ホワイト・ルシアン

たける

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第14章.その後

4.

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駅前で待ち合わせて、車──姫野のもので黒のエクストレイルだ──で走る事約20分。到着したのは、海沿いにある海鮮レストランだった。入店し、席に着いて──店の中央に大きな水槽がある──注文を済ませると、姫野が──いつもの人懐っこい──笑みを浮かべながら、先日は、と、切り出してきた。

「公開練習に来て下さって、本当にありがとうございました」
「そんな、お礼なんて!こっちこそ、貴重な体験をさせてもらったんだし……」
「本当はあの後に、食事でもって、思ってたんですけど、沢村君に先越されちゃって」
「そ、そうだったんだ」

ごめんね、と、謝ると、うぅん、って首を振る。

「まさか沢村君が誘うなんてって、思いました」
「はは、俺もだよ」
「で……どうだったんです?」
「どうって……?」

一口水を──仄かにレモンの味がする──飲み、微笑する。すると姫野は、またまたぁ、と言った。

「彼とは、仲良くなったんですかぁ?」
「なっ、仲良くって……どう言う意味?」
「先輩の事だから、誘われたんじゃないかなーって」

ニヤリと笑う姫野を睨むと、料理が運ばれてきた。一旦会話を中断し、ウェイターが下がるのを待つ。
ごゆっくり、と下がり、俺は改めて姫野を睨んだ。

「あのねぇ……俺をどんな男だと思ってるわけ?」
「え?誘われなかったんですか?」
「……その事で、色々話があるんだ」

俺は注文した──魚介とトマトの塩レモンの──パスタを口に運んだ。姫野は──サーモンとレタスのクリームチーズ──パスタの具を絡めている。

「何ですかぁ?」
「去年会った時に、探してる人がいるって話、したよね?」
「えぇ。先輩をその道に走らせた、きっかけになった人でしょ?」

目一杯頬張りながら──可愛い──じっと見つめてくる。俺もパスタを咀嚼し、飲み込んだ。

「言い方……!まぁ、そうなるんだけど……で、その人が見つかったんだよ」
「えぇーっ!マジですか?わぁ、おめでとうございます!で?で?」
「結果的に、その人と……関係を持った、よ」

ピュウッと、姫野が口笛を吹いた。

「その人ってのが、実は……沢村君のお父さんだったんだ」
「えぇーっ!世間せまっ!」
「知らなくて……その、沢村君と関係を持った後に知ったんだ」
「昼ドラみたいですねぇ」
「そ、そうかな……?」
「そうですよぉ。あ、あと、ほら、あの日、沢村君の付き人やってた人、いるじゃないですか」

知り合いだって言ってた、タヌキみたいな人、と言われ、つい笑ってしまう。

「失礼だよ。でも、うん、分かる。彼ね、カーレッジの営業の、吉村圭人って言うんだ」

彼とはちょっと前からの付き合いで、関係も持ったと伝えると、更に驚かれた。

「先輩、ヤりまくってますねぇ」
「おい!言い方酷いぞ」
「だってそうじゃないですかぁ。ボクともヤって、吉村君ともヤって、沢村親子ともでしょぉ?」

そう列挙されればそうだ。恥ずかしいけど。

「で、新しい恋は見つかりましたか?」
「……うーん、どうだろう……」


──俺は恋をしてるんだろうか?


分からない。

「あ、沢村君のお父さんって、凄くダンディな人なんですね」

食べ終わった姫野が、スマホで検索したらしく、画像を見せてきた。それに、うん、って頷く。

「先輩、好きそう」
「え?か、顔だけで分かるの?」
「何となくですけどね。優しそうですし、頼り甲斐がありそうですし」

当たってる。けど、康介さんに恋した、と言う自覚はない。

「告白されたんですか?」
「え……?」


──そう言えば……


思い返すけど──好きだと──言われた記憶はない。
けど、と、思う。


──もし、あのカクテルに、そんなような意味があったら……?


淡い期待が胸を掠める。

「どうしたんですかぁ?」
「や……何でもない」
「そうですか?」

この後どうします?と聞かれ、俺は逡巡する。

「……バーに、行きたい」

カクテルの意味が知りたい。きっと、康介さんの気持ちだろうから……




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