arkⅣ

たける

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3.

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ノッドのこめかみに血管が浮き出し、表情も険しいものになっていた。懸命にその力を、ワムール艦に注いでいるようだ。

「ワムールからの攻撃が止まりました!」

ミューズが驚きの表情で報告するのを聞き、ファイは新たな命令を下した。

「光子魚雷を準備して下さい」
『光子魚雷準備!』

機関部に伝達され、ディックが復唱する。

「あと……少ししか持たない……」

そう喘ぎながら、ノッドが呟いた。こんな苦し気な表情は見た事がない。だが魚雷が命中するまで、持ちこたえてもらうしかなかった。

『いつでもいいぜ!』

ディックの声がし、ファイは発射命令を出した。

「光子魚雷発射!」

モニターに光子魚雷が煌めき、ワムール艦に向かって突進して行く。それは動きを封じられた4隻に命中し、巨大な爆発を起こした。

「全艦に命中!」
「ノッド、もう結構です。ミューズ、新たな光子魚雷を発射準備させて下さい」

ファイの声を聞くなり、ノッドはブリッジに崩れ落ちた。すかさずホップスが医務室に連絡を入れている。

「準備完了!発射します」

再び放たれた光子魚雷は、ワムール艦を2隻大破した。と、ブリッジの扉が開き、看護婦長が入ってくる。

「すぐに医務室へ運びます」
「いや、いいよ。少し休めば直るから」

体を起こそうとした看護婦長の腕を拒むと、ノッドはのろのろと立ち上がり、自席に戻った。

「でも……」
「俺はサイボーグだ。あんたらの治療は効かないよ」

そう言って無理に微笑しながらも、ノッドはコンソールの上へ指を這わせた。

「ヨラヌス艦がこっちへ向かってきてる」
「ワムール艦が再び当艦に照準を合わせてきました」

ノッドとデルマの報告を聞き、ファイは暫し考えた。


──艦長ならきっと、このままとどめをさすような事はしないだろう……


平和を重んじるジョシュなら、最後の最後まで交渉しようとするはずだ。

「ホップス、ワムール艦に通信を開いて下さい」

当惑したように振り返った通信士官は、一瞬間を置いてから通信モニターを開いた。すると、あちこちで火花を散らすワムールのブリッジが映し出された。

「アルテミス号副艦長のファイです。降伏するなら、これ以上の攻撃はしません」

司令席からそう伝えると、ワムールの艦長は奥歯を噛み締めながらファイを睨んできた。

『降伏はしない……だが、一旦引かせてもらう。ファイ……いや、アルテミス号、覚えてろよ!』

モニターからワムールの艦長の姿が消えるなり、デルマが彼等が逃げて行くと報告してきた。

「追撃はしません。ホップス、ヨラヌス艦に、彼等が降伏したと伝えて下さい」

何とか危機を乗り越える事が出来た。だがそれは、ノッドの力のお陰だと認めざるを得ないだろう。




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