精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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1章

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 「アリア! 会いたかったわ!」

 ティアお姉様を玄関ホールで出迎える。お姉様はお父様とお母様、エヴァンお兄様への挨拶を終えて次は私の番になるとお父様と同じダークブラウンのポニーテールにした髪を揺らしながら、一際はしゃいだ声で私に抱きついた。

 「ティアお姉様、おかえりなさい」

 ティアお姉様からほんのりバラの花の香りがする。お姉様は緑の守護精霊と契約しているからなのか、常に色々な花の香りがする。
 少し照れくさいながらも抱きしめ返すと、お姉様はパッと私の顔を見て驚いた表情になる。

 「アリア! 少し背が伸びたんじゃない?」
 「そうかしら? 自分じゃよくわからないわ」
 「いいえ! 絶対伸びたわ! 前に会った時よりも少し目線が近くなったような気がするもの」

 ティアお姉様が私の頭を撫でる。お姉様は少し吊り目気味の私達と同じ翡翠色のぱっちりした目を細めて「ティアも少しずつ成長しているのね」としみじみと呟く。

 「二人とも、おしゃべりはその辺にして移動しましょう」

 お母様が苦笑しながら声をかける。ティアお姉様が「一緒に行きましょう」と私の手をとる。
 その時エヴァンお兄様がもう一方の私の手をすかさず握った。それを見たティアお姉様がエヴァンお兄様の方を見て眉を顰めた。

 「エヴァン、ここは私に譲ってくれてもいいじゃない。それとも私と手を繋ぐ?」
 「ご冗談を。ティアお姉様こそ馬車移動でお疲れでしょうし、アリアのエスコートは私に任せてもよろしいのですよ?」
 「馬車での移動なんて馬に乗って遠乗りに慣れている私からしたら大したことないわ」

 頭上で何やら不穏な気配のする会話が繰り拡げられている。
 私の手を握ったまま火花散る光景が繰り広げられている様子に周りを見るとシリルはニヤニヤしているし、ティアお姉様付きのメイドのサラは存在を消して素知らぬふりをしているしハンナはオロオロしている。
 両親はとっくに二人でイチャイチャしながら移動した後だし、さてどうしようと考えていると

 「ティアお嬢様、エヴァンお坊ちゃま、アリアお嬢様がお困りになられておられますので言い合いはそのへんにしてくださいませ」

 落ち着いた厳しい口調で仲裁が入った。その声に辺りに緊張感が走るもののホッとした私は二人の手を離し、声の主の方へ駆け寄った。

 「メリダ! 久しぶりね!  元気にしていた?」
 「ええ、アリアお嬢様もお元気そうで何よりです」

 メリダは私の目線にしゃがむとにっこりと笑顔を見せた。メリダはこの屋敷に昔勤めていたメイド長で、シリルとハンナの祖母でもある。
 数年前にメイド長を引退して今は街で隠居生活を送っている。私とは数年しか関わっていないけど、厳しくも優しいメリダが私は大好きだ。
 メリダはよく絵本を読んでもらった記憶がある。その懐かしい笑顔に私は思わず抱きついた。

 「「あ」」

 後ろで何か「ずるい」「アリアからのハグ欲しい」だの何か言っている声が聞こえてくるが聞こえないふりをする。

 「あらあら、アリアお嬢様はまだまだ甘えん坊ですねえ」
 「ふふふ、だって本当に嬉しいんですもの。メリダはどうしてここへ?」

 確か二年前にあったのを最後だった気がする。あのときは確か……

 「それは今日旦那様からお話があるのでお楽しみに。それとしばらくここでお世話になりますのでよろしくお願いしますね」

 そしてメリダはゆっくりと先程まで言い合いをしていた二人の方へにっこりと顔を向ける。 

 「「ううっ……」」

 二人揃って後退りしている。それもそのはず、メリダはティアお姉様とエヴァンお兄様の教育係も兼ねていたため、二人はそれはものすごく扱かれたらしい。
 メリダは若かりし頃、王宮勤めで史上最年少でメイド長を務めていたほど優秀であり、伯爵家の出でもあって教養もあるのだ。
 当時騎士団の副団長を務めていた旦那様と知り合って恋に落ちたらしい。
 その後めでたく結婚し、子供ができたのを機に、王宮勤めを退職してこのサーナイト家に就職することになった。
 そしてここでもメイド長として切り盛りしサーナイト家を支えてくれた。今はハンナの母でもある娘のマーサがメイド長を務めている。
 シリルの父もメリダの息子であり、お父様の従者兼サーナイト家の執事長をしている。
 ちなみにメリダの旦那様は王宮の団長まで勤め上げた後、のんびりと老後を過ごしている。今は夫婦で仲睦まじく、よく旅行に行っているようだ。

 「そして、貴方達もよろしくね」

 こっそりと立ち去ろうとしていたシリルと今だに空気のごとく気配を消しているサラに対して声を掛ける。
 ビクッと肩を揺らした二人は顔を青ざめている。

 「「はい……」」

 なんとなくひんやりとした空気になったのを変えるように私はメリダに話しかけた。

 「メリダ! 私お菓子をたくさん作ったの、メリダにも食べて欲しいわ!」
 「まあ! お嬢様からのお手紙でお菓子を作るようになったとおっしゃっておられましたね。それをいただけるなんて楽しみですわ」
 「「アリアのお菓子……」」

 後ろからまたもや、ぼやきが聞こえるがここでも聞こえないふりをする。私はメリダの手を引いて食堂へと歩き出した。
 「私も繋ぎたかった」「姉さんが大人気ないことするからですよ」「どっちがよ」とこそこそと聞こえる会話を背にして、私はメリダと会話をしながら楽しく食堂へと向かったのだった。
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