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2章
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応接室に入るとマリウス神父が自ら紅茶を淹れてくれた。ポットを温める際に自然に生活魔法を使っている。入れてもらった紅茶はハンナに引けを取らないほどおいしかった。
「見事な生活魔法ですね」
お茶を飲んでからハンナが感心したようにマリウス神父に告げるとマリウス神父は少し照れたような表情で「ありがとうございます」と返した。お茶がちゃんとリクの分まで用意してあることがなんだか嬉しい。リクはなぜか手をつけず、先程から置き物のように私の横に座っている。
マリウス神父に先程のフローラとぶつかってしまった経緯を改めて聞かれ謝罪を受ける。こちらも注意して見ていなかったからお互い様であることと、着る物を貸していただいたことにお礼を言うとマリウス神父は「気にしないでください」とほがらかに笑った。
「キヨラへは何かご用事でいらしたのですか」
世間話の流れで目的を聞かれる。それについて事前に打ち合わせしていたことを話した。冒険者をやっている兄(レイ様)と商会の従業員であるハンナが結婚することになったのでハーベストにいる親戚まで挨拶に行くのについていくことを簡単に話した。マリウス神父は「それはおめでとうございます」とハンナにお祝いの言葉を述べる。ハンナは先程念を押したのが聞いたのか愛想笑いを浮かべて軽く会釈した。
「今日はお兄様は?」
「事情があってあと二日こちらに滞在することになりまして、兄はそのあいだ行方不明の子供の捜索隊に加わっておりますの」
「それは……こちらからもお礼を言わせてください」
そう言ってマリウス神父は悲痛そうな表情を見せた。「それは……?」とあえて知らないふりをしてたずねてみた。
「三人目のいなくなった子供はここの孤児院の子供なんです」
少しため息を着いてマリウス神父は指を組んでグッと握りしめた。
「カイという今年で十二歳になる男の子なんですが、ここを出ることも決まっていて……お別れ会をした直後でした」
「ここを出る?」
「カイは生まれつき魔力が多くて、事情があって幼いころにここへ両親へ預けられました。生活魔法は私が教えられるのですが、精霊召喚の儀を行えるほど魔力量が多く……。魔力量が多い子供はいずれ王都の教会から魔法学園に通うことが教会で決まっているのです。カイも王都へ行くことが決まっていました」
「そうなんですね。いなくなることに心あたりは?」
「ありませんよ……王都の教会へ行けば今より暮らしは楽になりますし、カイも学園に通えることを楽しみにしていました」
「突然いなくなったのですか」
「そうですね、出立の前の晩にお別れ会をした後から姿が見えなくて、朝まで待ちましたが帰ってこなくて……」
眉根を寄せて表情を歪めたマリウス神父は「すみません、初めてお会いした方にこんな話をしてしまって」と謝った。
話を変えるようにマリウス神父はリクの方へ視線を移した。
「おとなしい精霊ですね。お兄様の方へはついていかなかったのですか」
基本精霊は契約者の元にいるのが常なので不思議に思ったのだろう。
「兄が護衛として精霊をつけてくれたのです」
「基本精霊は契約者以外には懐かないものなのに珍しいですね。それに姿を見せることができるなんて」
「ええ、珍しい方だと思われます。まあ、精霊はいまだに謎が多いですしね」
感心したような表情を見せるマリウス神父に笑ってごまかす。リクは髭をピクピクと動かしてこちらを見ないようにしている。
「マリウス神父、魔力の多い子供は他にもここにいらっしゃるのですか」
「うちではあと三人ほどおります。アリアさんと同じ歳の子供が一人と、八歳と五歳の子供がいます」
「マリウス神父が生活魔法を教えると先程おっしゃっていましたが……」
そういうとマリウス神父は照れたように笑った。
「私はもともと貴族の出なのですが、お恥ずかしながら精霊召喚の儀を行えるほどの魔力量がなくて家を出されまして。生活魔法なら扱えるので教会にこうして勤めているのです」
思わずどきりとする。精霊召喚の儀を行えないほどの魔力量、精霊召喚の儀の失敗で貴族だった人が家を出される。話には聞いたことがあるもののこうして実際に会ったとこはなかった。なんと声をかけて良いのか分からず思わず下を向いてしまう。
「あの……すみません。込み入ったことまでお聞きしてしまって……」
「ああ! 気にしないでください。今はこうやって子供達に魔法を教えたりするのも悪くないと思っていますよ」
そう言って人のいい笑みを浮かべるマリウス神父の顔を見て少しホッとする。同時に教会に勤めるという選択肢もあることを初めて知ることができてよかったと思った。
帰り際に卵を弁償することと、衣服を洗って返却することを伝えると「ありがとうございます。では明日お待ちしています。フローラは歳の近い女の子がいないのでよければ話し相手になってください」と言われた。帰りに門の外まで見送られていると子供達に声を掛けられた。
「早く帰らないとはぐれ精霊にさらわれちゃうぞー!」
「そうだぞー!」
小さな男の子たちがわーっと走り去っていく。それをマリウス神父が「早く中に入りなさい」と促す。あたりはもう夕焼けがさしていた。
「あの……はぐれ精霊が子供をさらうことはあるのでしょうか」
思い切ってマリウス神父に尋ねてみる。マリウス神父は少し考えた後口を開いた。
「それはなんとも言えません。私はなんとなくでしか精霊の姿をみることはできませんし、精霊というものがよくわかりません。ただ……カイは見えることができる子供だったので接点はもしかしたらあるかもしれませんね」
「そうなんですか……」
「ここの土地は昔精霊が人間をさらって魂を抜くという昔話がありました。あとから精霊ではなく、妖精ということがわかりましたが昔話はそのままなんです。結局古い考えのままの人間が伝えたことによってこうしてこの土地に残ってしまっているのです」
そう言ってマリウス神父は諦めのような表情で笑った。
「見事な生活魔法ですね」
お茶を飲んでからハンナが感心したようにマリウス神父に告げるとマリウス神父は少し照れたような表情で「ありがとうございます」と返した。お茶がちゃんとリクの分まで用意してあることがなんだか嬉しい。リクはなぜか手をつけず、先程から置き物のように私の横に座っている。
マリウス神父に先程のフローラとぶつかってしまった経緯を改めて聞かれ謝罪を受ける。こちらも注意して見ていなかったからお互い様であることと、着る物を貸していただいたことにお礼を言うとマリウス神父は「気にしないでください」とほがらかに笑った。
「キヨラへは何かご用事でいらしたのですか」
世間話の流れで目的を聞かれる。それについて事前に打ち合わせしていたことを話した。冒険者をやっている兄(レイ様)と商会の従業員であるハンナが結婚することになったのでハーベストにいる親戚まで挨拶に行くのについていくことを簡単に話した。マリウス神父は「それはおめでとうございます」とハンナにお祝いの言葉を述べる。ハンナは先程念を押したのが聞いたのか愛想笑いを浮かべて軽く会釈した。
「今日はお兄様は?」
「事情があってあと二日こちらに滞在することになりまして、兄はそのあいだ行方不明の子供の捜索隊に加わっておりますの」
「それは……こちらからもお礼を言わせてください」
そう言ってマリウス神父は悲痛そうな表情を見せた。「それは……?」とあえて知らないふりをしてたずねてみた。
「三人目のいなくなった子供はここの孤児院の子供なんです」
少しため息を着いてマリウス神父は指を組んでグッと握りしめた。
「カイという今年で十二歳になる男の子なんですが、ここを出ることも決まっていて……お別れ会をした直後でした」
「ここを出る?」
「カイは生まれつき魔力が多くて、事情があって幼いころにここへ両親へ預けられました。生活魔法は私が教えられるのですが、精霊召喚の儀を行えるほど魔力量が多く……。魔力量が多い子供はいずれ王都の教会から魔法学園に通うことが教会で決まっているのです。カイも王都へ行くことが決まっていました」
「そうなんですね。いなくなることに心あたりは?」
「ありませんよ……王都の教会へ行けば今より暮らしは楽になりますし、カイも学園に通えることを楽しみにしていました」
「突然いなくなったのですか」
「そうですね、出立の前の晩にお別れ会をした後から姿が見えなくて、朝まで待ちましたが帰ってこなくて……」
眉根を寄せて表情を歪めたマリウス神父は「すみません、初めてお会いした方にこんな話をしてしまって」と謝った。
話を変えるようにマリウス神父はリクの方へ視線を移した。
「おとなしい精霊ですね。お兄様の方へはついていかなかったのですか」
基本精霊は契約者の元にいるのが常なので不思議に思ったのだろう。
「兄が護衛として精霊をつけてくれたのです」
「基本精霊は契約者以外には懐かないものなのに珍しいですね。それに姿を見せることができるなんて」
「ええ、珍しい方だと思われます。まあ、精霊はいまだに謎が多いですしね」
感心したような表情を見せるマリウス神父に笑ってごまかす。リクは髭をピクピクと動かしてこちらを見ないようにしている。
「マリウス神父、魔力の多い子供は他にもここにいらっしゃるのですか」
「うちではあと三人ほどおります。アリアさんと同じ歳の子供が一人と、八歳と五歳の子供がいます」
「マリウス神父が生活魔法を教えると先程おっしゃっていましたが……」
そういうとマリウス神父は照れたように笑った。
「私はもともと貴族の出なのですが、お恥ずかしながら精霊召喚の儀を行えるほどの魔力量がなくて家を出されまして。生活魔法なら扱えるので教会にこうして勤めているのです」
思わずどきりとする。精霊召喚の儀を行えないほどの魔力量、精霊召喚の儀の失敗で貴族だった人が家を出される。話には聞いたことがあるもののこうして実際に会ったとこはなかった。なんと声をかけて良いのか分からず思わず下を向いてしまう。
「あの……すみません。込み入ったことまでお聞きしてしまって……」
「ああ! 気にしないでください。今はこうやって子供達に魔法を教えたりするのも悪くないと思っていますよ」
そう言って人のいい笑みを浮かべるマリウス神父の顔を見て少しホッとする。同時に教会に勤めるという選択肢もあることを初めて知ることができてよかったと思った。
帰り際に卵を弁償することと、衣服を洗って返却することを伝えると「ありがとうございます。では明日お待ちしています。フローラは歳の近い女の子がいないのでよければ話し相手になってください」と言われた。帰りに門の外まで見送られていると子供達に声を掛けられた。
「早く帰らないとはぐれ精霊にさらわれちゃうぞー!」
「そうだぞー!」
小さな男の子たちがわーっと走り去っていく。それをマリウス神父が「早く中に入りなさい」と促す。あたりはもう夕焼けがさしていた。
「あの……はぐれ精霊が子供をさらうことはあるのでしょうか」
思い切ってマリウス神父に尋ねてみる。マリウス神父は少し考えた後口を開いた。
「それはなんとも言えません。私はなんとなくでしか精霊の姿をみることはできませんし、精霊というものがよくわかりません。ただ……カイは見えることができる子供だったので接点はもしかしたらあるかもしれませんね」
「そうなんですか……」
「ここの土地は昔精霊が人間をさらって魂を抜くという昔話がありました。あとから精霊ではなく、妖精ということがわかりましたが昔話はそのままなんです。結局古い考えのままの人間が伝えたことによってこうしてこの土地に残ってしまっているのです」
そう言ってマリウス神父は諦めのような表情で笑った。
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