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小型宇宙船に乗り込み、自身もサカリア惑星へと向かったファイは、途中でホップスからの通信を受けた。
『ファイ副艦長。評議会より伝言を預かっています』
「何と……?」
眼下に緑豊かなサカリアが見える。
『ただちにサカリアへ別の航宙艦を向かわせるので、アングリュード人及び関係者達を拘束しておくように、との事です』
「分かりました。では、到着次第彼等を拘束します」
そう言って通信を切ろうとすると、ホップスは慌てて付け加えた。
『あと、遺体の回収もするので、審議会にデータの提出が出来るように準備しておけとも……』
ファイは口角を僅かに引き攣らせると、了解と言って通信を切った。
サカリア城が見え、小型宇宙船をジョシュ達の物の側に着陸させる。すると、裏口からノッドが飛び出して来た。
「ファイ……!」
ゆっくりとした所作で地面に足をつくなり、ノッドがファイに飛び付いてきた。まるで犬のような動作に内心驚いていると、ノッドは何度もファイに唇を重ねくる。
「ノッド……職務中です」
3度目のキスを貰った後でノッドを押し退けると、彼は目を細めて笑った。
「誰も見てない」
再び唇が重なる。僅かに消毒の匂いが漂い、ファイはノッドの手を握った。
「キルトン船医長は?」
「あぁ、ジョシュと一緒に医務室で解剖中だよ」
並んで城へ歩く。治療の途中だったのだろう、ノッドの手には脱脂綿が握られている。
「貴方は治療の続きをお願いします。私は船医長に話がありますので」
フロアにノッドを残し、ファイは医務室へと入った。微かな血の臭いが鼻孔を掠める。
「船医長」
「副艦長……どうしてここへ?」
振り返ったワイズの手は赤い。その側にいる艦長は、青い顔をしていた。
「評議会と連絡を取りました。遺体も回収するので、解剖の結果を纏めておくように。あと、艦長。よろしいですか?」
険しい顔をする船医長を一瞥し、ファイはジョシュへと視線を向けた。
「ん……?」
「地球より航宙艦がこちらに向かっています。アングリュード人及び関係者を評議会へ連行しますので、彼等を拘束しておいて下さい」
そう報告すると、ジョシュはキッと唇を結んだ。
「関係者……?」
「はい。アングリュードに寄生されていた者を始め、その家族。そして王女もです」
ファイが答えると、ジョシュはため息を吐いた。何故ため息を吐くのか理由が分からず、ファイが首を傾げていると、艦長は両手を腰に宛てがった。
「寄生されていたのは、ざっと30人。その家族も含めると、最低でもその倍にはなるぞ?そんな大勢を連れて、評議会はちゃんと審議するつもりなのか?」
実際には、寄生されていた者の家族の大半は殺害されている。だから、多く見積もっても40人程だとファイは計算したが、敢えて訂正はしなかった。
「そのようです。首謀者が死亡したので、何故違法とされる寄生を行ったのかを調べる為でしょう。評議会へは、アングリュード惑星からも数人、召喚される予定です」
かなりの人数になり、審議は数日にも及ぶだろう。また、救助の為に惑星へ赴いた者も対象になる。
「そう……会長の命令なら仕方ないよなぁ」
そう呟いたジョシュは、のろのろと医務室を出て行った。
「そんな大勢、本当に必要か?」
船医長が言い、ファイは彼を見遣った。
「証言は、あらゆる角度から検証されるものですから」
『ファイ副艦長。評議会より伝言を預かっています』
「何と……?」
眼下に緑豊かなサカリアが見える。
『ただちにサカリアへ別の航宙艦を向かわせるので、アングリュード人及び関係者達を拘束しておくように、との事です』
「分かりました。では、到着次第彼等を拘束します」
そう言って通信を切ろうとすると、ホップスは慌てて付け加えた。
『あと、遺体の回収もするので、審議会にデータの提出が出来るように準備しておけとも……』
ファイは口角を僅かに引き攣らせると、了解と言って通信を切った。
サカリア城が見え、小型宇宙船をジョシュ達の物の側に着陸させる。すると、裏口からノッドが飛び出して来た。
「ファイ……!」
ゆっくりとした所作で地面に足をつくなり、ノッドがファイに飛び付いてきた。まるで犬のような動作に内心驚いていると、ノッドは何度もファイに唇を重ねくる。
「ノッド……職務中です」
3度目のキスを貰った後でノッドを押し退けると、彼は目を細めて笑った。
「誰も見てない」
再び唇が重なる。僅かに消毒の匂いが漂い、ファイはノッドの手を握った。
「キルトン船医長は?」
「あぁ、ジョシュと一緒に医務室で解剖中だよ」
並んで城へ歩く。治療の途中だったのだろう、ノッドの手には脱脂綿が握られている。
「貴方は治療の続きをお願いします。私は船医長に話がありますので」
フロアにノッドを残し、ファイは医務室へと入った。微かな血の臭いが鼻孔を掠める。
「船医長」
「副艦長……どうしてここへ?」
振り返ったワイズの手は赤い。その側にいる艦長は、青い顔をしていた。
「評議会と連絡を取りました。遺体も回収するので、解剖の結果を纏めておくように。あと、艦長。よろしいですか?」
険しい顔をする船医長を一瞥し、ファイはジョシュへと視線を向けた。
「ん……?」
「地球より航宙艦がこちらに向かっています。アングリュード人及び関係者を評議会へ連行しますので、彼等を拘束しておいて下さい」
そう報告すると、ジョシュはキッと唇を結んだ。
「関係者……?」
「はい。アングリュードに寄生されていた者を始め、その家族。そして王女もです」
ファイが答えると、ジョシュはため息を吐いた。何故ため息を吐くのか理由が分からず、ファイが首を傾げていると、艦長は両手を腰に宛てがった。
「寄生されていたのは、ざっと30人。その家族も含めると、最低でもその倍にはなるぞ?そんな大勢を連れて、評議会はちゃんと審議するつもりなのか?」
実際には、寄生されていた者の家族の大半は殺害されている。だから、多く見積もっても40人程だとファイは計算したが、敢えて訂正はしなかった。
「そのようです。首謀者が死亡したので、何故違法とされる寄生を行ったのかを調べる為でしょう。評議会へは、アングリュード惑星からも数人、召喚される予定です」
かなりの人数になり、審議は数日にも及ぶだろう。また、救助の為に惑星へ赴いた者も対象になる。
「そう……会長の命令なら仕方ないよなぁ」
そう呟いたジョシュは、のろのろと医務室を出て行った。
「そんな大勢、本当に必要か?」
船医長が言い、ファイは彼を見遣った。
「証言は、あらゆる角度から検証されるものですから」
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