課金ガチャアイテムだけで生き抜く!異世界生活‼︎

ネコまっしぐら。

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城塞都市 防衛戦

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ーーーーアスペル   郊外野営地

「お待ちしておりました!ユウト様」
 ヘッケランは恭しく頭を下げると、笑顔で俺達の元へやって来て歓迎してくれる。

 エゼルリオでの奴隷騒動が落ち着き、いよいよ本格的に帝国軍との戦いに駆り出される事になった俺たちアイアンメイデンは、ヘッケラン指導の下に集まった傭兵3000と、ゲイリー都市長率いる王国兵7000を足して計一万の軍による防衛線で合流していた。

 獣人族のペル達が大森林で奮闘してくれていたお陰で、帝国軍本体が向かっているバノペアよりも、アスペルに向かってくる帝国兵達の方が進軍状況は良くないそうだ。

 合流した俺達はヘッケランと打ち合わせを行い、帝国軍の陣容と防衛についてのプランを確認しながら最終調整を行なっていた。

「…と言う話が出ておりますので、兵数としてもユウト様や他の皆様も十分ご注意下さい。」

「なるほど。てっきり皇帝が暴走したのかと思ってたけど、実際はシュウト達の嫌がらせの可能性が高いって事か…」

「ユウト様に対する考えは、あの者も皇帝カイザーにも大した差はありませんし、今回の戦闘中に直接何かをしてくるかもしれませんね。」
 ヘッケランの注意喚起に、ティファがターゲットにされるとすれば俺が一番可能性が高いので、本陣で防備を固めて待機するべきだと言い始め、メリーも横で頷いている…

「いやいや、俺も侯爵になっての初戦だよ?初っ端からビビる訳にはいかないし、ぜぜぜ…全然、怖くないんだからっ!」
 …ちょっと噛んじまっただけさっ

「まぁ、お姉様がユウト様の護衛につかれて、わたくしが殲滅に回れば問題ありませんし、名声を広めるためにも前線におられた方がよろしいかもしれませんわ。」

 この世界に来た始めの頃とは違い、俺の経験や信用度が上がったのか、メリーが俺の参戦を珍しく許してくれる。
 …もちろんティファのお守り付きのようだが

「私の方でも既にいくつか準備している物が御座いますので、三倍程度の戦力差は問題無いかと…唯一の懸念は、ユウト様と同じ異世界出身者であるシュウトと言う男の存在だけでしょうか。」
 常に二手三手先の準備を行うヘッケランが、こればかりは自分の手に余る、と細い眉毛をひそめて難しい顔をして俺を見る。

「おそらく、あの時の答えを聞きにくる筈だから、どこかのタイミングで俺を直接狙ってくると思う。」

「それなら返り討ちにするまでです。あの時のように遅れは取りません!」
 今度はティファが珍しく息を荒くして俺を見つめてくる。

「あぁ!次は俺も万全の用意で臨むし、あん時の借りを返してやろうぜっ!」
 俺もティファに合わせて拳に力を込める。

 ヘッケランも指揮関係の補佐があるので俺に同行する事になり、メリーにはくれぐれも無理をしないように言い含めておく。
 …帝国軍を退けても俺達の誰かが殺されでもしたら意味が無い、命はアイテムを使っても取り戻す事ができないんだから…慎重にやって損な事は無いはずだ。

「ではユウト様、獣人族に出している妨害工作の解除をお願いします。」

 俺はヘッケランに頷き、開戦の印となる連絡を入れた。



……
「ちっ!ようやく魔物が引いてきたな。ハル、進み具合はどうだ?」

「はっ、おそらく明日朝の開戦ならば間に合う進捗具合かと思われます。」

 バノペア攻略軍よりも順調に進むかと思っていたシュウト達は、思った以上のモンスターによる襲撃を受け帝国本軍に遅れをとっていた…
 本軍の布陣完了を受けて大急ぎで軍を進めた結果、モンスターとの遭遇率が減った事も相まって、本軍に遅れる事一日…ようやく大森林の横断を終えようとしていたシュウト率いるアスペル攻略軍。

 今回の大規模な侵略戦の計画を進言したシュウトは、皇帝カイザーと宰相のカリオペアに対して王国の前線都市を一つ落とす事を約束していた。
 反対意見が多かったが、仮に落とせなければ自分の国である『日の本』を帝国領とする事を条件に、渋るカイザーを説得しきったのである。


 ここまでして帝国軍を動かしたのは、ユウト率いるアイアンメイデンの主要メンバーを自分達の配下に取り込むためで、アイアンメイデンにはレベル100の元NPCが三人いる為、策を弄して芋蔓式に全てを奪うつもりで博打に出る必要があったのだ。

「帝国への義理はこんなもんだな…よし、ユウトを狙いに行くぞ、準備はいいか?」

「はっ、既に万事整っております!」

 シュウトはコハルに頷くと、四将の一人【天撃】と呼ばれるアレスに軍を託しコハルと二人、明日の進軍に控える帝国軍を離れていった。





ーーーー翌朝
「王国とアイアンメイデンの諸君!敵は我々よりも数が多い、しかし、我らには多数の計略と一騎当千の切り札があるっ!だから…帝国の奴らに一泡吹かせてやろうぜ!!」

「うぉぉお!ユウト様ー!」
「軍神ユウト様ー!」
「ぉぉお!やってやんよー!」

 いつのまにか変な二つ名がついてるみたいだ…

 野営地から少し進んだ所で進軍を止めた俺達は、予定していた通り軍を三つに分ける事にした。
 王国兵を横に展開して、ウチの軍は半分にしてその左右前方へと配置する。
「それでは、いってまいりますわ。」
 今から戦いに行くとは思えない優雅な一礼をすると、メリーは俺に抱きつき耳元で囁いたあと離れて行った。
 …なぜ、俺の耳を甘噛みして行くんだよっ!
 気持ちいいだろっ…


 俺は総大将らしく一人で馬に騎乗し、整然と並ぶ王国軍の最後尾で待機する。
 左右にはゲイリー都市長とヘッケランが、背後にはティファが布陣し、後は敵の突撃を待つばかりだ…

「見ていてくださいユウト様、こういうのは初手が肝心ですから…」
 自信満々に笑うヘッケランに大将らしく重々しく頷く俺…何が起こるのかは聞かされていないけど


 …
「誇り高き帝国軍よ、天撃の名において皆に勝利を約束しよう。思う存分暴れよ!…突撃ぃぃっ!!」
「「うぉぉぉっっ!!」」

「…始まったな」
 以前、ここで迎え撃った時のようにバラバラと突撃してくる兵士達では無く、数も倍でレアがいない中での地響きすら感じる突撃…
 正直なところ身体の震えが止まらん。
 本の中で当たり前のように振る舞う、物語の主人公達の気持ちがまったく分からんっ!

 …ドドドッ…ゴゴゴ…
「こ、侯爵様、つ…ついに来ましたな。」
 ゲイリー都市長が生唾を飲み込みながらこちらを見て感想を漏らすが、俺もその気持ちはよく分かった。

 そんな俺達とは違い、ヘッケランは悪ガキの様な顔をしながら『伝心の鈴』を使い誰かに合図を送っている…

 …ドドドッ…カバッ!
「「大いなる大地よ、我らが呼びかけに応えよっ!アースクリエイト!!」」

 一番槍を入れようと殺到する帝国騎兵が、帝国軍と王国軍の丁度中間地点くらいに突入した時、ただの野原に見えた地面が捲れ、中からローブを纏った人間が等間隔で10人程現れると一斉に魔法の詠唱を行う。

 すると、先頭を走る騎兵の目の前に棘状になって押し固められた土地が突き出し、馬ごと兵士を串刺しにしていく…
「なるほど、どうりで拒馬が無いと思ったんだ…この為だったのかっ!」
 次々と罠にかかる兵士の悲鳴を聞きながらヘッケランを見ると、ドヤ顔で俺を見て頷いている。

 魔術師達は左右に展開しているアイアンメイデン軍に回収されていき、追撃を掛けるよう言われたので出した俺の号令に従い、王国兵士達が弓を射かけて死体の山を築いていった…
 死体と棘が邪魔で堪らず後退した帝国軍も魔術師部隊を展開して、風とアースストーンと呼ばれる岩石を召喚して投石する魔法で柵を取り払っていく。
「…引き絞れっ!!」

 ヘッケランが号令を出すと、アイアンメイデン部隊が左右から魔術師た目掛けて殺到して行く…当然、帝国への護衛は着いているが、元S級冒険者のベイリトールを隊長とする傭兵部隊が、速攻戦術で仕留めていく。
 …魔術師は集団戦において、かなりの力を発揮するので削れるに越したことは無い


 …
「うぐぐ…一筋縄ではいかんか。両翼から攻勢を強め、捻り潰してしまえっ!」
 天撃のアレスは出端をことごとく挫かれた事に苦い顔をして、攻め方の方向を変更する。

 左右に歩兵を6000ずつ割り振り、中央に騎馬兵3000を配置する事で、俺達に奇抜な対応を取りにくくさせるのが狙いだ。

「ついでに左右の王国兵どもにはアレを放ってやれ!」
 アレスは兵数差だけでは無く、攻略の為に皇帝から授かったアイテムも出し惜しみなく使うよう指示を飛ばす。


 …
「何か策を打った方が良くないか?」

「一応、いくつか策は用意しておりますが…思ったよりこちらへの兵力分配が多いので、大きく動かす必要がありますが?」

「…メリーの出方次第かな?」

 中央の兵士を右翼と左翼に増援として送り、残った中央軍には魔術師部隊と共に守りを固めさせる。
 だが…増援を出した所で、さすがに両翼は倍以上の兵力差に押されているようだ。
 ヘッケランと出方を相談していると、帝国本陣から両翼に向けて竜巻が発生し、帝国兵達を飲み込んでいく。



 ーーー帝国軍本陣
「さぁ、遊んで差し上げましょうか。喜んで逝きなさいっ!ツインストーム、マキシマム!!」

 帝国本陣である一万の兵士達の中に突如として現れた、セクシーな忍び装束に身を包み空色の髪を風になびかせるメリーが、挨拶がわりと第七位の範囲魔法をぶっ放す。

「うわぁぁっ!」
「ぎぃやぁぁあ」
 本陣にいる兵士も巻き込んで、左右の帝国軍後方から迫る竜巻は相当数の兵士を絡め取っては放り投げていく。

「…もろいですわね。」
 天空にある城から人を見下ろして、ゴミのようだ…と言わんばかりの目で吹き飛ばされる兵士を見て呟くメリー
 当然、突如現れた明らかな敵対行動を取る女に、周りの兵士達も黙ってはいない。
 一撃必殺の思いで剣を振るう兵士の攻撃は掠りもせず、逆に腕や首が飛んでいく。

 黒い装束に白い肌、青い髪を血の赤に染めていくメリーに、頭が現実に理解が追いつかず見惚れる者達さえいる始末だ。
「「そこまでだっ」」
 だが、そんなメリーに果敢にも挑む一団がいた。

「アイアンメイデン幹部、メリッサ・アルフォートだな?」
 全身を覆う重装鎧に身を包んだ小隊と、それを率いているのであろう白の能面をつけた細身の男が、刀を抜き放ちつつ立ちはだかる。

「ふふふっ…少しは楽しませて欲しいものですわ。」
 そう言うとメリーは短剣を逆手に持ち、右手に鈍く光るクナイを構え、死の女神たる笑顔を男達にむけた…




 ーーーノスグデ平原

 タッタッタッタ…
「ほぅ…王国も中々やるじゃないか」
「参謀のヘッケラン・アシュペルガーかと思われます。」
 シュウトはコハルに頷くと、背の高い草の影に紛れて平原を走る

 アイアンメイデン攻略のため別行動を行っているシュウト達は、最初の突撃を見事に防いだ王国の計略を横目に感想を言い合い先を目指す。
 隠密行動は不得意なシュウトではあるが、コハルのスキルにフォローしてもらいながら、目的の人物であるユウトを直接狙うつもりなのだ。


 ……
「…見つけた。」

「これ以上踏み込むと、あの女の検知範囲に入りますのでご注意を」

 ユウトの背後で周囲の警戒に当たるティファを見て、シュウト達も同じく気付かれないよう警戒しながら機会を伺う。
 一度見ただけではあるが、ティファの強さと能力の高さはコハルが検知範囲とした、半径100mと言う大きさからも見て取れるはずだ。

「あの女が目的ではあるが、ターゲットを履き違えるなよ。」

「…心得ております。」

 最終確認と言うように言葉を交わすと二人を淡い光が包み、身体能力が強化されていき…それとは別にコハルはとっておきのスキルを発動する。

「いくぞっ」と小さく発した言葉と同時にコハルが飛び出し、その後をシュウトが追いかけていく。
 …タタタタタタッ
「来ましたねっ!」
 警戒網に掛かった気配にいち早く反応したティファは、メインターゲットであろうユウトに下がるよう伝え、アイテムの使用準備もさせ万全を整える。

「はぁぁあっ!」
 眼前に迫ったコハルが、飛び上がり斬りかかってくる…が、隙だらけの敵を見てティファは冷静に考える。
 …おかしい、こんなに隙だらけなら簡単に殺せてしまう、前回はもう少しマシな動きをしていたはずなのに…おとり、なのかしら?

「それなら、まとめて斬るのみだわっ!」
 罠であればそれごと斬り飛ばしてやる、とティファは横薙ぎに洗練された大斬りを放つ。

 バシュッ!!…ガキンッ!
「きゃっっ!」
 ティファの剣に攻撃を仕掛けていたコハルは簡単に斬り飛ばされ、後ろにいたシュウトは剣で受けるが威力を抑えきれず、声を上げて弾き飛ばされた。



 …が、

 ボウンッ…
 斬られた筈のコハルは白い煙となってティファの目の前から消え去り、弾き飛ばされシュウトは女性へと姿を変えてしまう。

 一連の攻撃全てが罠だと知り、焦り振り返るティファが叫ぶが…シュウトが割り込んで来る
「なにっ!?ユウトさ…」
「まずはお前からだ、ヘッケラン・アシュペルガー!!」

「危ない!ヘッケランッ!!」
 振り返ったティファの目に映ったのはユウトでは無く、横にいたヘッケランにスキルを放つシュウトと、そのヘッケランを庇い、諸共斬り飛ばされるユウトの姿だった
 …ブシャァアッ!!


「…ユウトさまぁぁっ!!」
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