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第9章.今はまだ
2.
しおりを挟む「まだ君といたい……」
実際は、繋がっていたい、なのだが、それは叶わないかも知れない。だから、叶いそうな事を囁いた。
「……はい。あの……まだ、あの答えを、聞いてませんから」
──君も、今私と同じ気持ちでいるかい?
「あぁ、あれかい?今度は忘れずにいてくれたんだね」
「はい。明日憶えていたら教えるよ、って言ってらっしゃいましたよね……?」
──伝えてしまっていいのだろうか?
ふと、朋樹の顔が浮かぶ。彼を想っているのは聞かずとも──あの怒りようで──分かる。だが、彼は朋樹を、息子を、どう思っているのだろう?
「君は、朋樹をどう思っているんだい?」
「え……」
私は1人の男ではあるが、朋樹の父でもある。自分の我を通すには、それを知っておかねばならないだろう。
「遠慮はいらない。素直に答えてくれないか?」
「……はい」
束の間、逡巡して、彼は躊躇いがちに──形のいい唇だ──口を開いた。
「と……朋樹君、の事は……好き、です。その……とても、惹かれています」
「うん、そうか。それを聞いたら、きっと朋樹も喜ぶだろう」
まだ君を、好きだと伝えるには早いような、出遅れたような、寂しい気持ちになる。
若い恋を摘み取るには、どうやら私は優しすぎるのかも知れない。
「あの……」
「うん。さっきの答えだね。あれは……まだ伝えられない。すまない」
「……分かりました」
彼の微笑に、寂しさを見た気がするが、気付かないフリをした。
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