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ラファティの想い
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「ロゼ、なんだか元気がないね?」
ラファティの指摘に、ロゼはうつむいた。二人の前には氷を削りシロップをかけたものと、冷たいお茶が出されていた。まだ残暑が厳しく、外はさすがに今日は暑いからと、屋敷の中に案内されていた。
ロゼはうつむくと、削り氷の入った容器についた水滴を手で掬った。
「ソラリスのことかい?」
「ラファティにはなんでもわかってしまうのね」
ロゼは少し笑う。なんだか寂しい笑みだとラファティは思った。
「ソラリスが……白銀の官吏になるのに頑張ってるんですって」
「へえ……凄いじゃないか」
「そう、そうなのよね。凄いことなのよね」
「ロゼは、ソラリスがロゼを忘れているんじゃないかと不安なの?」
「私は……」
図星だったのだろうな、とラファティは思う。白銀の官吏になったら、レアルから帰ってくるのかもわからない。そのことで、ロゼは不安になっているのだろう。
(ソラリス、君はずるいよ。こんなに距離が離れているのに、ロゼの心の中を独占しているなんて)
ラファティは手を伸ばした。物思いに耽っているロゼは気づかない。そのまま、背後から腕の中にロゼを閉じ込めた。驚いたロゼが足掻いて、削り氷が床に散らばった。
「……! ラファティ! 離して!」
ロゼの拒絶の声がする。その声さえも愛しくて、ラファティはロゼの髪に顔を埋めた。シトラスの良い香りがする。
「ロゼ。ロゼは酷いよ」
「え……?」
「考えることはすべてソラリスのこと。僕のことも考えてほしいとお願いしたよね。それなのに少しも考えようとはしてくれない」
「あ……私」
「俺はロゼが好きだよ」
後ろから耳元で囁くようにラファティは言う。
「ロゼが好きなんだ……」
「ラファティ……私」
もうこのままいっそ、押し倒してしまいたい。そんな衝動に駆られる。きっと、嫌われるだろう、避けられるだろう。二度と側には寄れないだろう。もうそれでも良いから、押し倒してしまいたいという衝動とラファティは戦った。そうすれば、心は貰えなくても、体は自分のものになるーー。
そう考えて己の浅ましさに驚いて手が緩む。ロゼが自分から離れて行く。さっきまでは確かにこの腕の中にあったのにーー。
「ラファティ……どうして」
ロゼの瞳に驚きと悲しみの色を見つけて、ラファティは堪らず立ち上がった。
「ロゼ、失礼するよ。謝罪は、しない。君だって酷いことをしていると思うから」
情けない気持ちでいっぱいになりながら、ラファティは部屋を出た。出た直後に、今日は菓子を渡しそびれてしまったな、と思う。毎回、ロゼがなにを喜ぶのか一生懸命考えて持ってきてたというのに。
ラファティは自己嫌悪にかられながら、ロゼの屋敷を後にした。
残されたロゼは呆然とその場に座り込んでいた。ソラリスと同じくらい、力強かった。それでもソラリスとは感触が違う。声が違う。話し方も違う。
けれど、ラファティを傷つけたのは事実だ。確かに、自分はソラリスのことしか考えていなかった。ラファティに、自分のことを考えてくれと言われても、いつも考えるのはソラリスのことだった。
なぜ、ソラリスなのかと、ロゼは自問自答する。弟ととしてなのかーーそれとも異性としてなのかーー。
ロゼはわかりかねて、自分の腕で自分を抱きしめる。そして、そっとため息を落とした。
ラファティの指摘に、ロゼはうつむいた。二人の前には氷を削りシロップをかけたものと、冷たいお茶が出されていた。まだ残暑が厳しく、外はさすがに今日は暑いからと、屋敷の中に案内されていた。
ロゼはうつむくと、削り氷の入った容器についた水滴を手で掬った。
「ソラリスのことかい?」
「ラファティにはなんでもわかってしまうのね」
ロゼは少し笑う。なんだか寂しい笑みだとラファティは思った。
「ソラリスが……白銀の官吏になるのに頑張ってるんですって」
「へえ……凄いじゃないか」
「そう、そうなのよね。凄いことなのよね」
「ロゼは、ソラリスがロゼを忘れているんじゃないかと不安なの?」
「私は……」
図星だったのだろうな、とラファティは思う。白銀の官吏になったら、レアルから帰ってくるのかもわからない。そのことで、ロゼは不安になっているのだろう。
(ソラリス、君はずるいよ。こんなに距離が離れているのに、ロゼの心の中を独占しているなんて)
ラファティは手を伸ばした。物思いに耽っているロゼは気づかない。そのまま、背後から腕の中にロゼを閉じ込めた。驚いたロゼが足掻いて、削り氷が床に散らばった。
「……! ラファティ! 離して!」
ロゼの拒絶の声がする。その声さえも愛しくて、ラファティはロゼの髪に顔を埋めた。シトラスの良い香りがする。
「ロゼ。ロゼは酷いよ」
「え……?」
「考えることはすべてソラリスのこと。僕のことも考えてほしいとお願いしたよね。それなのに少しも考えようとはしてくれない」
「あ……私」
「俺はロゼが好きだよ」
後ろから耳元で囁くようにラファティは言う。
「ロゼが好きなんだ……」
「ラファティ……私」
もうこのままいっそ、押し倒してしまいたい。そんな衝動に駆られる。きっと、嫌われるだろう、避けられるだろう。二度と側には寄れないだろう。もうそれでも良いから、押し倒してしまいたいという衝動とラファティは戦った。そうすれば、心は貰えなくても、体は自分のものになるーー。
そう考えて己の浅ましさに驚いて手が緩む。ロゼが自分から離れて行く。さっきまでは確かにこの腕の中にあったのにーー。
「ラファティ……どうして」
ロゼの瞳に驚きと悲しみの色を見つけて、ラファティは堪らず立ち上がった。
「ロゼ、失礼するよ。謝罪は、しない。君だって酷いことをしていると思うから」
情けない気持ちでいっぱいになりながら、ラファティは部屋を出た。出た直後に、今日は菓子を渡しそびれてしまったな、と思う。毎回、ロゼがなにを喜ぶのか一生懸命考えて持ってきてたというのに。
ラファティは自己嫌悪にかられながら、ロゼの屋敷を後にした。
残されたロゼは呆然とその場に座り込んでいた。ソラリスと同じくらい、力強かった。それでもソラリスとは感触が違う。声が違う。話し方も違う。
けれど、ラファティを傷つけたのは事実だ。確かに、自分はソラリスのことしか考えていなかった。ラファティに、自分のことを考えてくれと言われても、いつも考えるのはソラリスのことだった。
なぜ、ソラリスなのかと、ロゼは自問自答する。弟ととしてなのかーーそれとも異性としてなのかーー。
ロゼはわかりかねて、自分の腕で自分を抱きしめる。そして、そっとため息を落とした。
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