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アスペル統一戦
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…トットトト…トッン!
「商会長!聞きやしたでやんすか!?」
軽快な音と共に、ネズミのような三本髭をピンピン揺らしながら走ってきた小男が、ホール状になった会議室の一番高い席にある、議事長席に駆け上がって来る。
…まったく、この男はいつも騒騒しいな。
「しかし、いつ見ても貴様の顔は面白いなっ!」
…この男を見ていつも思う事を、一切の加減をせずに、思った通りに伝えてやる。
「貴様!?…いや、いやいや、いい加減ワテの名前覚えて欲しいでやんす!」
貴様と呼ばれた、ネズミのような男は、首を振りなから不満を言いうが、怒鳴ったり強く出られないのは、相手がこのアスペルの流通事業を牛耳る【まん丸商会】の会長、ヘッケラン・アシュペルガーその人だからだ。
「おやぁ、貴様には名乗る名前があったかな…?」
「ぐっ…な、ないでやんす……」
…もちろんネズミ男にも名前はある。
シーノート・ゼリスマン、それが彼の名ではあるが、以前に名を掛けた商人としての売上勝負で負けた為、ヘッケランの前ではシーノートは名を名乗る事は許されていないのだ。
「……で、いったい何用かね?」
ヘッケランは、優越感に浸った表情から一変して、シーノートの話に価値があるかを見定めるべく商人の顔になり問う。
「…ごくり。い、いや~。ご、ご存知かも知れないでやんすが、我らまん丸商会の商敵である、アイアンメイデンの奴らの事でやんす!」
「ほぅ…言ってみよ」
「へいっ、何でも今まで裏町ばかりに出店していた奴らですが、いよいよ表通りにも店を構えて、我々を潰すと宣言しているそうなんでやんす!」
ーーピキリッ
ヘッケランが潰す発言を聞いた直後、周りの温度が下がったか?と思う程の冷気が、辺り一面に漂う。
その様子を敏感に感じ取った、シーノートは「ひっ」と声を出したが、ヘッケランはそんな彼の事など気にもとめず、そのまま思案に耽る。
…以前から鬱陶しい存在ではあったが、かなり巧妙に動くので実態が掴みにくかった。
しかし奴らが本格的に動く…か、逆に、俺たちの土俵に上がってくれるなら、正々堂々と正面から潰してやれるという物だなっ!
この俺の、まん丸商会を相手にした事を後悔させてやろうではないか!!
そう意気込むと、ヘッケランはシーノートに敵の情報収集を命じ、次に行うべき計画を練る。
重厚なデスクの上に白紙の紙を置きペンを取ると、頭の中の計画を書き出す。
敵の主な構成メンバー、出店の規模、業種、周りとの兼ね合いや、自商会内での対抗店の立案等…
相手を倒すために必要な情報が一瞬にして脳内で組み上がり紙に写される。
自分の部下の得意な分野でも考慮した上で、それぞれの担当になにをさせるか、までも分かりやすく書いた指示と伝言をまとめる。
それを見聞きしたシーノートは、ヘッケランの構想を実現すべく手配をする為、計画書を持って会議室を走り去って行く。
そんな彼を見て、へッケランはいつも考える。
…俺と同じ考えが出来る者が、我が家配下に数人いれば、俺は天下を取れるだろう!
昔のアイツが居た時のように…
しかし、部下であるアイツらには、全てを説明しなければならないと言うのが、俺の不幸な点か…
だがあの日交わした約束に誓って、他の奴らに負ける訳には行かないのだ!
俺に喧嘩を売った事、後悔させてやる。
泣こうが喚こうが、徹底的にやってやろうでわないか…
「…ふふっ…ふははははっ!」
「…何がおかしいの?」
「ふぁっ?!」
ヘッケランの独り笑いに反応する女性の声が会議室に沈黙を呼び戻す。
驚いき声の主を探すヘッケランの目に女が…幼女の姿が見え、さらにヘッケランの頭を混乱させる。
…い、いつから居た?一体、どうやって入ってきたのか分からない…が、今確かに俺の部屋にいるんだ。
分からなくても考えろ俺!どう対応する…
…俺が一人で自問自答している間、トンガリ帽子とブカブカのローブをまとった幼女は、質問した時に首を傾げた状態で、ずっとこちらを見たままだ
…こいつ、バカなのか?
いや…ただの迷い込んだバカだと思いたい所ではあるが、俺の執務室に入るには腕利きの警備が何人も居て、誰が何をしに来たのか、必ずチェックが入る筈だ。
先程のシーノートだって、腕につけた幹部章とあの目立つ鼠顔が無ければ、ここに辿り着くまで30分はかかる…
そんな、厳重な警備を抜けて…今、奴はここに居んだ、ただのバカな訳が無い。
不味いな…刺客か何かだろう。
「…お腹減った。」
…首を傾げたまま場違いなセリフを呟く幼女は、本当にバカにしか見えない。
ただ…俺の商人としての感が、アレを敵に回すのは危険だと訴えて来る!
「そっ…そうか、ではメシを出してやろう!お前が食べた事も無いような旨い物をだ!」
食料で首を傾げる幼女…レアを釣り、この異常事態を脱しようと考えるヘッケラン。
「…ダメ、ご飯の前にオヤツは叱られる」
…だぁぁ!うるさい奴だ!
まぁたしかに、私でも見た事無いような優れた容姿は持っているようだが、世界の全てに甘やかされて来たのか?と思う程にワガママな反応だ!
そんは事を思っているとは、態度に一切表さずヘッケランは笑顔で説得を続けた。
「す、少し位ならバレやしないんじゃないか?なぁ、美味しい物は好きだろう?」
「…好き」
…くそっ、可愛いな!この幼女めっ!
「では、私と……「めんどくさいから、ご主人様の伝言、一気に伝える。」」
ヘッケランは話を途中で遮られるが、相手の条件を知るために、文句を言わず、素早い対応ができるよう話を聞く体制を整える。
「…おめぇー…間違えた。」
「…お前たちを、我々、アイアンメイデンの傘下に入れる事を我は決定した。今後、貴様が主人として仰ぐ我に謁見を願い出る事を許す。明朝、九つの鐘がなる頃に、我らがアジト、ユウト邸まで来い。…………はぁ、以上…疲れた。」
本当に言いたい事だけ言ったレアは、喋りすぎた…と疲れた表情でヘッケランの返答を待っている。
「…そんなバカなこ…ぐっ!」
そんな馬鹿げた話しは断ろうと、ヘッケランが喋り出した途端、周りの温度が物理的に下がり出した…吐く息が白くなる。
「…おめぇーに拒否権なんてねぇー」
凍らして持って行くぞ?と、その幼い顔に似つかわしく無い、恐ろしい事をレアが表情を変えずに言い放つ。
…こんな幼女に…だが、おそらく本当だろう。
ーーピキッ…ピシッ
…何故なら、既に周りの壁は凍り始めていて、その厚さはどんどん増している。
ここは、損得考えず動くしか無い!
…古代遺跡から発掘された一級品で、大赤字だが我慢してやる!!
「…ちっ、これだけは使いたく無かったがな!」
考えがまとまり、やむを得ないと判断したヘッケランは、苦い顔をしながらも脱出用のアイテムを取り出し起動する。
ー記憶の扉ー
・任意の記憶した場所に転移できる
しかし…起動させるために掌の上に乗せた、扉型のアイテムは凍りついて開かなかった。
「そ、そんな!…びっくしっ!あぅ…さ、寒い…」
予想外の出来事に、徐々に体の感覚が無くなってくるヘッケラン
ーードンドン!ドンッ!
ーーボンッ!!ボウッ…
ーードカンっ!
「…よ、ようやく来たか。」
レアを見つけた時点で、緊急ボタンを押していたのがようやく実り、ヘッケランは部屋に入ってくる男達を見て、薄れゆく意識の中でようやく安堵した。
…今来たのは、A級と呼ばれる超が付く戦闘力を持った傭兵隊だ…なはは、ザマアミロ…
…
「うおっ!なんだこの部屋!?」
「隊長、オーナーが凍っちまってるぜ!」
「ザジ、マジ!お前らはオーナーを助けろ!俺たちはこっちだ、魔法使いの嬢ちゃんをやるぞ!」
「「「おうよ」」」
「…ふりーじんぐ」
素早い状況判断と的確な指示で行動を開始しようとする男達を、面倒な奴らが来たと判断したレアが魔法を唱える。
すると、前列に居た傭兵団のリーダーと、大楯を構えた戦士が見る間に凍って行く…
「うぉっ!補助してくれ!」
「マジックウォール!」
「ディスペルマジック!」
「アンチマジックシールド!」
「ファイヤーウォール!」
後衛に居た魔法使い達が幾重にも防御魔法や、相反属性の魔法を唱えるが…
「おっ、おい、これヤバイぞ……」
「だっ、だいぢょう…俺も、もうむり……」
レアの魔法に抗う事は出来ず、その場に居た者達は何も出来ずに、ただ氷像と化すのみだった。
「…しまった、運ぶのめんどい…くりえいと、ごーれむ」
やりすぎたと、別の魔法を唱えるレアに反応し、凍った床から氷のゴーレムが現れ、ヘッケランと傭兵団のリーダーを捕まえて外に運び出す。
……
ーードスーンッ!
…ポタポタ
ーードーンッ…
…ポタポタ…ピチャン
道行く人の視線を一身に集め歩くゴーレムは、自分の体を溶かしながも、レアの指示に従いユウト邸へと向かい歩く。
しかし、屋敷の庭に着く頃には、ゴーレムはその役目を終え、全身を溶かし水溜りになるのであった…
…
……
「…なんじゃこりゃー!!?」
…俺は焦る。
…めちゃくちゃ焦る。
レアにお使いを頼んだのだが、帰りが遅いので、買い食いでもしているのでは無いかと思って、窓から外を眺めていたんだが…
そしたらなんと!…なんか透明のでっかいスライムみたいなのが、うちの庭に入り込んでくるし、誰だか分からんが知らない人間を二人も小脇に抱えてるはで、まったく意味が分からん!?
…そして、後ろを誇らしげに歩いて来る、ウチのおバカは、伝言の一つすら、まともにできんのかよっ!!
「今後の取引について協議したいので、当方においで下さい」って、伝えるようにって俺言ったよなぁぁ…
取り敢えず、俺は急いでレアの被害者①と②を屋敷に運び入れると、暖炉の前に設置し、火を入れて、じっくりコトコト溶かして行く。
「てか、これ死んでんじゃないでしょうな?」
床をビチビチャにする彼等を見ながら、俺の頭のを不安がよぎるが、なんとか溶け終えると二人は無事に息を吹き返した。
……はぁ、死んで無くて良かった。
「…うっ、ぐはぁっ……ゲホゲホ」
「あぶっ、ゴホゲホ……はぁーはぁー」
被害者①②が目を覚ましたので、責任を認めるか迷ったが…
俺は迷惑を掛けた者の主人として、諦めて名乗っておく事にした。
「…あー、すみません。ワタクシガ、レアの主人でゴザイマス、この度はご迷惑をおかけし……」
「「貴方様に仕えさせ頂きます!!…何卒、何卒、命だけはお助けを~」」
生き返った二人が土下座で叫ぶ。
…何これ?なんでこうなったんだよっ!?
…訳がわからんわぁっ!
俺は心の中で叫ぶのであった。
ーーーーーー作戦室
「次の……は…で、……ですわ!」
「いえ!ここは……を先に……してですな!」
「何を言って、……ご主人様……ですよ。」
「…おなか…った。」
舌戦を繰り広げる仲間を見ながら考える。
…予定とはだいぶ違ったけど、俺はアスペルの裏と表を統べる事に成功した。
ヘッケランに後で聞いた話では、レアに最初っから俺の支配下に入れ!と、脅されてたらしい事が分かったんだが、何をどう間違えれば、あんな話になるのか…
本気で、一回レアとはしっかり話し合わんといかんな、と俺は心に刻み込んだ。
…まぁ、それはさておき、今回の件で、俺の配下になった【まん丸商会】の元会長ヘッケランは、実際、かなりの切れ者だった…
なぜなら、あれから日夜、ウチの会議室に籠り、俺の今後の行動について、ぶっ飛び三姉妹とアレコレ作戦を立てて、意見をぶつけ合える猛者だったからだ。
…普通の人間では付いていけんよ?
何でもヘッケランは以前、世界征服を夢見てたらしいんだが、自分一人では当然無理だと諦めていたらしい。
でも、ウチのレアの力を見たり、メリッサの悪巧みを聞いて、俄然やる気が湧いて来たらしい…
…何だか、俺の周りは変なのばっかり集まって来る気がするんですけど!?(涙
「商会長!聞きやしたでやんすか!?」
軽快な音と共に、ネズミのような三本髭をピンピン揺らしながら走ってきた小男が、ホール状になった会議室の一番高い席にある、議事長席に駆け上がって来る。
…まったく、この男はいつも騒騒しいな。
「しかし、いつ見ても貴様の顔は面白いなっ!」
…この男を見ていつも思う事を、一切の加減をせずに、思った通りに伝えてやる。
「貴様!?…いや、いやいや、いい加減ワテの名前覚えて欲しいでやんす!」
貴様と呼ばれた、ネズミのような男は、首を振りなから不満を言いうが、怒鳴ったり強く出られないのは、相手がこのアスペルの流通事業を牛耳る【まん丸商会】の会長、ヘッケラン・アシュペルガーその人だからだ。
「おやぁ、貴様には名乗る名前があったかな…?」
「ぐっ…な、ないでやんす……」
…もちろんネズミ男にも名前はある。
シーノート・ゼリスマン、それが彼の名ではあるが、以前に名を掛けた商人としての売上勝負で負けた為、ヘッケランの前ではシーノートは名を名乗る事は許されていないのだ。
「……で、いったい何用かね?」
ヘッケランは、優越感に浸った表情から一変して、シーノートの話に価値があるかを見定めるべく商人の顔になり問う。
「…ごくり。い、いや~。ご、ご存知かも知れないでやんすが、我らまん丸商会の商敵である、アイアンメイデンの奴らの事でやんす!」
「ほぅ…言ってみよ」
「へいっ、何でも今まで裏町ばかりに出店していた奴らですが、いよいよ表通りにも店を構えて、我々を潰すと宣言しているそうなんでやんす!」
ーーピキリッ
ヘッケランが潰す発言を聞いた直後、周りの温度が下がったか?と思う程の冷気が、辺り一面に漂う。
その様子を敏感に感じ取った、シーノートは「ひっ」と声を出したが、ヘッケランはそんな彼の事など気にもとめず、そのまま思案に耽る。
…以前から鬱陶しい存在ではあったが、かなり巧妙に動くので実態が掴みにくかった。
しかし奴らが本格的に動く…か、逆に、俺たちの土俵に上がってくれるなら、正々堂々と正面から潰してやれるという物だなっ!
この俺の、まん丸商会を相手にした事を後悔させてやろうではないか!!
そう意気込むと、ヘッケランはシーノートに敵の情報収集を命じ、次に行うべき計画を練る。
重厚なデスクの上に白紙の紙を置きペンを取ると、頭の中の計画を書き出す。
敵の主な構成メンバー、出店の規模、業種、周りとの兼ね合いや、自商会内での対抗店の立案等…
相手を倒すために必要な情報が一瞬にして脳内で組み上がり紙に写される。
自分の部下の得意な分野でも考慮した上で、それぞれの担当になにをさせるか、までも分かりやすく書いた指示と伝言をまとめる。
それを見聞きしたシーノートは、ヘッケランの構想を実現すべく手配をする為、計画書を持って会議室を走り去って行く。
そんな彼を見て、へッケランはいつも考える。
…俺と同じ考えが出来る者が、我が家配下に数人いれば、俺は天下を取れるだろう!
昔のアイツが居た時のように…
しかし、部下であるアイツらには、全てを説明しなければならないと言うのが、俺の不幸な点か…
だがあの日交わした約束に誓って、他の奴らに負ける訳には行かないのだ!
俺に喧嘩を売った事、後悔させてやる。
泣こうが喚こうが、徹底的にやってやろうでわないか…
「…ふふっ…ふははははっ!」
「…何がおかしいの?」
「ふぁっ?!」
ヘッケランの独り笑いに反応する女性の声が会議室に沈黙を呼び戻す。
驚いき声の主を探すヘッケランの目に女が…幼女の姿が見え、さらにヘッケランの頭を混乱させる。
…い、いつから居た?一体、どうやって入ってきたのか分からない…が、今確かに俺の部屋にいるんだ。
分からなくても考えろ俺!どう対応する…
…俺が一人で自問自答している間、トンガリ帽子とブカブカのローブをまとった幼女は、質問した時に首を傾げた状態で、ずっとこちらを見たままだ
…こいつ、バカなのか?
いや…ただの迷い込んだバカだと思いたい所ではあるが、俺の執務室に入るには腕利きの警備が何人も居て、誰が何をしに来たのか、必ずチェックが入る筈だ。
先程のシーノートだって、腕につけた幹部章とあの目立つ鼠顔が無ければ、ここに辿り着くまで30分はかかる…
そんな、厳重な警備を抜けて…今、奴はここに居んだ、ただのバカな訳が無い。
不味いな…刺客か何かだろう。
「…お腹減った。」
…首を傾げたまま場違いなセリフを呟く幼女は、本当にバカにしか見えない。
ただ…俺の商人としての感が、アレを敵に回すのは危険だと訴えて来る!
「そっ…そうか、ではメシを出してやろう!お前が食べた事も無いような旨い物をだ!」
食料で首を傾げる幼女…レアを釣り、この異常事態を脱しようと考えるヘッケラン。
「…ダメ、ご飯の前にオヤツは叱られる」
…だぁぁ!うるさい奴だ!
まぁたしかに、私でも見た事無いような優れた容姿は持っているようだが、世界の全てに甘やかされて来たのか?と思う程にワガママな反応だ!
そんは事を思っているとは、態度に一切表さずヘッケランは笑顔で説得を続けた。
「す、少し位ならバレやしないんじゃないか?なぁ、美味しい物は好きだろう?」
「…好き」
…くそっ、可愛いな!この幼女めっ!
「では、私と……「めんどくさいから、ご主人様の伝言、一気に伝える。」」
ヘッケランは話を途中で遮られるが、相手の条件を知るために、文句を言わず、素早い対応ができるよう話を聞く体制を整える。
「…おめぇー…間違えた。」
「…お前たちを、我々、アイアンメイデンの傘下に入れる事を我は決定した。今後、貴様が主人として仰ぐ我に謁見を願い出る事を許す。明朝、九つの鐘がなる頃に、我らがアジト、ユウト邸まで来い。…………はぁ、以上…疲れた。」
本当に言いたい事だけ言ったレアは、喋りすぎた…と疲れた表情でヘッケランの返答を待っている。
「…そんなバカなこ…ぐっ!」
そんな馬鹿げた話しは断ろうと、ヘッケランが喋り出した途端、周りの温度が物理的に下がり出した…吐く息が白くなる。
「…おめぇーに拒否権なんてねぇー」
凍らして持って行くぞ?と、その幼い顔に似つかわしく無い、恐ろしい事をレアが表情を変えずに言い放つ。
…こんな幼女に…だが、おそらく本当だろう。
ーーピキッ…ピシッ
…何故なら、既に周りの壁は凍り始めていて、その厚さはどんどん増している。
ここは、損得考えず動くしか無い!
…古代遺跡から発掘された一級品で、大赤字だが我慢してやる!!
「…ちっ、これだけは使いたく無かったがな!」
考えがまとまり、やむを得ないと判断したヘッケランは、苦い顔をしながらも脱出用のアイテムを取り出し起動する。
ー記憶の扉ー
・任意の記憶した場所に転移できる
しかし…起動させるために掌の上に乗せた、扉型のアイテムは凍りついて開かなかった。
「そ、そんな!…びっくしっ!あぅ…さ、寒い…」
予想外の出来事に、徐々に体の感覚が無くなってくるヘッケラン
ーードンドン!ドンッ!
ーーボンッ!!ボウッ…
ーードカンっ!
「…よ、ようやく来たか。」
レアを見つけた時点で、緊急ボタンを押していたのがようやく実り、ヘッケランは部屋に入ってくる男達を見て、薄れゆく意識の中でようやく安堵した。
…今来たのは、A級と呼ばれる超が付く戦闘力を持った傭兵隊だ…なはは、ザマアミロ…
…
「うおっ!なんだこの部屋!?」
「隊長、オーナーが凍っちまってるぜ!」
「ザジ、マジ!お前らはオーナーを助けろ!俺たちはこっちだ、魔法使いの嬢ちゃんをやるぞ!」
「「「おうよ」」」
「…ふりーじんぐ」
素早い状況判断と的確な指示で行動を開始しようとする男達を、面倒な奴らが来たと判断したレアが魔法を唱える。
すると、前列に居た傭兵団のリーダーと、大楯を構えた戦士が見る間に凍って行く…
「うぉっ!補助してくれ!」
「マジックウォール!」
「ディスペルマジック!」
「アンチマジックシールド!」
「ファイヤーウォール!」
後衛に居た魔法使い達が幾重にも防御魔法や、相反属性の魔法を唱えるが…
「おっ、おい、これヤバイぞ……」
「だっ、だいぢょう…俺も、もうむり……」
レアの魔法に抗う事は出来ず、その場に居た者達は何も出来ずに、ただ氷像と化すのみだった。
「…しまった、運ぶのめんどい…くりえいと、ごーれむ」
やりすぎたと、別の魔法を唱えるレアに反応し、凍った床から氷のゴーレムが現れ、ヘッケランと傭兵団のリーダーを捕まえて外に運び出す。
……
ーードスーンッ!
…ポタポタ
ーードーンッ…
…ポタポタ…ピチャン
道行く人の視線を一身に集め歩くゴーレムは、自分の体を溶かしながも、レアの指示に従いユウト邸へと向かい歩く。
しかし、屋敷の庭に着く頃には、ゴーレムはその役目を終え、全身を溶かし水溜りになるのであった…
…
……
「…なんじゃこりゃー!!?」
…俺は焦る。
…めちゃくちゃ焦る。
レアにお使いを頼んだのだが、帰りが遅いので、買い食いでもしているのでは無いかと思って、窓から外を眺めていたんだが…
そしたらなんと!…なんか透明のでっかいスライムみたいなのが、うちの庭に入り込んでくるし、誰だか分からんが知らない人間を二人も小脇に抱えてるはで、まったく意味が分からん!?
…そして、後ろを誇らしげに歩いて来る、ウチのおバカは、伝言の一つすら、まともにできんのかよっ!!
「今後の取引について協議したいので、当方においで下さい」って、伝えるようにって俺言ったよなぁぁ…
取り敢えず、俺は急いでレアの被害者①と②を屋敷に運び入れると、暖炉の前に設置し、火を入れて、じっくりコトコト溶かして行く。
「てか、これ死んでんじゃないでしょうな?」
床をビチビチャにする彼等を見ながら、俺の頭のを不安がよぎるが、なんとか溶け終えると二人は無事に息を吹き返した。
……はぁ、死んで無くて良かった。
「…うっ、ぐはぁっ……ゲホゲホ」
「あぶっ、ゴホゲホ……はぁーはぁー」
被害者①②が目を覚ましたので、責任を認めるか迷ったが…
俺は迷惑を掛けた者の主人として、諦めて名乗っておく事にした。
「…あー、すみません。ワタクシガ、レアの主人でゴザイマス、この度はご迷惑をおかけし……」
「「貴方様に仕えさせ頂きます!!…何卒、何卒、命だけはお助けを~」」
生き返った二人が土下座で叫ぶ。
…何これ?なんでこうなったんだよっ!?
…訳がわからんわぁっ!
俺は心の中で叫ぶのであった。
ーーーーーー作戦室
「次の……は…で、……ですわ!」
「いえ!ここは……を先に……してですな!」
「何を言って、……ご主人様……ですよ。」
「…おなか…った。」
舌戦を繰り広げる仲間を見ながら考える。
…予定とはだいぶ違ったけど、俺はアスペルの裏と表を統べる事に成功した。
ヘッケランに後で聞いた話では、レアに最初っから俺の支配下に入れ!と、脅されてたらしい事が分かったんだが、何をどう間違えれば、あんな話になるのか…
本気で、一回レアとはしっかり話し合わんといかんな、と俺は心に刻み込んだ。
…まぁ、それはさておき、今回の件で、俺の配下になった【まん丸商会】の元会長ヘッケランは、実際、かなりの切れ者だった…
なぜなら、あれから日夜、ウチの会議室に籠り、俺の今後の行動について、ぶっ飛び三姉妹とアレコレ作戦を立てて、意見をぶつけ合える猛者だったからだ。
…普通の人間では付いていけんよ?
何でもヘッケランは以前、世界征服を夢見てたらしいんだが、自分一人では当然無理だと諦めていたらしい。
でも、ウチのレアの力を見たり、メリッサの悪巧みを聞いて、俄然やる気が湧いて来たらしい…
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リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
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