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神国と地獄
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「ワザトデハナイノデス…モウシワケゴザイマセン…」
アキラが美少女だったと言う、衝撃の事実を知ってから、一晩たった翌朝。
…いやー、ちっぱいけどエエもん見れた、とニヤつきながら眠っていた俺は、知らぬ間に宿の裏庭で磔にされている所で目が覚めた。
今の俺は、キリストの最期と同じで、十字架に縛り付けられている…
いつもは甘い筈の、ティファやメリーも俺の懺悔を聞き入れてくれない。
「お、おかしい…皆、操られているのでは…」
「操られてなどおりませんわ。私達三人では飽き足らず、他所にまで手を伸ばすなんて…反省していただきますわ!」
こんな子のどこが…と呟くメリー。
…いやいや!ボクっ娘で、ちっぱいのは需要あるから!間違いないから!
心の中で、ボクっ娘推奨していると…少し離れた所で、路上のゴミを見る目で見てくるシャルとルサリィ。
これはこれで、ある意味ご褒美だけど…
いや、違う!
違うんだ…確かに、ラッキーハプニングを狙ったり、アキラの裸を網膜に焼き付けはしたけど、断じて仕組んだのでは無い…
看板は男湯だったし、あれは致し方無い事故だったんだよっ!
俺は、黙々と準備をする三姉妹に、顔を引きつらせながらアキラに抗議する。
「おい、アキラ!…様!あれは、自分のミスだってあるだろ?勘弁してくれよっ!…助けて」
アキラは普段見せないようなニヤつき顔で「ボクの裸を堪能したんだ、対価を払わないとね」とか、ほざいてる
だめだ、これはだめだ。
…
「…さて、準備もできましたし、次からは、わたくしの時に悪さしてもらうよう、身体にしっかりと刻み込んで差し上げますわ。」
「むっ…私の時にどうぞ、ユウト様」
「…おなか…へった」
自分にならokと言うメリーに、本当に意味分かってるのか?と、聞き返したくなるティファ
そして、いつも通りの反応をするレア
言ってる事と、やってる事に乖離があり過ぎる三人に、誤解だと慈悲を願うが…
「…さぁ、始めますわ。」
メリーの顔が美しくも恐ろしく歪む。
……ぎゃぁあー…ぎゃぁー…きゃー
…
……
「しくしくしく…」
「これに懲りたら、次は私達の時にして下さいね?ユウト様」
「…はい。」
しばらく続いた、色々な作業は、教育上の観点から、ルサリィをシャルに連れ出してもらい行われ、最後はティファの「それは良いのかよっ!?」と、ツッコミたくなるような締めで終わったのだ。
…おかしい、昨日までシリアスな状況だった筈なのに、こんな展開になるなんて。
誰かに仕組まれているとしか思えん!!
「…ここまでとはね…少し悪ふざけが過ぎたみたいだね。反省するよ」
「…お前は、コイツらの凄さを知らんからな!」
「…まぁまぁ、その代わりに、力を取り戻す為の協力は惜しまないよ」
バツの悪い顔をしながらフォローしてくるアキラに、女々しく文句を垂れ流す俺
この街では、間違いなく"変態"の称号を付けられるだろうが、知名度は恐ろしい程上がった筈だ。
それに、アキラが手伝ってくれると言うならなら、俺達の目的への効率がさらに良くなるからな…
…まぁ、結果的にはプラス収支だろう、と自分に言い聞かせて、やるせなさはおさめておいた。
……
午後からは、バノペアでのアジト探しの為、不動産巡りをしたんだけど、侯爵の影響が大きいのか、真っ当で高い物件ばかり案内された。
不動産屋の担当がバービー…って、似たような名前が多いな…
最終的に、市長会館の近所にある、池付きの豪邸を購入させられた。
普段は、自分の屋敷兼工場に居ないアキラが、場所を使っても良いと提案してくれたけど、一応は拠点を確保しておいた。
自分の商会も順調だし、これ位の出費は大丈夫だよな!
…後でヘッケランに連絡しておこう。
屋敷を抑えた俺達は、商会からメイドを送ってもらい、屋敷の管理を任せた。
そして、当初の予定通り、アスペルには戻らず、このまま王都北部のエゼルリオ、東部のエデキアと一気に落として行く予定だ。
王国を制覇したら、帝国や神国、ケモっ子の国や…魔族の国にも存在を示して、力の解放を受けるんだ。
…俺は、これからの予定に、気合いを入れ直した。
ーーーーー神聖国家 アルテマロ
王国の北西に、神国と呼ばれる統一国家がある。
都市や拠点と言う形で、街があるのではなく、聖王…教皇とも呼ばれる者が住まう神国の中心に国家が形成されている。
大神殿セイクリッドパレスは、クリスタルと、白理石と言う仄かに光りを放つ石材から作られた巨大な城になっており、三つの神殿が神国内の都市の代わりをなしている。
ノーザン・テクラトス司教が治める東部信仰教会、ウェスト・ローレンス司教が治める西方信仰教会、イース・ヴェイター司教が治める北域信仰教会、この三神殿は、周辺の農・商・軍・教育の全ての実験を握っており、各司教の力も大きい。
こられ神国で崇められている神は、AAOのゲームでお馴染みの『グランドアース』と言う運営…もとい世界の創造神だ。
だだ、この国の教皇ヘリウス・フィリオ・クレストリアは、宗教と言うのも全てに寛容で、主教以外を認めない、とは言わず…
全ての神を敬う者の地として、広く国の門戸を解放している、太っ腹な男だそうだ。
…コツコツコツ
大神殿セイクリッドパレスの、礼拝堂から大食堂へと続く通路を歩く人物は、ヴァイゼル・アル・ムーリフ枢機卿。
教皇に継ぐ二番目の権力者だ。
「…ヴァイゼル枢機卿!」
「おぉ…アルニラム殿、どうされました?」
四星と呼ばれる、神国における最高戦力の一人が、険しい表情でヴァイゼルを呼び止める。
「実は…」
「…なんと!それは誠ですかな?」
「ノーザン司教が…」
「…東部信仰教会と言う事は、王国でしょうか?」
「我々の動きに気付いて、牽制しに動いた…と?」
東部信仰教会の司教が何者かに誘拐されたと言う報告を聞き、シワのいった顔を歪ませる枢機卿。
自分達が秘密裏に行っている、王国に誕生した新たな侯爵への工作について、情報が漏れたのではと思案する。
「…とりあえず、一時的に副司教を代表にし、捜索を続けて下さい。できれば、主犯も捉えて欲しい所ですね。」
「畏まりました。そのように致します。」
神聖騎士アルニラムは、頭を下げると踵を返し足早に去って行った。
それを見て、ヴァイゼルは教皇に伝えるべきか考え首を振る。
まだ、先代より教皇を継いで間もないヘリウスに伝えても、不安を抱かせるだけだと判断した為だ。
ーーーーー神国 東部信仰教会地域
「あ~、神国は潜入が楽でええわ。」
レンは、サッカスの宿を出て、神国の領内へと侵入していた。
「こっちの司教さんが、ユウト達の件を知っててくれたらえぇんやけどなぁ」
頭の後ろで手を組みながら歩き、一人呟くレン。
…一見、不審者のように見られそうだが、頭と口元をターバンの様な布で隠している為、独り言を呟いているのがバレにくいのだ。
色々な宗教が許されるこの国では、外で特定の部位を露出しない宗教や、逆に最低限しか見に纏わないとものなどがある。
…綺麗なお姉さんの露出は良いが、オッサンの露出は勘弁して欲しいところだな!
そんな東部教会地区にて、レンはユウト達の爵位拝受以降、不穏な動きを始めたと言われる神国で、一体何があるのかを探りにきたのだ。
まずは、この地区をまとめる司教に話を聞くべく神殿を目指しているのだが…
「…なんや、昔に来た時とはエライ印象が違うな。」
レンが歩きながら見るのは、立ち並ぶ家々の隙間や商店の横に座る…物乞いのような人達だ。
以前に訪れた時は、道路も割と綺麗に清掃されていて、浮浪者等は教会で管理している施設が世話をしていたはずだった、その社会性に随分と感心したのを思い出して、当時との違いにレンは驚いていた。
神国では昨年、前教皇の逝去に伴い世代交代があったばかりで、多少の政情不安はあっても、ここまでの状況になっているのはさすがにおかしい…
異変を感じつつもレンは自らの目的を果たすために、東部地区を治める教会へと侵入して行く。
…
「…さぁて、司教のおっちゃんは何処やろか?」
暗殺者(アサシン)スキルを発動して、教会内を探索するレン。
…おかしい、人が少な過ぎる。
通常この時間であれば、礼拝の人やら相談に来た人で混み合っていそうなものなのに、警護を担当する僧兵すら少ない。
…ハプニングはいらんでぇ。
レンはそう思いながら、神殿の最奥にあるであろう、司教の部屋を目指す。
……
「…そこにおる奴、誰や?」
「…キサマ。我ガ縄張ニ忍ビ込ムトハ恐レ多イ奴ヨ」
司教部屋と思われる扉の横に、違和感を感じたレンが呼びかけると、透明化(インビジブル)を解除した悪魔(デーモン)が現れた。
「この人の少なさは自分が原因か…」
「我ガ姿ヲ見テ怯エントハ…多少ノ心得ガアルヨウダナ」
ツノのように突き出した幅広の耳に、削げ落ちた鼻と唇。
大きく窪んだ目と、全身くすんだ黒色の悪魔を見ても平然とするレンに、序列5位の悪魔…ベリアスは警戒した表情を浮かべる。
「…放浪時代に魔国も旅したさかい、そのオモロイ顔は見慣れとるんや。」
レンは軽口を叩くと、的を討つべく腰の刀に手を回す。
「ホゥ。魔法ノ武器カ…」
「一級品やで…とくと味わいや!」
…ビュン!
レンの体が揺れて見えると、次の瞬間には悪魔の首に刀が迫る。
…ガキンッ!
全身が武器と言える硬度を持つ悪魔は、首と刃の間に爪を差し入れ受け止めると、反対の手で突きを放ってくる。
「うぉっ!…あぶないなぁ」
寸前の所で体を捻り爪を躱したレンは、やはり一筋縄では行かないかと相手を睨む。
悪魔はパーティモンスターで、知性がありボスモンスターになっている事が多い。
序列が上がれば上がるほど強くなるが、今対峙しているベリアスは第5位、適正レベルは70と低い方だ。
レベルが上がって90LVになったレンなら、ソロでも充分勝機はある…
が、油断して勝てる相手でも無い。
「…ハァァア」
ベリアスの体が淡く光る。
「ちっ、スキルか…」
レンも合わせてスキルを使い自らを強化する。
「疾風迅雷、獅子奮迅、耐性強化」
レンの体も淡い光に包まれる。
…
「ユクゾ!」
…ブォンッ!!
鋭い爪の振り下ろしを刀で受け流すレン。
そのまま横薙ぎに斬りかかるがツノで弾かれ、爪での突きがくる。
「はぁっ!」
レンがジャンプで躱すと、ベリアスは翼で風を起こし体制を崩させる。
着地する瞬間を狙い、鞭のようにしならせた尻尾の一撃をお見舞いする。
「くっ!ぐぅあっ!」
…ドーンッ
刀で直撃は防いだが、勢いに押されて大音量の破砕音と共に壁に激突するレン。
「我ガ言葉ニ耳ヲ傾ケヨ!」
そんなレンに畳み掛けるよう、ベリアスが悪魔の特殊スキルを使い、様々な状態異常を与える呪詛の言葉を唱え始める
「ちっ、はぁあっ!」
壁から起き上がり連撃を放つが、悪魔の硬い皮膚を抜けてダメージを与えられない。
…瞬撃やと、大したダメージ与えられんか、ほんならコレや!
レンは上段からの跳び斬りをベリアスに受けさせる。
「ぐっ…」
本気の一撃にタタラを踏んだ瞬間を逃さず、レンは体を沈めスキルを放つ!
「金剛撃!!」
「デモンズスピア!」
「ぐぅおっ!?」
…ドカッ
レンが放ったスキルの一撃はベリアスの体を両断する事も、大したダメージも与えられずに不発に終わってしまう。
そして、反対に尻尾の反撃を受け吹き飛ぶ。
「…かはっ、な…なんでや?」
「ハハハ…身代ワリノ腕輪ダ」
ベリアスは自分が装備していた腕輪を見せると、腕輪は役目を終えて割れて消える。
「アイテムとか…ズルいで自分…」
レンは何とか体を起こすがダメージが大きい。
ベリアスが笑い声を漏らしながら近づいてくる…
「良ク、戦ッタ…褒美ニ一撃デ葬ッテヤロウ」
「…その余裕、ムカつくわっ!!十文字斬!」
不用意に近づくベリアスに、再度スキルを放つが…翼を盾にされ弾かれてしまい、またも不発に終わる。
…手の平で遊ばれてもうたってやつか。油断したつもりは無かったんやけどなぁ…ごめんな、フウカ、シャル。
「…グッ!」
レンが心の中で愛する者達へ諦めと謝罪をし、生を諦め目を閉じると…
ベリアスの唸り声が聞こえた。
何事かと目を開くレン
「ナ、ナニヲシタ!?…カラダガ、ウゴカン!」
「……な、どないしんや?」
「はぁ。貴方、なにをやれていますの?」
…スタッ
天井から声が聞こえたかと思うと、
レンとベリアスの間に空色の髪を揺らしながら、死の天使が優雅に舞い降りたのだった。
アキラが美少女だったと言う、衝撃の事実を知ってから、一晩たった翌朝。
…いやー、ちっぱいけどエエもん見れた、とニヤつきながら眠っていた俺は、知らぬ間に宿の裏庭で磔にされている所で目が覚めた。
今の俺は、キリストの最期と同じで、十字架に縛り付けられている…
いつもは甘い筈の、ティファやメリーも俺の懺悔を聞き入れてくれない。
「お、おかしい…皆、操られているのでは…」
「操られてなどおりませんわ。私達三人では飽き足らず、他所にまで手を伸ばすなんて…反省していただきますわ!」
こんな子のどこが…と呟くメリー。
…いやいや!ボクっ娘で、ちっぱいのは需要あるから!間違いないから!
心の中で、ボクっ娘推奨していると…少し離れた所で、路上のゴミを見る目で見てくるシャルとルサリィ。
これはこれで、ある意味ご褒美だけど…
いや、違う!
違うんだ…確かに、ラッキーハプニングを狙ったり、アキラの裸を網膜に焼き付けはしたけど、断じて仕組んだのでは無い…
看板は男湯だったし、あれは致し方無い事故だったんだよっ!
俺は、黙々と準備をする三姉妹に、顔を引きつらせながらアキラに抗議する。
「おい、アキラ!…様!あれは、自分のミスだってあるだろ?勘弁してくれよっ!…助けて」
アキラは普段見せないようなニヤつき顔で「ボクの裸を堪能したんだ、対価を払わないとね」とか、ほざいてる
だめだ、これはだめだ。
…
「…さて、準備もできましたし、次からは、わたくしの時に悪さしてもらうよう、身体にしっかりと刻み込んで差し上げますわ。」
「むっ…私の時にどうぞ、ユウト様」
「…おなか…へった」
自分にならokと言うメリーに、本当に意味分かってるのか?と、聞き返したくなるティファ
そして、いつも通りの反応をするレア
言ってる事と、やってる事に乖離があり過ぎる三人に、誤解だと慈悲を願うが…
「…さぁ、始めますわ。」
メリーの顔が美しくも恐ろしく歪む。
……ぎゃぁあー…ぎゃぁー…きゃー
…
……
「しくしくしく…」
「これに懲りたら、次は私達の時にして下さいね?ユウト様」
「…はい。」
しばらく続いた、色々な作業は、教育上の観点から、ルサリィをシャルに連れ出してもらい行われ、最後はティファの「それは良いのかよっ!?」と、ツッコミたくなるような締めで終わったのだ。
…おかしい、昨日までシリアスな状況だった筈なのに、こんな展開になるなんて。
誰かに仕組まれているとしか思えん!!
「…ここまでとはね…少し悪ふざけが過ぎたみたいだね。反省するよ」
「…お前は、コイツらの凄さを知らんからな!」
「…まぁまぁ、その代わりに、力を取り戻す為の協力は惜しまないよ」
バツの悪い顔をしながらフォローしてくるアキラに、女々しく文句を垂れ流す俺
この街では、間違いなく"変態"の称号を付けられるだろうが、知名度は恐ろしい程上がった筈だ。
それに、アキラが手伝ってくれると言うならなら、俺達の目的への効率がさらに良くなるからな…
…まぁ、結果的にはプラス収支だろう、と自分に言い聞かせて、やるせなさはおさめておいた。
……
午後からは、バノペアでのアジト探しの為、不動産巡りをしたんだけど、侯爵の影響が大きいのか、真っ当で高い物件ばかり案内された。
不動産屋の担当がバービー…って、似たような名前が多いな…
最終的に、市長会館の近所にある、池付きの豪邸を購入させられた。
普段は、自分の屋敷兼工場に居ないアキラが、場所を使っても良いと提案してくれたけど、一応は拠点を確保しておいた。
自分の商会も順調だし、これ位の出費は大丈夫だよな!
…後でヘッケランに連絡しておこう。
屋敷を抑えた俺達は、商会からメイドを送ってもらい、屋敷の管理を任せた。
そして、当初の予定通り、アスペルには戻らず、このまま王都北部のエゼルリオ、東部のエデキアと一気に落として行く予定だ。
王国を制覇したら、帝国や神国、ケモっ子の国や…魔族の国にも存在を示して、力の解放を受けるんだ。
…俺は、これからの予定に、気合いを入れ直した。
ーーーーー神聖国家 アルテマロ
王国の北西に、神国と呼ばれる統一国家がある。
都市や拠点と言う形で、街があるのではなく、聖王…教皇とも呼ばれる者が住まう神国の中心に国家が形成されている。
大神殿セイクリッドパレスは、クリスタルと、白理石と言う仄かに光りを放つ石材から作られた巨大な城になっており、三つの神殿が神国内の都市の代わりをなしている。
ノーザン・テクラトス司教が治める東部信仰教会、ウェスト・ローレンス司教が治める西方信仰教会、イース・ヴェイター司教が治める北域信仰教会、この三神殿は、周辺の農・商・軍・教育の全ての実験を握っており、各司教の力も大きい。
こられ神国で崇められている神は、AAOのゲームでお馴染みの『グランドアース』と言う運営…もとい世界の創造神だ。
だだ、この国の教皇ヘリウス・フィリオ・クレストリアは、宗教と言うのも全てに寛容で、主教以外を認めない、とは言わず…
全ての神を敬う者の地として、広く国の門戸を解放している、太っ腹な男だそうだ。
…コツコツコツ
大神殿セイクリッドパレスの、礼拝堂から大食堂へと続く通路を歩く人物は、ヴァイゼル・アル・ムーリフ枢機卿。
教皇に継ぐ二番目の権力者だ。
「…ヴァイゼル枢機卿!」
「おぉ…アルニラム殿、どうされました?」
四星と呼ばれる、神国における最高戦力の一人が、険しい表情でヴァイゼルを呼び止める。
「実は…」
「…なんと!それは誠ですかな?」
「ノーザン司教が…」
「…東部信仰教会と言う事は、王国でしょうか?」
「我々の動きに気付いて、牽制しに動いた…と?」
東部信仰教会の司教が何者かに誘拐されたと言う報告を聞き、シワのいった顔を歪ませる枢機卿。
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「…とりあえず、一時的に副司教を代表にし、捜索を続けて下さい。できれば、主犯も捉えて欲しい所ですね。」
「畏まりました。そのように致します。」
神聖騎士アルニラムは、頭を下げると踵を返し足早に去って行った。
それを見て、ヴァイゼルは教皇に伝えるべきか考え首を振る。
まだ、先代より教皇を継いで間もないヘリウスに伝えても、不安を抱かせるだけだと判断した為だ。
ーーーーー神国 東部信仰教会地域
「あ~、神国は潜入が楽でええわ。」
レンは、サッカスの宿を出て、神国の領内へと侵入していた。
「こっちの司教さんが、ユウト達の件を知っててくれたらえぇんやけどなぁ」
頭の後ろで手を組みながら歩き、一人呟くレン。
…一見、不審者のように見られそうだが、頭と口元をターバンの様な布で隠している為、独り言を呟いているのがバレにくいのだ。
色々な宗教が許されるこの国では、外で特定の部位を露出しない宗教や、逆に最低限しか見に纏わないとものなどがある。
…綺麗なお姉さんの露出は良いが、オッサンの露出は勘弁して欲しいところだな!
そんな東部教会地区にて、レンはユウト達の爵位拝受以降、不穏な動きを始めたと言われる神国で、一体何があるのかを探りにきたのだ。
まずは、この地区をまとめる司教に話を聞くべく神殿を目指しているのだが…
「…なんや、昔に来た時とはエライ印象が違うな。」
レンが歩きながら見るのは、立ち並ぶ家々の隙間や商店の横に座る…物乞いのような人達だ。
以前に訪れた時は、道路も割と綺麗に清掃されていて、浮浪者等は教会で管理している施設が世話をしていたはずだった、その社会性に随分と感心したのを思い出して、当時との違いにレンは驚いていた。
神国では昨年、前教皇の逝去に伴い世代交代があったばかりで、多少の政情不安はあっても、ここまでの状況になっているのはさすがにおかしい…
異変を感じつつもレンは自らの目的を果たすために、東部地区を治める教会へと侵入して行く。
…
「…さぁて、司教のおっちゃんは何処やろか?」
暗殺者(アサシン)スキルを発動して、教会内を探索するレン。
…おかしい、人が少な過ぎる。
通常この時間であれば、礼拝の人やら相談に来た人で混み合っていそうなものなのに、警護を担当する僧兵すら少ない。
…ハプニングはいらんでぇ。
レンはそう思いながら、神殿の最奥にあるであろう、司教の部屋を目指す。
……
「…そこにおる奴、誰や?」
「…キサマ。我ガ縄張ニ忍ビ込ムトハ恐レ多イ奴ヨ」
司教部屋と思われる扉の横に、違和感を感じたレンが呼びかけると、透明化(インビジブル)を解除した悪魔(デーモン)が現れた。
「この人の少なさは自分が原因か…」
「我ガ姿ヲ見テ怯エントハ…多少ノ心得ガアルヨウダナ」
ツノのように突き出した幅広の耳に、削げ落ちた鼻と唇。
大きく窪んだ目と、全身くすんだ黒色の悪魔を見ても平然とするレンに、序列5位の悪魔…ベリアスは警戒した表情を浮かべる。
「…放浪時代に魔国も旅したさかい、そのオモロイ顔は見慣れとるんや。」
レンは軽口を叩くと、的を討つべく腰の刀に手を回す。
「ホゥ。魔法ノ武器カ…」
「一級品やで…とくと味わいや!」
…ビュン!
レンの体が揺れて見えると、次の瞬間には悪魔の首に刀が迫る。
…ガキンッ!
全身が武器と言える硬度を持つ悪魔は、首と刃の間に爪を差し入れ受け止めると、反対の手で突きを放ってくる。
「うぉっ!…あぶないなぁ」
寸前の所で体を捻り爪を躱したレンは、やはり一筋縄では行かないかと相手を睨む。
悪魔はパーティモンスターで、知性がありボスモンスターになっている事が多い。
序列が上がれば上がるほど強くなるが、今対峙しているベリアスは第5位、適正レベルは70と低い方だ。
レベルが上がって90LVになったレンなら、ソロでも充分勝機はある…
が、油断して勝てる相手でも無い。
「…ハァァア」
ベリアスの体が淡く光る。
「ちっ、スキルか…」
レンも合わせてスキルを使い自らを強化する。
「疾風迅雷、獅子奮迅、耐性強化」
レンの体も淡い光に包まれる。
…
「ユクゾ!」
…ブォンッ!!
鋭い爪の振り下ろしを刀で受け流すレン。
そのまま横薙ぎに斬りかかるがツノで弾かれ、爪での突きがくる。
「はぁっ!」
レンがジャンプで躱すと、ベリアスは翼で風を起こし体制を崩させる。
着地する瞬間を狙い、鞭のようにしならせた尻尾の一撃をお見舞いする。
「くっ!ぐぅあっ!」
…ドーンッ
刀で直撃は防いだが、勢いに押されて大音量の破砕音と共に壁に激突するレン。
「我ガ言葉ニ耳ヲ傾ケヨ!」
そんなレンに畳み掛けるよう、ベリアスが悪魔の特殊スキルを使い、様々な状態異常を与える呪詛の言葉を唱え始める
「ちっ、はぁあっ!」
壁から起き上がり連撃を放つが、悪魔の硬い皮膚を抜けてダメージを与えられない。
…瞬撃やと、大したダメージ与えられんか、ほんならコレや!
レンは上段からの跳び斬りをベリアスに受けさせる。
「ぐっ…」
本気の一撃にタタラを踏んだ瞬間を逃さず、レンは体を沈めスキルを放つ!
「金剛撃!!」
「デモンズスピア!」
「ぐぅおっ!?」
…ドカッ
レンが放ったスキルの一撃はベリアスの体を両断する事も、大したダメージも与えられずに不発に終わってしまう。
そして、反対に尻尾の反撃を受け吹き飛ぶ。
「…かはっ、な…なんでや?」
「ハハハ…身代ワリノ腕輪ダ」
ベリアスは自分が装備していた腕輪を見せると、腕輪は役目を終えて割れて消える。
「アイテムとか…ズルいで自分…」
レンは何とか体を起こすがダメージが大きい。
ベリアスが笑い声を漏らしながら近づいてくる…
「良ク、戦ッタ…褒美ニ一撃デ葬ッテヤロウ」
「…その余裕、ムカつくわっ!!十文字斬!」
不用意に近づくベリアスに、再度スキルを放つが…翼を盾にされ弾かれてしまい、またも不発に終わる。
…手の平で遊ばれてもうたってやつか。油断したつもりは無かったんやけどなぁ…ごめんな、フウカ、シャル。
「…グッ!」
レンが心の中で愛する者達へ諦めと謝罪をし、生を諦め目を閉じると…
ベリアスの唸り声が聞こえた。
何事かと目を開くレン
「ナ、ナニヲシタ!?…カラダガ、ウゴカン!」
「……な、どないしんや?」
「はぁ。貴方、なにをやれていますの?」
…スタッ
天井から声が聞こえたかと思うと、
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孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。
これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
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88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
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異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
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