精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−24

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 「そうです。正しくは精霊が起こした魔法です」

 隠してもしょうがないと思い、「リク」と名を呼ぶ。リクはペタペタと歩いて私の前にやってきた。

 「さっきのはあなたね?」

 そうたずねるとリクは心なしかしょんぼりしたようにコクリと頷いた。ローランドさんはリクの姿を見て「やはり……」と呟いた。

 「リク、さっきはありがとう。あのままだとハンナが連れていかれてしまう可能性だってあったし、ハンナが町長を殴ってしまってそのまま逃げるようにこの町を出なければいけなかったかもしれない」

 そう言ってハンナの方を見るとバツが悪そうな表情をしていた。否定しないあたり、殴ってしまう可能性があったのだろう。ハンナはこう見えて沸点が低いし、何をするかわからないところがある。まあ、そんなハンナが大好きなんだけど。

 「それに……ハンナに対してあんなこと言う町長が私も腹立たしかったし。おかげでうまくとはいかなくてもあの場を切り抜けられたのはリクのおかげよ」

 ハンナが「お嬢様……」と小さく呟くのが聞こえた。リクはコクンと頷くとペタペタと椅子に戻り腰かけた。喋らないあたり、まだローランドさんを警戒しているのだろう。その姿を見て頬が緩みそうになった。

 「精霊ということは、レイ殿かハンナ殿の守護精霊か?」

 ローランドさんが不思議そうにたずねた。年齢的にも私が該当しないと思ってそう考えたようだった。事前の打ち合わせ通り、レイ様が「俺だよ」と手を挙げた。今だにおかしいのか笑いすぎて涙目になっている。

 「そうか、精霊は契約者の元を基本離れないと聞いていたし何より契約者以外と交流を持たないものと思っていた。それに……姿が見えるのは?」
 「基本はそんな感じですわ。ですがレイ様が日中捜索隊に加わっている際の護衛としてついていただいていますの。姿は見せることができるとしか。精霊は不思議な存在でしょう?」

 そう言うと「そうなのか」とローランドさんは納得したようだった。

 「それにしてもお嬢様がまさかあんなことするなんてね~」

 どっちのことだろう?契約のことかそれともカツラを乗せたことか。首を傾げているとレイ様は目尻に溜まった涙を指先で拭いながら「カツラを頭に乗せたこともだけど」と言って一息ついた。

 「契約のことだよ、まさか補償金と俺への給金を請求するんだもん」

 今回のことについて私が懸念していたのは、レイ様についてのことだ。一応私の道中の護衛として雇われているのに、レイ様には依頼内容とは違う人探しをさせていること、しかも森での探索で魔物を倒したりと命の危険性が付き纏うことをさせてしまっていることだった。
 追加で給金を支払うにもA級冒険者に支払う依頼料なんてまだ十歳の私の手持ちじゃとても足りそうにない。両親にはキヨラの町には止まっていることを手紙で告げているが、レイ様が護衛を離れているとは知らないため両親にお願いするわけにもいかない。しかも自警団に加わるようお願いしているのは完全に私の独断だ。レイ様は腕がなまらないし二日だけならと自警団に加わることを飲んでくださったがこれがあと二日、もしくは数日続くとあれば話は別だ。
 
 「まあ、正直そこが一番懸念していたところですの。ただ、足止めを食らうのも癪ですし。護衛料は支払われていても、完全に無償で善意だけで動くのはレイ様にとっては死活問題でしょう?」
 「そうだね~そんなことしてたら割に合わないのは確かだね」

 するとローランドさんは肩を落とした。

 「すまない……本来ならば私から給金について町長に掛け合うべきだったものを……」
 「それはしょうがないですわ。ローランドさんが掛け合ったところであの町長が素直に支払うかはわかりませんし。ですがあの通り契約書を結ぶとはっきりおっしゃいましたし、今日中に契約書を交わすことができなければ私達は予定通り明日ここを立つだけです」

 するとローランドさんはビクッと立ち上がった。

 「では、町長の秘書が迷う事ないように私は屋敷まで秘書を迎えに行くとしよう。また後ほど来る。レイ殿、本日は探索はこの通り中止だ。契約書を結ぶ事ができたら明日からまたお願いする」

 そう言ってローランドさんはいそいそと部屋を出てしまった。
 その姿を見送って息をつく。ハンナがスッと紅茶を目の前に置いた。紅茶を手に取り、両手で包み込んだ。冷えていた指先がじんわりと温まっていく。紅茶を一口飲むと身体がぽかぽかと温まっていくのを感じたことで緊張から解放されたことを実感した。思わずほうとため息をついたのを見てレイ様はクスッと笑った。

 「緊張してたんだ? あまりに堂々としてたもんだからさすが貴族のお嬢様だと思ってたよ」
 「いくら貴族でもあのような交渉はしたことがありませんし、私はまだ十歳なので知らない大人と接することもあまりないのです。緊張しますよ」

 そう言って少し唇を尖らせるとレイ様は少し驚いた表情をした。「そうか、まだ十歳か」と小さく呟いたのが聞こえた。


 お茶を飲んで温まっていると、リクとハンナがテーブルの上でお菓子を並べ始めた。皿の上のには家で作ってきたチョコレートケーキや、チーズケーキ、タルトにプリンなどが並んでいる。

 「今日はお嬢様はたくさん頑張りましたので二つまでなら召し上がってもよろしいですよ」

 そう言ってハンナがにっこりと笑った。その言葉を聞いてはやる気持ちを抑えながら、ワクワクしながらチョコレートケーキを選んで手に取った。フォークを手に取り、ケーキを口に運ぶ。チョコレートの生クリームを上顎と舌で押すと溶けて甘さが広がる。ココア風味のスポンジはふわふわで美味しい。思わず目を閉じて味わっていると、それを見てレイ様はクスクスと笑いながら言った。

 「確かに十歳の女の子だ」

 その後、ケーキをみんなで食べて穏やかなひとときを過ごしたのだった。
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