16 / 32
3.
5
しおりを挟む
ノッドのこめかみに血管が浮き出し、表情も険しいものになっていた。懸命にその力を、ワムール艦に注いでいるようだ。
「ワムールからの攻撃が止まりました!」
ミューズが驚きの表情で報告するのを聞き、ファイは新たな命令を下した。
「光子魚雷を準備して下さい」
『光子魚雷準備!』
機関部に伝達され、ディックが復唱する。
「あと……少ししか持たない……」
そう喘ぎながら、ノッドが呟いた。こんな苦し気な表情は見た事がない。だが魚雷が命中するまで、持ちこたえてもらうしかなかった。
『いつでもいいぜ!』
ディックの声がし、ファイは発射命令を出した。
「光子魚雷発射!」
モニターに光子魚雷が煌めき、ワムール艦に向かって突進して行く。それは動きを封じられた4隻に命中し、巨大な爆発を起こした。
「全艦に命中!」
「ノッド、もう結構です。ミューズ、新たな光子魚雷を発射準備させて下さい」
ファイの声を聞くなり、ノッドはブリッジに崩れ落ちた。すかさずホップスが医務室に連絡を入れている。
「準備完了!発射します」
再び放たれた光子魚雷は、ワムール艦を2隻大破した。と、ブリッジの扉が開き、看護婦長が入ってくる。
「すぐに医務室へ運びます」
「いや、いいよ。少し休めば直るから」
体を起こそうとした看護婦長の腕を拒むと、ノッドはのろのろと立ち上がり、自席に戻った。
「でも……」
「俺はサイボーグだ。あんたらの治療は効かないよ」
そう言って無理に微笑しながらも、ノッドはコンソールの上へ指を這わせた。
「ヨラヌス艦がこっちへ向かってきてる」
「ワムール艦が再び当艦に照準を合わせてきました」
ノッドとデルマの報告を聞き、ファイは暫し考えた。
──艦長ならきっと、このままとどめをさすような事はしないだろう……
平和を重んじるジョシュなら、最後の最後まで交渉しようとするはずだ。
「ホップス、ワムール艦に通信を開いて下さい」
当惑したように振り返った通信士官は、一瞬間を置いてから通信モニターを開いた。すると、あちこちで火花を散らすワムールのブリッジが映し出された。
「アルテミス号副艦長のファイです。降伏するなら、これ以上の攻撃はしません」
司令席からそう伝えると、ワムールの艦長は奥歯を噛み締めながらファイを睨んできた。
『降伏はしない……だが、一旦引かせてもらう。ファイ……いや、アルテミス号、覚えてろよ!』
モニターからワムールの艦長の姿が消えるなり、デルマが彼等が逃げて行くと報告してきた。
「追撃はしません。ホップス、ヨラヌス艦に、彼等が降伏したと伝えて下さい」
何とか危機を乗り越える事が出来た。だがそれは、ノッドの力のお陰だと認めざるを得ないだろう。
「ワムールからの攻撃が止まりました!」
ミューズが驚きの表情で報告するのを聞き、ファイは新たな命令を下した。
「光子魚雷を準備して下さい」
『光子魚雷準備!』
機関部に伝達され、ディックが復唱する。
「あと……少ししか持たない……」
そう喘ぎながら、ノッドが呟いた。こんな苦し気な表情は見た事がない。だが魚雷が命中するまで、持ちこたえてもらうしかなかった。
『いつでもいいぜ!』
ディックの声がし、ファイは発射命令を出した。
「光子魚雷発射!」
モニターに光子魚雷が煌めき、ワムール艦に向かって突進して行く。それは動きを封じられた4隻に命中し、巨大な爆発を起こした。
「全艦に命中!」
「ノッド、もう結構です。ミューズ、新たな光子魚雷を発射準備させて下さい」
ファイの声を聞くなり、ノッドはブリッジに崩れ落ちた。すかさずホップスが医務室に連絡を入れている。
「準備完了!発射します」
再び放たれた光子魚雷は、ワムール艦を2隻大破した。と、ブリッジの扉が開き、看護婦長が入ってくる。
「すぐに医務室へ運びます」
「いや、いいよ。少し休めば直るから」
体を起こそうとした看護婦長の腕を拒むと、ノッドはのろのろと立ち上がり、自席に戻った。
「でも……」
「俺はサイボーグだ。あんたらの治療は効かないよ」
そう言って無理に微笑しながらも、ノッドはコンソールの上へ指を這わせた。
「ヨラヌス艦がこっちへ向かってきてる」
「ワムール艦が再び当艦に照準を合わせてきました」
ノッドとデルマの報告を聞き、ファイは暫し考えた。
──艦長ならきっと、このままとどめをさすような事はしないだろう……
平和を重んじるジョシュなら、最後の最後まで交渉しようとするはずだ。
「ホップス、ワムール艦に通信を開いて下さい」
当惑したように振り返った通信士官は、一瞬間を置いてから通信モニターを開いた。すると、あちこちで火花を散らすワムールのブリッジが映し出された。
「アルテミス号副艦長のファイです。降伏するなら、これ以上の攻撃はしません」
司令席からそう伝えると、ワムールの艦長は奥歯を噛み締めながらファイを睨んできた。
『降伏はしない……だが、一旦引かせてもらう。ファイ……いや、アルテミス号、覚えてろよ!』
モニターからワムールの艦長の姿が消えるなり、デルマが彼等が逃げて行くと報告してきた。
「追撃はしません。ホップス、ヨラヌス艦に、彼等が降伏したと伝えて下さい」
何とか危機を乗り越える事が出来た。だがそれは、ノッドの力のお陰だと認めざるを得ないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる