トム・チェイスの悩み

５.

１

電話を切ると、上の階が騒がしくなった。見張りをしていたミカが駆け降りてくると、トムに顔を近づけて言った。

「奴等、移動するつもりよ」
「行き先は分かってる。多分撃ち合いになるから、俺達も武装してから向かおう」

そっと足音を忍ばせ、階段を降りる。ロビーに到着した時にはもう、エリス達はブラインとバートンを車に押し込めているところだった。その車を見送ってから階段を駆け降りる。

「どうだ？久々に血が騒ぐんじゃないか？」
「私はそんな事ないわ。騒ぐのは貴方の方なんじゃない？」

そうかも知れない。
かつて撃ち合いは、日常茶飯事だった。銃の重みにも、随分慣れてしまっている。

「かもな。とにかく、俺達はバートンとブライン・トマスを無事に確保しなければならない」

トムは１つを腰のホルスターに納め、もう１つを足首に忍ばせた。

「ハムスターもね」

黒のランボルギーニに乗り込む。

「傷をつけないように」

そう忠告し、トレント空港の格納庫へと走らせた。