精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−4

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 隣接されているレストランは入ってすぐにホールがあり、清潔感のある白いテーブルクロスが引いてあるテーブルが並んでいる。
 夕食の時間帯なのでいくつかのテーブルは埋まっていて、それを横目に私達は店員に案内され横の通路を通って奥の個室に通される。
 個室の方はお忍びの貴族や、商人の商談などに使われるらしい。私達はリクがいるのと、旅の打ち合わせも兼ねているので今日は個室を利用する。
 テーブルの席に座ってから、メニュー表を見ながら店員に注文する。

 子羊と野菜のシチューがこの店の名物料理らしく、悩んだ末皆結局同じものを頼んだ。唯一レイ様だけはそれを五人前頼んでいた。
 スープは赤味が強い色をしていて辛いのかと思いきや、辛味はあまりなく、さっぱりとしていて美味しい。
 玉ねぎ、人参、ジャガイモが入っていて具沢山で食べ応えもある。ご飯にかけて食べても美味しいだろうな……そんなことを思いながらつけ合わせのパンを噛む。
 転生してから米を食べていないので時折米が恋しく感じる。
 いつかこの世界のどこかにありますようにと願いながらチラッと見渡すとリクは器用にスプーンを使って食べていた。
 椅子も子供用の足が長い椅子に座って不自由なく食べている。給仕にきた店員が一瞬ギョッと顔になるがすぐ表情をもどすのはさすがと言っていいのかわからない。
 レイ様の方は相変わらずすごい速さで食べている。お茶会のときも思ったのだが、レイ様はよく食べる。
 それはもうすごく食べるので料理長はレイ様のいる間の食事は張り切って作っていたくらいだ。

 冒険者は身体が資本なのでみんなこんなに食べるのだろうか……。気持ちの良い食べっぷりに思わず見入ってしまっているとレイ様と目があった。

 「美味しいね~もう鍋ごと食べたいくらい」
 
 レイ様の発言に給仕に来た女性店員の顔が若干引き攣っていた。確かに鍋ごと食べそうな勢いだ。 

 「レイ様はよく召し上がられるのですね」
 「親父に似たのかも~、兄貴も姉貴もそんなに食べないし」

 頭にセバスとマーサを思い浮かべる。食事を一緒に取ることはないのでそもそも二人が食べているところを見たことがない。
 ハンナの方はこっそり私のお茶に付き合ってもらっているので見慣れている。

 「そういえば、レイ様のお父様はどんな方ですの?」
 「うーん……熊親父?」
 「熊? そうなの、ハンナ?」

 ハンナを見るとハンナは少し考えてから頷きながら言った。

 「確かに熊っぽいです」
 「熊っぽい……」

 レイ様達のお父様でハンナの祖父は確か騎士団に長年勤められていたという。騎士団の団長といえばさぞかし強くて有能な方なんだろうと想像する。
 熊っぽい……身体が大きいとか?などと想像を膨らませなが食事に舌鼓を打った。
 


 デザートを食べ終えて食後の紅茶をゆっくりと飲んでいたときだった。
 ハンナが部屋の隅に控えている給仕を下がらせた。部屋から誰もいなくなったところでハンナが防音の魔道具を取り出し、テーブルに乗せて起動した。
 魔道具から魔力が解き放たれ、薄い膜が張り巡らされるもすぐに景色と一体化する。
 
 「これから私達はハーベストの街まで向かいますが、レイ様は旦那様よりなんとお聞きして護衛をしているのかお聞きしたいです」

 ハンナが真面目な表情で言った。確かにレイ様は護衛とは聞いているがどんな内容で護衛を受けているかお父様からもレイ様からも聞いていない。
 レイ様は私たちの顔を見渡して口を開いた。

 「んーと、サーナイト伯爵からは娘がハーベストの街まで用があるので道中の護衛を依頼されたよ」

 道中の護衛だけ……黒精霊の元へ行こうとしていることをもしや聞いていないのか不安になった。
 危険も伴うし、ちゃんと言っておいた方がいいのではないかと思い、口を開こうとしたときだった。レイ様と視線があった。
 琥珀色の何もかも見透かされそうな──思わず息を飲む。

 「あと~、何が出ても危ない目に遭いそうになったら命を守ってほしいって言ってたよ。たとえが出たとしてもってね」
 
 心臓がドクンと跳ねる。お父様は旅の目的は話す必要がないと判断したのか……。その様子からするとお父様は暗に伝えているような気もするけど。
 レイ様は何となく分かっているのではないか。やはりこちらから話しておいた方がいいだろう。そう思って口を開く。

 「あの……実はこの旅の目的がありますの」
 「そうなんだ、目的って?」

 話したら今から旅が中止になるかもしれない、そう思うと少し残念に思うがそのときはまた新たに護衛を探すしかない。意を決したときだった。

 
 「私の知り合いの精霊に会いに行くのだ」


 ハッとして顔を上げるとリクがレイ様に続けて説明した。

 「それで私の旅に同行していただいているのだ。そしてこの旅の目的はお嬢様の視察の訓練を兼ねている」
 「視察の訓練?」
 「貴族として民の暮らしなどを学ぶという名目も含まれています」
 

 リクが私の方を見て頷く。これは、下手なことは言わない方がいいのかな……?
 私がもんもんと悩んでいると、レイ様は気にした様子もなく「ふうん」と言ってから私とリクを交互に見て言った。

 「そもそもリクはなんではぐれなの? お嬢様と契約しないの?」
 「……それは事情があるのだ。ここでお前に話すことではない」

 リクが少し低い声で答えた。普段のリクとは違う様子にドキッとするもレイ様は軽い調子で「そうなんだ~、それよりさ」と話題を変えた。

 「やっぱり例の噂、本当だったね~」

 例の噂とは「はぐれ精霊が子供をさらう」ということだろう。
 
 「精霊が子供をさらったとは言い切れないだろう」

 リクが少し不機嫌そうに言う。リクの方を気にしながらもレイ様にたずねた。

 「確か三人続けて子供がいなくなっているとか。暗くなる前にみんな家から出ないようにって住民たちは言われているようですね」
 「人間の仕業なのかわからないからね~とりあえずは子供の捜索と並行して自警団が見回りをして対応してるって聞いたよ」

 早く子供達が見つかって欲しいなと思っているとレイ様は「早く解決するといいね~」と言いながらデザートのおかわりを求めた。

 



 
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