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新たな動き
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「…貴方、なにをやれていますの?」
呆れた顔をしながらメリーがレンに問う。
「だ、大事な事やから二回言うたん?」
「…助けるのやめておきましょうかしら。」
メリーが来てくれた事で、おどけた反応を返すレンに、メリッサは冷たい目で言い放つ。
「じょ、冗談や!頼んます!」と、必死に手を合わせて懇願してくるレンを見て、溜息をつきベリアスに向き直る。
「グッ…グゥァアッ!」
ベリアスは影縫いの効果を打ち破り、肩で息をしながらメリッサを睨む。
「キサマ…何者ダ!」
「…あなた如きに名乗る名前はありませんわ。」
どうせ名乗っても、時間の無駄になるだけだと言い、無造作に二本のクナイをかまえる。
「生意気ナ、人間フゼイガッ!!」
ベリアスの叫びに呼応するように、体が淡く光、さらに呪詛を言葉に乗せて放ってくる。
「…限界突破、祝福の聖歌」
「限界突破やとっ!?…確かそれ、課金せなクリアできへんような、ヤラシイ限定クエで取れるやつやろ?そんなんズルやで!」
「あなた…一体、誰の味方ですの?」
レンに非難の目を向けながら、全能力値を少しの間だけ倍にするスキルを使用し、賢者の上位スキルで呪詛の力を相殺すると動き出す。
「チッ、クラエ!煉獄突キ!」
すかさず、煉獄の炎を纏わせた連続突きを繰り出すベリアスだったが、爪がメリーをとらえる瞬間…当たる筈の爪は空をきっていて、代わりに黒い腕が宙を舞った。
「ウガァッアッッ!!」
何をされたか分からないような、そんなスピードの攻撃で吹き飛ばされた腕、その部分から吹き出る黒い血を抑え、振り向きベリアスは叫ぶ
「キィサマァ!一体ドレダケノスキル…グオッ!?」
「…うるさいですわ!」
叫ぶベリアスにクナイを投げつけ黙らせる。
両肩と腹に風穴を開けられ、驚愕の表情で自分の体と、敵を見比べるベリアス。
己と比べれば、圧倒的に劣る存在のはず…そんな人間に、簡単に圧倒されてしまっている自分の現状に。
頭では理解していても、気持ちが認める事を許さないのだ。
「…いっただきっ!!」
ズバッ!
レンは、油断と背後を晒したその隙を逃しはしなかった…
ドスン!と鈍い音ともに首が落ちると、ベリアスの体は霧となって消え去る。
「あなた、卑怯ですわね…」
「お返しはキッチリしとかんとなぁ!」
いい笑顔で答えるレンに溜息をおくると、無言でその場を離れようとするメリッサ。
慌てて呼び止めてくるレンから、何故ここにいるのか?と尋ねられ、めんどくさそうに答える。
「あなたには関係ありませんわ。」
そう言うと、ヒラヒラと手を振りながら何処かへ行ってしまう。
そんな後ろ姿を見ながらレンは考える。
…ん~、やっぱり主人公が弱いと話が締まらんな!
こりゃ、俺も一から鍛え直さんとあかんわ。
……コツコツ
メリッサは自分の予想が外れた事に、少しがっかりしながらも、それなら他で確認を行うまでだ、と次なる目的を目指し歩く。
バノペアからエデキオに向かう途中、単独行動の許可を申し出た彼女は、自らが作った貴族達の情報網に引っかかった噂を、確認しにきていたのだ。
…ユウト様を狙う、不穏な動き…ねぇ。
帝国にしても、神国にしても…ユウト様を崇め奉るならまだしも、懐柔しようなんて片腹痛いですわ。
そう、心の中で自分の常識に頷くと、司教のいなくなった東部教会を早々に見切り、後にした。
ーーーーーーユウト視点
…メリーが、人に会う約束があると言ってきたので、エデキオに向かう途中で別行動になった。
まぁ、彼女の事だから、八割くらいは俺の為で、後の二割は悪巧みだろう…
と、当たりをつけて単独行動を許可したんだが
「単身で神国に乗り込むとか、大丈夫だろうか…」
思わず心配が口をついて出る。
間違いなく俺よりは上手くやるであろう人物を思ってだから、自分でも心配し過ぎだとは分かってるんだけどな…
「メリッサさんなら、何も問題無いと思いますよ?少なくともユウトさんよりは…ねっ」
おどけるように笑ってくるシャル。
今までなら、レンにしか見せなかっただろう表情を、最近は俺にも見せてくれるようになってきたんだけど…可愛さ爆発し過ぎだぜっ!!
「…それもそうだよな。俺に心配されてもメリーの迷惑だよなっ!」
「えっ!?いっ、いえ!そんな…ほ、本気で言ったんじゃないんですよ?」
俺が自虐で返すと、気まずそうに上目遣いで否定してくれる。
…あぁあ゛!抱きしめたい!
…くっ、でも、我慢だ。
レンとの約束もある。
それに、シャルの事は流れに任せないって決めたでは無いか!
…でも、向こうから来るのを受け止めるのは仕方ないよね?不可抗力だしっ!
「…ご、ごしゅじんさま…おなか」
「お兄ちゃん、お腹減ったよぉ!」
レアの決め台詞が、ルサリィにカットインされる…
最近、ルサリィはティファに料理を習っているようで、今みたいに移動中の野外料理なんかは、結構板について来てるんだ。
そのせいか、料理したくてウズウズしてる感じで、なんとも可愛らしい。
「一緒に居るなら、何か役に立ちたいの!」
って言われた時は…成長してるんだなぁ、と親の気持ちになって、ちょっと泣きそうになったよ…
…そりゃ、実年齢なら親子でも十分あり得るからこんな気持ちにもなるか。
「…では、一旦休憩にしましょうか。」
ティファが、そう言って馬車を止める。
…
「じゃあ、昼飯の食材は何が良い?」
俺がアイテムボックスを漁りながら聞くと、一斉に希望を言い始める…
「私は野菜を使ったスープ…」
「肉!肉が必要です、ご主人様!」
「…量があれば…なんでも…」
「もぉ!みんな難しいよぉ!」
好き放題言う仲間達に、料理番のルサリィがご立腹だ。
俺は全員を宥めながら、丸焼き用の肉と、サラダやスープ用の野菜、一品用に芋や豆類を適当に取り出して、ルサリィのお任せでとお願いしておいた。
ルサリィはいい笑顔で「うんっ!」と返事をしてくれ、準備に取り掛かった。
お手伝いはレアの担当で、火や水を魔法で召喚する係だな。
ティファは周辺の哨戒にあたってくれるようで、確認に行ってしまい、シャルは今の旅を物語にしたいらしくて、ノートに向かってペンを走らせている。
…
……
俺だけやる事がないっ!
仕方ないので、ヘッケランに変わった事が無いかと無駄に連絡してみたり、皆が使える魔法やスキル、アイテムの整理をして、いざという時は直ぐに指示が出せるように備えておく。
「…ん~、やっぱり攻撃回避や身代わり系のアイテムが、だいぶ減ってるなぁ」
アイテムボックスの中身を確認しながら、使用頻度が高いアイテムの在庫数に溜息をつく…
今の世界では、ゲーム時代のようにRM(リアルマネー)で課金ガチャを回したり、道具屋に行ってポーションを補充とかは簡単にできない。
だから、これからは計画的に使って行きたい所だけど、俺とシャル、ルサリィは弾みで殺される可能性が高い…
なので、身代わりアイテムは必須だ。
それに、ダメージ軽減や無効化アイテムも併用しないと、身代わりアイテムも尽きてしまう。
唯一、三姉妹だけは、この世界でならほとんどの危機は自分で回避できるので、助かってはいるけど…
というより、おんぶに抱っこ状態だからな…
定期的に恩返しをしたいとは思ってるんだけど、三人とも結構真面目で自分の為に何かをおねだりする事とか無い…いや、レアは別か!
まぁ、レアの魔法で助けてもらってるのは一緒だから、その程度、別にいいんだけどね。
…あぁ~魔法とかスキルとか使いたいなぁ~剣技とかも極めて、昔みたいに活躍したいなぁ…
「みなさ~ん!ご飯ができましたよぉ!」
「…もぐもぐもぐ…できた。…」
なんか、既に食べてる人いますけどっ!?
俺は心の中の不満は閉まっておき、その後は皆で楽しく美味しく食事を頂いた。
ルサリィは嫁に出しても良いくらいの、料理を作っていてベタ褒めしておいた。
…嫁にはやらんけどなっ!
全員で後片付けを終わらせると、その日は行ける所まで進んで、テントを張ってキャンプを楽しむ。
…明日には、エデキオに入れるだろうから、また忙しくなるんだろうなぁ。
俺は、束の間の休息を楽しむべく、今日は誰に挟まれて寝るかと悩んだ。
ーーーーーー神国 ホリシア連峰
「大変です師匠!」
標高2000~3000m級の山々が連なる、ホリシア連峰にあって、一番背の高い三ツ山で、積雪に囲まれた道場の縁側に座る、世界最強の剣士と名高い、剣聖ガリフォン・ルクレールは欠伸をしながら返事を返す。
「欠伸をしている場合ではありません!」
「そうです!師匠!」
そんな剣聖に、一大事を伝えに来た二人は、緊張感が足りないと師匠に文句を言う。
背の小さくて、可愛らしい顔をした道着姿の男の子が、道場序列三位のバンゼル。
背が大きめの、キリッとした顔の女の子が、同じく序列三位のキリカだ。
道場の序列は1~10まであり、ガリフォンは含まれない。
現在、一位は空席で、二位の二人は武者修行に出ており、残りの一人は基本引きこもりだ。
バンゼル達が属している、第三位は二人しかいない。
彼等が如何に選ばれた、一握りの猛者だと言うのは、毎年1000人近い志願者が門を叩き、残るのが10人程度、さらに五位を超えれる者は、良くて二人と言った状況を踏まえれば簡単に理解できるだろう。
ちなみに、王国騎士長なら大体、三位程度。
帝国最強の、堅牢の二つ名を持つドーンでも、二位程度だ。
「んでぇ?…なんかあったのか?」
「そ、それが、エンシャントドラゴンを倒したと言う者達が現れたのです!」
「そうです、しかも王国の者達だそうです!」
キリカの説明にバンゼルが補足説明する。
「…へぇ。そいつぁ中々だな!古代種たぁ景気が良い。」
ガリフォンは自分の膝を叩くと愉快そうに笑う。
「笑い事ではありません!勇者の再来なら、デーモンロードの復活が!」
「…僕達の力では、まだ及びません。」
まくし立てるキリカと、俯くバンゼル。
「はぁぁ、わーったよ!どれ、稽古をつけてやろうか」
そう言うとガリフォンは獣の笑みを浮かべ、獲物を見る目で二人を射抜く。
「よっ…よろしく、お願いします…」
「…はいっ!」
…その後、道場に残ったのは、二人の悲鳴と一人の笑い声、そして三人が吐く白い息だけだった。
ーーーーー多民族国家群 妖精地域
「いやぁ…シルヴァ…よく…きたな……」
「久し振りだな!精霊王!聞いたか?」
高さ300mはあり、幹の長さも100mはある巨木…現代建物で考えると、日本で最も高い完成済みの建築物で、大阪にある、あべのハルカスくらいのデカさがある。
そんな巨木に顔がついていて喋れる…トゥーレと呼ばれる存在が、妖精達の王様だ。
普通の人間なら、モンスターかお化けではと怯えるような存在だが、旧友のように語りかける、熊と人のハーフで獣族の男性は、その容姿をまったく気にする様子は無い。
「…剣聖…からの…言伝か…?」
「いや!グデ山で修行していた時に助けた、神国の商人が教えてくれたことだ!」
目ともウロとも見える空洞を細めて、洞窟の入り口みたいな口を動かすトゥーレ。
熊人族のベアーレ・シルヴァは、ニヤリと笑うと話を続ける。
「神国の聖女が受けた神託の勇者が現れたらしいぞ!」
「…ほぅ…古代の力を持つ…人族の希望…か…」
「そう…そして!悪魔の王、デーモンロードが復活する!」
ベアーレは腰に差した刀に手を置くと、ゆっくりと抜き放つ。
「…よい…剣よ…よかろう…ドワーフ達に…持っていくがよい」
トゥーレの幹から、小さな光が飛び立つ。
その光は、羽が生えた小さな妖精で、ベアーレの元まで行くと、付いて来いと案内役を務めてくれるようだ。
「妖精王よ!恩にきるぞ!」
ベアーレは笑顔でそう言うと、小さな妖精に導かれ、森の中に姿を消すのであった。
「…災厄の根源…人の身には余る存在よの…」
トゥーレは呟くと、森の生き物達に先程の情報を届ける為、花粉のように精霊達を飛ばす。
悪魔の王が蘇れば、それは全ての生き物の存在を脅かすと知っての行動であり、己が種族を守るための準備をさせる為の…先達としの役目でもあると考えて。
奇しくも、広大な森に散らばる小さな光達は、冬のモミの木を彩るクリスマスツリーのように、綺麗に輝いていた…
呆れた顔をしながらメリーがレンに問う。
「だ、大事な事やから二回言うたん?」
「…助けるのやめておきましょうかしら。」
メリーが来てくれた事で、おどけた反応を返すレンに、メリッサは冷たい目で言い放つ。
「じょ、冗談や!頼んます!」と、必死に手を合わせて懇願してくるレンを見て、溜息をつきベリアスに向き直る。
「グッ…グゥァアッ!」
ベリアスは影縫いの効果を打ち破り、肩で息をしながらメリッサを睨む。
「キサマ…何者ダ!」
「…あなた如きに名乗る名前はありませんわ。」
どうせ名乗っても、時間の無駄になるだけだと言い、無造作に二本のクナイをかまえる。
「生意気ナ、人間フゼイガッ!!」
ベリアスの叫びに呼応するように、体が淡く光、さらに呪詛を言葉に乗せて放ってくる。
「…限界突破、祝福の聖歌」
「限界突破やとっ!?…確かそれ、課金せなクリアできへんような、ヤラシイ限定クエで取れるやつやろ?そんなんズルやで!」
「あなた…一体、誰の味方ですの?」
レンに非難の目を向けながら、全能力値を少しの間だけ倍にするスキルを使用し、賢者の上位スキルで呪詛の力を相殺すると動き出す。
「チッ、クラエ!煉獄突キ!」
すかさず、煉獄の炎を纏わせた連続突きを繰り出すベリアスだったが、爪がメリーをとらえる瞬間…当たる筈の爪は空をきっていて、代わりに黒い腕が宙を舞った。
「ウガァッアッッ!!」
何をされたか分からないような、そんなスピードの攻撃で吹き飛ばされた腕、その部分から吹き出る黒い血を抑え、振り向きベリアスは叫ぶ
「キィサマァ!一体ドレダケノスキル…グオッ!?」
「…うるさいですわ!」
叫ぶベリアスにクナイを投げつけ黙らせる。
両肩と腹に風穴を開けられ、驚愕の表情で自分の体と、敵を見比べるベリアス。
己と比べれば、圧倒的に劣る存在のはず…そんな人間に、簡単に圧倒されてしまっている自分の現状に。
頭では理解していても、気持ちが認める事を許さないのだ。
「…いっただきっ!!」
ズバッ!
レンは、油断と背後を晒したその隙を逃しはしなかった…
ドスン!と鈍い音ともに首が落ちると、ベリアスの体は霧となって消え去る。
「あなた、卑怯ですわね…」
「お返しはキッチリしとかんとなぁ!」
いい笑顔で答えるレンに溜息をおくると、無言でその場を離れようとするメリッサ。
慌てて呼び止めてくるレンから、何故ここにいるのか?と尋ねられ、めんどくさそうに答える。
「あなたには関係ありませんわ。」
そう言うと、ヒラヒラと手を振りながら何処かへ行ってしまう。
そんな後ろ姿を見ながらレンは考える。
…ん~、やっぱり主人公が弱いと話が締まらんな!
こりゃ、俺も一から鍛え直さんとあかんわ。
……コツコツ
メリッサは自分の予想が外れた事に、少しがっかりしながらも、それなら他で確認を行うまでだ、と次なる目的を目指し歩く。
バノペアからエデキオに向かう途中、単独行動の許可を申し出た彼女は、自らが作った貴族達の情報網に引っかかった噂を、確認しにきていたのだ。
…ユウト様を狙う、不穏な動き…ねぇ。
帝国にしても、神国にしても…ユウト様を崇め奉るならまだしも、懐柔しようなんて片腹痛いですわ。
そう、心の中で自分の常識に頷くと、司教のいなくなった東部教会を早々に見切り、後にした。
ーーーーーーユウト視点
…メリーが、人に会う約束があると言ってきたので、エデキオに向かう途中で別行動になった。
まぁ、彼女の事だから、八割くらいは俺の為で、後の二割は悪巧みだろう…
と、当たりをつけて単独行動を許可したんだが
「単身で神国に乗り込むとか、大丈夫だろうか…」
思わず心配が口をついて出る。
間違いなく俺よりは上手くやるであろう人物を思ってだから、自分でも心配し過ぎだとは分かってるんだけどな…
「メリッサさんなら、何も問題無いと思いますよ?少なくともユウトさんよりは…ねっ」
おどけるように笑ってくるシャル。
今までなら、レンにしか見せなかっただろう表情を、最近は俺にも見せてくれるようになってきたんだけど…可愛さ爆発し過ぎだぜっ!!
「…それもそうだよな。俺に心配されてもメリーの迷惑だよなっ!」
「えっ!?いっ、いえ!そんな…ほ、本気で言ったんじゃないんですよ?」
俺が自虐で返すと、気まずそうに上目遣いで否定してくれる。
…あぁあ゛!抱きしめたい!
…くっ、でも、我慢だ。
レンとの約束もある。
それに、シャルの事は流れに任せないって決めたでは無いか!
…でも、向こうから来るのを受け止めるのは仕方ないよね?不可抗力だしっ!
「…ご、ごしゅじんさま…おなか」
「お兄ちゃん、お腹減ったよぉ!」
レアの決め台詞が、ルサリィにカットインされる…
最近、ルサリィはティファに料理を習っているようで、今みたいに移動中の野外料理なんかは、結構板について来てるんだ。
そのせいか、料理したくてウズウズしてる感じで、なんとも可愛らしい。
「一緒に居るなら、何か役に立ちたいの!」
って言われた時は…成長してるんだなぁ、と親の気持ちになって、ちょっと泣きそうになったよ…
…そりゃ、実年齢なら親子でも十分あり得るからこんな気持ちにもなるか。
「…では、一旦休憩にしましょうか。」
ティファが、そう言って馬車を止める。
…
「じゃあ、昼飯の食材は何が良い?」
俺がアイテムボックスを漁りながら聞くと、一斉に希望を言い始める…
「私は野菜を使ったスープ…」
「肉!肉が必要です、ご主人様!」
「…量があれば…なんでも…」
「もぉ!みんな難しいよぉ!」
好き放題言う仲間達に、料理番のルサリィがご立腹だ。
俺は全員を宥めながら、丸焼き用の肉と、サラダやスープ用の野菜、一品用に芋や豆類を適当に取り出して、ルサリィのお任せでとお願いしておいた。
ルサリィはいい笑顔で「うんっ!」と返事をしてくれ、準備に取り掛かった。
お手伝いはレアの担当で、火や水を魔法で召喚する係だな。
ティファは周辺の哨戒にあたってくれるようで、確認に行ってしまい、シャルは今の旅を物語にしたいらしくて、ノートに向かってペンを走らせている。
…
……
俺だけやる事がないっ!
仕方ないので、ヘッケランに変わった事が無いかと無駄に連絡してみたり、皆が使える魔法やスキル、アイテムの整理をして、いざという時は直ぐに指示が出せるように備えておく。
「…ん~、やっぱり攻撃回避や身代わり系のアイテムが、だいぶ減ってるなぁ」
アイテムボックスの中身を確認しながら、使用頻度が高いアイテムの在庫数に溜息をつく…
今の世界では、ゲーム時代のようにRM(リアルマネー)で課金ガチャを回したり、道具屋に行ってポーションを補充とかは簡単にできない。
だから、これからは計画的に使って行きたい所だけど、俺とシャル、ルサリィは弾みで殺される可能性が高い…
なので、身代わりアイテムは必須だ。
それに、ダメージ軽減や無効化アイテムも併用しないと、身代わりアイテムも尽きてしまう。
唯一、三姉妹だけは、この世界でならほとんどの危機は自分で回避できるので、助かってはいるけど…
というより、おんぶに抱っこ状態だからな…
定期的に恩返しをしたいとは思ってるんだけど、三人とも結構真面目で自分の為に何かをおねだりする事とか無い…いや、レアは別か!
まぁ、レアの魔法で助けてもらってるのは一緒だから、その程度、別にいいんだけどね。
…あぁ~魔法とかスキルとか使いたいなぁ~剣技とかも極めて、昔みたいに活躍したいなぁ…
「みなさ~ん!ご飯ができましたよぉ!」
「…もぐもぐもぐ…できた。…」
なんか、既に食べてる人いますけどっ!?
俺は心の中の不満は閉まっておき、その後は皆で楽しく美味しく食事を頂いた。
ルサリィは嫁に出しても良いくらいの、料理を作っていてベタ褒めしておいた。
…嫁にはやらんけどなっ!
全員で後片付けを終わらせると、その日は行ける所まで進んで、テントを張ってキャンプを楽しむ。
…明日には、エデキオに入れるだろうから、また忙しくなるんだろうなぁ。
俺は、束の間の休息を楽しむべく、今日は誰に挟まれて寝るかと悩んだ。
ーーーーーー神国 ホリシア連峰
「大変です師匠!」
標高2000~3000m級の山々が連なる、ホリシア連峰にあって、一番背の高い三ツ山で、積雪に囲まれた道場の縁側に座る、世界最強の剣士と名高い、剣聖ガリフォン・ルクレールは欠伸をしながら返事を返す。
「欠伸をしている場合ではありません!」
「そうです!師匠!」
そんな剣聖に、一大事を伝えに来た二人は、緊張感が足りないと師匠に文句を言う。
背の小さくて、可愛らしい顔をした道着姿の男の子が、道場序列三位のバンゼル。
背が大きめの、キリッとした顔の女の子が、同じく序列三位のキリカだ。
道場の序列は1~10まであり、ガリフォンは含まれない。
現在、一位は空席で、二位の二人は武者修行に出ており、残りの一人は基本引きこもりだ。
バンゼル達が属している、第三位は二人しかいない。
彼等が如何に選ばれた、一握りの猛者だと言うのは、毎年1000人近い志願者が門を叩き、残るのが10人程度、さらに五位を超えれる者は、良くて二人と言った状況を踏まえれば簡単に理解できるだろう。
ちなみに、王国騎士長なら大体、三位程度。
帝国最強の、堅牢の二つ名を持つドーンでも、二位程度だ。
「んでぇ?…なんかあったのか?」
「そ、それが、エンシャントドラゴンを倒したと言う者達が現れたのです!」
「そうです、しかも王国の者達だそうです!」
キリカの説明にバンゼルが補足説明する。
「…へぇ。そいつぁ中々だな!古代種たぁ景気が良い。」
ガリフォンは自分の膝を叩くと愉快そうに笑う。
「笑い事ではありません!勇者の再来なら、デーモンロードの復活が!」
「…僕達の力では、まだ及びません。」
まくし立てるキリカと、俯くバンゼル。
「はぁぁ、わーったよ!どれ、稽古をつけてやろうか」
そう言うとガリフォンは獣の笑みを浮かべ、獲物を見る目で二人を射抜く。
「よっ…よろしく、お願いします…」
「…はいっ!」
…その後、道場に残ったのは、二人の悲鳴と一人の笑い声、そして三人が吐く白い息だけだった。
ーーーーー多民族国家群 妖精地域
「いやぁ…シルヴァ…よく…きたな……」
「久し振りだな!精霊王!聞いたか?」
高さ300mはあり、幹の長さも100mはある巨木…現代建物で考えると、日本で最も高い完成済みの建築物で、大阪にある、あべのハルカスくらいのデカさがある。
そんな巨木に顔がついていて喋れる…トゥーレと呼ばれる存在が、妖精達の王様だ。
普通の人間なら、モンスターかお化けではと怯えるような存在だが、旧友のように語りかける、熊と人のハーフで獣族の男性は、その容姿をまったく気にする様子は無い。
「…剣聖…からの…言伝か…?」
「いや!グデ山で修行していた時に助けた、神国の商人が教えてくれたことだ!」
目ともウロとも見える空洞を細めて、洞窟の入り口みたいな口を動かすトゥーレ。
熊人族のベアーレ・シルヴァは、ニヤリと笑うと話を続ける。
「神国の聖女が受けた神託の勇者が現れたらしいぞ!」
「…ほぅ…古代の力を持つ…人族の希望…か…」
「そう…そして!悪魔の王、デーモンロードが復活する!」
ベアーレは腰に差した刀に手を置くと、ゆっくりと抜き放つ。
「…よい…剣よ…よかろう…ドワーフ達に…持っていくがよい」
トゥーレの幹から、小さな光が飛び立つ。
その光は、羽が生えた小さな妖精で、ベアーレの元まで行くと、付いて来いと案内役を務めてくれるようだ。
「妖精王よ!恩にきるぞ!」
ベアーレは笑顔でそう言うと、小さな妖精に導かれ、森の中に姿を消すのであった。
「…災厄の根源…人の身には余る存在よの…」
トゥーレは呟くと、森の生き物達に先程の情報を届ける為、花粉のように精霊達を飛ばす。
悪魔の王が蘇れば、それは全ての生き物の存在を脅かすと知っての行動であり、己が種族を守るための準備をさせる為の…先達としの役目でもあると考えて。
奇しくも、広大な森に散らばる小さな光達は、冬のモミの木を彩るクリスマスツリーのように、綺麗に輝いていた…
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その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
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この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
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