ホワイト・ルシアン

たける

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第9章.今はまだ

1.

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部屋に入るなり──以前来たホテルだ──何度も唇を重ねながら、互いの服を脱がせて行く。もうこうなったら、灯りはどうとか、場所がどうとかって言う問題じゃない。ただもう、君が欲しい。それだけだ。
裸になった小麦色の肌を引き寄せ、ソファに倒れ込む。ローテーブルに乗ったままのカクテル──先にフロントで注文し、部屋に用意させていた──が少し溢れたが、それだってどうでもいい。
会話もなくていい。今それは余分だ。代わりに唇を彼の足から這わせて行き、徐々に上って行く。それに合わせて吐息も深くなって行き、肌が熱を帯びていく。
誰にも感じさせたくないこの熱は、今は私だけのもの。そして、これから朝まで私だけのもの。
そう思うだけで嬉しくて、時間をかけてゆっくりと愛撫していく。

「はッ……はッ……」

だが気持ちとは裏腹に、体は待てないと訴え始めた。

「もう、君が欲しい……構わないかい?」

昂る体が欲している。ずっと探していたのだから、これ以上焦らされたくないのだ。

「は……い……」

荒い息が耳元にかかる。私はそんな彼にもう1度キスすると、慣らしていない彼の秘部へとペニスを挿入した。彼は苦し気な表情を──それもまた欲情するものだ──見せ、私にしがみつく。

「痛い……だろう?我慢、出来なかったら……言ってくれ……」

小さく頷く姿もいじらしい。だが、ペニスを挿入したはいいが、まだ──滑りも悪く──きつい。それでも、出来るだけ傷付けないよう慎重に奥まで挿れると、取り敢えず一息ついた。

「はッ……んッ……沢村さ……」

彼は手をさ迷わせると、私の頬を撫でた。指先が震えていて、私はそんな指をくわえた。だが律動し始めると、彼の手は呆気なく私の頬を滑り落ちてしまい、足を抱える手へ向かった。

「はっ……澪君……」

思い切って、名前で呼んでみた。だが咎められる事もなく──最中にそんな野暮はしないか──耳に囁く。

「さ……むら、さ……あァッ!」
「ねぇ、私の事も、名前で呼んでくれないか?」

果たして、彼は私の名前を覚えてくれているだろうか?緊張しながら見つめると、下唇をキュッと噛んだ。

「康介さん……」
「うん。もっと呼んで……」

律動を再開させる。激しく、強く、そして、甘く。
彼は腕の中で身悶えし、私をしっかりとくわえこんでいる。
心地いい。挿入する時も、抜く時も、彼のナカを擦って行く感触は、私を恍惚とさせる。

「んァッ!あッ!あッ!」

自身の足へ落ちた彼の手は、しっかりと私の手を上から握っている。更に足を開かせて深く繋がると、何度も何度も突いた。ソファは軋み、汗が滴って彼の尻に落ちる。

「康介さん……はァッ!イ、イく!もう駄目ッ」

痛いぐらいに手を強く握られ、私と彼は同時に射精した。彼の白濁は絨毯に垂れて行き、私のは飲み込まれてしまった。
ペニスを引き抜き、代わりに指を秘部に挿入する。そして弱い場所──以前ここだったなと、思い出しながら──掻き回し始めた。

「あァッ!あ、康介さ……やッ……んンゥ!」

ビクビクと震えている。私は本数を増やし、更に早く彼の内壁を擦った。すると彼は、堪えきれずに射精して──何て可愛いのだろう──しまった。
両腕で顔を隠した彼のうなじに──愛しくて──唇を這わせる。

「私を感じてくれたんだね……凄く嬉しいよ……」
「うぅ……」

興奮はまだ冷めず、彼を抱き締めた。

「少し……休ませて……」

膝上に座らせると、やっぱり彼は困った顔で笑った。

「駄目だ。私を2年も待たせたんだから……」

休んだって、朝まで君を放しやしない。2人きりの時間は、本当に短いのだから。

「そ、それは僕だって……!」

そう?と、苦笑しながら唇を重ねる。そして彼の尻を掴んで広げると、またペニスを挿入した。

「ひァッ!」

向かい合って、こんな間近に君を感じられる。昂った互いのペニスも、まるでキスをしているように引っ付いている。私はまた彼の唇を奪うと、強く突き上げ始めた。

「ンッ……ふっ……ふぅン……」

舌を絡め、吸い付き、歯列をなぞると、彼の背筋が震えるのを感じる。

「澪君…ん……」

ビクンと、体が大きく跳ねた。私はそんな彼をひしと抱き締めると、勢いよく腰を突き出した。

「あぁ……澪君……!」

何度も腰を突き上げ、私は歓喜に呻いた。
彼も嬌声を漏らしている。

「あッ!あァッ!」

そろそろベッドで抱きたいなと、彼を抱え、移動する。子供みたいにしがみつく彼をシーツに倒すと、改めて彼の腰に腕を回し──さっき探り当てた──弱い場所を何度も突いた。

「はンッ!あ、あァ……あッあッあァッ!」
「あぁ……ハァ……ハァ……」

欲望を流し込むと、彼の首筋に顔を埋めた。私は荒い呼吸を繰り返し、呼吸を整える事にする。

「康介さん……?」
「すまない……私も我慢出来なくなって」

そう言うと、彼は微笑した。だが──彼はまだ果ててないのに──早く、と催促はしてこなかった。


──まだ、そこまでは甘えてくれないか……


私も微笑を返す。

「澪君、もう1回、いいかい?」

躊躇いがちに──彼が言えないなら、私から催促すればいい──そう言った。すると彼は──欲望に──素直になれないようで、渋々承諾した、とでも言うように頷いた。それも愛らしいので、私は満面の笑みを見せる。

「ありがとう」

彼の体を横向けに倒し、足を開かせてその間に自身の体を滑り込ませる。すると彼は恥ずかしいのか顔を背けた。

「は……恥ずかしい……」
「何を今更……凄く可愛いから、ほら、顔を見せて」

再びペニスを挿入し、彼の額や髪、耳や頬に唇を落としていく。

「うぅ……ン……ッ」
「君の声は、とても甘いんだね」

そう教えてあげてから、彼の片足を抱え、ガクガクと揺らしてやる。

「あァッ……あッ……あま、い……?そん、な……あゥ!あッあッ!」

擦れる場所が心地いい。彼はゆるゆると手を伸ばす。私はその手を握って、指先を舐めた。

「もっと、かい?」

そう言うなり、律動の速度を早める。彼は先走りを垂らしながら、私を──潤んだ瞳がとても綺麗だ──見上げてきた。

「ンッ!ハァッ……ハァッ……あぁッ……あ、ひッ、あンッ!」

彼が目を瞑ると、涙が零れた。


──どんな意味の涙なのだろう?


「泣かないでくれ……」

ぐいと体を起こし、再度膝上に座らせる。彼は顔をゴシゴシ擦ると、唇を──拗ねたように──尖らせた。

「な……泣いてません……勝手に、溢れただけです」

ムゥとして反論する彼に、唇を重ねる。
熱いキスを何度となく交わしながらも、私は腰をゆったりと動かした。

「ン……ふッ……あ……」
「可愛い……」

ぎゅうと彼を抱き締めると、私はボソボソと頭の上で呟いた。

「澪……」

そう囁くなり、私は強く彼を突き上げた。びっくりした彼が、思わず身を強張らせ、抱きついてくる。
逞しい──彫刻のような美しい──体。激しく上下する胸板。熱い吐息。柴犬のような愛らしい──そして童顔な──顔立ちが、苦悶に眉をひそめている。

「康介……」

胸が高鳴った。

「何だい?」

優しく笑む顔に、打ちのめされてしまった。


──探して探して……そして……


「……好き……です……」

彼は躊躇いながらも、唇を重ねてきた。
体がピクリと、彼を感じる。

「んン……澪……ンッ」

そのまま押し倒し、唇を重ねたまま彼を揺らした。強く抱き締め、突き上げ、唇を奪い合う。

「んゥッ!ンッンッンッ!」

次第に優しく、甘くする。さっきまでの激しさを、一旦隠しておいて。

「んンッ!ハッ……ふ、うゥッ……んぅ……!」

再び彼が射精すると、私も果てた。
ぐったりとした体は、暫く動かせそうにない。

時がこのまま止まればいいと思った。だが、時は止まるものじゃない。カーテンの向こうが明るくなり始め、もう終わりは近いのだと感じた。




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