37 / 106
シャーロットの告白。
しおりを挟む
「……そう、上手くはいかないか。」
「ユ…ユウトさん…」
一縷の望みをかけて叫んでみたが、そう、タイミング良く助けなんて来ない…
俺は、今まさに振り下ろされようとする、エンシャントドラゴンの一撃から、シャルを守る為に、彼女を抱きしめる。
…宝珠が無い今、たった一撃でも守れるか分からない。
けど、一瞬だけでもシャルに長く生き残って欲しいから!
グゥアゥウ!
ドシャッ!!
「ぐぅあぁぁあ!」
重いドラゴンの腕と爪が二人を襲う。
……これが死の痛みか
…
あれ?
…痛く無い。
どう言う事だ?
だって、宝珠は確かに割れた筈だ…
そう思い首元を見ると、俺が以前、ティファにあげた、義魂の指輪が割れて消える所だった。
…そうだ、この遺跡に潜る前にティファが、危ないから御守りだって掛けてくれたんだ。
装備アイテムで、適正外なのに守ってくれたのか?
それに…ティファは指輪を御守り代わりとして、ネックレスにして貸してくれてたのか。
…アグゥアァ?
「リロードオン!炎龍の牙!」
「…グゥアアァァア!」
俺達が潰れて死んでいない事に、理解が追いつかないドラゴンの隙を見て、こちらからも強力なブレスを浴びせてやる!
…すると、叫びながら後ろに下がっていった。
…今のうちに考えろ。
後、何がある?何が出来る?
無い頭を必死に回していると…
…
「ホーリースラァァッシュッ!!」
「グギャアァア!」
ブレスを受けて下がっていた、ドラゴンの背後から、ティファの強烈な一撃がお見舞いされた!
「ティファ!!」
「お待たせして申し訳ありません!お怪我は?」
「俺もシャルも無事だ!…ティファのお陰だよ!」
「…よかった。レアが魔力切れで倒れていますので、回復をお願いします!」
そう言うと、ティファはドラゴンの注意を引きながら離れて行く。
…そしてそれに、メリーも追従していく姿が見える。
…
「おう、ユウト!死んでへんか?もちろんシャルも無事やんな?」
「当たり前だろ…こっちも魔力切れだけどな…」
レアを背負って近付いてきたレンに答える。
俺はバッグからマナポーションを出して、二人に飲ませる。
「…んぐんぐ……ぷはっ!」
「ちゅぱちゅぱ…ごくん。」
ポーションを飲みあげて、シャルとレアが元気を取り戻してくれた。
「…ありがとうございます!
本当に…ありがとうございます。」
「…んまい。もう一本…」
涙ぐんで抱きついてくるシャルを宥めながら、レアにもう一本渡す。
レアは魔力量が多いから、普通は魔力切れなんて起こさない筈なんだけど…
それだけ無理して、急いで来てくれたって事なのかな?
「…もう大丈夫そうやな!ほな、俺も向こうに参戦してくるわ!」
「…大丈夫なのか?」
「当たり前じゃ、ボーケ!」
レンは背中を向けて、そう言うとモンスターに向かって走っていった。
…この、エンシャントドラゴンはパーティモンスターだ。
しかも、適正レベルが90~92もあり、ソロでの攻略は、ほぼ不可能と言われてる。
その上、硬い鱗やブレスは強力で、適正レベルを下回ってると、パーティで挑んでも攻略するのはしんどい相手だ。
ティファとメリーが居るけど、レンのレベルじゃキツイんじゃ…?
…それに皆、格好がボロボロだ。
「なぁレア?ここまで、どうやって来たんだ?」
「…床をぶち抜いて…」
「「……」」
俺とシャルは二人で固まる。
…ま、まさか、ダンジョンになってるこの遺跡の床をぶち抜いた、だとっ!?
俺がゲームマスターなら、せっかく作った道をショートカットされて、激オコになるような話だぞ…
「…一つか二つ、破壊したのか?」
「…ん~…5個ぐらい……つかれた」
「「……」」
まじで?どうかしてるぜ!
いやはや、凄いとは思っていたけど、ここまでとは…
そりゃ、魔力切れも起こすわなと、とりあえず、もう一本レアに飲ませて、俺達も戦いに参加する。
もちろん、宝珠は付け直したし、シャルにも無理矢理付けさせる。
「…ふりーじんぐ……」
「影縛り!絶影!!」
「はぁぁ、シューティングノヴァ!!」
先程までは絶望しか感じなかった、あのエンシャントドラゴンを凍らせ、動きを止め切り裂き、叩きのめしていく…
特に、ティファの勢いと攻撃力がすごい!
俺も、魔法効果を高める輝石を使ったり、ポーションを渡しながらサポートすると、遠距離から氷狼の牙を使って攻撃にも参加する。
…
……
徐々に、こちらの攻勢が強くなっていってる!
「はぁぁああっ!」
ティファが腕を斬り落としたっ!
「これは、どうかしら?」
メリーがドラゴンの口を縛り、目玉にクナイを投げると、魔法をぶつけて爆発させる
「これでぇえ、しまいやぁー!!」
倒せてはいないけど、レンが尻尾を斬り落とした!
レベル差があるのに凄いな…
「断罪の輪!」
シャルが光の輪で、硬い鱗に覆われた首を削っていく。
そして、俺も…
「レア!合わせろ!リロードオン!」
ーゼギスの怒りー
・雷を落とす (第9位相当)
「…えれくとりっくパレード!」
俺が杖型のアイテムをかざすと、巨大な雷光がドラゴンの頭上に召喚される…それに合わせて、レアが召喚した、エゲツない数の雷光がドラゴンを囲んだ。
「「はああ!」」
ドガガガ!…ギギ、ビビ!…ジュウゥゥ…
二人で溜めた雷を叩き込むと…エンシャントドラゴンの丸焼きが完成した。
ドーン!と言う音ともに、ドラゴンが倒れる。
それを見た皆が、歓声を上げた。
「よっしゃあ!いっちょ上がりや!」
「ふぅ、何とかなりましたわ。」
「…おなか…へった…」
「皆、よく頑張りましたね。」
「やりましたね!ユウトさん!」
「あぁ、何とか生き残れたな…」
俺達は、この難敵を打ち破れた事を、互いに労い讃えあった。
そう…何よりも、一人の死者も出さずに済んだ事を。
……
その後は、少し休憩をしてから、遺跡の入り口へと戻り始める。
普通に戻ると、かなりの時間がかかる筈だけど、レア達が開けた穴があるので、ティファがメリーを上の階に押し投げて、ロープを垂らしてもらい登っていく。
…お陰で地下4階までは、あっと言う間に戻る事ができま。
なので、そこから上は正規ルートで歩いて戻る事にした。
すると…行きの時には居なかった、モンスターが現れ始める。
エンシャントドラゴンを倒したから、外に出ていたモンスター達が、遺跡に戻って来てるのだろうか?
ただ、さっきまでの戦闘に比べれば優しいもので、ほとんど立ち止まる事無く進んで行けた。
…唯一、レッドドラゴン二匹と同時に遭遇した時だけは、ちょっと焦ったかな。
さらに、途中で宝箱やアイテムを発見したので、追加報酬として貰っておくのを忘れない。
そうして…ようやく、ボス部屋への転移騒動の原因である地下一階、最奥部分まで上がって来れた。
…ここで、魔法陣が発動されたんだよな。
…
「…少しお待ち下さいね。」
そう言うと、メリーは脇に落ちていた大きめの石を、ホール中央に向けて転がし投げる。
すると、床が発光して、いくつもの魔法陣が浮かび上がり、投げ入れた石は転移で掻き消えてしまい、後には何も残らない。
「これは、時間式の罠のようなものですから、今からしばらくは発動しませんわ。」
メリーはそう言いながら、スタスタと歩いて行く。
たしかに、再び魔法陣が発動する事はなくて…
俺達はようやく、入り口まで戻って来る事ができた。
レンが、爺さんから預かっていた、見鏡の水晶を使って連絡を取ると、
水晶の向こう側に爺さんが映り、「無事で良かったのぉ」と言う声が聞こえてきて、ゲートを開いてくれる事になった。
…俺はその間の時間を利用して、ティファに擦り寄ると、今回の件で義魂の指輪を失ってしまった事と、そのお陰で命が助かったお礼を改めて伝えた。
「…ユウト様がご無事なら、何も問題ございませんよ?」
「でもさ…あげた物は失うし、また助けられるしで…ティファには感謝してもしきれないよ。」
俺は、申し訳無い気持ちと感謝を伝えたくて、深く頭を下げる事しか出来なかった。
「何でも良いから、して欲しい事とかないかな?」と聞いてみたら…
ティファが、頬を赤くしながら「で…では、先日のように、また二人で…デ、デートのようなものを、そ、その…」
恥ずかしいのか、途中で詰まるティファに、俺は「そんな事でいいなら、俺からお願いするよ!」と笑顔で約束した。
…二人でコソコソしてると、ゲートが現れ、順番に潜って王城へと戻っていく。
「ふぃ~、やっと戻って来れた!」
「…ほんま、ユウトと絡むと、暇が無くてええわ」
「うるへぇ!」
王城の庭でレンと、話していると、城からルサリィが走って来るのが見えた。
「…お兄ちゃーん!無事で良かったぁ」
飛びついて来るルサリィを受け止めて、頭を撫でであげる。
待たせてゴメンと言いながらモフモフしてると、
すぐにティファの所へ行ってしまった…
モフモフ…
俺がルサリィの後ろ姿を見ながら、手をワキワキしていると、シャル達と話をしていた爺さんがやってきた。
「無事で何よりじゃのぉ。まさか、エンシャントドラゴンとはなぁ…」
「まさかじゃ無いって、ほんとに死にかけたんだからなっ!?」
命があったなら、問題無いとか言われて笑われる。
…笑い事じゃねぇっ!
「では、陛下へ報告をしてもらうかのぉ。…まぁ、褒美の準備やらがあるので、2、3日は待っててもらう事になるかもしれんがのぉ。」
「…もう、何でもいいや、取り敢えずゆっくり休みたいよ」
俺は爺さんにそう言うと、皆もそれぞれの部屋に戻って行った。
……
…コンコンッ
軽快にドアがノックされる。
誰だろう?ルサリィが遊びにきたかな?
「…失礼します。」
「……へっ?シャ、シャルッ!?」
シャ、シャルが単身乗り込んできた…
いや、別におかしい訳じゃ無いけど、今までなら絶対にレンが付いて来てたのに…
「どどど、どうかしたのか?」
「……あの、今日のお礼を改めて伝えに」
モジモジとした仕草で、そう答えるシャルに「気にする事ないのに」と言いながらも、心臓バクバクで椅子を勧める。
マジックバッグから、レモンウォーター的な物とコップを取り出して、シャルに注いであげる。
この飲み物は、アスペルにいる時にサルネアに作ってもらった物だ。
このバッグの中に保管しとけば、いつでも新品状態で取り出し可能。
温度とかもそのままだから、このバッグの中は真空…いや、時間が止まってるって感じなんだと思う。
…まぁ、検証してないから、今入れてる物が腐ったりすれば、そのうち分かるだろう。
「あっ、ありがとうございます。す、すみません…本来なら私がやるべきなのに…」
「あ~、その件なんだけどさ…今回の遺跡で、俺もシャルに命を助けてもらった訳だから、奴隷からは解放!って事にしてもらおうと思ってるんだけど?」
シャルが首を傾げている。
「そもそも、俺がシャルを庇ったりする前に、障壁で守ってくれてただろ?だから、あれが無ければ二人共死んでたって事だよ。」
「でも、あれは自分の為でもあって…」
「だけど、二人…いや、二人と一匹分の展開をしたから、消費が激しかったでしょ?」
「それは…」
だから、命を救ってもらった事になるから問題無い筈だよと伝える。
が…しかし、嬉しいだろう筈のシャルの表情が優れない。
…何かまずい事言ったのかな?
「…あの…私は…貴方の事が……」
…こっ、これは!?この展開はっ!
「好きではありませんでした。」
告白ちゃうんかーいっ!!
「……はい。」
ションボリする…
「あっ!ちがっ、あ、あの、でも、その…遺跡の時に凄く頼もしくて、身を呈して守ってくれたのが嬉しくて。
…レン以外の人を、こんな風に思った事が、無かったから。」
シャルの銀色の髪が揺れて、彼女のはにかんだ笑顔を際立たせる。
うぐっ!しょ、正直、このまま連れ去って、監禁して、俺だけの物だ!って、言いたい…
でも、レンに言われた通り、ティファ達の事を放ってはおけない。
だから、この気持ちはまだ…
「だから、ユウトさん達と一緒に行動したい…もっと色々見てみたくなったんです!」
…だから、口実的にも、奴隷なら連れていかれる、って程で話が進められる…か。
こんな風に言われて嬉しく無い訳ないけど、本当に良いのだろうか?
レンとかは、どう思ってるんだろう…
俺は、少し考えて言葉を伝える。
「シャルはそれで本当に良いのか?俺達といると、今回みたいに命の危険があるかも、だぞ?」
「それは、今も変わりませんし…」
少し寂しげに笑うシャルを見ると、居ても立っても居られない!
誰かが反対するなら、この俺様がボッコボコにしてやんよっ!
俺は、シャルの話を快諾して「じゃあ、これからも宜しくな!」と爽やかに手を握った。
…おてて、やんわらかかったぁ!
…
……
「ダメです。」
「…ど、どどうしてもでしょうか?」
「…はい。」
俺はシャルの気持ちをニヒルな笑みで受け止めて、その足でティファとメリーを説得にきた…
のだが、即否定された。
…くっ!くそ、斯くなる上は、ボッコボコ…には無理です。はい。
当然、二人を納得させれる言い訳は思い付かず、捨てられた子犬のような目で、ただ二人を見つめ続ける。
……
「…はぁ。まったく、ユウト様には敵いませんわ。お姉様も降参した方が早いですわよ?」
「…ぐぬぬ。…仕方ありませんね。ユウト様がそう仰るのであれば…」
「えっ!?いいの?二人共ありがとう!!」
つくづく俺に甘い二人に、どっぷりと甘えて許可をもらった。
だけど、褒美の内容も分からないまま、シャルを連れ去るのはダメだから、一応、様子を見てとの事になった。
俺は二人に抱きつき、お礼を言って部屋を後にした。
…
「メリッサ、本当に良かったの?」
「それは…分かりませんわ。けど、ユウト様にあれだけ言われて拒否できまして?お姉様?」
「それは…無理ね。」
「まぁ…これからもわたくし達の存在意義が脅かされないよう、有用さをアピールしていくのみですわね。」
「そうね…見捨てられないよう、頑張るしかないわ。」
「そのセリフは、ユウト様の前では禁句でしてよ?」
「えぇ…分かっているわ。」
…俺が部屋を出た後、二人が同行を拒否した理由が嫉妬心で、こんな事を語り合っていたとは、当時ルンルン気分の俺は…知る由も無かった。
「ユ…ユウトさん…」
一縷の望みをかけて叫んでみたが、そう、タイミング良く助けなんて来ない…
俺は、今まさに振り下ろされようとする、エンシャントドラゴンの一撃から、シャルを守る為に、彼女を抱きしめる。
…宝珠が無い今、たった一撃でも守れるか分からない。
けど、一瞬だけでもシャルに長く生き残って欲しいから!
グゥアゥウ!
ドシャッ!!
「ぐぅあぁぁあ!」
重いドラゴンの腕と爪が二人を襲う。
……これが死の痛みか
…
あれ?
…痛く無い。
どう言う事だ?
だって、宝珠は確かに割れた筈だ…
そう思い首元を見ると、俺が以前、ティファにあげた、義魂の指輪が割れて消える所だった。
…そうだ、この遺跡に潜る前にティファが、危ないから御守りだって掛けてくれたんだ。
装備アイテムで、適正外なのに守ってくれたのか?
それに…ティファは指輪を御守り代わりとして、ネックレスにして貸してくれてたのか。
…アグゥアァ?
「リロードオン!炎龍の牙!」
「…グゥアアァァア!」
俺達が潰れて死んでいない事に、理解が追いつかないドラゴンの隙を見て、こちらからも強力なブレスを浴びせてやる!
…すると、叫びながら後ろに下がっていった。
…今のうちに考えろ。
後、何がある?何が出来る?
無い頭を必死に回していると…
…
「ホーリースラァァッシュッ!!」
「グギャアァア!」
ブレスを受けて下がっていた、ドラゴンの背後から、ティファの強烈な一撃がお見舞いされた!
「ティファ!!」
「お待たせして申し訳ありません!お怪我は?」
「俺もシャルも無事だ!…ティファのお陰だよ!」
「…よかった。レアが魔力切れで倒れていますので、回復をお願いします!」
そう言うと、ティファはドラゴンの注意を引きながら離れて行く。
…そしてそれに、メリーも追従していく姿が見える。
…
「おう、ユウト!死んでへんか?もちろんシャルも無事やんな?」
「当たり前だろ…こっちも魔力切れだけどな…」
レアを背負って近付いてきたレンに答える。
俺はバッグからマナポーションを出して、二人に飲ませる。
「…んぐんぐ……ぷはっ!」
「ちゅぱちゅぱ…ごくん。」
ポーションを飲みあげて、シャルとレアが元気を取り戻してくれた。
「…ありがとうございます!
本当に…ありがとうございます。」
「…んまい。もう一本…」
涙ぐんで抱きついてくるシャルを宥めながら、レアにもう一本渡す。
レアは魔力量が多いから、普通は魔力切れなんて起こさない筈なんだけど…
それだけ無理して、急いで来てくれたって事なのかな?
「…もう大丈夫そうやな!ほな、俺も向こうに参戦してくるわ!」
「…大丈夫なのか?」
「当たり前じゃ、ボーケ!」
レンは背中を向けて、そう言うとモンスターに向かって走っていった。
…この、エンシャントドラゴンはパーティモンスターだ。
しかも、適正レベルが90~92もあり、ソロでの攻略は、ほぼ不可能と言われてる。
その上、硬い鱗やブレスは強力で、適正レベルを下回ってると、パーティで挑んでも攻略するのはしんどい相手だ。
ティファとメリーが居るけど、レンのレベルじゃキツイんじゃ…?
…それに皆、格好がボロボロだ。
「なぁレア?ここまで、どうやって来たんだ?」
「…床をぶち抜いて…」
「「……」」
俺とシャルは二人で固まる。
…ま、まさか、ダンジョンになってるこの遺跡の床をぶち抜いた、だとっ!?
俺がゲームマスターなら、せっかく作った道をショートカットされて、激オコになるような話だぞ…
「…一つか二つ、破壊したのか?」
「…ん~…5個ぐらい……つかれた」
「「……」」
まじで?どうかしてるぜ!
いやはや、凄いとは思っていたけど、ここまでとは…
そりゃ、魔力切れも起こすわなと、とりあえず、もう一本レアに飲ませて、俺達も戦いに参加する。
もちろん、宝珠は付け直したし、シャルにも無理矢理付けさせる。
「…ふりーじんぐ……」
「影縛り!絶影!!」
「はぁぁ、シューティングノヴァ!!」
先程までは絶望しか感じなかった、あのエンシャントドラゴンを凍らせ、動きを止め切り裂き、叩きのめしていく…
特に、ティファの勢いと攻撃力がすごい!
俺も、魔法効果を高める輝石を使ったり、ポーションを渡しながらサポートすると、遠距離から氷狼の牙を使って攻撃にも参加する。
…
……
徐々に、こちらの攻勢が強くなっていってる!
「はぁぁああっ!」
ティファが腕を斬り落としたっ!
「これは、どうかしら?」
メリーがドラゴンの口を縛り、目玉にクナイを投げると、魔法をぶつけて爆発させる
「これでぇえ、しまいやぁー!!」
倒せてはいないけど、レンが尻尾を斬り落とした!
レベル差があるのに凄いな…
「断罪の輪!」
シャルが光の輪で、硬い鱗に覆われた首を削っていく。
そして、俺も…
「レア!合わせろ!リロードオン!」
ーゼギスの怒りー
・雷を落とす (第9位相当)
「…えれくとりっくパレード!」
俺が杖型のアイテムをかざすと、巨大な雷光がドラゴンの頭上に召喚される…それに合わせて、レアが召喚した、エゲツない数の雷光がドラゴンを囲んだ。
「「はああ!」」
ドガガガ!…ギギ、ビビ!…ジュウゥゥ…
二人で溜めた雷を叩き込むと…エンシャントドラゴンの丸焼きが完成した。
ドーン!と言う音ともに、ドラゴンが倒れる。
それを見た皆が、歓声を上げた。
「よっしゃあ!いっちょ上がりや!」
「ふぅ、何とかなりましたわ。」
「…おなか…へった…」
「皆、よく頑張りましたね。」
「やりましたね!ユウトさん!」
「あぁ、何とか生き残れたな…」
俺達は、この難敵を打ち破れた事を、互いに労い讃えあった。
そう…何よりも、一人の死者も出さずに済んだ事を。
……
その後は、少し休憩をしてから、遺跡の入り口へと戻り始める。
普通に戻ると、かなりの時間がかかる筈だけど、レア達が開けた穴があるので、ティファがメリーを上の階に押し投げて、ロープを垂らしてもらい登っていく。
…お陰で地下4階までは、あっと言う間に戻る事ができま。
なので、そこから上は正規ルートで歩いて戻る事にした。
すると…行きの時には居なかった、モンスターが現れ始める。
エンシャントドラゴンを倒したから、外に出ていたモンスター達が、遺跡に戻って来てるのだろうか?
ただ、さっきまでの戦闘に比べれば優しいもので、ほとんど立ち止まる事無く進んで行けた。
…唯一、レッドドラゴン二匹と同時に遭遇した時だけは、ちょっと焦ったかな。
さらに、途中で宝箱やアイテムを発見したので、追加報酬として貰っておくのを忘れない。
そうして…ようやく、ボス部屋への転移騒動の原因である地下一階、最奥部分まで上がって来れた。
…ここで、魔法陣が発動されたんだよな。
…
「…少しお待ち下さいね。」
そう言うと、メリーは脇に落ちていた大きめの石を、ホール中央に向けて転がし投げる。
すると、床が発光して、いくつもの魔法陣が浮かび上がり、投げ入れた石は転移で掻き消えてしまい、後には何も残らない。
「これは、時間式の罠のようなものですから、今からしばらくは発動しませんわ。」
メリーはそう言いながら、スタスタと歩いて行く。
たしかに、再び魔法陣が発動する事はなくて…
俺達はようやく、入り口まで戻って来る事ができた。
レンが、爺さんから預かっていた、見鏡の水晶を使って連絡を取ると、
水晶の向こう側に爺さんが映り、「無事で良かったのぉ」と言う声が聞こえてきて、ゲートを開いてくれる事になった。
…俺はその間の時間を利用して、ティファに擦り寄ると、今回の件で義魂の指輪を失ってしまった事と、そのお陰で命が助かったお礼を改めて伝えた。
「…ユウト様がご無事なら、何も問題ございませんよ?」
「でもさ…あげた物は失うし、また助けられるしで…ティファには感謝してもしきれないよ。」
俺は、申し訳無い気持ちと感謝を伝えたくて、深く頭を下げる事しか出来なかった。
「何でも良いから、して欲しい事とかないかな?」と聞いてみたら…
ティファが、頬を赤くしながら「で…では、先日のように、また二人で…デ、デートのようなものを、そ、その…」
恥ずかしいのか、途中で詰まるティファに、俺は「そんな事でいいなら、俺からお願いするよ!」と笑顔で約束した。
…二人でコソコソしてると、ゲートが現れ、順番に潜って王城へと戻っていく。
「ふぃ~、やっと戻って来れた!」
「…ほんま、ユウトと絡むと、暇が無くてええわ」
「うるへぇ!」
王城の庭でレンと、話していると、城からルサリィが走って来るのが見えた。
「…お兄ちゃーん!無事で良かったぁ」
飛びついて来るルサリィを受け止めて、頭を撫でであげる。
待たせてゴメンと言いながらモフモフしてると、
すぐにティファの所へ行ってしまった…
モフモフ…
俺がルサリィの後ろ姿を見ながら、手をワキワキしていると、シャル達と話をしていた爺さんがやってきた。
「無事で何よりじゃのぉ。まさか、エンシャントドラゴンとはなぁ…」
「まさかじゃ無いって、ほんとに死にかけたんだからなっ!?」
命があったなら、問題無いとか言われて笑われる。
…笑い事じゃねぇっ!
「では、陛下へ報告をしてもらうかのぉ。…まぁ、褒美の準備やらがあるので、2、3日は待っててもらう事になるかもしれんがのぉ。」
「…もう、何でもいいや、取り敢えずゆっくり休みたいよ」
俺は爺さんにそう言うと、皆もそれぞれの部屋に戻って行った。
……
…コンコンッ
軽快にドアがノックされる。
誰だろう?ルサリィが遊びにきたかな?
「…失礼します。」
「……へっ?シャ、シャルッ!?」
シャ、シャルが単身乗り込んできた…
いや、別におかしい訳じゃ無いけど、今までなら絶対にレンが付いて来てたのに…
「どどど、どうかしたのか?」
「……あの、今日のお礼を改めて伝えに」
モジモジとした仕草で、そう答えるシャルに「気にする事ないのに」と言いながらも、心臓バクバクで椅子を勧める。
マジックバッグから、レモンウォーター的な物とコップを取り出して、シャルに注いであげる。
この飲み物は、アスペルにいる時にサルネアに作ってもらった物だ。
このバッグの中に保管しとけば、いつでも新品状態で取り出し可能。
温度とかもそのままだから、このバッグの中は真空…いや、時間が止まってるって感じなんだと思う。
…まぁ、検証してないから、今入れてる物が腐ったりすれば、そのうち分かるだろう。
「あっ、ありがとうございます。す、すみません…本来なら私がやるべきなのに…」
「あ~、その件なんだけどさ…今回の遺跡で、俺もシャルに命を助けてもらった訳だから、奴隷からは解放!って事にしてもらおうと思ってるんだけど?」
シャルが首を傾げている。
「そもそも、俺がシャルを庇ったりする前に、障壁で守ってくれてただろ?だから、あれが無ければ二人共死んでたって事だよ。」
「でも、あれは自分の為でもあって…」
「だけど、二人…いや、二人と一匹分の展開をしたから、消費が激しかったでしょ?」
「それは…」
だから、命を救ってもらった事になるから問題無い筈だよと伝える。
が…しかし、嬉しいだろう筈のシャルの表情が優れない。
…何かまずい事言ったのかな?
「…あの…私は…貴方の事が……」
…こっ、これは!?この展開はっ!
「好きではありませんでした。」
告白ちゃうんかーいっ!!
「……はい。」
ションボリする…
「あっ!ちがっ、あ、あの、でも、その…遺跡の時に凄く頼もしくて、身を呈して守ってくれたのが嬉しくて。
…レン以外の人を、こんな風に思った事が、無かったから。」
シャルの銀色の髪が揺れて、彼女のはにかんだ笑顔を際立たせる。
うぐっ!しょ、正直、このまま連れ去って、監禁して、俺だけの物だ!って、言いたい…
でも、レンに言われた通り、ティファ達の事を放ってはおけない。
だから、この気持ちはまだ…
「だから、ユウトさん達と一緒に行動したい…もっと色々見てみたくなったんです!」
…だから、口実的にも、奴隷なら連れていかれる、って程で話が進められる…か。
こんな風に言われて嬉しく無い訳ないけど、本当に良いのだろうか?
レンとかは、どう思ってるんだろう…
俺は、少し考えて言葉を伝える。
「シャルはそれで本当に良いのか?俺達といると、今回みたいに命の危険があるかも、だぞ?」
「それは、今も変わりませんし…」
少し寂しげに笑うシャルを見ると、居ても立っても居られない!
誰かが反対するなら、この俺様がボッコボコにしてやんよっ!
俺は、シャルの話を快諾して「じゃあ、これからも宜しくな!」と爽やかに手を握った。
…おてて、やんわらかかったぁ!
…
……
「ダメです。」
「…ど、どどうしてもでしょうか?」
「…はい。」
俺はシャルの気持ちをニヒルな笑みで受け止めて、その足でティファとメリーを説得にきた…
のだが、即否定された。
…くっ!くそ、斯くなる上は、ボッコボコ…には無理です。はい。
当然、二人を納得させれる言い訳は思い付かず、捨てられた子犬のような目で、ただ二人を見つめ続ける。
……
「…はぁ。まったく、ユウト様には敵いませんわ。お姉様も降参した方が早いですわよ?」
「…ぐぬぬ。…仕方ありませんね。ユウト様がそう仰るのであれば…」
「えっ!?いいの?二人共ありがとう!!」
つくづく俺に甘い二人に、どっぷりと甘えて許可をもらった。
だけど、褒美の内容も分からないまま、シャルを連れ去るのはダメだから、一応、様子を見てとの事になった。
俺は二人に抱きつき、お礼を言って部屋を後にした。
…
「メリッサ、本当に良かったの?」
「それは…分かりませんわ。けど、ユウト様にあれだけ言われて拒否できまして?お姉様?」
「それは…無理ね。」
「まぁ…これからもわたくし達の存在意義が脅かされないよう、有用さをアピールしていくのみですわね。」
「そうね…見捨てられないよう、頑張るしかないわ。」
「そのセリフは、ユウト様の前では禁句でしてよ?」
「えぇ…分かっているわ。」
…俺が部屋を出た後、二人が同行を拒否した理由が嫉妬心で、こんな事を語り合っていたとは、当時ルンルン気分の俺は…知る由も無かった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる