91 / 106
不安と秘めたる想い
しおりを挟む
その日、テントの中で眠るフリをしていた私の胸の奥は穏やかでは無かった。
もちろん眠る事なんて出来なくて、次の日は体調最悪だったけど、皆に心配かけないように必死に笑顔を作った。
そこまで私を追い込んだ事。
今までは、まったく望みが無かった『地球』と呼ばれる異世界への転移できる可能性だ。
今までもレンが、こそこそと昔の仲間に依頼して、可能性がありそうな場所を探しているのは知っていた。
でも、今までは全部ダメだったし、その都度イラついている彼を慰めるのは私の仕事だ、と勝手に張り切って…他の女の子達に優越感を持っていたんだ。
なんてちっぽけな自分なんだろう。
そんな自分が嫌になって、ユウトさん達と一緒に旅に出る事にした。
レンの次に、小さかった私の世界を広げてくれた人…ユウトさん。
最初は嫌な奴だったし、変な人だったけど、意外と真っ直ぐで仲間思いな人だった。
ユウトさんの仲間達も凄い人が沢山いて刺激もいっぱい受けた。
だから、多少の事では動揺なんてしない。
って、そう思ってたのになぁ…
レンが元の世界に帰ってしまうかもって思うと、胸の奥が張り裂けそう。
最近はレンの事を考える事も少なくなっていたのに、なんでこんなにも痛いんだろう。
…分かってる。
私はレンが好き。
でも、多分同じくらいユウトさんの事も好きだと思う。
分かってる、私に選ぶ権利なんて無い。
レンには奥さんや子供もいるし、ユウトさんの周りには綺麗で強くて素敵な人が沢山いる。
だから、私は誰の一番にもなれない。
物語のヒロインになんて、私はなれやしないんだ。
レンは地球に帰れなければ、私をお嫁さんにしてくれるって言ってくれた。
だから、レンは帰れなければ良いって心の奥底で思ってしまった。
私が独りぼっちにならないで済むように。
…最低だ。
なんて自分勝手で卑しい感情なんだろう。
旅に出て十分理解したのに、自分なんて大した価値の無い人間で、そんな事を思えるほど大事にされるべき存在じゃ無いって
気付いたら涙が流れていた
悲劇のヒロインを気取って
だけど、涙は止まってくれなかった
溢れても溢れても…
「……しゃ、シャル?起きてる?」
涙が収まりかけていたタイミングでユウトさんから小さな声がした。
煩かったのだろうか、泣いているのを気付かれていなかっただろうか。
「…はい。起きてます。」
色んな思いが頭をグルグルしていたけど、精一杯普通を装って、涙声に聞こえないよう小声で応えた。
「俺も眠れなくてさ…ちょっとだけ、外の風にあたりに行かないか?」
「…分かりました。」
私達は皆を起こさないように、こっそりとテントを抜け出した。
ーーーーユウト視点
案の定だ。
悶々としている俺の横で寝ているシャルの肩が小刻みに震えている。
鼻をすする音もするし間違いなく泣いてるんだろう…
声を掛けるべきか、そっと抱き締めるべきか散々悩んだあげく、肩の震えが止まったタイミングで、ようやく声を掛ける事ができた。
皆を起こさないように、緊張で声が裏返らないように小さな声で慎重に話しかけた。
横を向いていたシャルからは、もちろん起きていると返事があり、思いつく限りキザな感じで外に行こうと誘う。
特に拒否られる事も無く、そっと外に出た。
夜の森は少し怖かったが、何かあれば微精霊達がユートリアに報せをくれるそうだから、大丈夫…なはず。
テントの近くでは喋っていると煩いので少し歩いた。
風が優しく二人を撫でる、心地いいな。
「あんまり遠くに行くと危ないよ?」
「そうですね。でも、皆を起こしたく無いですし」
シャルの声は普通に戻っていた。
俺の前を歩く彼女の顔は見えないけど、涙顔はもう見れないだろうな。
そんな事を考えていると、シャルが立ち止まりこちらを振り向いた。
「もう大丈夫ですよ?煩かったですよね、ごめんなさい。」
そう言った彼女の顔を月明かりが照らしていた。
頼りなくて、寂しそうで、儚くて、綺麗だった…
「…きゃっ」
頭の中は真っ白だった。
何も考えられなくなった俺はシャルを抱き締めてしまっていた。
嫌がられるかもと少し後悔したけど、シャルは小さく声を上げた後、そっと両手を後ろに回してくれた。
「あのさ、俺…」
「はい。」
「偉そうな事なんて言えなくて…シャルの気持ちだって大して分からないと思う。」
「…はい。」
「ティファやメリーにレア、彼女達がいなければ、俺はシャルに会う事も…今、こうやって無事に生きてる事も無かったと思う。」
「そうですね。」
「それに、ルサリィは俺が責任持って育てるって決めたんだ…親代わりみたいなもんかな。」
「はい。」
「だから……だから、シャル一人だけを大切にするって約束が出来なくて」
「……」
「でも、だけど…俺はシャルが大切だ。世界中敵にしても良いくらい大好きだ!」
「……」
「レンにだって負けないくらい大切にする。あいつが元の世界に帰っても、君が悲しまなくて済むように、めちゃくちゃ大事にするし、甘やかしまくるから!」
「……はい…っ。」
「だから、こんな俺でも良ければ…これからも、俺の側に居てくれないかな?シャルが愛想尽かすまででいいからさっ」
情けない笑顔だったと思う。
自信なんて無くて、普段のように茶化したふざけた言葉じゃない、本当の心からの素直な気持ちを吐き出して、シャルを安心させようと必死で笑顔を作って見せた。
「んっ…!?」
不恰好な笑顔の俺に、泣き顔のシャルが唇を重ねた。
「…ありがとうございます。その……だ、大事にして下さいね?一番じゃなくても、私の前から消えたりしないで下さい。」
両手を後ろに組んで、少し悪戯っ子のようにはにかんだ笑顔を見せてくれるシャル
「ぁ…あぅぁう…うぎゅう。」
「きゃぁーっ!」
只でさえオーバーフロー寸前だった俺の脳味噌は、その瞬間限界を超えたのであった。
……翌朝
「ふぇっ!?ここはどこっ?私はだぁれ?」
「元気そうで何よりですユウト様」
「…おはよう、ティファ。」
昨晩、シャルを元気付けようと勢い余ってめちゃくちゃな告白をした俺は、彼女からキスをされて気絶してしまっていた。
若干、記憶喪失気味に大袈裟なリアクションで目覚めてみたが、皆の姿は無く、真顔のティファが冷静な挨拶をくれる。
「朝食の用意ができています。昨晩はお疲れでしたでしょうが、食べられますか?」
俺に右手を差し出して尋ねてくるティファ
ななな、なんででしょうか。
綺麗なお顔がいつもより不機嫌そうなのは俺の見間違いでしょうか。
…いえ、これは間違い無くthat's不機嫌ってやつですっ!!
俺は昨日の事を質問する事も出来ず、ティファの手を掴むと起き上がる。
…痛い痛い、ティファさん、手が手ががが
テントの外に出ると、テーブルの上に朝食が用意され、簡易食卓が完成していた。
せっせと用意するルサリィに、もはやつまみ食いのスピードを超える勢いで食べるレア。
アキラは椅子に座り静かに待っていて、メリーも珍しく準備万端だ。
シャルも食器を並べ終えると席に着いた。
心なしか頬が赤い気がする…
膝の上にはユートリアも座ってスタンバイ済みだ。
ティファが椅子を引いてくれて、俺が席に着くと全員が席に着いた。
「…それでは、本日の実験の成功を祈っ……カップル成立のお祝いも一緒のほうが良いかな?」
…ピキッ、パリンッ
アキラの余計な一言で、メリーが持っていたティーカップがひび割れる。
「…では、いただきますっ」
「「いただきます。」」
煽るだけ煽っておいて普通に食事を始めるアキラを睨みつつも、この場で言葉を発する事も出来ず、ただ食事を胃の中に流し込むのであった…
…
「お兄ちゃん?なんでこんなに空気悪いの?わたしが寝ている間に何か悪い事したの?」
食事の片付けを終わらせたルサリィが、隙を見て俺に怪訝な表情で尋ねてきた。
「な、なんでだろ~なんでだろ~ななななんでだろぉ~」
「……はぁ。」
上手く切り返せる言い訳も思いつかず、娘だとか妹だとか言っていた年下の女の子に、ため息で返される。
「…お家に帰るまでには何とかしておいてねっ!」
いい笑顔でそう言うと、ルサリィはユートリアの方に走って行ってしまった。
立つ瀬が無かった俺はシャルを見たが、視線が合うと思いっきり目を逸らされた…
訳の分からないまま、アキラの元に行って色んな意味で状況を伺う。
「…やぁ、色男さん。準備はもうすぐ終わるよ」
「その一言で、ほとんどの答えになるわな。まさか皆知ってるのか?」
「…ルサリィちゃん以外はね。そりゃ深夜に絶叫してぶっ倒れればそうなるでしょ、お姫様が一番可愛そうだと思うけど」
アキラは呆れ顔でそう言うとチラリとシャルを見た。
どうやらキスされてぶっ倒れた俺は、皆に介抱されながらテントに戻されたらしい。
シャルは皆に何があったのか聞かれて、公開処刑状態だったそうだ。
助けを求めたくても、俺は呑気にオネンネで役立たず…
後で聞いた話だと、そもそも色んな方法で盗み聞きしていたらしくて、聞く必要も無いのにシャルは質問責めにされたとか。
恥ずかしさとシャルへの申し訳なさで怒鳴り散らしてやろうかと思ったけど…
怖くて出来ませんでした、はい。
「…さぁ、できた。最後にココを使ったプレーヤーの元に飛ぶように設定したから、後は本当に飛べるか…だね」
俺の気持ちなんて関係なしで、準備を完了ささたアキラが全員に伝える。
さっきまでの剣呑とした空気から、緊張感を孕んだ物へと変化していく。
スタートホールの魔法陣の中心にユートリアが立ち、アキラがコントロールパネルがある柱に手を置く。
その横の台座でレアが魔力を練っているそうだ。
俺には見えないけど、何やら集中しているのが分かる。
残りのメンバーは一箇所に集まり少し離れて実験の様子を見守っていた。
斜め後ろに立っていたシャルが俺の手をギュッと掴んできた。
「…それじゃ、いくよ!3…2…1…GO!」
アキラの掛け声に反応して、レアから魔力が白い光となって迸る。
その光は魔法陣へと流れていき、淡い光から光の柱へと変化していく
「眩しいっ!」
光は最高の光度を放つとパッと消え去った。
もちろん眠る事なんて出来なくて、次の日は体調最悪だったけど、皆に心配かけないように必死に笑顔を作った。
そこまで私を追い込んだ事。
今までは、まったく望みが無かった『地球』と呼ばれる異世界への転移できる可能性だ。
今までもレンが、こそこそと昔の仲間に依頼して、可能性がありそうな場所を探しているのは知っていた。
でも、今までは全部ダメだったし、その都度イラついている彼を慰めるのは私の仕事だ、と勝手に張り切って…他の女の子達に優越感を持っていたんだ。
なんてちっぽけな自分なんだろう。
そんな自分が嫌になって、ユウトさん達と一緒に旅に出る事にした。
レンの次に、小さかった私の世界を広げてくれた人…ユウトさん。
最初は嫌な奴だったし、変な人だったけど、意外と真っ直ぐで仲間思いな人だった。
ユウトさんの仲間達も凄い人が沢山いて刺激もいっぱい受けた。
だから、多少の事では動揺なんてしない。
って、そう思ってたのになぁ…
レンが元の世界に帰ってしまうかもって思うと、胸の奥が張り裂けそう。
最近はレンの事を考える事も少なくなっていたのに、なんでこんなにも痛いんだろう。
…分かってる。
私はレンが好き。
でも、多分同じくらいユウトさんの事も好きだと思う。
分かってる、私に選ぶ権利なんて無い。
レンには奥さんや子供もいるし、ユウトさんの周りには綺麗で強くて素敵な人が沢山いる。
だから、私は誰の一番にもなれない。
物語のヒロインになんて、私はなれやしないんだ。
レンは地球に帰れなければ、私をお嫁さんにしてくれるって言ってくれた。
だから、レンは帰れなければ良いって心の奥底で思ってしまった。
私が独りぼっちにならないで済むように。
…最低だ。
なんて自分勝手で卑しい感情なんだろう。
旅に出て十分理解したのに、自分なんて大した価値の無い人間で、そんな事を思えるほど大事にされるべき存在じゃ無いって
気付いたら涙が流れていた
悲劇のヒロインを気取って
だけど、涙は止まってくれなかった
溢れても溢れても…
「……しゃ、シャル?起きてる?」
涙が収まりかけていたタイミングでユウトさんから小さな声がした。
煩かったのだろうか、泣いているのを気付かれていなかっただろうか。
「…はい。起きてます。」
色んな思いが頭をグルグルしていたけど、精一杯普通を装って、涙声に聞こえないよう小声で応えた。
「俺も眠れなくてさ…ちょっとだけ、外の風にあたりに行かないか?」
「…分かりました。」
私達は皆を起こさないように、こっそりとテントを抜け出した。
ーーーーユウト視点
案の定だ。
悶々としている俺の横で寝ているシャルの肩が小刻みに震えている。
鼻をすする音もするし間違いなく泣いてるんだろう…
声を掛けるべきか、そっと抱き締めるべきか散々悩んだあげく、肩の震えが止まったタイミングで、ようやく声を掛ける事ができた。
皆を起こさないように、緊張で声が裏返らないように小さな声で慎重に話しかけた。
横を向いていたシャルからは、もちろん起きていると返事があり、思いつく限りキザな感じで外に行こうと誘う。
特に拒否られる事も無く、そっと外に出た。
夜の森は少し怖かったが、何かあれば微精霊達がユートリアに報せをくれるそうだから、大丈夫…なはず。
テントの近くでは喋っていると煩いので少し歩いた。
風が優しく二人を撫でる、心地いいな。
「あんまり遠くに行くと危ないよ?」
「そうですね。でも、皆を起こしたく無いですし」
シャルの声は普通に戻っていた。
俺の前を歩く彼女の顔は見えないけど、涙顔はもう見れないだろうな。
そんな事を考えていると、シャルが立ち止まりこちらを振り向いた。
「もう大丈夫ですよ?煩かったですよね、ごめんなさい。」
そう言った彼女の顔を月明かりが照らしていた。
頼りなくて、寂しそうで、儚くて、綺麗だった…
「…きゃっ」
頭の中は真っ白だった。
何も考えられなくなった俺はシャルを抱き締めてしまっていた。
嫌がられるかもと少し後悔したけど、シャルは小さく声を上げた後、そっと両手を後ろに回してくれた。
「あのさ、俺…」
「はい。」
「偉そうな事なんて言えなくて…シャルの気持ちだって大して分からないと思う。」
「…はい。」
「ティファやメリーにレア、彼女達がいなければ、俺はシャルに会う事も…今、こうやって無事に生きてる事も無かったと思う。」
「そうですね。」
「それに、ルサリィは俺が責任持って育てるって決めたんだ…親代わりみたいなもんかな。」
「はい。」
「だから……だから、シャル一人だけを大切にするって約束が出来なくて」
「……」
「でも、だけど…俺はシャルが大切だ。世界中敵にしても良いくらい大好きだ!」
「……」
「レンにだって負けないくらい大切にする。あいつが元の世界に帰っても、君が悲しまなくて済むように、めちゃくちゃ大事にするし、甘やかしまくるから!」
「……はい…っ。」
「だから、こんな俺でも良ければ…これからも、俺の側に居てくれないかな?シャルが愛想尽かすまででいいからさっ」
情けない笑顔だったと思う。
自信なんて無くて、普段のように茶化したふざけた言葉じゃない、本当の心からの素直な気持ちを吐き出して、シャルを安心させようと必死で笑顔を作って見せた。
「んっ…!?」
不恰好な笑顔の俺に、泣き顔のシャルが唇を重ねた。
「…ありがとうございます。その……だ、大事にして下さいね?一番じゃなくても、私の前から消えたりしないで下さい。」
両手を後ろに組んで、少し悪戯っ子のようにはにかんだ笑顔を見せてくれるシャル
「ぁ…あぅぁう…うぎゅう。」
「きゃぁーっ!」
只でさえオーバーフロー寸前だった俺の脳味噌は、その瞬間限界を超えたのであった。
……翌朝
「ふぇっ!?ここはどこっ?私はだぁれ?」
「元気そうで何よりですユウト様」
「…おはよう、ティファ。」
昨晩、シャルを元気付けようと勢い余ってめちゃくちゃな告白をした俺は、彼女からキスをされて気絶してしまっていた。
若干、記憶喪失気味に大袈裟なリアクションで目覚めてみたが、皆の姿は無く、真顔のティファが冷静な挨拶をくれる。
「朝食の用意ができています。昨晩はお疲れでしたでしょうが、食べられますか?」
俺に右手を差し出して尋ねてくるティファ
ななな、なんででしょうか。
綺麗なお顔がいつもより不機嫌そうなのは俺の見間違いでしょうか。
…いえ、これは間違い無くthat's不機嫌ってやつですっ!!
俺は昨日の事を質問する事も出来ず、ティファの手を掴むと起き上がる。
…痛い痛い、ティファさん、手が手ががが
テントの外に出ると、テーブルの上に朝食が用意され、簡易食卓が完成していた。
せっせと用意するルサリィに、もはやつまみ食いのスピードを超える勢いで食べるレア。
アキラは椅子に座り静かに待っていて、メリーも珍しく準備万端だ。
シャルも食器を並べ終えると席に着いた。
心なしか頬が赤い気がする…
膝の上にはユートリアも座ってスタンバイ済みだ。
ティファが椅子を引いてくれて、俺が席に着くと全員が席に着いた。
「…それでは、本日の実験の成功を祈っ……カップル成立のお祝いも一緒のほうが良いかな?」
…ピキッ、パリンッ
アキラの余計な一言で、メリーが持っていたティーカップがひび割れる。
「…では、いただきますっ」
「「いただきます。」」
煽るだけ煽っておいて普通に食事を始めるアキラを睨みつつも、この場で言葉を発する事も出来ず、ただ食事を胃の中に流し込むのであった…
…
「お兄ちゃん?なんでこんなに空気悪いの?わたしが寝ている間に何か悪い事したの?」
食事の片付けを終わらせたルサリィが、隙を見て俺に怪訝な表情で尋ねてきた。
「な、なんでだろ~なんでだろ~ななななんでだろぉ~」
「……はぁ。」
上手く切り返せる言い訳も思いつかず、娘だとか妹だとか言っていた年下の女の子に、ため息で返される。
「…お家に帰るまでには何とかしておいてねっ!」
いい笑顔でそう言うと、ルサリィはユートリアの方に走って行ってしまった。
立つ瀬が無かった俺はシャルを見たが、視線が合うと思いっきり目を逸らされた…
訳の分からないまま、アキラの元に行って色んな意味で状況を伺う。
「…やぁ、色男さん。準備はもうすぐ終わるよ」
「その一言で、ほとんどの答えになるわな。まさか皆知ってるのか?」
「…ルサリィちゃん以外はね。そりゃ深夜に絶叫してぶっ倒れればそうなるでしょ、お姫様が一番可愛そうだと思うけど」
アキラは呆れ顔でそう言うとチラリとシャルを見た。
どうやらキスされてぶっ倒れた俺は、皆に介抱されながらテントに戻されたらしい。
シャルは皆に何があったのか聞かれて、公開処刑状態だったそうだ。
助けを求めたくても、俺は呑気にオネンネで役立たず…
後で聞いた話だと、そもそも色んな方法で盗み聞きしていたらしくて、聞く必要も無いのにシャルは質問責めにされたとか。
恥ずかしさとシャルへの申し訳なさで怒鳴り散らしてやろうかと思ったけど…
怖くて出来ませんでした、はい。
「…さぁ、できた。最後にココを使ったプレーヤーの元に飛ぶように設定したから、後は本当に飛べるか…だね」
俺の気持ちなんて関係なしで、準備を完了ささたアキラが全員に伝える。
さっきまでの剣呑とした空気から、緊張感を孕んだ物へと変化していく。
スタートホールの魔法陣の中心にユートリアが立ち、アキラがコントロールパネルがある柱に手を置く。
その横の台座でレアが魔力を練っているそうだ。
俺には見えないけど、何やら集中しているのが分かる。
残りのメンバーは一箇所に集まり少し離れて実験の様子を見守っていた。
斜め後ろに立っていたシャルが俺の手をギュッと掴んできた。
「…それじゃ、いくよ!3…2…1…GO!」
アキラの掛け声に反応して、レアから魔力が白い光となって迸る。
その光は魔法陣へと流れていき、淡い光から光の柱へと変化していく
「眩しいっ!」
光は最高の光度を放つとパッと消え去った。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜
くまみ
ファンタジー
前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?
「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。
仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。
病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。
「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!
「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」
魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。
だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。
「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」
これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。
伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!
2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった
竹桜
ファンタジー
1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。
何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。
2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。
ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。
1周目と2週目で生きていた世界で。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる