課金ガチャアイテムだけで生き抜く!異世界生活‼︎

ネコまっしぐら。

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剣聖

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 ーーーーグデ平原 西部

「よう!待ってたぜ?お前さんらがアイアンメイデンに大将のユウトだな?」

「い、いえ、人違いデス…」

 およそ2日前、俺達アイアンメイデンはシュウトと日の本を救い、意気揚々とアスペルへの帰路についていた。

 帝国内では大きな問題無く進み、国境の関所も商団と難民やら奴隷に化けて無事にパスする事ができた。
 そう、何の問題も無く順調に行き過ぎて忘れてたんだ…
 元剣聖ガリフォンの存在を。

 情けない事に以前ガリフォンが居た付近に簡易テントみたいなのが出来ていて、冒険者用の物だろうかと知覚範囲まで近づいてしまった。
「ヤバイ、遠回りを」と思った時には既に遅く、俺の目でもガリフォンの姿を捉えるに至っており、満面の笑みで話し掛けられている。

「ウチの奴…あぁ、俺の元弟子が言うには恐ろしく強い聖騎士がいるって事でな。分かるだろ?」
 …分かるかよ、こんちくしょう!

「…つまり、ウチのティファに喧嘩を売るためにココでずっと待ってたと?」

 俺はニコニコと頷くガリフォンを見てため息を吐く。
 パッと見は酒場のマスターでもしてそうな、少し厳ついが気の良さそうな中年のおっさんだ。
 だけど、目が怖い。
 …昔に見た、サイコパスやぶっ飛んだ設定のアニメキャラがこんな狂気に満ちた目をしてたな


「ユウト様、ご許可を」
「いや、ティファが負けるとは思わないけど、この世界で最強クラスの人物だぞ?」

 俺達が話しているのをダルそうに見守るガリフォンは、今にも飛び込んで来そうな気配すらする…
 身体が鈍ってるとか言いながらストレッチまで始めだした。

「なぁ、この戦いを受けて俺達にメリットは?疲れたから早く帰りたいし、俺も一応は王国の上級貴族なんだけど」

「別に拒否するなら構わんさ。そしたら、こっちも勝手におっぱじめるさっ」

「……はぁ。命の取り合いまでは無しな?」

「それは、そん時のノリ次第だろっ」

 俺の言葉をイエスと取ったのか、待ちきれない感じで腰の刀に手を当てると構えを取るガリフォン

「…参ります。」

 俺かガリフォンにか、短くそう言うとティファも応じて前に出る。
 合図がいるだろうとベイリトールがコインを指で弾き、それが地面に落ちる
 …ピーンッ……コン

「はぁぁぁあああ!!」
「来なさいっ!」

 ティファの声が聞こえた直後にガリフォンの姿は搔き消え、一瞬で間合いを詰めた居合の一閃を放っていた。

 しかし、流石はティファだ。
 瞬時に刀を抜き応じると、その反動で攻撃に転じる。
 だが、その攻撃もガリフォンを捉える事は出来ず避けられてしまう。

「ははっ!さすがだなぁ!」

「この程度が本気では無いでしょう?」

 獰猛に笑う相手を見据えても、冷静に応じるティファに貫禄を感じる。

「…瞬動、剛力、金剛」
 能力を向上させるスキルを発動させるとガリフォンの体を淡い光が包む

「限界突破」
 対するティファも早々に奥の手を発動させ全ての肉体能力を跳ね上げる。

 レベル差があるはずなのに、最初から全開で行くって事は一合斬り合っただけでガリフォンの実力を認めてるって事だろう。


「うれしーねぇー、全力でヤッてくれねぇと面白く無いからなっ!!」

「はぁぁ!…ぐっ」

 肉体強化して斬り合う二人の攻防に俺の目はついていけなかった。
 辛うじて見えたのはガリフォンが振るう刀は鞭や蛇のようにしなり、視覚の外からもティファを襲っている事だ。

 稽古で振るうような綺麗な動きのティファに対してガリフォンのソレは変則的に見える。
 まるで、マトリ○クスの銃弾を避けるシーンみたいに残像で体がいくつもあるみたいだ。

「お姉様が押されていますわ。くやしいですけど、あれだけの体捌きはそう簡単にできませんわ…わたくし達も肉体能力だけに頼る戦い方はしないよう気をつけているのですけど、あれは別格ですわね」

 俺の横で薄く唇を噛みながら悔しそうにメリーが解説してくれる。
 確かに、一見トリッキーっぽい動きなのに何故か綺麗にも見えて、思わず魅入ってしまうような動きだ。
 ティファも、しっかり捌けてはいるんだろうけど厳しそうだ…基本的に他人を見下しているメリーが褒めるくらいだから、よっぽど研鑽を積んでるって事なんだろうな


「はぁ、はぁ、はぁ…」

「いやー、やるねぇ!こんなに止められるのは久々だ。…流石は魔女に見初められし者ってところか。」

「魔女」と聞いて、横でメリーが青筋を立ててる。
 先の防衛戦で辛酸を舐めさせられたのが、メリーの中ではかなり尾を引いてるんだろうな。
 それに、まさか剣聖から魔女なんて単語が出るなんて、裏で繋がってるとか無いよな…

「良いでしょう。貴方の研鑽に敬意を払い、最強の一撃を持って沈めてあげる!」

「いいねぇっ!俺も出し惜しみは無しだ、全力で行くぜぇぇっ」

 二人はさらに力を溜めて次の一撃で決着をつけようとしている。
 メリーとレアが「前に出ていると危険だ」と言って皆の前に障壁を張ってくれた。

 これ…本当に大丈夫なのか?
 決着が着くのは良いけど、生き死にはごめんだっ
 俺はいつでも回復させられるようにエクストラポーションを取り出してスタンバイする。
 …俺も出し惜しみは無しだ!

「死になさい。ホーリーランスッ!!」
 まず先に動いたのはティファだった。
 シュウト戦で見せたパラディンの最高クラス技だ
 周りに展開した光の槍と共に大地を強く蹴り突撃する。
「奥義、万里一空」
 対してガリフォンは、ティファの初動を見て少し息を吸い込むと、脱力した下段の構えから一気に速度を上げる。
 俺の目にはティファが残像を残し、ガリフォンは消えたように見えただけで、ぶつかる瞬間は捉えきれなかった。

 カーーーンッッ!!
 乾いた音が辺りに響いたかと思うと、あとを追って轟音と共に衝撃派が襲ってきた
 …ドゴォォォッッ!!

「ぐっ!」
「「うわぁぁっ」」

 障壁を抜けてくる衝撃に思わず目を瞑ってしまった俺が目を開けると…

「ぐぅはぁぁっ!」
 ガリフォンが全身から血を噴き出し、前のめりに倒れこんだ
 …ドサッ
 そして、その横には斬り飛ばされたティファの右腕が落下してきた
「…ぐっ」
 俺がその光景に目を取られていると、ティファが荒い呼吸と共に無くなった腕の部分を押さえて膝をつく

「…っティファァァッ!!」
 俺はもつれる足を必死に動かしてティファの元に駆け寄ると、血が溢れ出る右腕を中心にエクストラポーションを振りかけた

 ポーションの力で血は止まりグチュグチュと音を立てて肉と骨が再生されていく。
 原理は分からないが、腕の再生を受けて斬り落とされた方の腕は溶け消えてしまった。


 ドポドボドポ…
 血溜まりの上で倒れるガリフォンにメリーが無表情でラージヒールポーションを振りかけた。
 部位欠損は無かったようで、ガリフォンは体をピクリと動かしたかと思うと立ち上がり自分の身体を見下ろし状態を確認する。

「そうか…負けたか。」

「貴方には聞く事がありますわ。正直に話さなければもう一度死に直していただきますわよ?」
 メリーは笑顔を見せるとガリフォンに脅しをかける。

「…あぁ。俺は負けた身だからな、敗者は勝者の言う事を聞くもんだ。」
 負けた割には随分とサッパリした表情をしている。
 メリーの話を聞くために血溜まりを避けて腰を落とすガリフォン。

「良い心がけですわ。では、魔女…あの女の事を知る限りの全てを話しなさい。」

「メリッサが出会ったと言う魔女の事ですか」
 俺は完治したティファに付き添いながらメリーの元へと行き動向を見守る。

「ん~。仲間って訳じゃねぇよ、昔からのちょっとした知り合いってやつさ。俺の知ってる事で良ければ全部教えてやるよ」

 そう言うとガリフォンは一気に「魔女」と呼ばれるプリステラの事を話し始めた。


「……って感じか。結構掻い摘んで話したし剣神流の話も混じっちまったけど、こんなもんで良いか?」
 ガリフォンはメリー越しにタイマンの勝者であるティファにお伺いをたてる。

 ティファからの視線にメリーが頷くと「良いでしょう。これでこの件は終わりにします。」と、ティファが告げた。

「おいおい、結構酷い感じになったのにこんなアッサリ終わっていいのか?禍根が残ったり今後敵対しないとか約束させたりは…」

「ユウト様、そもそも剣士の決闘願いは単純な力比べが根源ですので尾を引くような事はありません。」

 終わりかけた話をほじくり返す心の狭い俺に、ティファが安心しろと説明してくれ、ガリフォンもウンウンと頷いている。

「でも…」

「あぁ、そういや兄ちゃんが勇者なんだったな!バンゼル達が騒ぐから一度手合わせをしてみたかっただけなんだ。本当に他意はない」

 俺を真っ直ぐに見つめてそう言うとガリフォンは頭を下げた。
 そして、バンゼルと同じく自分も悪魔王(デーモンロード)討伐を狙っていると付け足した。

「だけど、あんたらの邪魔をする気は無いし一緒に戦うつもりも無いから安心してくれ。」

「いや、逆にそんな事が起こったら手伝ってくれる方がありがたい…てか、俺はそんなの討伐したくねぇぇ!!」

「…ぷっ、あははははぁっ」
 俺の心からの叫びを聞いて吹き出すガリフォン

「だけど、俺は自分の力を試したいんだ。だから、俺に運があれば悪魔王と戦って自分の力を証明したい。スマンな」
 そう言い立ち上がると軽く体を叩いて俺達の元を去って行ってしまった。


 その背中を見送り俺はポツリと呟く。
「…なんて人騒がせな」

「仕方ありませんわ、わたくし達は有名人ですから。」
「ごしゅ…おなかす…た」

 倒れそうになるレアに食べ物を詰め込みながら、俺達はアスペルへの帰路を急いだ。
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