精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−50

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 翌日私達は宿を出て、教会へと向かった。いつもよりは遅い時間に起床したものの、まだ眠たい。あくびを噛み締めながら歩いて町を見ていると、露店では威勢の良い声が飛び交っている。平和な町そのものの光景に思わず笑みが溢れる。

 「アリアー!」

 自分の名前を呼ぶ声がしたので立ち止まって振り向くと後方からヨシュアが走ってこちらにやってきた。

 「ヨシュア!」

 ヨシュアが息を整えるのを待っていると後ろから「早いよ、ヨシュア」とカイが走って向かってきた。ヨシュアよりも少し遅れてやってきたのにも関わらずなぜだか息切れすらしていない。爽やかな笑顔で「おはよう」と挨拶をする姿は昨日会ったときよりも顔色がだいぶいい。

 「森から出てきたの?」
 「ああ、今朝レイって人が森にやってきてさ、『片付くからもう町に帰っておいで』って」
 「姿を見せたの?」

 不思議に思ってたずねるとカイは苦笑しながら「それがさ」と話してくれた。
 なんでも早朝にレイ様がふらりと一人で森に現れたそうだ。早朝に森に入る者に緊張感を走らせているとレイ様は何を思ったのか大声で叫んだそうだ。
 自分はよその町からきた冒険者だ、事件のことはしっかり届いている。今日で片をつけるから町に戻っておいで……と。
 二人は疑心暗鬼になりながらも、レイ様の前に姿を現すとレイ様は二人に食料を渡して明日の昼前には教会にくるようにとだけ告げてさっさと帰っていったそうだ。

 「人気がなかったとはいえまさか森で大声で叫ばれるとは思わなかったよ」
 「魔物がきたらどうするつもりだったんだ」

 カイが苦笑しながら説明して、ヨシュアが顔を顰める。
 それを聞いたリクはため息をつき、ハンナはギョッとした表情を見せ、私は乾いた笑いしか出なかった。
 レイ様はA級の冒険者であることから魔物に対しても対処できると踏んだのだろう。聞いていてハラハラしてしまうのもあるが何よりレイ様ならやりそうと思ってしまった。レイ様はいまだに掴みどころがない。今回のことも何やら別で色々と動いていたようだし、そのことも後で聞けるだろうか。


 「そういえばリリュは?」

 なんの気無しにたずねるとカイは「森にいるよ」と答えた。リリュがついてこなかったことを不思議に思った。
 あの精霊はカイのことをとても大切に思っていたようだったから。私の考えが透けて見えたのかカイはクスリと笑いながら話してくれた。
 リリュはあまり人間自体が好きじゃないらしい。だから人間が多い町に行くことを嫌がったのだという。人間嫌いなのにカイとヨシュアに手を貸すあたり全くの人間嫌いではなさそうだし、町に行くことを嫌がるのもリリュなりにきっと理由があるのだろう。

 雑談を交わしながら教会に着くと教会の門の前には男性が門番のように立っていた。ハンナが小走りで駆け寄ってその男性に話しかける。
 男性はこちらをチラリと見やると頷いた。

 「行きましょう」

 ハンナが戻ってきて私達はその物々しい雰囲気に緊張しながらも門をくぐった。中に入ると「あ!カイ兄ちゃんだ!」「ヨシュア兄ちゃんもいる!」と子供達の声がしたと思ったら子供達がすぐさま駆け寄ってきた。カイとヨシュアはあっという間に囲まれてしまった。二人は身動きが取れなくなっているのにも関わらず笑顔を見せながら子供ひとりひとりと言葉を交わしていた。

 「カイ! ヨシュア!」

 聞き覚えのある声が響き渡る。少し離れたところからフローラがカイとヨシュアを見て立ち尽くしていた。

 「フローラ……」

 どちらかがフローラの名前を呟いたのと同時にフローラが二人の元へ駆け出していた。二人を囲っていた子供達はサッと横にはけていく。

 「ばか! 心配したんだからね!」

 そう言うが早いかフローラは二人に抱きついた。

 「ごめんね、フローラ」
 「悪かったな」

 カイとヨシュアがフローラに抱きつかれながらフローラに謝罪の言葉を述べた。それを見た私達はそのまま二人を残して先程からこちらに手を振っているレイ様の方へと歩き出した。
 今はあのままにしておいた方が良いだろう。
 
 「おはよー、さっそくだけどこっちだよ~」

 レイ様と軽く挨拶を交わすとまずは教会の方へ案内された。レイ様は先程まで寝ていたのか寝癖があちこち跳ねている。その後ろ姿を眺めながら歩いていると教会の方に着いた。教会の入り口の方もそこには屈強な男性が門番のように立っていた。先程の男性よりも強面で思わず怯んでいるとレイ様はそちらを見向きもせずにスタスタと入っていってしまった。ハンナに促されて慌てて入り口の扉を開けると教会内は数人の大人達が行き交っていた。
 そしてやっぱり私は昨日も見たはずなのに祭壇の上に飾られたあの絵画に目が吸い寄せられていく。教会内を行き交う人で慌ただしく感じるのにあの絵だけは独特の雰囲気を放っている。

 「お嬢~?」

 レイ様に呼びかけられてハッと意識を浮上させると目の前に背の高い黒い髪を後ろに撫でつけた男性がこちらを探るような目つきで見ていた。
 
 「あ、あの……?」

 視線に戸惑いながら見返すと背の高い男性は少し鋭い目を細めた。

 「ちょっと顔が怖いよ~」
 
 レイ様が男性に笑いながら肩を叩いた。

 「顔はどうにもできん」

 男性は低い声でボソッと呟いた。視線でレイ様に問うとレイ様は「ああ、ごめんごめん」と言うと目の前の男性を紹介してくれた。

 「この人ミルランタのギルドマスター」
 「え?」
 「ヒューズだ」
 「あ、アリアです」

 ヒューズさんは短く自己紹介を終えるとそのまま部下らしき人を引き連れて何処かへといってしまった。

 「あの……なぜミルランタのギルマスの方が?」

 レイ様にたずねるとレイ様は少し困ったような笑みを浮かべた。
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