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第23章.対話
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会議室を出ると、我孫子が走って来るところだった。
「すまん、沢村!朋樹が」
「……あぁ。今、剣崎君と話してる」
「バレたのか?」
頷き、我孫子の肩に手を置いた時、覚えのある香りを嗅いだ。
──この匂い……
「我孫子、まさかお前……」
その先を口に出来ず、飲み込むと、我孫子は悪戯がバレてしまった子供のように笑んだ。
「分かるか?」
「お前……!あれ程彼に近付くなと……!」
隣の会議室──たまたま空室だった──に押し入れ、襟首を掴む。
「いやぁ、実に官能的で良かったよ」
殴りかかろうとした拳を、ギリギリの理性で止めると、我孫子がその手を握ってきた。
「お前が悪いんだ!」
「なっ、何を……?」
確かに、私にも非があったかも知れない。だが我孫子の瞳は、怒りに燃えているようだった。
「お前がオレを見ないから……!」
「……うん?」
言葉の意図が読み取れず、間抜けな返事になる。我孫子は手を放すと、今度は私の襟首を掴んできた。
「気付かなかったか?だろうな!オレはずーっと、お前を見ていた!何十年も!」
「お、落ち着くんだ。一体何の話だ?」
「まだピンとこないか?クソッ!鈍感にも程があるぞ!」
襟を引かれ、我孫子が唇を重ねてきた。それはあまりにも一瞬で、反射神経が──意識的にも──追い付かない。
「お前が好きなんだよ……!」
唇が離れ、我孫子が私の胸に頬を寄せた。
──私が……好き……?
遅れて脳に届いた言葉が、漸く理解出来た。驚く間もなく、先に──気付かなかった事に対し──謝罪する。
「す、すまない……」
我孫子の肩が震えている。その肩に手を置き、もう1度、すまない、と、伝えた。
「本当にすまないと思っているなら、今からオレを抱いてくれ」
「えぇ?そっ……それは……」
告白も突然だった上に、抱いてくれ、なんて。両方とも思ってもみなかったから、返事に窮してしまう。
「無理なのは分かってる。お前がオレをそんな目で見てない事も……だから、1度でいいんだ、頼む……!」
顔を上げた我孫子の目から、怒りは消えていた。代わりに、懇願と切実さが窺える。
「し、しかしお前……」
我孫子はいつも、抱く側だった筈だ。なのに何故、私に抱かれたい、などと言うのだろう?
「沢村……」
必死の様相に、それ以上の追求は止めた。我孫子がそう望むのなら、そうなのだろう。
「……分かった」
抱き締めると──私より体格がいいから、妙な感じではあるが──ありがとう、と、我孫子は囁いた。
「すまん、沢村!朋樹が」
「……あぁ。今、剣崎君と話してる」
「バレたのか?」
頷き、我孫子の肩に手を置いた時、覚えのある香りを嗅いだ。
──この匂い……
「我孫子、まさかお前……」
その先を口に出来ず、飲み込むと、我孫子は悪戯がバレてしまった子供のように笑んだ。
「分かるか?」
「お前……!あれ程彼に近付くなと……!」
隣の会議室──たまたま空室だった──に押し入れ、襟首を掴む。
「いやぁ、実に官能的で良かったよ」
殴りかかろうとした拳を、ギリギリの理性で止めると、我孫子がその手を握ってきた。
「お前が悪いんだ!」
「なっ、何を……?」
確かに、私にも非があったかも知れない。だが我孫子の瞳は、怒りに燃えているようだった。
「お前がオレを見ないから……!」
「……うん?」
言葉の意図が読み取れず、間抜けな返事になる。我孫子は手を放すと、今度は私の襟首を掴んできた。
「気付かなかったか?だろうな!オレはずーっと、お前を見ていた!何十年も!」
「お、落ち着くんだ。一体何の話だ?」
「まだピンとこないか?クソッ!鈍感にも程があるぞ!」
襟を引かれ、我孫子が唇を重ねてきた。それはあまりにも一瞬で、反射神経が──意識的にも──追い付かない。
「お前が好きなんだよ……!」
唇が離れ、我孫子が私の胸に頬を寄せた。
──私が……好き……?
遅れて脳に届いた言葉が、漸く理解出来た。驚く間もなく、先に──気付かなかった事に対し──謝罪する。
「す、すまない……」
我孫子の肩が震えている。その肩に手を置き、もう1度、すまない、と、伝えた。
「本当にすまないと思っているなら、今からオレを抱いてくれ」
「えぇ?そっ……それは……」
告白も突然だった上に、抱いてくれ、なんて。両方とも思ってもみなかったから、返事に窮してしまう。
「無理なのは分かってる。お前がオレをそんな目で見てない事も……だから、1度でいいんだ、頼む……!」
顔を上げた我孫子の目から、怒りは消えていた。代わりに、懇願と切実さが窺える。
「し、しかしお前……」
我孫子はいつも、抱く側だった筈だ。なのに何故、私に抱かれたい、などと言うのだろう?
「沢村……」
必死の様相に、それ以上の追求は止めた。我孫子がそう望むのなら、そうなのだろう。
「……分かった」
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