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官吏になれば
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「それで、どんな娘なんだ?」
パンケーキが運ばれてきて、天主も綺麗な所作で切り分けながら一緒に食べている。
3段重ねのパンケーキは程よく焼き色がつき、クリームを脇に添えて、バターと蜂蜜がたっぷりかかっていた。まだ、ほかほかと温かい。
ソラリスは手を止めて考え込む。
「とても優しいです。つぶらな瞳も、綺麗な髪も、華奢な体も。どれも愛しく思います」
パンケーキを口に入れていた天主が、眉を顰める。パンケーキの甘さに加えて、甘すぎることをソラリスが言ったからだ。
「貴族の姫様ですか?」
フィンが訪ねると、ソラリスは少し逡巡して、はい、と頷いた。
「アルーアの貴族か。それは地位が必要だな。だが、ソラリス。おまえはヘリオスの養子になっていただろう。それで問題はないではないか」
「確かにそうですね。レアルに来てくれたことは本当に嬉しいですが、ヘリオス様の養子だけでは足りなかったのですか?」
ふたりに視線を向けられ、ソラリスはナイフとフォークを置いた。
「……姉なんです」
「は……?」
「ですから……父上の娘なんです」
ソラリスの言葉に、ああ、と天主とフィンは納得する。それならば、ソラリスが地位を求める気持ちがわかる。
「血が繋がってないのは知ってるんだよな?」
「……レアルに立つ前に伝えました。ロゼは僕を、父上とほかの女性との子どもだと思ってましたから」
「それは……おまえ……1年で答えを出せと言うのはむりじゃあないか?」
「もっと早く打ち明けていれば良かったのに」
天主とフィンのふたりに気の毒そうな目で見られ、ソラリスは押し黙る。確かにもっと早く伝えるべきだったかもしれない。
「まあ、元気出せ。パンケーキを食べろ。おかわりも用意してやるから」
天主が珍しく気を遣っているとフィンは思う。フィンは勿論だが、天主もソラリスを気に入っている。同世代の友人のように思っているのかもしれないと思う時がある。
フィンは考える。ヘリオスの娘と言うのならーー。
「ソラリスが、ヘリオス様の戸籍から抜けて婿養子になれば良いのでは?」
「え?」
「レアルで白銀の官吏の地位を手に入れて、ヘリオス様から籍を抜き、婿養子になれば良いのではないかな? ヘリオス様は外交を担当しているからレアルとも親しいし」
「そうだ! それだ!」
天主がよく言った、と言うようにフィンに賛同する。
「アルーアで貴族当主の座を得るよりも、レアルの官吏になった方が地位は得やすいだろう。その上で結婚を申し込めば良いのではないのか? ……まあ、脈があったらの話だが」
「婿養子に……?」
「そうですね。その方がてっとり早いでしょう。ソラリスを10年も冷遇していたアルーアの王が、そう簡単に貴族家の当主にしてくれるとも思えませんし」
「よし! 考えはまとまった。さらに励めよ、ソラリス」
「はい……」
ソラリスはまだ首を傾げている。傾げつつも律儀に頷いた。どちらにせよ、レアルでの立場を不動のものにするべきだ、とソラリスも考えたらしい。もう一度、今度は顔を上げ真っすぐ、天主とフィンを見て、はい、と頷いた。
パンケーキが運ばれてきて、天主も綺麗な所作で切り分けながら一緒に食べている。
3段重ねのパンケーキは程よく焼き色がつき、クリームを脇に添えて、バターと蜂蜜がたっぷりかかっていた。まだ、ほかほかと温かい。
ソラリスは手を止めて考え込む。
「とても優しいです。つぶらな瞳も、綺麗な髪も、華奢な体も。どれも愛しく思います」
パンケーキを口に入れていた天主が、眉を顰める。パンケーキの甘さに加えて、甘すぎることをソラリスが言ったからだ。
「貴族の姫様ですか?」
フィンが訪ねると、ソラリスは少し逡巡して、はい、と頷いた。
「アルーアの貴族か。それは地位が必要だな。だが、ソラリス。おまえはヘリオスの養子になっていただろう。それで問題はないではないか」
「確かにそうですね。レアルに来てくれたことは本当に嬉しいですが、ヘリオス様の養子だけでは足りなかったのですか?」
ふたりに視線を向けられ、ソラリスはナイフとフォークを置いた。
「……姉なんです」
「は……?」
「ですから……父上の娘なんです」
ソラリスの言葉に、ああ、と天主とフィンは納得する。それならば、ソラリスが地位を求める気持ちがわかる。
「血が繋がってないのは知ってるんだよな?」
「……レアルに立つ前に伝えました。ロゼは僕を、父上とほかの女性との子どもだと思ってましたから」
「それは……おまえ……1年で答えを出せと言うのはむりじゃあないか?」
「もっと早く打ち明けていれば良かったのに」
天主とフィンのふたりに気の毒そうな目で見られ、ソラリスは押し黙る。確かにもっと早く伝えるべきだったかもしれない。
「まあ、元気出せ。パンケーキを食べろ。おかわりも用意してやるから」
天主が珍しく気を遣っているとフィンは思う。フィンは勿論だが、天主もソラリスを気に入っている。同世代の友人のように思っているのかもしれないと思う時がある。
フィンは考える。ヘリオスの娘と言うのならーー。
「ソラリスが、ヘリオス様の戸籍から抜けて婿養子になれば良いのでは?」
「え?」
「レアルで白銀の官吏の地位を手に入れて、ヘリオス様から籍を抜き、婿養子になれば良いのではないかな? ヘリオス様は外交を担当しているからレアルとも親しいし」
「そうだ! それだ!」
天主がよく言った、と言うようにフィンに賛同する。
「アルーアで貴族当主の座を得るよりも、レアルの官吏になった方が地位は得やすいだろう。その上で結婚を申し込めば良いのではないのか? ……まあ、脈があったらの話だが」
「婿養子に……?」
「そうですね。その方がてっとり早いでしょう。ソラリスを10年も冷遇していたアルーアの王が、そう簡単に貴族家の当主にしてくれるとも思えませんし」
「よし! 考えはまとまった。さらに励めよ、ソラリス」
「はい……」
ソラリスはまだ首を傾げている。傾げつつも律儀に頷いた。どちらにせよ、レアルでの立場を不動のものにするべきだ、とソラリスも考えたらしい。もう一度、今度は顔を上げ真っすぐ、天主とフィンを見て、はい、と頷いた。
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