arkⅣ

たける

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4.

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インターコムのスイッチを切ると、ファイはベッドに横たわるノッドを見下ろした。疲労はまだ快復していないらしく、目を閉じ胸を激しく上下させている。


──受けるべきではなかっただろうか……


「そんな事ない。大丈夫だ。もう行くよ」

体を起こすと、ノッドは微笑した。弱々しい笑みだ。ファイはそっとその頬に触れた。

「無理をさせてしまいますが、これは宇宙連邦にとっても、ヨラヌス星にとっても、大切な事なのです」
「うん、分かってるよ。あいつがさぁ、ノナカに啖呵切ってんの見てたし、俺にしか出来ない事だからな」

優しくファイの髪を撫でるノッドは、もう以前の暗い目をしていたサイボーグではなく、使命に責任を感じている科学士官のそれだった。

「すみません……」
「謝んなよ、お前が悪い訳じゃないし……それに、戻ったらちゃんとご褒美、くれるんだろ?」

くしゃりと髪を乱され見下ろすと、ノッドに唇を奪われた。

「これがご褒美ではないのですか?」

心を乱すまいと、必死に自制を立て直さなければならない。ノッドはそれを知ってか、ニヤリと笑った。

「そんじゃま、ちょっくら行ってくるよ」

人差し指と中指をピタリとくっつけ、額の上で軽く振る。そしてノッドはファイの前から消えた。


──どうか無事で……


重なった唇をそっと指でなぞりながら、強く願った。




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