ホワイト・ルシアン

たける

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第24章.2組の

1.

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式典が行われているホテルの一室を取り、我孫子と中へ入る。窓からは昼間の街並みが眺望出来たのだが──車の往来も忙しなく──元日特有のゆったりとした雰囲気は望めなかった。

「本当にいいのか?」

改めて、我孫子の意思を確認する。
今まで抱かれた事のない男が、いきなり抱いてくれなど、今でも冗談だと思えてならない。

「あぁ、勿論だ。お前こそ、いいのか?」
「私は……」

緊張はしている。なにせ、数刻前に──思ってもみない告白を受けたので──要求されたのだ。妙な意識が働いてしまう。

「無理なら断ってくれてもいいんだぞ?」
「いや、そうじゃない」
「じゃあ早速頼むよ」

ベッドに浅く腰掛け、我孫子が笑む。私は腹を括ると、そんな我孫子の隣に座った。

「は……初めてなんだろう?」
「そうだよ。お前の為に取っておいたんだ」

冗談めかして言うなり、我孫子が唇を重ねてきた。私も──決意したと伝えるように──彼の唇を吸う。腕を回し、抱き締めると、我孫子の体がピクリと反応した。


──全日本柔道学生優勝大会で出会って、もう30年にはなるか……


当時対峙した体格より、幾分も大きくなった背中に絡めた腕を、そっと腰へ下ろす。吐息がかかる距離は初めてではないが、意味合いが違う。

「止めろと言っても、遅いからな」
「ククッ……緊張してるのか?」
「しない方が変だろ」
「初めての相手は初めてか?」
「……いや……」

彼の姿を思い出すが、振り払うように我孫子をシーツに倒した。今、彼を思う時ではない。

「ふーん……なら、いいか」
「どう言う意味だ?」
「任せても安心だって意味だよ」

挑発的に笑い、腕を首に絡めてくる。そして引き寄せられ、再び唇が重ねられた。


──朋樹達はどうしているだろう?


何の連絡もないが、きっと上手くやっているだろう。

「集中しろ、沢村」
「うん?あ、あぁ……」

悪い、と呟き、彼の首筋に唇を落とす。顎髭がチクチクするが──それも緊張材料なのだが──ネクタイをほどき、シャツを乱した。

「いつから、私を……?」

彼も私のスーツを脱がせ、互いに上半身が裸になった。鍛えられた体は美しく──女性なら顔を赤らめるだろう──まだ現役で戦えそうだ。

「オレの引退試合、覚えてるか?」

胸板を指で愛撫し、そっと唇でなぞる。

「勿論だ。君は負けた」

オリンピック最終選考試合だった。試合後、我孫子は泣いていたが、私を称える事は忘れなかった。

「有終の美を飾りたかったし、オリンピックにも、また参加したかった……」
「代わりに、私が金メダルを獲った」´

観客席にいた彼の姿は、私の涙腺を刺激した。

「嬉しかったよ。そして……お前だから、って、思った」

そこからかな、と言った我孫子は、随分待ったよと苦笑する。
彼が引退したのは、32歳の時だった。その時からとなると、実に20年近くにもなる。

「そう……なのか……」

もっと早くに言ってくれたら、どうだっただろう?私は我孫子と、付き合っていただろうか?


──恐らく、ない……


「余談はこのぐらいにして……」
「そ、そうだな」

これ以上待たせる訳にはいかない、と、私は彼の下肢も裸にする。

「なぁ沢村……そんな丁寧にしなくたっていい。早くお前と繋がりたいんだ」
「えぇ?いきなりは、かなりきついぞ?」

慣らさないと広がらないし、無理に挿入すれば切れてしまう──挿入する側も痛む──し。

「ダメか?」
「ある程度慣らしてからだ」

渋々了承する我孫子へ、更に愛撫を重ねる。
どうやってもチラつく彼の姿を追い払いながら、ペニスを掴んだ。軽く勃起しているソレを扱き、溢れてくる先走りを拭っては、我孫子の後孔に塗り込めていく。

「ぅ……はッ……」

体をくねらせ、シーツを握る姿を見つめながら、ゆっくりと指で襞をなぞると、彼の手が──シーツから離れ──私の頬を撫でた。

「まだ……ダメか?」
「うぅん……じゃあ、ちょっと……痛かったら言ってくれ」

そう言い──改めて先走りを指ですくって──後孔に挿入してみる。まだ固いようだが、ほぐすように指を動かした。クチュクチュと、耳の奥が甘く痺れるような音が鳴る。

「うンッ……あ、ハァハァ……」
「まだ、きつい……ようだが……?」

2本目を挿入したが、まだまだ蕾はきつく、滑りも悪い。絶対に痛むだろう。

「構わない……もう、これ以上待たせないでくれ」

潤む瞳が見上げてくる。私は──仕方ないなと──指を引き抜いた。

「分かったよ……だが」
「痛んだらちゃんと言え、だろ?」
「そうだ。我慢はするな。いいね?」

コクリと頷くのを見て、私もズボンを脱いだ。既に勃起し、早く興奮を吐露したいと、訴えているようだ。

「じゃあ……挿れるからな」

そう伝え──気遣いながら──深く入り込んで行く。やはりきつい。ぐっと絞められ、我孫子も苦悶の表情だ。だが、今更戻れない。私はゆっくりと、腰を進めていった。

「沢村……好きだ……」

痛い筈なのに、甘えたような声で囁く我孫子を抱き、ゆっくりと腰を前後させる。

「ありがとう……」

好意は大変嬉しい。私も彼が好きなのには違いないし、出来たら応えてやりたい、とも思う。

「はンッ……あ……」

少しずつ律動を小刻みなものに変えて行くと、我孫子の喘ぎ声は途切れがちになった。

「あッ……沢村、はァッ!あッあッ!」

片足を持ち上げ、何度も腰を突き出す。後孔の収縮は次第に早くなり──滑りもよくなってきた──我孫子は爪先を震わせた。

「あァッ!き……気持ち……い……!あぁ……くそ……もっと激しくしてくれ」
「なっ、何を言うんだ。そんな事したら、今より痛くなるだろ?」

胸がドキドキしている。
突然変な事を言うから、と思っていると、我孫子は体を捻って私を見てきた。

「なぁ、してくれよ」

誘い上手な彼に──抱かれる側は初めてのくせに──私はムッと唇を尖らせた。だが断れる筈もなく、ペニスを引き抜いて俯せに倒す。

「後で痛いって、泣いても知らないからな」

そう言って再びペニスを挿入した。そして腰を持ち上げてやってから、尻を軽く撫でる。

「本当にいいんだな?」

最終警告だと言わんばかりに尋ねたが、我孫子の返事は変わらなかった。

「激しくしてくれ、沢村……」


── あぁもう!何でそんな事を言うんだ!


そう言ってやりたいのをぐっと堪えると──分かったと言ってから──腰を動かし始めた。最初は様子を見るようにゆっくりと。だがすぐに、激しく突き出してやる。

「あッあッあッ!ひンッ……ハァハァ……あっ……あ、あ、あンッ!はっ……激しいッ!」

我孫子は──息をつぐ間もないぐらいに──矯声を上げ、ギュッとシーツを握った。私が腰を振る度に、彼も腰を振る。

「君が、しろって、ねだったんだ、ろ?くっ……どうだ?痛く、ないか?」

私も苦しかった。呼吸もままならなくなってはいたが、我孫子は痛くないと言って首を振っている。

「ならいいが……我慢、するんじゃないぞ?あ……ハァハァ……」
「ちょっとだけだ……」

その言葉にペニスを引き抜き、彼を抱き起こすと、シーツに少し、血が滲んでいた。

「馬鹿だなぁ!血が出てるじゃないか」
「いいんだ……少しだけだから。なぁ沢村、早く続きをしてくれ。オレは、もうイきたい……」

キュッと抱きつかれ、髪を撫でてやる。私も頑固だが、我孫子だって負けてない。

「なら……膝に乗ってくれ」

ベッドから足を垂らすと、彼はゆっくり跨いできた。それからゆっくりとペニスを挿入していき、我孫子が座る。その頃には、私の射精感は湧き上がってきていた。

「しがみついてるんだぞ」
「あぁ」

我孫子がしがみつくのを待ってから、私は尻を両手で掴んだ。そして──左右に広げるようにしながら持ち上げると──激しく上下させながら腰を突き上げる。

「あァッ!沢村!ハッ……ンッ!凄く、いい……!」

間近に我孫子の顔がある。それは快感に悶え上気し、唾液で唇を濡らしていた。

「もっとか?もっと突いて欲しいか?」
「もっと……!もっとしてくれ……!」

彼の唇を貪りながら更に強く突き上げると、ベッドは激しく軋み、繋がっている場所はグチュグチュと音を立てる。

「ンッ!ンッ!ンッ!」

舌を絡ませ、咥内も犯す。我孫子も激しく舌を絡ませてきては、互いの唾液を飲み込んだ。

「はンッ!はンッ!あァッ!さ……むら、も、もう、イく……!」

後孔は痙攣するようにヒクヒクとペニスに食らいつき、私ももう限界だと感じていた。

「私も……お前が好きだ……!」

きつく我孫子の手を握りしめると、同時に射精した。
恍惚とした気分で彼を抱き締める。
握った手は、もう離れないと言わんばかりだった。




    
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