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たける

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第二章:クラウド

1.

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クラウドは、司教補佐を勤める真面目な男だった。聖母マリアを愛し、また自身が身を置くソレニティ大聖堂を愛していた。
彼の朝は、毎日太陽が昇らないうちから始まる。まず大聖堂内の全ての蝋燭に火を灯し、清掃も兼ねて堂内に異常はないか確認するのだ。それから祈りを捧げて、一日が始まる。
この毎朝の日課は、クラウドがこの大聖堂に来た時から30年続いていた。

今朝も日課を滞りなく終え、リヤサの裾を引きずるように大聖堂から出た。石畳は深い雪に覆われ、白い吐息が風に流されて行く。
とにかく寒い。細身の体に冬は堪えるが、クラウドは冬が好きだった。
荘厳な大聖堂はその尖塔を天高く延ばし、灰色の雲を引き裂く剣のように見える。また色鮮やかなステンドグラスは、その日の天候によって人々に与える印象を変えた。今日は雪なので、どこか物憂げに見える。
クラウドは暫く大聖堂を見上げていたが、やがて歩き出した。





買い出しから帰ってきたクラウドは、大聖堂に向かう途中、アーツ河の近くで美しい宝石を拾った。青く妖しく輝くそれは、誰かが落としたものなのだろうか?後で礼拝者達に尋ねてみようと思い、取り合えず袂に入れた。
依然雪は降り止まず、寒さもいよいよ指先を痺れさせてきていた。戻ったら暖炉にでもあたろう、そう思い歩を進めると、大聖堂の扉に人だかりが出来ていた。

「どうかしたのかね?」
「あぁ、ガゼット様。女が倒れていて、中へ運ぼうと思っていたところです」

群衆を代表して、穀物店を営む店主が答えた。クラウドは女に視線を落とすと、その美しさに息を飲んだ。


──なんと美しい娘だろうか……


そう思っている間に、娘は店主に担がれて堂内へと連れられていった。クラウドも急いで後を追い、店主に自分の部屋に運ぶよう指示した。
階段を上がって部屋へ2人を通し、娘をベッドに寝かせてもらうと、クラウドは暖炉に新たな薪をくべ、火掻き棒で暖炉の中を回した。

「ご苦労であったな」

そう言うと、店主は一礼してから出て行った。クラウドは娘に毛布を被せてやると、その傍らに椅子を運んできて腰掛けた。
娘は安らかな寝息をたてているが、クラウドには見覚えがなかった。これだけ美しいのなら、1度見たら忘れやしないだろうし、街で噂になっている事だろう。だが誰も娘を知らないようだった。


──目を覚ましたら尋ねてみよう。


そう思いながら、クラウドは聖書を読み始めた。




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