落ちこぼれ夢魔は、生真面目チェリーな神官様を賞味したい

おりの まるる

文字の大きさ
1 / 6

夢魔と神官

 エイシェは、鏡の中の自分の姿にうっとりとする。
 サラサラとしたキャラメル色の髪は艶々と輝き、金色の瞳は闇夜の黒猫のように神秘的だ。指で頬を押すと、素晴らしい弾力で押し戻される。
 数日前のカサカサとした肌や爪は、すっかり修復されている。自分史上最高の仕上がりだ。
 
「信じられない。初物からしか得られない栄養素があるって、お姉様が言っていたけど、本当ね」
 
 一晩、精液を摂取しただけなのに。まるで何歳も若返ったみたい。
 シミもシワもすっかり消えたみたい。
 顔の角度を変えて隅々まで確認する。
  
「エイシェ、起きていますか? 朝ごはんが、できましたよ」

 控えめなノックが響き、サマエルが声をかける。

「はい、神官様、今参ります」

 腰までの長いキャラメル色の髪を1つに結び、ダイニングへ向かう。
 シンプルなレースが付いた白のパフスリーブの半袖ブラウスからのぞく腕は、雪のように白く、ネイビーの膝丈のフレアスカートからはすらりとした脚がのぞく。

「神官様、おはようございます」
「エイシェ、おはようございます。よく眠れましたか?」

 エイシェは、「はい」と微笑み、サマエルが持っていたトレーを受け取ると、上に乗っていたスクランブルエッグとサラダを手早くテーブルの上へ並べる。

「それは良かったです」

 サマエルは、少年のようなあどけなさが残るダークレッドの大きな瞳を嬉しそうに細める。マッシュカットされた銀灰色の髪は、緩くウェーブしており雲のようにふわふわとしている。

「あ、神官様、髪がはねてますよ」

 寝癖に気がついたエイシェは、そっと猫っ毛に触れる。

「あっ、ありがとうございます」
「お茶入れますね。神官様は座っていてください」

 頬をピンクに染めて恥ずかしそうにするサマエルの反応に、胸がキュンとする。
 サモエドの子犬みたいに可愛いっ! チェリーボーイの尊さに、新しい世界が開いてしまいそう。
 
 それにしても……と自分の顎に手を添える。
 こんなに初々しくてあどけないのに夢の中では、いっぱしの雄だった。
 
 自分にガツガツと遠慮なく腰を打ちつけた昨夜の彼とは、あまりにも違う。
 その濃い精液を、欲望のままに何度も自分の中へ注いだ男と同一人物とは思えない。
 夢から出たのにも関わらず、身体があの快感を思い出し、お腹がむずむずとする。
 
 これがギャップ萌えってやつ?
 まあ現実の彼の身体は、正真正銘の童貞なんだけど……。

 エイシェは、落ちこぼれの夢魔だった。
 サマエルの所へ来るまでは、姉や妹のおこぼれをもらい生活していた。
 いつもお腹が空いていたが、壊滅的に夢へ入るのが下手で、相手と性交まで至らなかったり、射精する前に相手が目を覚ましてしまったりと失敗ばかりの日々だった。
 
 更に夢魔としてのテクニックもないくせにイケメン、チャラ男ばかりを狙うので、充分な食事にありつけないことが多かった。
 彼らは、人間の女とも致しまっくているので、精液は薄く、栄養価が低いのだ。
 
 姉のアルメリナのように、どんな男からでも摂食できればよかったが、どうしても軽薄なイケメンばかりを選んでしまう。そんな自分にうんざりしながらも、なかなか宗旨替えができなかった。

 食事とはいえ、手慣れたイケメンと素敵な状況で、ロマンチックにいとなみたいじゃない。
 
 だんだんと肌が荒れ、ガリガリに痩せていくエイシェを見て、妹のメリディが「私が狙っていた人間だけど、エイシェ姉様に譲ってあげるわ」とノースウィンド地区の教会にいる神官のサマエル・ノーブルロットを紹介してくれた。
 
 メリディは枯れ専なので、この年若い神官が歳を取るまで見守っていたらしい。絶対歳を取ったら、自分好みのイケオジになると熱弁をふるっていた。

 顔がどタイプというわけではないけど、年下ワンコ属性も全然いける。カワイイは、落ちこぼれの夢魔も救うのだ。
 今まで自分の嗜好に執着しすぎて、時間を無駄にしてたわ……。
 
 お茶を入れて、席に着くと、サマエルに感謝の合掌する。

「エイシェ、一体どうしたのですか?」

 突然、キラキラとした金色の瞳で見つめられ、戸惑ったのか、頬を再び赤らめながら彼は尋ねる。
 
「神官様、見ず知らずの私をここに置いてくれて、ありがとうございます。とても感謝しています」

 ――上質な精液もご馳走様です。おかげで消滅するのは免れそうです。
 心の中で重ねてお礼を述べる。
 
「そんな……。困っている方がいたら、お助けするのが神の使徒である私の務めですから」

 エイシェは、乱暴を働く婚約者から逃げてきた町娘の振りをして、この教会へやって来た。ほとぼりが覚めるまで、匿って貰うことになっていた。
 
「神様の慈悲に感謝して、今日も1日頑張ってお手伝いしますね」
「それはありがたいですが、あまり無理をしないで下さい」

 微笑む彼は、無垢で汚れを知らない年若い神官であり、あどけない青年に見える。
 後光が差して、本当に天使様みたい。守りたい、この笑顔!
 エイシェは、眼福眼福とご機嫌で今日も頑張ろうと思った。
感想 0

あなたにおすすめの小説

鉄壁騎士様は奥様が好きすぎる~彼の素顔は元聖女候補のガチファンでした~

3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
令嬢エミリアは、王太子の花嫁選び━━通称聖女選びに敗れた後、家族の勧めにより王立騎士団長ヴァルタと結婚することとなる。しかし、エミリアは無愛想でどこか冷たい彼のことが苦手であった。結婚後の初夜も呆気なく終わってしまう。 ヴァルタは仕事面では優秀であるものの、縁談を断り続けていたが故、陰で''鉄壁''と呼ばれ女嫌いとすら噂されていた。 しかし彼は、戦争の最中エミリアに助けられており、再会すべく彼女を探していた不器用なただの追っかけだったのだ。内心気にかけていた存在である''彼''がヴァルタだと知り、エミリアは彼との再会を喜ぶ。 そして互いに想いが通じ合った二人は、''三度目''の夜を共にするのだった……。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~

3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。 夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。 気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……? 「こんな本性どこに隠してたんだか」 「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」 さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。 +ムーンライトノベルズにも掲載しております。

独身皇帝は秘書を独占して溺愛したい

狭山雪菜
恋愛
ナンシー・ヤンは、ヤン侯爵家の令嬢で、行き遅れとして皇帝の専属秘書官として働いていた。 ある時、秘書長に独身の皇帝の花嫁候補を作るようにと言われ、直接令嬢と話すために舞踏会へと出ると、何故か皇帝の怒りを買ってしまい…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ