12 / 20
4.
2
しおりを挟む
カフェでの仕事も一段落し、ジュリアは店長に休憩を貰って遅めのランチを店の隅で食べた。
──今頃、ミカ達はどうしてるかしら……
ふと気になり、向かいの書店へ向かう事にした。ハムスターのグレッグは、カフェには連れて入れない為、アンディに預けてある。
その様子見を兼ねて道路を渡り、書店へ入った。アンディは事務室の前にいて、雑誌を紐でくぐっているところだった。
「こんにちわ、アンディ。今いいかしら?」
「やぁ、ジュリア。グレッグなら事務室の中にいるよ」
そう言われ、少し事務室を覗いてみる。するとカゴに入ったグレッグが、デスクの上に乗せられていた。店長は今はいないらしい。
「ねぇ、ミカ達は大丈夫?」
くぐり終えたアンディは腰を伸ばし、ニコリと笑った。
「さっきミカからメールが届いたよ。潜伏場所付近に来たってね。今頃、そっと潜入してる頃じゃないかな」
上から微笑むアンディを見上げて、ジュリアも微笑した。そして幾つか尋ねたい質問を思い付いた。
「あの、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「僕が答えられる事ならね」
アンディを見ているが、ジュリアの頭の中にはチェイスの姿があった。逞しく、無愛想だがハンサムな姿だ。
「チェイスさんって、どんな人なの?銃を持ってたけど……」
一般人が銃を所持するには、許可証がいる。
「彼はああ見えて探偵だよ。流行ってないけどね」
「探偵?」
そう言われてみれば、チェイスの部屋の窓にそのような文字が書かれていたような気がする。
「本業がいまいちだから、ここでバイトをしてるんだ。ミカは一応その助手って事になってるけど、友達として善意で手伝ってるみたい」
店長が戻ったらしく、アンディの視線がジュリアの後ろに向けられた。
振り返って挨拶をすると、ボブ・マックスと言う名札をつけた店長は、アンディに休憩をとるように言った。
「分かりました」
「アンディ、良かったらうちで食べない?まだ幾つか聞きたい事があるの」
そう言ってジュリアがカフェを手で示すと、アンディは快く誘いを受けてくれた。
並んで歩き、青店を出る。ジュリア・バートンは、アンディの胸元ぐらいまでしか背がなかった。
「ジュリアさ、越してきたばかりだけど、もしかしてチェイスの事が好きなの?」
歩道で立ち止まった時、アンディはそう尋ねてみた。そう尋ねたのは、出会った頃からチェイスを見る目が熱っぽく感じたからだし、聞きたい事がある、と言いながら、チェイスの事を聞いてきたからだ。
するとジュリアは顔を真赤にしてアンディを見上げると、困ったような顔をしてきた。それを見て、好きなんだと確信する。
「ど、どうして?」
傍目から見てもそうだと分かるように、ジュリアは平静を装おうとした。だが、まだ顔が赤い。
「どうしてって……そうだなぁ」
腕組みをして考える。すると1台のベンツが書店の前に停車した。運転席には黒いスーツを着た男が座り、後部座席には誰もいないように見えた。
「彼を見る目付き、かな?僕の時と違うんだもの」
そう言ってアンディがジュリアを見下ろすと、彼女の背後に2人の男が忍び寄っていた。
「ジュリア!」
咄嗟に手を伸ばしたが、男に頬を殴られ一瞬だけ昏倒してしまった。意識をしっかり取り戻した頃にはジュリアの姿はなく、ベンツが猛スピードで走り去るところだった。
「たっ、大変だぁ!ど、どうしよう……どうしよう……!」
狼狽えながら辺りを見回すと、運良くキーのついたバイクが放置されていた。
急いでまたがりエンジンをふかすと、持ち主が慌てて書店から飛び出てきた。
「ちょっとアンタ!それは俺のバイクだぞ!」
「ごめん、貸して!命に関わる問題なんだ!」
勢いよく道路に飛び出すと、アンディはその書店に働くハルバートだから、と叫んだ。しかし背後では、泥棒!と言う声がした。
──今頃、ミカ達はどうしてるかしら……
ふと気になり、向かいの書店へ向かう事にした。ハムスターのグレッグは、カフェには連れて入れない為、アンディに預けてある。
その様子見を兼ねて道路を渡り、書店へ入った。アンディは事務室の前にいて、雑誌を紐でくぐっているところだった。
「こんにちわ、アンディ。今いいかしら?」
「やぁ、ジュリア。グレッグなら事務室の中にいるよ」
そう言われ、少し事務室を覗いてみる。するとカゴに入ったグレッグが、デスクの上に乗せられていた。店長は今はいないらしい。
「ねぇ、ミカ達は大丈夫?」
くぐり終えたアンディは腰を伸ばし、ニコリと笑った。
「さっきミカからメールが届いたよ。潜伏場所付近に来たってね。今頃、そっと潜入してる頃じゃないかな」
上から微笑むアンディを見上げて、ジュリアも微笑した。そして幾つか尋ねたい質問を思い付いた。
「あの、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「僕が答えられる事ならね」
アンディを見ているが、ジュリアの頭の中にはチェイスの姿があった。逞しく、無愛想だがハンサムな姿だ。
「チェイスさんって、どんな人なの?銃を持ってたけど……」
一般人が銃を所持するには、許可証がいる。
「彼はああ見えて探偵だよ。流行ってないけどね」
「探偵?」
そう言われてみれば、チェイスの部屋の窓にそのような文字が書かれていたような気がする。
「本業がいまいちだから、ここでバイトをしてるんだ。ミカは一応その助手って事になってるけど、友達として善意で手伝ってるみたい」
店長が戻ったらしく、アンディの視線がジュリアの後ろに向けられた。
振り返って挨拶をすると、ボブ・マックスと言う名札をつけた店長は、アンディに休憩をとるように言った。
「分かりました」
「アンディ、良かったらうちで食べない?まだ幾つか聞きたい事があるの」
そう言ってジュリアがカフェを手で示すと、アンディは快く誘いを受けてくれた。
並んで歩き、青店を出る。ジュリア・バートンは、アンディの胸元ぐらいまでしか背がなかった。
「ジュリアさ、越してきたばかりだけど、もしかしてチェイスの事が好きなの?」
歩道で立ち止まった時、アンディはそう尋ねてみた。そう尋ねたのは、出会った頃からチェイスを見る目が熱っぽく感じたからだし、聞きたい事がある、と言いながら、チェイスの事を聞いてきたからだ。
するとジュリアは顔を真赤にしてアンディを見上げると、困ったような顔をしてきた。それを見て、好きなんだと確信する。
「ど、どうして?」
傍目から見てもそうだと分かるように、ジュリアは平静を装おうとした。だが、まだ顔が赤い。
「どうしてって……そうだなぁ」
腕組みをして考える。すると1台のベンツが書店の前に停車した。運転席には黒いスーツを着た男が座り、後部座席には誰もいないように見えた。
「彼を見る目付き、かな?僕の時と違うんだもの」
そう言ってアンディがジュリアを見下ろすと、彼女の背後に2人の男が忍び寄っていた。
「ジュリア!」
咄嗟に手を伸ばしたが、男に頬を殴られ一瞬だけ昏倒してしまった。意識をしっかり取り戻した頃にはジュリアの姿はなく、ベンツが猛スピードで走り去るところだった。
「たっ、大変だぁ!ど、どうしよう……どうしよう……!」
狼狽えながら辺りを見回すと、運良くキーのついたバイクが放置されていた。
急いでまたがりエンジンをふかすと、持ち主が慌てて書店から飛び出てきた。
「ちょっとアンタ!それは俺のバイクだぞ!」
「ごめん、貸して!命に関わる問題なんだ!」
勢いよく道路に飛び出すと、アンディはその書店に働くハルバートだから、と叫んだ。しかし背後では、泥棒!と言う声がした。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる