元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

文字の大きさ
454 / 495
第十三章

589 充填?

しおりを挟む
この日、レナルカと共にコウヤは王城に居た。

「どうしたのかな? レナルカ?」
「うう~」
「熱はないみたいだし……お腹痛いとかある?」
「むぅ~っ」
「う~ん……」

じいじ大好きなレナルカは、ゲンの店でほぼ毎日寝起きしていた。コウヤはたまにだが夜勤もあるし、出勤時間もまちまちになる。その上に、王都への移動もあるのだ。幼い子を連れ回すことになるのはと思い、ゲンの薬屋に世話になっていた。

レナルカの方も、領主邸に招かれたり、ギルドのマリーファルニェの所に行ったり、タリスと遊んだり、時折は王都にも一緒に来て、王城で世話になったりもしていた。

基本的に人見知りをしない上、愛想も良い。貴族の当主や先代達、五十代頃の男達は、城内を時折飛び回るレナルカに仕事の疲れを癒されていた。

そんな自由に過ごすレナルカが、今朝方からコウヤから離れない。書類を見ていても、コウヤの腹にくっ付いているし、少し散歩に出かければ、背中にくっ付いて離れない。

どうしたのかと聞いても唸るだけ。さすがのコウヤもお手上げだった。

そこに、ルディエが報告に現れたのだ。

「兄さん。神教国で動きがあったよ」
「ん? 結界は正常だけど……?」

大聖堂を囲む結界は、ジンク達やベニ達で張ったものだ。それに揺らぎが出れば、世界管理者権限を使って分かるようにしていた。今現在もそんな兆候はない。だが、中の事までは分からなかった。ジンク達が交代で監視しているのだ。そこは任せるべきだろうとの判断だった。

「中で殺し合いになってるみたい。生け贄的な」
「……そこまで影響が?」
「むぅぅぅうっ」
「レナルカ?」

不満げな唸り声を上がるレナルカに、視線を落とすと、むくれた顔をゆっくりと上げた。

「あいつ、いやっ、きらいっ! たたかう!」
「戦う?」
「ボコボコにするっ!」
「……え~っと……レナルカが? したいの?」
「するっ! したいっ! じゅうてんしてるっ」
「じゅうてん……充填?」

首を傾げていると、机の上のパックンが答えた。

《主からずっと吸ってるもんね ( ̄^ ̄)》
「え?」
《主様、気付かなかったでしゅか? 神気を吸ってるでしゅよ》
《朝からかなり頑張ってましたよね》
「……へ? レナルカが?」

どうやら、レナルカがずっとくっ付いていたのは、そのためらしい。パックン達は気付いていたようだ。

《そのせいか、主の体にかなり神気が溜まってきています》
「あ……なんか落ち着かないのはそのせいか……」
「いっしょにボコボコにするっ」
「ボコボコ……あ、うん。そうだね。決着は付けないとね」
「んっ!」

レナルカは既にやる気充分らしい。

「なら、すぐに仕掛ける?」

ルディエにそう言われて、コウヤは頷いた。

「そうだね。これ以上、引き延ばしておくこともないかな。あの辺りはもう人は引き上げたんだよね?」
「うん。戦場にしても問題ないよ」
「それじゃあ、ベニばあさまにも伝えて。できるだけ早く準備をって」
「分かった。二日以内に」
「そうだね」
「了解」

そうして、タリス達やエルフ達にも連絡を出し、本物の邪神の討伐を始めることになった。










**********
読んでくださりありがとうございます◎
また来週あけます。

しおりを挟む
感想 2,830

あなたにおすすめの小説

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?

歩芽川ゆい
ファンタジー
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」  コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。  プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。  思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。  声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。

婚約破棄?ありがとうございます!では、お会計金貨五千万枚になります!

ばぅ
恋愛
「お前とは婚約破棄だ!」 「毎度あり! お会計六千万金貨になります!」 王太子エドワードは、侯爵令嬢クラリスに堂々と婚約破棄を宣言する。 しかし、それは「契約終了」の合図だった。 実は、クラリスは王太子の婚約者を“演じる”契約を結んでいただけ。 彼がサボった公務、放棄した社交、すべてを一人でこなしてきた彼女は、 「では、報酬六千万金貨をお支払いください」と請求書を差し出す。 王太子は蒼白になり、貴族たちは騒然。 さらに、「クラリスにいじめられた」と泣く男爵令嬢に対し、 「当て馬役として追加千金貨ですね?」と冷静に追い打ちをかける。 「婚約破棄? かしこまりました! では、契約終了ですね?」 痛快すぎる契約婚約劇、開幕!

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。