウヤだが、未だに迷惑になる困るわがままとは認められないようだ。
「それより、近衛騎士に志願する魔法師という方が……扱いに困りそうだよ……」
「う、うむ……最近の魔法師は、外に出過ぎだな……騎士達が『魔法剣士』が生まれそうだと不安そうにしていると聞いたが?」
「本当のようです……神官様達にも鍛えてもらっているようで……社交的になったと喜ぶべきか……困る所です……」
魔法師達は、人が変わったようにアクティブになった。冒険者の魔法師たちとも交流を持ったことで、新たな魔法師としての道が見えたなんて言っているらしい。
「新たな魔法や活用法も生まれていると聞くし、研究室で机上の空論と戦っているよりは良いのだろうが……」
「はい……外で実験してくれるのは良いんですけどね……あの金の影騎士と結婚させてくれと言ったり、実験場をもっと大きくしてくれと言われたり、騎士と訓練させろと突撃してきたり……」
「変わったな……」
「変わりました……」
良いことなんだが、良いことだと笑えない何かがあるのも確かで、アビリス王達は魔法師達を持て余しているようだ。
「こうなると、やはりコウヤに面倒見てもらうのが正解か?」
「そんな気がしてきます……コウヤの側に居る時は大人しいですから……」
二人の目がコウヤに向いた。
「あ~……はい。色々今後について、相談してみますね?」
「「頼む」」
やはりコウヤに丸投げした方が良さそうだと結論を出した二人だった。
そして、騎士、冒険者、神官も入り混じった選抜戦が開始されたのだ。
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※タイトルを変更しました(旧題:「どうせ私は妾の子だから」と呑気にしていたら、何故か公爵家次期当主として据えられることになりました。)