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たける

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出発を明日に控えたルドルフ号は、エンジニア達によって最終点検がなされていた。

「いよいよ明日なのね」

それを間近で見守っていたリチャード・ムーアの元へ、妻のフラムがそう囁きながら歩み寄ってきた。

「あぁ。また家族と5年程離れると思うと辛いよ」

フラムを振り返り、リチャードは目を細めた。

「大丈夫よ。5年なんてすぐだから」

そう言って励ますフラムは──冷めたように表情は変わらない──美しい緑色の瞳でリチャードを見つめている。

「まぁね。君と離れるのも辛いけど、息子の成長が近くで見られないのは嫌だなぁ」

黒い髪が春風に靡くと、それをフラムが撫でた。彼女は透けるような銀色の短い髪を風に揺らしている。

「それについては問題はないわ。もうあの子も27だもの、子供じゃない」

フラムは相変わらずクールだ。そんな彼女はリタルド人で、本来はリチャードのような地球人との結婚は禁忌とされている。だから2人の間に産まれた子は忌み嫌われ、20歳を過ぎても結婚は疎か、恋人さえいない。
純粋なリタルド人は耳が尖り髪は銀色で、セックスを経験すると瞳の色が茶色から緑に変わる。普通なら18歳までにそれを経験し、20歳で結婚するのだ。だが息子のファイは、自分に似たのか髪は黒く、耳も尖っていなかった。

「心配だよ、ファイが」
「それは杞憂よ、リチャード。ファイは強い。現に、アルテミス号の副艦長として、パトロールに出てるわ」

昨年完成したアルテミス号は、士官候補生を伴って処女航海に出ている。それを2人で見送ったが、確かにファイはフラムが言うように堂々とし、自分の心配など必要ではない程立派だった。

「そうだね。もう、ファイは子供じゃないんだもんね」

それはどこか淋しい気もしたが、子供はいつか巣立って行くものだ。

「貴方は自分の心配をしたらどう?明日の準備はもう出来たの?」
「いや、これからさ」

そう言うと、フラムは呆れた人ね、と呟いた。




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