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たける

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第一章:ゼフィル

2.

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──10年後



ゼフィルは30歳になっていたが、強奪を止める事はしなかった。

「よくもまぁ、またこんなに稼いだもんだなぁ、フィニーさんよぉ!」

性懲りもなくゼフィルは裕福な家に押し入り、盗んだばかりの宝石や金貨を、愛馬に跨がりながら眺めていた。すると、近くを流れるアーツ河から水を汲んで帰ってきたキャロラインが、すぐさまゼフィルに歩み寄った。

「また来たの?いい加減にしなさい、ゼフィル!」

美しく成長したキャロラインは、ゼフィルを見上げると、水瓶を脇に置きながら鋭く言った。
柔らかな金髪は腰まで伸び、ゼフィルからしてみれば、多分街で1番愛らしかった。

「お前もな、キャル。いい加減俺に説教するのは止めな」

盗品を腰からぶら下げている麻袋に仕舞うと、ゼフィルはキャロラインと視線を絡めた。

「いいえ、止めないわ!貴方が盗みを止めて、まっとうに働くまではね!」

おてんばで勝ち気な性格は、幼少時代から変わらない。ゼフィルはうんざりした顔をしながらも、こうしたキャロラインとのやり取りが好きだった。
彼女は美しい。そして凛々しくもあり、ゼフィルは気に入っていた。

「まっとうに働いたって、お役人どもの取り立ては緩みはしねぇよ」

そう言うとゼフィルは手綱を握り直し、愛馬の向きを変えた。するとキャロラインは、ゼフィルに飛び付いてきた。いつもと違うやり取りに驚いたゼフィルは、咄嗟にキャロラインの手を払い除けた。

「きゃあっ!」

体制を崩したキャロラインは、運悪く水瓶の上に倒れてしまった。壊れた水瓶は中の水を溢れさせ、そしてその鋭い破片はキャロラインの頬を切り裂いた。
それまで黙って2人のやり取りを傍観していた群衆は、どよめきを上げた。

「……っ」

大量の血が流れ、キャロラインは苦悶に顔を歪めながら頬を押さえた。それを見ていたゼフィルは言葉を無くしたが、慌てて馬から下りてキャロラインの前に屈んだ。

「お、おい、キャル……」

痛みに涙を浮かべるキャロラインは、そっと手を出すゼフィルに笑いかけると、大丈夫、と呟いた。

「アンタ、よくもうちの娘に怪我を負わせたわね!」

キャロラインの母親が、凄まじい形相でゼフィルからキャロラインを奪った。そしてそのまま家に入ると、それを見ていた群衆も散って行った。
残されたゼフィルは唇を噛み締めながらも、愛馬に跨がって自身の住み家へと戻って行った。




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