31 / 91
2章
2−2
しおりを挟む
「ええっ! それって危ないんじゃ……」
子供を頻繁にさらってしまうことがまた多発したら混乱に陥るのではないか。
「妖精は精霊と違って寿命が短いので百年前に人間の魂を抜き取っているものが生きているはずはありません、今の妖精は妖精女王に人間の魂を抜き取ることを禁じられている世代なので制約の期間を終えたことをわざわざ妖精に伝えることをしなければ問題ないでしょう」
「妖精女王が妖精達に伝える可能性は?」
ハンナが心配そうにリクに尋ねた。リクは首を傾げながら「それはないでしょう」と答えた。
「妖精女王は基本的に怠惰です」
「怠惰……」
「はい、わざわざ人間の魂を抜き取ることを指示するとは思えません。怠惰ですので」
「怠惰だから……」
「はい、怠惰ですので」
ここまでリクが仮にも妖精を統べる女王を怠惰と言い切るということはよっぽどなのだろう。想像していたのと違うのに落胆している自分がいる。
「妖精って強いの~?」
レイ様が興味津々といった顔でリクにたずねた。
「個体差にもよるが……基本的にはある程度戦えるものならば問題ないだろう」
ある程度って……。ほぼ戦う力のない私は危険ということではないか。
妖精に遭遇することがありませんようにと心の中で祈る。
「じゃあ、キヨラの噂は?」
「おおかた、キヨラの人間達の祖先が以前あった妖精による連れ去りを精霊と勘違いしたまま昔話として伝えているのではないでしょうか。それがそのまま伝えられて、たまたま子どもがいなくなったのを精霊のせいにしたのでしょう」
「では子供がいなくなったのは」
「それは実際にはわかりません」
確かに噂なら今こうして話していても実際に行ってみないことにはわからない。そしてレイ様が思い出したようにリクにたずねた。
「そういえばさ~リクは上位精霊なの? 」
「急にどうした。なぜそんなことを聞く?」
リクが気怠げに問い返した。これは私も聞きたくても聞けなかったことだ。
「だってさあ、シリルは魔力があんまりないから下位精霊はおろか中位精霊も見えないはずなのにリクのことは見えてるんだもん~」
魔力がないと精霊の姿は見えない。見ることができるとしたらそれは上位精霊だ。上位精霊は力が強いため、魔力がない者に対しても上位精霊が意識すれば姿を見せることができる。だから屋敷のみんなはグレース様次第ではっきりと姿を見ることができる。
中位、下位の精霊は上位ほど力が強くないため姿を魔力のないものには見せることができない。
だから両親や、ティアお姉さまの精霊は魔力のないものたちにははっきりと姿が見えない。魔力があったとしても姿は人によってはぼんやりとした光がふよふよ浮いているだけしかわからないらしい。生活魔法だけが使えるハンナはこれらしい。
そして精霊の姿を精霊召喚の儀の前にはっきりと見ることができるのは魔力量が多いと言われている。中でも下位精霊の姿をはっきり見えたらなお多いと言われる。
ちなみに契約した際は自分の守護精霊の力でどんな精霊もはっきりと姿を見られるようになる。
リクは最初からはっきりと屋敷のみんなに見えていた。
私自身下位精霊の姿をはっきりと見ることができるので動物っぽい感じからなんとなくリクを下位精霊と思っていた。
動物っぽいと下位精霊、中位、上位になると人間ぽい姿というのは本に載っているくらいなので一般的な考えだと言える。
レイ様の言う通りシリルは魔力がほとんどない。だから本来精霊の姿自体見えない。
護衛上、訓練でなんとか精霊の気配のようなものを感じる取れるようになったと聞いたことがある。リクの姿を見ることができるのは何故なのか。
レイ様は疑問に思ったのだろう。
「精霊は人に近い形をしているほど強い、人間の認識ではそうだったな。私がシリルでもはっきりと見えるのは私がはぐれだからだ」
「はぐれだからって?」
思わず私が聞き返すと私の顔を見て頷いた。
「はぐれになると魔力の少ない人間の目に見えるようになるのです」
そう言ってリクはそれ以上は話したくないというように視線を外して、窓の外を眺め出した。それをみた私達はこれ以上の会話は無くなった。
それから馬車は順調に進んで行き、道中休憩を挟みながら夕方にはキヨラに到着した。
宿泊する宿に到着して馬をここまで引いてきた御者とはここでお別れだ。挨拶をして見送ったあと、宿に入る。平民の中でも裕福な方が泊まる宿とあって小綺麗な宿だった。カウンターでハンナが受付しているのをリクと並んで眺めていたら声をかけられた。
「その精霊はお嬢さんの守護精霊かい?」
壮年の男性が笑いかけながら声をかけてくる。どう答えようと考えているとその問いにリクが代わりに答えた。
「いいや、この子の兄が契約者だ」
「おっ! ごめんごめん~、ちょっともよおしちゃってさ~」
パタパタとレイ様が私達の方へと近づいてきた。男性は面食らったように「そうかい、連れがいたのだね。では」と足早に立ち去ってしまった。
「リク、どういうこと?」
するとリクはちょいちょいと私を屈むように手で合図した。言われるがまま姿勢を倒して耳を傾けるとリクは小さな声で言った。
「ここでは私がはぐれと知られたらよくない気がしたので咄嗟にああ言いました」
「なんで?」
「噂のこともありますし、女二人と精霊だけと判断されたくなかったので」
レイ様もニコニコしながら言った。
「たまにあるんだよ~女の子に声を掛けて誘拐する変態とか、精霊ごと攫っていろいろヤバいことしたりとか」
いろいろやばい事が何なのか聞く気は起きなかったが、まさかとは思いながらも思わず自分の腕をさすった。
子供を頻繁にさらってしまうことがまた多発したら混乱に陥るのではないか。
「妖精は精霊と違って寿命が短いので百年前に人間の魂を抜き取っているものが生きているはずはありません、今の妖精は妖精女王に人間の魂を抜き取ることを禁じられている世代なので制約の期間を終えたことをわざわざ妖精に伝えることをしなければ問題ないでしょう」
「妖精女王が妖精達に伝える可能性は?」
ハンナが心配そうにリクに尋ねた。リクは首を傾げながら「それはないでしょう」と答えた。
「妖精女王は基本的に怠惰です」
「怠惰……」
「はい、わざわざ人間の魂を抜き取ることを指示するとは思えません。怠惰ですので」
「怠惰だから……」
「はい、怠惰ですので」
ここまでリクが仮にも妖精を統べる女王を怠惰と言い切るということはよっぽどなのだろう。想像していたのと違うのに落胆している自分がいる。
「妖精って強いの~?」
レイ様が興味津々といった顔でリクにたずねた。
「個体差にもよるが……基本的にはある程度戦えるものならば問題ないだろう」
ある程度って……。ほぼ戦う力のない私は危険ということではないか。
妖精に遭遇することがありませんようにと心の中で祈る。
「じゃあ、キヨラの噂は?」
「おおかた、キヨラの人間達の祖先が以前あった妖精による連れ去りを精霊と勘違いしたまま昔話として伝えているのではないでしょうか。それがそのまま伝えられて、たまたま子どもがいなくなったのを精霊のせいにしたのでしょう」
「では子供がいなくなったのは」
「それは実際にはわかりません」
確かに噂なら今こうして話していても実際に行ってみないことにはわからない。そしてレイ様が思い出したようにリクにたずねた。
「そういえばさ~リクは上位精霊なの? 」
「急にどうした。なぜそんなことを聞く?」
リクが気怠げに問い返した。これは私も聞きたくても聞けなかったことだ。
「だってさあ、シリルは魔力があんまりないから下位精霊はおろか中位精霊も見えないはずなのにリクのことは見えてるんだもん~」
魔力がないと精霊の姿は見えない。見ることができるとしたらそれは上位精霊だ。上位精霊は力が強いため、魔力がない者に対しても上位精霊が意識すれば姿を見せることができる。だから屋敷のみんなはグレース様次第ではっきりと姿を見ることができる。
中位、下位の精霊は上位ほど力が強くないため姿を魔力のないものには見せることができない。
だから両親や、ティアお姉さまの精霊は魔力のないものたちにははっきりと姿が見えない。魔力があったとしても姿は人によってはぼんやりとした光がふよふよ浮いているだけしかわからないらしい。生活魔法だけが使えるハンナはこれらしい。
そして精霊の姿を精霊召喚の儀の前にはっきりと見ることができるのは魔力量が多いと言われている。中でも下位精霊の姿をはっきり見えたらなお多いと言われる。
ちなみに契約した際は自分の守護精霊の力でどんな精霊もはっきりと姿を見られるようになる。
リクは最初からはっきりと屋敷のみんなに見えていた。
私自身下位精霊の姿をはっきりと見ることができるので動物っぽい感じからなんとなくリクを下位精霊と思っていた。
動物っぽいと下位精霊、中位、上位になると人間ぽい姿というのは本に載っているくらいなので一般的な考えだと言える。
レイ様の言う通りシリルは魔力がほとんどない。だから本来精霊の姿自体見えない。
護衛上、訓練でなんとか精霊の気配のようなものを感じる取れるようになったと聞いたことがある。リクの姿を見ることができるのは何故なのか。
レイ様は疑問に思ったのだろう。
「精霊は人に近い形をしているほど強い、人間の認識ではそうだったな。私がシリルでもはっきりと見えるのは私がはぐれだからだ」
「はぐれだからって?」
思わず私が聞き返すと私の顔を見て頷いた。
「はぐれになると魔力の少ない人間の目に見えるようになるのです」
そう言ってリクはそれ以上は話したくないというように視線を外して、窓の外を眺め出した。それをみた私達はこれ以上の会話は無くなった。
それから馬車は順調に進んで行き、道中休憩を挟みながら夕方にはキヨラに到着した。
宿泊する宿に到着して馬をここまで引いてきた御者とはここでお別れだ。挨拶をして見送ったあと、宿に入る。平民の中でも裕福な方が泊まる宿とあって小綺麗な宿だった。カウンターでハンナが受付しているのをリクと並んで眺めていたら声をかけられた。
「その精霊はお嬢さんの守護精霊かい?」
壮年の男性が笑いかけながら声をかけてくる。どう答えようと考えているとその問いにリクが代わりに答えた。
「いいや、この子の兄が契約者だ」
「おっ! ごめんごめん~、ちょっともよおしちゃってさ~」
パタパタとレイ様が私達の方へと近づいてきた。男性は面食らったように「そうかい、連れがいたのだね。では」と足早に立ち去ってしまった。
「リク、どういうこと?」
するとリクはちょいちょいと私を屈むように手で合図した。言われるがまま姿勢を倒して耳を傾けるとリクは小さな声で言った。
「ここでは私がはぐれと知られたらよくない気がしたので咄嗟にああ言いました」
「なんで?」
「噂のこともありますし、女二人と精霊だけと判断されたくなかったので」
レイ様もニコニコしながら言った。
「たまにあるんだよ~女の子に声を掛けて誘拐する変態とか、精霊ごと攫っていろいろヤバいことしたりとか」
いろいろやばい事が何なのか聞く気は起きなかったが、まさかとは思いながらも思わず自分の腕をさすった。
10
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる